ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか

きり抹茶

4-15 「好きにしていいの!?」

 ゲホッゴホッ

 夏休みも残り一週間を切ったというのに俺は宿題にも手をつけず寝込んでいる。
 そして隣には平然とした装いでベッドに腰掛ける堂庭がいる。ここ、俺の部屋なんだけど。

「あたしの風邪、晴流に移っちゃうとはね……」
「はは、とんだ土産を貰っちまったな」

 桜ちゃんが寝込み、堂庭がキャンプ中に熱を出し、数日後に俺が発症。

 不覚だった。まさか堂庭ではなく俺がオチの担当をするなんて……。

「でもおかしいわね。なんたらは風邪を引かないっていうのに……」
「おい、いつ俺はバカになったんだ?」

 バカ具合では寧ろ堂庭の方が勝ってると思うのだが。

「ごめんね」
「いや、別に謝らんでもいい」
「違う。キャンプの事」
「あぁ……」

 堂庭は身に付けているタンクトップの裾をつまみながら曇った表情をする。
 自分のせいで予定を変えてしまった事を気にしているのだろうか。

「七夕の時に迷惑掛けちゃったからそのお返しにと思って皆を呼んだのに、結局またあたしのせいで……」
「まあまあそんな気に病むなって」

 故意でなければ仕方のない事だし、俺は堂庭を責めたりはしない。きっと平沼や都筑に聞いても同じ答えをするだろう。

「でもきちんとお返しとしてけじめをつけとかないと駄目だと思うのよね」
「そうか、なら好きにしてくれ」
「好きにしていいの!?」

 答えた途端、目を輝かせてこちらを見つめる堂庭。
 やべ、俺余計な事言ったかも。

「桜とうるさい姫にはプレゼントを贈ろうと思うんだけど、晴流は何でもいいって言ったから~」
「おい、何でもとは言ってないぞ」
「特別にあたしの秘宝を触らしてあげる!」
「人の話を聞け! ゴホッ……つか秘宝って……」
「ふっふっふ……そう! 『カスタム幼女3D』よ!」

 こいつ、堂々とエロゲーのタイトルを口にしやがったぞ。

「気持ちだけ受け取っておくよ」
「何言ってるの! あたしのお気に入りのマキたそでプレイしてもいいのよ?」
「だから遠慮するって……」
「やりなさい! 風邪が直ったらあたしの部屋に来る事。いいわね?」
「強制かよ……」

 怒鳴ってでも断れば良いのかもしれないが、如何せん体がだるい。
 結局俺はまた堂庭の言いなりになるのか。
 まあ、不思議と悪い気はしないんだけどな……。

「ゴホッゴホンッ。……お前さっきから声でかい。少し寝かせてくれ」
「あ、ごめんね。じゃあ寝る前に一つ聞いておきたいんだけど……」

 堂庭は仰向けで横になる俺の顔を覗き込みながら

「晩御飯何がいい? 今夜はご両親いないんでしょ?」
「え? お前いつまで看病するつもりなんだ?」
「それは……明日の朝まで、とか?」
「いやいいって! 俺はそんな重症じゃねぇし」

 それに堂庭が常に隣にいると色々と気が休まらないのだ。加えて一夜を共に過ごすとなれば……寧ろ症状が悪化しそうな気がする。

「なら夜になったら帰るね。ご飯はお粥でいいかな? それともサムゲt」
「おい堂庭。俺は今熱があるんだ。必要以上にボケを挟まないでくれるかな?」

 いつにも増して堂庭が絶好調に見えるのは俺が病人だからなのだろうか……。

「ふふ、悪かったわ。……冷えピタ取り替えよっか。替えはどこにあるの?」
「……リビングの棚の二番目の引き出し」
「はぁーい!」

 すたすたと軽快な足取りで部屋を出ていく堂庭を見ながら溜め息をつく。
 あいつ、あれだけで場所が分かるんだな。流石幼馴染みである。


 堂庭は騒がしくて変態だけど放っておけない。
 あいつは……そんな奴だ。

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