特殊科学研究事務所-muzina-
第4話 おもひで
『あらぁ〜。うちの舎弟ちゃんをぶっ飛ばしたのはもしかしてそこのボーイ?』
オカマ口調で現れたのは蒼い河童。
しかし甲羅はなく、肌は鉄のような鱗で覆われ、指先には虎のような鉤爪がついている。
《ま、まさかこんなところにこいつがいるとは。まずいっ! まずいですよぉっ!》
心の中でムジナが異常に取り乱している。
こいつは一体何なんだ?見た目から想像すると河童の上位互換だけど……
《こいつは〝水の神〟水虎。四十八の河童達を統べる者。その強さは……計り知れませんっ!!》
『よく知ってるわね。舎弟は人間どものせいで僅か二人になったわ』
先程とは比べ物にならない殺気。
もはや逃げることなどできない。
上位の敵に背を見せることは死を意味する。
覚悟を決め、先程の猛スピードで間合いを詰める。風のように走る俺は、常人なら見えないほどのスピードに達していると思う。
しかし殴ろうとした直前、水虎の鉤爪の餌食となった。
横になぎ飛ばされた俺は、なんとか耐えられたが、体からは血がドクドク出ている。
ケモノ化しないでこれか……
『ん?ああ、あそこのガールから始末しちゃいましょうか。絶望しながら死ぬといいわ』
水虎は麗奈に近づいて行く。
ヤガスがパタパタ羽ばたきながら攻撃するが、水虎の一振りで倒されてしまう。
『ガフッ…面目……ない』
水虎は麗奈にあと一歩のところまで近づいている。
やめろ!と言いたいが痛みで声を出せない。たとえ出せたとしてもあいつが止まることはないだろうが。
水虎が鉤爪のついた手を振りあげる。
俺は必死で掴もうとするが、当然空を切る。
水虎の手が振り下ろされる。
『「やめぇろぉぉお!!!」』
声がでたと同時にまた掴む動作をするが、先程と同様に空振る。
しかし、俺の手から生み出された風は刃となって水虎に襲いかかった。
『痛っ。なぁにボーイ。まだそんな技があったのね。やっぱりあなたから仕留めることにするわ』
少しは効いているかもしれないが、傷は浅い。
何であんな事が出来たのかわからないが、今はそれどころではない。
水虎が標的を俺に変えて歩いてくる。
『そう言えば前にいたわね。「私がモノノケと人間の共存できる世界をつくる」とか言ってた人間が。そいつが来た後は人間は全くここへは来なかった。けど数年前から急に人間があちし達を攻撃してきた』
数年前、というフレーズに引っかかる。
『「もしかして……その人間は、言魂隆也という名前だったか?」』
『確かそんな名前だったと思うわ。あちしも昔は人間と共存しようと思ってたの。でも今となっては昔のことよ』
独特な口調、それにその言葉。
 -あちしね、
          人間とは共存していきたいって思ってるの-
-あちしと一緒にいたら変人扱いされるわよ。あちしのことは忘れさせるから……普通の人間と…仲良く生きてね。さようなら-
忘れられた記憶が頭の中を駆け巡る。
『せいぜい、自分の運命を悔いなさい』
水虎の手が振り下ろされる瞬間、俺は言葉を発した
『「すーちゃん。すーちゃんだろ。久しぶり」』
水虎の動きが止まる。
全部、思い出した。
俺は微笑んだ。
『そ、その呼び方。れいくん?れいくんなの?じゃああっちのガールがれなちん?………そんなに…そんなに大きくなってたら気づくわけないでしょう』
水虎 いや、すーちゃんも、泣きながら微笑んだ。
雨が俺らを優しく包み込むように降り注いでいた。
オカマ口調で現れたのは蒼い河童。
しかし甲羅はなく、肌は鉄のような鱗で覆われ、指先には虎のような鉤爪がついている。
《ま、まさかこんなところにこいつがいるとは。まずいっ! まずいですよぉっ!》
心の中でムジナが異常に取り乱している。
こいつは一体何なんだ?見た目から想像すると河童の上位互換だけど……
《こいつは〝水の神〟水虎。四十八の河童達を統べる者。その強さは……計り知れませんっ!!》
『よく知ってるわね。舎弟は人間どものせいで僅か二人になったわ』
先程とは比べ物にならない殺気。
もはや逃げることなどできない。
上位の敵に背を見せることは死を意味する。
覚悟を決め、先程の猛スピードで間合いを詰める。風のように走る俺は、常人なら見えないほどのスピードに達していると思う。
しかし殴ろうとした直前、水虎の鉤爪の餌食となった。
横になぎ飛ばされた俺は、なんとか耐えられたが、体からは血がドクドク出ている。
ケモノ化しないでこれか……
『ん?ああ、あそこのガールから始末しちゃいましょうか。絶望しながら死ぬといいわ』
水虎は麗奈に近づいて行く。
ヤガスがパタパタ羽ばたきながら攻撃するが、水虎の一振りで倒されてしまう。
『ガフッ…面目……ない』
水虎は麗奈にあと一歩のところまで近づいている。
やめろ!と言いたいが痛みで声を出せない。たとえ出せたとしてもあいつが止まることはないだろうが。
水虎が鉤爪のついた手を振りあげる。
俺は必死で掴もうとするが、当然空を切る。
水虎の手が振り下ろされる。
『「やめぇろぉぉお!!!」』
声がでたと同時にまた掴む動作をするが、先程と同様に空振る。
しかし、俺の手から生み出された風は刃となって水虎に襲いかかった。
『痛っ。なぁにボーイ。まだそんな技があったのね。やっぱりあなたから仕留めることにするわ』
少しは効いているかもしれないが、傷は浅い。
何であんな事が出来たのかわからないが、今はそれどころではない。
水虎が標的を俺に変えて歩いてくる。
『そう言えば前にいたわね。「私がモノノケと人間の共存できる世界をつくる」とか言ってた人間が。そいつが来た後は人間は全くここへは来なかった。けど数年前から急に人間があちし達を攻撃してきた』
数年前、というフレーズに引っかかる。
『「もしかして……その人間は、言魂隆也という名前だったか?」』
『確かそんな名前だったと思うわ。あちしも昔は人間と共存しようと思ってたの。でも今となっては昔のことよ』
独特な口調、それにその言葉。
 -あちしね、
          人間とは共存していきたいって思ってるの-
-あちしと一緒にいたら変人扱いされるわよ。あちしのことは忘れさせるから……普通の人間と…仲良く生きてね。さようなら-
忘れられた記憶が頭の中を駆け巡る。
『せいぜい、自分の運命を悔いなさい』
水虎の手が振り下ろされる瞬間、俺は言葉を発した
『「すーちゃん。すーちゃんだろ。久しぶり」』
水虎の動きが止まる。
全部、思い出した。
俺は微笑んだ。
『そ、その呼び方。れいくん?れいくんなの?じゃああっちのガールがれなちん?………そんなに…そんなに大きくなってたら気づくわけないでしょう』
水虎 いや、すーちゃんも、泣きながら微笑んだ。
雨が俺らを優しく包み込むように降り注いでいた。
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