ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか

きり抹茶

3-8 「なんか不公平というか」

「『自分に正直になる 堂庭瑛美』とな。ふむ、そなたにしては中々……」
「ちょっと勝手に読まないでよ!」

 もう一枚の短冊の内容を読み上げられた堂庭は、あたふたと慌てた素振りを見せる。
 しかし何故見せたくないような態度をとったのだろうか。少なくとも幼女になりたいという犯罪的な願いよりは全然マシだと思うのだが。

「ふぅん。お前にしては結構まともな内容書いてるじゃん」
「……晴流に言われる筋合いは無いんだけど」
「え? なんでだよ」
「だって……これはあんたのせいでもあるんだから」

 俺のせい……? まったく訳が分からない。
 おまけに堂庭は俯いているため、表情を汲み取ることもできなかった。

「…………」

 俺は黙ったまま堂庭の頭を見つめる。
 なんか凄い気まずい雰囲気になったな。ここは何かを打開策を……。

「……あ、えっと、みんな聞いて!」

 俺が一人で悩んでいたところ、桜ちゃんが声を上げた。

「その、取り敢えずみんなの短冊を集めて写真でも撮らないかな、なんて」

 段々と声に自信が無くなりながらも彼女は自分なりの助け舟を出してくれた。
 何故写真撮影……? 対応に違和感を感じかねないが、せっかくなのだからここは便乗するしかない。

「そ、そうだな。じゃあそれぞれ渾身の一枚をここに並べて……」

 恐る恐る呼びかける俺だったが、堂庭を含めた三人は意外にも素直に応じる。

「ほれ宮ヶ谷殿。わしは一枚しか書いとらんからこれじゃな」
「あ、私は志望校合格の方で」
「……あたしはロリで」

 それぞれの短冊がテーブルの上に並べられていく。
 そして各々スマホを手に取り、短冊のプチ撮影会が始まった。

 パシャパシャとシャッターを切り、和やかな雰囲気になる。だが俺は堂庭の手が止まっていることに気付いた。

「堂庭どうした? 写真撮らなくていいのか?」
「あ、えっと、撮らないというか……撮れない。あたしのスマホ、充電切れちゃってたから」

 自身のスマホを見せながら苦笑いをする堂庭。
 電池切れか。それはお気の毒……。というかもう怒っていないみたいだな。……怒っていたのかは分からないけど。

「あんたが撮った写真、後であたしに送っておいて」
「あぁ分かった」
「綺麗に撮れてなかったら許さないから」
「はいはい」
「はいは一回!」

 堂庭の調子は元に戻ったようだ。なにがともあれ安心だ。

 それから短冊を係の人に渡し、再び電車ごっこ横連結の体勢になった俺達は辺りを散策する事になったのだが……。

「あたしはパレードが見たいんだけど!」
「そなたは何故人がゴミのように集まる所へ行こうとするのじゃ? 祭りといったら出店じゃろう!」
「わ、私はパレードに、行きたい、かな」

 見事に意見が割れて揉めてしまった。いちいち面度な奴等である。
 堂庭と桜ちゃんはパレードを見たいと言うが、修善寺さんは人込みが嫌という理由で行きたくないらしい。
 ちなみに俺はゆっくりと露店を見て回りたいと思っている。

「せっかく来たんだから見れるモノは見ないと勿体ないでしょ!」
「じゃがそのために辛い思いをして体調を崩したら元も子もないじゃろ」
「それは……。でもきっと見れば具合なんてすぐ良くなっちゃうよ!」
「その根拠はどこにあるのじゃ? 医学的に証明されているのかのう?」
「ぐぅ……。うっさいわね……」

 お互いの意見をぶつけ合うだけで一向に埒が開かない。俺はやれやれと溜め息をついて二人に和解案を提示した。

「行きたい場所が違うなら二手に分かれようぜ。パレード行く人と行かない人で」
「おぉなるほど! お主中々頭のキレが良いのじゃな!」
「ふん、晴流にしてはやるじゃない」

 なんだよコイツ達! 別行動するという選択肢は今まで無かったのかよ!
 振り返ると堂庭と修善寺さんは珍しく俺を感心するような目で見ていたが、桜ちゃんは顔をしかめ、何かを考えているようだった。

「あの……。分かれて行動するのは構いませんが、恐らく私はお姉ちゃんと、修善寺先輩はお兄さんと一緒になりますよね?」
「まあそうなるな」
「そうするとその……」

 桜ちゃんは恥ずかしそうにもじもじとしている。

「お兄さんが片方だけってのは……なんか不公平というか……」
「いや俺は一人しかいないからね!?」

 求められるのはありがたいが、残念ながら俺の体は自在に分割できるほど高機能ではない。

「なるほど……。桜のボディーガードが居ないのは少し危ない気もするのう」
「そうだよな。桜ちゃん一人にさせるのは流石にまずいか……」
「ちょっと待って! あたしは!? あたしもここにいるんだけど!」

 堂庭が声を大にして反論する。いやあなたはどうせ幼女に夢中になって我を忘れるのだから、いないも同然でしょう。
 一同呆れた視線を堂庭に送るが、奴は屈することなく胸元に手を突っ込んで何かを取り出そうとする。

 そして黒いブツを手に堂庭は

「じゃじゃーん! こんな時のために持ってきておいたのよ!」
「おい、それおもちゃの銃じゃねーか!」

 安物感が漂うプラスチックの塊を手に得意気な顔をする堂庭。それはまるで自分の宝物を親に自慢する子供のようである。というか浴衣のくせにどこから取り出しているんだよ……。
 しかもこれで桜ちゃんの身が守られたと考えるなんて……。奴の思考回路は相当おかしいに違いない。

「桜、あたしがいるから安心しなさいよね!」
「うん! そんな立派なのがあればきっと大丈夫だよね」
「ちょっ、マジっすか!?」

 桜ちゃんも例外ではなかったか……。やはりこの姉妹は時々頭のネジがぶっ飛んでいるよな。
 だがしかし、桜ちゃんさえ良ければ俺と離れても問題ないので取り敢えず一件落着とみていいのか?

「じゃああたしは桜と、晴流は修善寺と分かれて行動すること。集合は一時間後。場所は駅のトイレ前。意義ある人はいる?」
「いや、俺はない」
「わしは問題ないぞ」
「うん、私はお姉ちゃんの意見に賛成だよ」

 桜ちゃんが無事に楽しめるか心配になりつつも、俺達四人は二手に分かれて行動することになった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品