僕と生徒会長と転校生

茶色で耳生えた生物

第一話 新田佳奈

目が覚めると、そこは保健室だった。回りにはカーテンで閉められているようで他には何もなかった
『保健室…誰が連れてきたんだろ』
どうせ先生が見つけて連れてきたんだろうと思っていたのだけど…予想外なことが起きていた
『あ、やっと目が覚めたわね』
白い布の先から何か声がしてカーテンを開いてこちらへと向かってきた。
『随分殴られていたようだけれど、どこか痛むところはない?』
生徒会長、新田佳奈だった。
『会長!?ど、どうしてここに?』
『どうしてって、見ればわかるでしょ?あなたを運んで来たのよ。それだけ喋れるなら怪我はないようね』
『あの…どうして助けてくれたんですか?こんな僕なんか助けても何も良いことないし…あいつらに目をつけられるかもしれないのにどうして…?』
『そんなの決まってるじゃない。あなたが好きだからよ。』
『…はい?』
え、いや、うん、僕の聞き間違いだ。何勘違いしてるんだ僕。あの生徒会長がまさかそんなことを言うはずない。目を覚ませ、まだ頭が回ってないのか。
そう考えていると生徒会長は
『だから、あなたの事が好きなのよ、牧瀬翔夜君。』
『…ええええええええええ!?』
『いや、嘘ですよね!?どうして急にそんな…生徒会長そんなドッキリいらないですよ!』
『だから、本当だって。証明してあげようか?』
『え?証明って…』
どうするつもりですか、と言おうとしたが言えなかった。なぜなら…
『…これなら信じてくれる?』
キスされて口が塞がったからだ
『…え?今の…え!?会長!?』
『何?まだ何か言いたいことがあるの?』
『あ、いや…でも、だったらどうして僕なんかを…僕なんかデブで意気地無しでいじめられてて得意なことが何も無い奴なのに…』
『どうしてそんなに自分を蔑むことを言うのかな…私はあなたのことをちゃんと理解したいの。この前見たのいじめられてるあなたが普段何をしているのか』
『会長が僕の何を…』
『学校の帰り、雨の中衰弱している犬を近場の雨が凌げる場所まで連れていき身体を拭き、近くのコンビニで餌を買ってあげるところを。他にもたまたまショッピングセンターに行った時、あなたが迷子の子供を親御さんの所まで一緒に探してあげてたことも、私は知ってる』
なんなんだ、この会長は。
『それを見て思ったの。いじめられてるのにどんな人にも優しくするそんなあなたを見て気付いたら、あなたの事しか考えられなくなってたの。』
『会長…』
『だからお願い。牧瀬翔夜君、私と付き合ってください。』
『…会長…ごめんなさい!』
そう言って僕は保健室から走り去ってしまった。
『牧瀬君…絶対諦めないからね。』
一人残された生徒会長はそう呟いた。

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