幼馴染は黒魔法を使いたい
幼馴染はエスカレートする
文子とキスをした夜。
Webサイトの質問フォームに投稿があった。
『忘却の魔法をかけたら、彼の頭痛がすごく強くて驚きました。後遺症などが心配です』
『全く問題ありません。原因はおそらく魔力の込めすぎかと思われます。質問者様はおそらく相当の素質をお持ちなのだと思いますので、絶対に忘れてくれ、と強く願いすぎると相手への負荷が高くなることが予想されます』
『わかりました、今後は気をつけます』
俺はボーっとした頭で文子の質問に返信する。
これはちょっと『冗談でした』が通じないところまで一気に来てしまった感があるな。
今さらだが、俺は文子のことが好きだ。文子の気持ちにも、まぁ気づいていた。
それでもこれまで一歩踏み出さなかったのには理由がある。
怖かったんだ。
俺を手に入れた文子は、それに満足して勉強も友人関係も全て投げ捨てて、将来をダメしてしまうのではないか。つまり、俺のせいで、文子がダメ女街道まっしぐらになってしまうのではないか、と。
一般的にはとても失礼な話なのかもしれないが、これまでの文子を見てきた俺からすると、その姿がありありと想像できてしまう。
「まぁ、俺自身が今の関係が心地よくて、現状維持に甘えていた面があるのは否めないよな……」
ただ、キスをしてしまった。
しかも、俺がWebサイトなんかを作って、文子を完全に騙す形でだ。最終的に責任を取るにしろ、直近どうしようかな。
すべてを打ち明けて謝るか。
事実を隠してこのまま行くか。
「謝ったほうが、俺の精神的には楽だ。でも、文子のためを思うと、もう少し学力を伸ばしてやってからの方がいいよな」
しばらくは、このまま行こう。
そう心に決め、俺はベッドで目を閉じた。
それから約半月。
数日に一度、文子は弁当を持ってきた。
そして毎回、文子の部屋で唇を重ねた。
「文子、なに──」
「──っ。ヒデ兄ごめん。今だけだから」
俺は毎回同じように戸惑う演技をする。
文子は毎回違ったキスをする。
一分間の記憶を消せる。
次第に唇を重ねる時間が長くなり、一分ギリギリまで舌を絡めることが増えた。
文子はどんどん大胆になっていき、唇を重ねながら俺に体を擦り付けるようになった。
「あれ? 俺何してたんだっけ」
「ぬわっはっは…………ごめんね」
「何がだ。さぁ、続きやるぞ」
俺は「せめて三分にしときゃよかった」と後悔した。
7月前半に期末テストが行われる。
テスト期間は4日間だ。
文子の部屋では最後の追い込みを行っていた。
「今さらだけど、ヒデ兄はテスト勉強大丈夫なの?」
「全く問題ないよ。普段の授業でちゃんとやってるから」
俺の勉強は「ところてん方式」だ。
学期が始まる前に、各教科の初回授業に習うだろう内容だけ先行して勉強しておく。授業外の勉強などこれくらいだ。
授業中は、先生の話を話半分に聞き流しながら、次回の予習や前回の復習をして過ごしている。宿題はそれとしてあるものの、その他には特に長い勉強時間などの確保はしていない。
人によって向き不向きはあると思うが、試行錯誤の結果として俺の勉強方法はそこに収まった。
ポイントは、授業中にどこまでたくさん問題を解けるかだ。
悩んで考えて答えが出せる、というのはできるうちに入らない。どの教科も、ボーっとしててもスルスルと答えが出てくる所まで覚え込むのが目標だ。
それまではひたすら教科書の同じ演習問題を繰り返し解く。よく言われるけど、教科書以上の参考書なんて不要だ。前回分、今回分、次回分のものを対象に、答えを丸暗記してしまうまでやれれば完了である。
あとは指された時のためにどれくらいの割合で先生の話を聞いておくかも鍵かな。静まり返った中で一人だけ演習問題を解くのも浮いてしまうから、そのあたりは空気を読む必要もある。
「ヒデ兄って真面目なんだね」
「違うよ。授業外は全部趣味にあてたいだけ。どうあがいても授業のためだけに一日何時間も拘束されるんだから、その間に必要なことは全部済ませちゃった方が効率いいだろ」
俺はパソコンを触りたいんだよね。
時間さえあればプログラムの一行でも書いていたいから、授業の時間にすべて終わらせる勢いじゃないと。
「……私、ヒデ兄の時間を取っちゃってるね」
「あぁ、それは別に気にしなくていいよ。文子と一緒にいるのは趣味みたいなもんだし」
文子は顔を赤らめて立ち上がる。
今日はそろそろかな。
「ヒデ兄、目つむっててね」
今日は弁当を作ってきてくれた。
つまり、そういうことだ。
俺はそっと目を閉じた。
期末テストが終了した。
この時期のテストは範囲が狭いのもあるけど、文子はずいぶんと手応えのありそうな顔をしていた。ただ、テスト期間は俺もテスト準備があるため家庭教師は休みにしていた。
集中すると魔力が溜まる。
それが文子に与えたルールだ。
テストの時間は普段より集中していただろうから、俺も多めに魔力を追加する。俺がいない間は魔力を使うあてがないこともあって、いつになく魔力が溜まっていた。
『現在のあなたの魔力は110です。新しい魔法が追加されました』
さて、文子は今度の魔法をどんなふうに使うだろうか。
Webサイトの質問フォームに投稿があった。
『忘却の魔法をかけたら、彼の頭痛がすごく強くて驚きました。後遺症などが心配です』
『全く問題ありません。原因はおそらく魔力の込めすぎかと思われます。質問者様はおそらく相当の素質をお持ちなのだと思いますので、絶対に忘れてくれ、と強く願いすぎると相手への負荷が高くなることが予想されます』
『わかりました、今後は気をつけます』
俺はボーっとした頭で文子の質問に返信する。
これはちょっと『冗談でした』が通じないところまで一気に来てしまった感があるな。
今さらだが、俺は文子のことが好きだ。文子の気持ちにも、まぁ気づいていた。
それでもこれまで一歩踏み出さなかったのには理由がある。
怖かったんだ。
俺を手に入れた文子は、それに満足して勉強も友人関係も全て投げ捨てて、将来をダメしてしまうのではないか。つまり、俺のせいで、文子がダメ女街道まっしぐらになってしまうのではないか、と。
一般的にはとても失礼な話なのかもしれないが、これまでの文子を見てきた俺からすると、その姿がありありと想像できてしまう。
「まぁ、俺自身が今の関係が心地よくて、現状維持に甘えていた面があるのは否めないよな……」
ただ、キスをしてしまった。
しかも、俺がWebサイトなんかを作って、文子を完全に騙す形でだ。最終的に責任を取るにしろ、直近どうしようかな。
すべてを打ち明けて謝るか。
事実を隠してこのまま行くか。
「謝ったほうが、俺の精神的には楽だ。でも、文子のためを思うと、もう少し学力を伸ばしてやってからの方がいいよな」
しばらくは、このまま行こう。
そう心に決め、俺はベッドで目を閉じた。
それから約半月。
数日に一度、文子は弁当を持ってきた。
そして毎回、文子の部屋で唇を重ねた。
「文子、なに──」
「──っ。ヒデ兄ごめん。今だけだから」
俺は毎回同じように戸惑う演技をする。
文子は毎回違ったキスをする。
一分間の記憶を消せる。
次第に唇を重ねる時間が長くなり、一分ギリギリまで舌を絡めることが増えた。
文子はどんどん大胆になっていき、唇を重ねながら俺に体を擦り付けるようになった。
「あれ? 俺何してたんだっけ」
「ぬわっはっは…………ごめんね」
「何がだ。さぁ、続きやるぞ」
俺は「せめて三分にしときゃよかった」と後悔した。
7月前半に期末テストが行われる。
テスト期間は4日間だ。
文子の部屋では最後の追い込みを行っていた。
「今さらだけど、ヒデ兄はテスト勉強大丈夫なの?」
「全く問題ないよ。普段の授業でちゃんとやってるから」
俺の勉強は「ところてん方式」だ。
学期が始まる前に、各教科の初回授業に習うだろう内容だけ先行して勉強しておく。授業外の勉強などこれくらいだ。
授業中は、先生の話を話半分に聞き流しながら、次回の予習や前回の復習をして過ごしている。宿題はそれとしてあるものの、その他には特に長い勉強時間などの確保はしていない。
人によって向き不向きはあると思うが、試行錯誤の結果として俺の勉強方法はそこに収まった。
ポイントは、授業中にどこまでたくさん問題を解けるかだ。
悩んで考えて答えが出せる、というのはできるうちに入らない。どの教科も、ボーっとしててもスルスルと答えが出てくる所まで覚え込むのが目標だ。
それまではひたすら教科書の同じ演習問題を繰り返し解く。よく言われるけど、教科書以上の参考書なんて不要だ。前回分、今回分、次回分のものを対象に、答えを丸暗記してしまうまでやれれば完了である。
あとは指された時のためにどれくらいの割合で先生の話を聞いておくかも鍵かな。静まり返った中で一人だけ演習問題を解くのも浮いてしまうから、そのあたりは空気を読む必要もある。
「ヒデ兄って真面目なんだね」
「違うよ。授業外は全部趣味にあてたいだけ。どうあがいても授業のためだけに一日何時間も拘束されるんだから、その間に必要なことは全部済ませちゃった方が効率いいだろ」
俺はパソコンを触りたいんだよね。
時間さえあればプログラムの一行でも書いていたいから、授業の時間にすべて終わらせる勢いじゃないと。
「……私、ヒデ兄の時間を取っちゃってるね」
「あぁ、それは別に気にしなくていいよ。文子と一緒にいるのは趣味みたいなもんだし」
文子は顔を赤らめて立ち上がる。
今日はそろそろかな。
「ヒデ兄、目つむっててね」
今日は弁当を作ってきてくれた。
つまり、そういうことだ。
俺はそっと目を閉じた。
期末テストが終了した。
この時期のテストは範囲が狭いのもあるけど、文子はずいぶんと手応えのありそうな顔をしていた。ただ、テスト期間は俺もテスト準備があるため家庭教師は休みにしていた。
集中すると魔力が溜まる。
それが文子に与えたルールだ。
テストの時間は普段より集中していただろうから、俺も多めに魔力を追加する。俺がいない間は魔力を使うあてがないこともあって、いつになく魔力が溜まっていた。
『現在のあなたの魔力は110です。新しい魔法が追加されました』
さて、文子は今度の魔法をどんなふうに使うだろうか。
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