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幼女闘拳伝『マッチ売りの武神』(冬童話2018・マッチ売りの少女IFストーリー)

まさかミケ猫

マッチ売りの少女は最強に向けて踏み出す

 何百回、何千回。
 ハジィは死ぬたびに同じ朝に戻ります。

 彼女の手には大量のマッチ箱。
 早朝の街を、人々は手を擦りながら駆け抜けます。

「……少しわかってきたかも」

 アルームじいさんの合気柔剛拳。
 その技の本質は、相手の動きに逆らうのではなく、寄り添って利用するところにあります。自分の力は最低限でよいため、幼女であるハジィにはうってつけの戦闘方法です。

「相手の力を利用して投げる。倒れた相手には肘や膝でトドメを刺す。確かに、これなら力が無くても殺れるかも」

 じいさんのもとへ、何度もしつこく通いました。
 はじめの頃はまったく対応できなかった戦闘も、今では5分程度なら闘っていられるようになりました。それにつれて、アルームじいさんの無駄のない身体の動き、足運び、視線の置き方などがイメージできるようになってきました。

「そろそろ覚え込むフェーズね……」

 ハジィはマッチを投げ捨てると、路地裏に向かいます。
 そして、頭の中にあるアルームじいさんの動きを再現しながら、想像上の父親との仮想戦闘を始めました。

 日が暮れるまで繰り返していると、当然彼女は凍死します。ですが、死に戻って朝になると体力は元通りになっています。彼女は再びマッチを投げ捨てると、路地裏で鍛錬をして凍死します。ただひたすらそれを繰り返しました。



 ハジィ、7歳の冬。
 永遠に終わらないループに悩みに悩み抜いた結果、彼女がたどり着いた結論。

 それは、感謝でした。

【自主規制(運営確認中):齢7歳にして完全に羽化したり、感謝の仮想戦闘一日一万回が一時間を切ったり、代わりに祈る時間が増えたりしました】



 彼女は久々にアルームじいさんの道場を訪れました。今の実力を確かめるためです。

「ふぇぇぇぇ、闘ってよぉぉぉぉ」

 極幼女交渉術ラブリーネゴシエーションにも余念はありません。

「ほぅ……あの男のムスメというだけある。その歳でその戦闘力……どう手に入れた?」

 以前は本気ではなかったのでしょう。
 戦闘モードになったアルームじいさんは前回よりも巧みにハジィの隙をつき、肘や膝が容赦なく飛んできます。

 しかし、ハジィも以前のままではありません。
 意識を分散し全体を見る、観の目。陣取り合戦のようにじいさんの攻撃を弾き、重心の偏りを予測しては投げ技を仕掛けます。

「……達人級マスタークラスに届くか……!」

 結局その日は殴り殺されてしまいましたが、ハジィは確かな手応えを感じました。
 そして、それから毎日アルームじいさんのもとに通うようになりました。


 通常、人は一度しか死ねません。どんなに心の底から悔いたとしても、一度失敗してしまえばそれまで。それが人生というものです。

 しかし、彼女は何度でも死にます。
 何百回、何千回。
 そのたびに一歩一歩強くなります。

 肉体を鍛えられない代わりに、負傷とも無縁でした。明日を迎えられない代わりに、今日が無限にありました。

「7歳の幼女に……負けたか……」

 膝をつくアルームじいさん。
 彼女は安定してアルームじいさんに勝てるようになると、その場を去りました。

「やってやるぜ、父ちゃん……!」

 ハジィが足を向けるのは懐かしき自宅。
 やる気まんまんに進みながら、彼女は道中で凍死したのでした。

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