ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか

きり抹茶

【番外】ロリっ娘の可愛さはトリックオアトリートなのか その1

書きたくなったので急きょ書きました。
後悔はしてません。
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「都内の繁華街ではハロウィンの仮装をした大勢の若者が集まり、賑わいを見せています。それでは交差点前から中継で繋ぎます――」

 十月三十一日。俺はリビングにあるソファーに腰掛けながら、テレビのニュース番組をぼんやりと見ていた。

 今日は言わずと知れたハロウィン当日。本来は秋の収穫を祝い、悪霊等を追い出す宗教行事だったらしいが、昨今……特に日本ではそのような宗教的意味はほぼ無くなっている。それどころか、お化けの仮装や制服にバニーガール等、ハロウィンとは一切関係無いコスプレをしてみたり、大人から菓子を奪い取った上、仲間で集まってどんちゃん騒ぎをするという唯の低俗な祭りと化している。

 テレビの映像では身動きが取れないほど人が詰められており見ているだけで息苦しい。果たしてこれのどこが楽しいというのだろうか。少なくとも俺にはさっぱり分からない。静かな部屋で布団にくるまっていた方がよっぽど有意義だろう。

「くだらねぇ」

 リモコンに手を伸ばし、テレビの電源を切る。あんなリア充でパリピが騒ぐイベントなんて俺には無縁だ。今日が何の日だろうと俺は寝てやるぞ。

 謎の意気込みをしてソファーに寝そべる。そして少しだけ昼寝をしようと目を閉じた時、やかましい声が俺を呼んだ。

「お兄ちゃん、トリックオアトリートッ!」

 早速邪魔が入ったな……。
 仕方無く体を起こすとリビングの入口に高さ百三十センチくらいの白い物体がもぞもぞと動いていた。
 ……別に俺は例え話や比喩表現をしている訳では無い。確かに有るのは白い物体なのだ。

「何やってんだ舞奈海」
「見れば分かるでしょ。今の私はお化けなんだよ?」

 白い物体――もとい、シーツを全身に被った我が妹の舞奈海は自分をお化けであると主張した。どうやらこいつもテレビに映っていた若者達と同じくお祭り騒ぎをしたいらしい。

「お化けさんに用はない。俺は寝る」
「待ってよ私の話も聞いてって――ひゃっ!」

 俺に詰め寄ろうと一歩踏み出した舞奈海は何かにつまづいたようで体勢が前に崩れる。

「危ない!」

 急いで舞奈海が倒れるであろう場所へ駆け付ける。そしてギリギリのタイミングで白いお化け(妹)を抱きとめる事に成功した。体温の温かさと布越しでも感じる柔らかさが心地良い。

「お、お兄ちゃん……?」
「大丈夫か? 痛くはないか?」
「うん、平気……」

 舞奈海の返事はどこかか細い声。突然転んでしまった事に驚いているのだろうか。体も表情も全てシーツに隠れているからよく分からないな。

「おいこれどうやったらはがせるんだよ」
「痛い痛い! そこ髪の毛だよ引っ張らないで!」

 いい加減正体を晒してやろうとあちこち突いたり引っ張ったりしたが、甲高い呻き声が出るだけで姿があらわにならない。

「顔を見せないとイタズラしちゃうぞ〜」
「あ、それ私が言うセリフなんだけど!」
「なら早くそのシーツを脱ぎたまえ」
「むぅ……。じゃあここのチャックを開けて」

 ごそごそと動く所を覗くとシーツのチャックを発見。なるほど、チャックを開ければシーツをひん剥く必要も無いし万事解決だな。

「よし、これで……っと」

 いざご開帳……と言ったら卑猥に聞こえてしまうかもしれないが、今の俺は妹の包まれたベールを優しく解いてあげているだけなのだ。至って健全。超健全な行為だぞ。

「ほわぁ……。ありがと、お兄ちゃん!」
「おぅ……」

 シーツから覗かせた舞奈海の顔は満面の笑みで、まるで羽衣に包まれた天使のようだった。
 更に彼女の頬は林檎の如く赤色に染め上げていたが、恐らくずっと包まっていた為に暑くなっていたからだろう。照れ笑いと考えれば可愛らしいが所詮は妹。抱きつく程度では何とも思わないのが兄妹という関係なのである。

「よいこらしょっと」

 ばさばさとシーツを払い避けるようにして飛び起きた舞奈海は、くるっと一回転してから俺に向かって一言。

「トリックオアトリート! お菓子をくれないとイタズラしまーっす!」
「ほほう。俺にイタズラ、ねぇ」

 良い度胸ではないか。七つも年の離れた男に勝負を挑もうとは。

「え……お兄ちゃん何笑ってるの? 怖いんだけど」
「ふっふっふ。俺に手を出そうものなら、こっちから仕掛けてやるぜ?」
「うわぁ乗り気だねぇ。でもちょっとキモいよ。なんかシスコンっぽい」
「シ、シス!?」

 とんだ勘違いである。俺はやたら構ってくる妹の相手をしているだけだ。寧ろ舞奈海の方がそれ系のたぐいが疑われるだろう。

「いいもん! どうせお兄ちゃんはお菓子くれないからイタズラしちゃうもん」
「じゃあ俺はそれを阻止するとしよう」

 イタズラされない為には舞奈海を俺から遠ざけるのが先決だ。しかもその方法はかなり手っ取り早くできる。
 だがそれは俺に昼寝という休息を与えてくれない相殺的な手段なんだけど。

 スマホを取り出して着信履歴を開く。そこに数多く表示されている人物の欄をタップして通話を試みる。
 プルルルというコールが二回鳴った後、その人物の声が聞こえてきた。

「もしもし俺だけど、舞奈海がお前に会いたいって――」
「マジ!? すぐ行く!」

 音割れする程の大声で答えた相手は俺の返答を待たずして一方的に電話を切った。さて、もう間もなく奴は来るだろう。

「お兄ちゃん、誰か呼んだの?」
「そうとも。……今度菓子を買ってやるから許してくれ」
「え、許すって……」

 舞奈海はまだ事態に気付いていない様子だ。しかし残酷にもその時は訪れてしまう。

「舞奈海たぁぁぁん!」

 ガチャっと玄関の扉が開く音と同時に聞き慣れた幼馴染みの声が響き渡る。

「え、瑛美りん!?」

 瞬時に逃走体勢に入る舞奈海。だがもう遅い。奴は目の前まで迫っている。口元を緩めながら今にも抱き着こうとしているぞ。

「あたしに会いたいなんて可愛すぎるよぉぉぉ!」
「ひやぁぁぁ! 来ないで変態ロリコン!」

 まるで肉食獣から逃げる弱者のように必死の形相で抵抗する舞奈海は、心底気持ち悪いロリコンロリの堂庭の攻撃(抱擁)をなんとか避けている。
 そして一瞬の隙を見抜いてダッシュ。舞奈海にとって地獄と化したリビングから脱出する事に成功した。

「あぁ、逃げられちゃった」
「……当たり前だろ」

 堂庭は獲物を追うことなくその場で立ち尽くしている。よし、作戦自体は成功したな。だが……。

「じゃあ晴流でいいや。……会いたかったよぉ!」
「じゃあって……。俺は舞奈海のついでかよ」

 厄介者の妹が居なくなった代わりに厄介者の彼女が出現。つまりプラマイゼロ。

「ふふ、拗ねないでよ〜。晴流に会いたかったのは本当だし」
「俺は拗ねてない。というかさっきまで一緒に居ただろ」

 日中はおろか学校から帰る時ももちろん堂庭と二人。離れてから一時間くらいしか経っていないのに「会いたかった」なんて大げさではないだろうか。

「大好きな人ならいつでも一緒に居たいと思うのは普通じゃん」
「おぅ、そっか……」

 真顔で言われても困るな。照れてしまうじゃないか。

「それとも晴流はあたしと居るのが嫌なの?」
「え、そんな事は無いけど」

 厄介者とは思ったが嫌な訳では無い。大好きと素直に答えるのは恥ずかしいが、絶対に手離したくない相手なのは間違いないのである。

「いやぁ、あっさり言われるとなんか照れちゃうね、えへへ」
「……お互いに照れ合ってどうするんだよ」
「何? もしかして晴流も照れてたの?」
「あ、今のは違う……!」

 余計な事を喋ってしまった。くそぅ、更に恥ずかしくなるじゃないか。

「ふふ、晴流にも可愛い所があるんだね」
「お前に言われる筋合いは無いけどな」

 今のは褒め言葉。堂庭の可愛さに勝る奴なんて世界中を探してもそう簡単に見つからないだろう。

 高校生のくせに小さすぎて素直すぎて時々危なっかしいけど、肝が据わっている反則級に可愛い美幼女なんて……堂庭以外に誰がいるって言うんだ。

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