ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか

きり抹茶

【番外】なんちゃって新婚旅行 ~箱根編〜 パート4

 海賊船を見物した俺と堂庭はそのまま箱根山の大涌谷おおわくだにへ移動し、硫黄の臭さを感じながら名物の黒たまごを購入した。因みに堂庭はこの黒たまごを真っ黒な鶏が産んだ卵だと思っていたらしい。それなのに何故テストの点は俺より高いのか。謎は深まるばかりである。

 そして今はこれから泊まる宿の前にいる。

 ――名前は『弱羅花壇じゃくらかだん』。
 全国屈指の温泉街であり、激戦区でもあるこの地で最も高級な旅館の一つとして数えられている凄い宿だ。
 しかも俺達が泊まる部屋はスイートルームとも呼ぶべき最上級の部屋。庶民にとっては一生に一度泊まれるかどうかの憧れの存在であるが、お嬢様にとってはごく普通の思い出となるのだろう。
 しかしながら今回は堂庭との(なんちゃって)新婚旅行だ。彼女の記憶に今日が深く刻まれたのなら俺は嬉しい。


 ◆


「うわ、なんじゃこりゃ……」

 部屋に入った瞬間、思わず言葉がこぼれた。
 開放感溢れる広々とした和室とその先に見える日本庭園。これが『わびさび』と呼ぶべきなのか。十七という若き年齢ではあるが、古き良き和の伝統と懐かしさを感じる。こういった旅館に泊まるのは初めてだが、ここまで感動するとは思わなかった。素晴らしいぞ、日本。

「凄いよ晴流! 露天風呂も付いてる!」

 堂庭は相変わらずキャッキャとはしゃぎながら俺の名前を呼んでいる。ゆっくりと辺りを見回しながら奥へ進むと、個室とは思えない立派な庭園と共にこれまた立派な檜造りの露天風呂が鎮座していた。

「え、これ俺達専用の風呂って事か?」
「うん、そうみたいだよ。他に誰も居ないから…………混浴もできちゃうね」
「こ、こっ!?」

 いや、プライベートな空間だし確かに混浴は可能だが……。

「どうする? 一緒に入る?」
「なっ!? だ、駄目だろそんなの」

 堂庭の衣が地に落ち、彼女の艷やかな肌があらわになって……。
 ――って違う! 俺は何を想像しているんだ。相手はまだ未成長の女の子だぞ。妹の舞奈海と同じように、ただの子供と考えれば……。

 ――――ってそうじゃないだろ! 俺は健全な青少年だ。よこしまな考えは捨てて真面目に生きるべきなんだ!

「ふふ、晴流ってば顔真っ赤だよ?」
「はぁ!? べ、別に赤くなってないし」
「そうかなぁ~。でもあたしと一緒にお風呂に入るだけなのにそんな興奮するの?」
「興奮なんて……する訳無いだろ!」
「本当? だけど何とも思ってくれないと、あたしは寂しいかな……」

 心なしか表情が曇る堂庭。
 そうだった。今の俺と堂庭は恋人同士で、お互いに好きという感情を持っている。だから何も動じないなんて言ったら寧ろ失礼に当たるのかもしれない。とはいえおとこの欲求をゴリ押ししたら、それはそれで問題だと思うが。

「まあ……時期を考えろって事だ。別に急ぐ必要は無いし」
「うん、あたしも半分冗談で言っただけだから気にしないで」

 半分……? というと少しは本気で言っていたのか……?
 ――いかんいかん。また変な妄想に走るところだった。

「じゃ、あたし先に入っていい?」
「あぁ。どうぞご自由に」

 ここまで楽しそうにはしゃいでいる彼女を止めるわけにはいかない。
 バスタオルを両手で抱えながら走り去る堂庭を横目に、俺は小さな溜め息をついた。


 ◆


「お待たせ~」

 約三十分後。
 スマホを弄っていた俺に背後から声が掛かる。

「おぉ……」

 振り向いてその姿を捉えた瞬間、感嘆の息が漏れた。
 そこには火照った身体を桃色の浴衣で包んだ堂庭がいたのだ。

「どう? 似合ってる……かな?」
「…………百点満点で完璧だ」

 恐らく子供用の浴衣だが、幼児体型の堂庭には非の打ち所がない程似合っていた。
 可愛い。しかしその一言で表すのが勿体無いくらい可愛い。何と言ったら適切か分からないけど……とにかく可愛いのだ。

「えっへん。晴流も段々ロリコンに近付いてきたんじゃない?」

 両手を腰に当てて後ろに仰け反る堂庭。
 ロリコンになるのは勘弁だが……視線は自然と彼女の胸元に向かってしまった。
 ピンと張られた胸は一見すると綺麗な湾曲状――つまり反らしたまな板のような状態になっているが、目を凝らして見ると少々の膨らみを確認することができた。
 お子様な堂庭でも多少はあるんだな……っとこれ以上はいけない。

「えっと……じゃあ俺、風呂入ってくるから!」

 急いで視線をずらし、バスタオルを片手に堂庭から逃げるようにその場を立ち去る。
 いくら旅行とはいえ……。今日の俺はどうかしてるぞ。いやらしい感情を捨てて一旦落ち着かなくちゃ。

 それから美しき日本庭園に囲まれた湯船に浸かった俺は「このお湯は堂庭のダシが含まれている……!」なんて微塵も思わずに修行中の僧侶のように心を無にして一時を過ごした。


 ◆


 さっぱりとした状態で部屋に戻ると、先程まで何も置かれてなかった机にずらりと懐石料理が並んでいた。
 仲居さんから料理の説明を受け、初めて味わう高級な和食に舌鼓を打った後は特に何かすることは無く部屋の片隅にただ座っていた。
 堂庭と同じ部屋で二人きりになったものの、お互いに沈黙を貫いている。別に無理して話し合う程気まずい間柄じゃないから、このくらいが丁度良い。

 しかし数分後。俺から少し離れた場所で座椅子にもたれていた堂庭が口を開く。

「晴流って進路とか……もう決まってる?」

 何を言い出すかと思えば、えらく真面目な話題だった。
 俺達はあと少しで高校三年生になる。そして一年後には恐らく次へ進む道が目の前に差し掛かっているだろう。進学か、はたまた就職か。いずれにせよ他人事ではない問題なのは明らかだ。

「……正直何も決まってないな。一応進学はしようと思っているけど」

 恥ずかしながら具体的な進路は何一つ決まっていない。とりあえず大学へ行っておけばいいんじゃない? とかそういう感じ。

「そっか。因みにあたしはもう決まってるけどね」
「え、マジ?」

 意外だ。己の欲を全開にして生きている堂庭の事だから進路なんて全然考えてないと思っていたのに……。

「晴流はどうするの? やっぱ大学とか?」
「まあそうなるかなぁ……。んで、お前はどこにしたんだ?」
「短大だよ。場所は秘密」

 くすくすと笑う堂庭。学校まで決まっているとなると、やはりその先の進路も決まってるのかな……?

「俺も同じところにしよっかな」
「ふふ、何それストーカー?」
「違ぇよ。何も分からないから、せめてお前と一緒の方がマシかなと思って」
「そっかー。でも晴流にはちょっと合わない大学かも」

 眉を八の字にして困り顔をする堂庭が答える。俺には合わないって事はまさか――

「ロリコン育成学校だったりするのか?」
「それだったら寧ろ晴流を誘うわよ」
「いや、断るけど……。じゃあ女子大とかか?」
「それなら合わないどころか入学すらできないでしょ。まあ女の子は多い学校だけどね」

 なるほど……。でも堂庭が勧めないのなら無理して合わせる必要は無いな。自分の進路は自分で決めるべきだし。

「……晴流。話は変わるけどさ」

 顔を少しだけ俯けた堂庭が続ける。頬が先程よりも紅潮しているように見えるのは気のせいだろうか。

「あたしを好きになってくれて、ありがとね」
「……何を今更」

 俺はどこかもどかしくなり、視線を堂庭からずらす。

「晴流が告ってくれた時、凄く嬉しかったよ。晴流は幼女に夢中でワガママなあたしを好きって言ってくれたから……」

 俺が堂庭に告白をしてから一ヶ月以上経つが、あの時の話をするのは今が初めてだ。確かに俺はロリコンでどうしようもない堂庭が好きだと言った。もちろんその言葉に嘘偽りは無く、今日も明日もその先も変わることのない想いとなるだろう。

「『報われた』って思ったの。今まで晴流があたしを好きになってもらえるように自分磨きをしたり、ロリコンにもなっちゃったけど……。頑張った結果が水の泡にならなくて本当に良かった。本当に……こんな馬鹿なあたしを恋人に選んでくれてありがとう」

 視線を元に戻す。堂庭の目元にはうっすらと涙が溜まっていた。彼女と出会ってから十数年、幼馴染みとしての付き合いをしてきた訳だが、俺は幼馴染み以上の関係を求める彼女の気持ちに気付くことは無かった。その間、どれだけの苦労と努力を積み重ねてきたのだろうか。恥ずかしながら俺には分からない事情だが恐らく並々ならぬ壁に当たっていたに違いない。

「……俺は申し訳ないと思ってる。許してくれるか分からないけど、これからは俺がお前を……その……あ、愛して、いくからさ。罪を償うつもりでずっと守っていくから……」
「なにそれ。あたしちょっと納得できないなー」

 代償の内容に不服があるのだろうか。やはりロリゲーム一年分でも貢がないと許してくれないのか……?
 少々非現実的な妄想に走る俺だったが、堂庭は体を起こしてとことこと俺の目の前までやってきた。そしてそのまま俺の背後へと移動し――

 ぼふっ。

 座っている状態の俺に、背中から包み込むようにして抱きついてきた。

「ちょっ、何だ!?」
「これまでの事は考えなくていいから。お互い思う存分愛せばいい話じゃん。あたしは晴流が好きだし晴流もあたしが好き。たったそれだけなんだもん。今日からは気楽にいこ?」
「…………そう、だな」

 堂庭が言うのなら俺は否定しない。何年も想いに気付けなかったのは事実だけど今は今。せっかく幼馴染みから恋人にシフトチェンジしたのだから、今は前に進むしか無い。恋人の先は……結婚かな。でもその前に進路を決めなくちゃな。

「あれ、晴流もしかして太った?」
「…………は?」
「いや、前に抱き締めた時と比べて腹回りが違う気がするなって思って」

 言いながらぷにぷにと俺の腹部を触る堂庭。くすぐったい。

「余計なお世話だ」

 正直な話、春休みのだらけ具合で腹回りの脂肪が増えているのは事実だが堂庭に言われると何故か納得がいかない。
 お前は胸の脂肪を増やせ、と言いたい。…………別に増えなくてもいいけど。


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※登場する施設名はフィクションです。
※次話からは堂庭家の日常編として瑛美、桜の視点でお送りします。
 投稿予定日は8/19(日)です。

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