特殊科学研究事務所-muzina-
第7話 Lie or Truth
「……やっぱ血は争えないのか」
俺の覚悟が伝わったらしく、おじさんは緊張を緩めた。少し淋しそうだった。
「じゃあ教えてやるがあとから後悔はすんなよ」
「もちろんです」
「おまえだけじゃねえ」
「!?」
俺だけじゃない……いったいどういうことだ。
俺は隣で昼寝をしている麗奈とすーちゃんを見た。
麗奈もってことか? それとも--。
「俺が言ってんのはお前の事だ。」
『私、ですか?』
言われたのは予想外のムジナだった。
ムジナはじいちゃんの元相棒だったんだから覚悟を聞く必要はないんじゃないか?
「いいから言え。覚悟はあんのか?」
ムジナは戸惑った様子で答えた。
『も、勿論です』
「結論から言うと、ムジナの記憶は変えられてるぞ」
『……ほ、本当ですか?』
ムジナが記憶を変えられている? 俺の頭は突然の出来事にパンク寸前だ。
「まあ、そう構えるな。さっきこいつが隆也の元相棒とか言ってたがそれは変えられた記憶。本当の相棒はムジナ、お前の親父さんだよ。ちなみにそこにいるヤガスは親父さんの補佐官だった」
『私の……父親。では、記憶を変えたのは誰なんですかっ!』
ムジナが勢いよく立ち上がり、椅子が倒れる。
「それもお前の親父さんだ。お前が自分の種族を知らなかったり、一族を忘れているのはそのせいだ」
確かに他のモノノケ達は種族があるが、ムジナのは聞いたことがなかった。
『ではっ!その記憶を思いださせてください!』
『駄目です』
今まで黙っていたヤガスが初めて口を開いた。
『何故ですかっ! 私には思い出さなければならない記憶だって沢山あるはずです!!』
『だから駄目なのです』
ヤガスは冷静に話した。
『貴方のお父上も隆也も、子供に自分達の負の遺産を引き継がせたくなかった。親の仕事を子供に押し付けたくなかった。子供の貴方でも、この気持ちくらいは分かるでしょう!』
ヤガスが初めて感情的になる。
ああ、だからじいちゃん 俺に自分の希望を話してくれなかったのか。自分の夢を俺の重荷にしたくなくて。
『では、父の事だけでも教えて下さい』
「俺にも、じいちゃんの事を教えてくれ」
俺にはムジナの気持ちが痛いほど伝わってきた。大切な……大切な人の記憶。それを失くしたことがどれほどつらいのか。もし俺がそうだったらと考えただけで、目が熱くなった。
「すまねぇがそれも出来ねえ。なんせアイツらが望んだ事だ。俺らが言う訳にはいかねぇ」
『だがこれだけは言えます。我々が言える唯一の事』
そう言って二人は声を揃えて言った。
『「嘘を信じ、真実を疑え。最後まで信じ抜くべきは過去のみである」』
「……??」
『すみません。意味が分からないのですが』
急に分からないことを言われて、理解が追い付かない。
「いずれ分かる時がくるさ。そん時まで忘れずにいろよ」
『「……はい」』
よく分からないが俺らは忘れないようにしようとお互いに頷いた。
「すいませぇん!」
表から声が聞こえた。客が来たのだろう。
迷惑にならない内に帰ろうと思う。
「じゃあ、俺らはこれで。麗奈、すーちゃん、ほら。いくよ」
俺は麗奈とすーちゃんを起こしながら言った。
「ふぁぁ。分かったよぉ。おじさんばいばぁい」
『またくるわねぇ!ばいばい!』
おじさん達に手を振りながら俺らは店を出た。
「アイツらに何かあったらどうすればいい」
『なぁに、俺らが助けに行きゃあいいだろ』
おじさんの目に水滴が見えたが、聞こえた言葉といっしょに見なかったことにしようと思った。
帰り道、ヤガスが申し訳なさそうに言った。
『聞きたいことはあると思いますが、どうかこのことに関しては何も聞かないでください』
「ああ、分かってるよ。この答えは自分達で見つける事にする」
『伶斗様がそうおっしゃるなら私とて不満はございません』
『本当にありがとうございます』
ヤガスにも言えない事はあるのだから、それを聞くのは良くないもんな。
俺は、今日の事はずっと忘れずにいようと思った。
俺の覚悟が伝わったらしく、おじさんは緊張を緩めた。少し淋しそうだった。
「じゃあ教えてやるがあとから後悔はすんなよ」
「もちろんです」
「おまえだけじゃねえ」
「!?」
俺だけじゃない……いったいどういうことだ。
俺は隣で昼寝をしている麗奈とすーちゃんを見た。
麗奈もってことか? それとも--。
「俺が言ってんのはお前の事だ。」
『私、ですか?』
言われたのは予想外のムジナだった。
ムジナはじいちゃんの元相棒だったんだから覚悟を聞く必要はないんじゃないか?
「いいから言え。覚悟はあんのか?」
ムジナは戸惑った様子で答えた。
『も、勿論です』
「結論から言うと、ムジナの記憶は変えられてるぞ」
『……ほ、本当ですか?』
ムジナが記憶を変えられている? 俺の頭は突然の出来事にパンク寸前だ。
「まあ、そう構えるな。さっきこいつが隆也の元相棒とか言ってたがそれは変えられた記憶。本当の相棒はムジナ、お前の親父さんだよ。ちなみにそこにいるヤガスは親父さんの補佐官だった」
『私の……父親。では、記憶を変えたのは誰なんですかっ!』
ムジナが勢いよく立ち上がり、椅子が倒れる。
「それもお前の親父さんだ。お前が自分の種族を知らなかったり、一族を忘れているのはそのせいだ」
確かに他のモノノケ達は種族があるが、ムジナのは聞いたことがなかった。
『ではっ!その記憶を思いださせてください!』
『駄目です』
今まで黙っていたヤガスが初めて口を開いた。
『何故ですかっ! 私には思い出さなければならない記憶だって沢山あるはずです!!』
『だから駄目なのです』
ヤガスは冷静に話した。
『貴方のお父上も隆也も、子供に自分達の負の遺産を引き継がせたくなかった。親の仕事を子供に押し付けたくなかった。子供の貴方でも、この気持ちくらいは分かるでしょう!』
ヤガスが初めて感情的になる。
ああ、だからじいちゃん 俺に自分の希望を話してくれなかったのか。自分の夢を俺の重荷にしたくなくて。
『では、父の事だけでも教えて下さい』
「俺にも、じいちゃんの事を教えてくれ」
俺にはムジナの気持ちが痛いほど伝わってきた。大切な……大切な人の記憶。それを失くしたことがどれほどつらいのか。もし俺がそうだったらと考えただけで、目が熱くなった。
「すまねぇがそれも出来ねえ。なんせアイツらが望んだ事だ。俺らが言う訳にはいかねぇ」
『だがこれだけは言えます。我々が言える唯一の事』
そう言って二人は声を揃えて言った。
『「嘘を信じ、真実を疑え。最後まで信じ抜くべきは過去のみである」』
「……??」
『すみません。意味が分からないのですが』
急に分からないことを言われて、理解が追い付かない。
「いずれ分かる時がくるさ。そん時まで忘れずにいろよ」
『「……はい」』
よく分からないが俺らは忘れないようにしようとお互いに頷いた。
「すいませぇん!」
表から声が聞こえた。客が来たのだろう。
迷惑にならない内に帰ろうと思う。
「じゃあ、俺らはこれで。麗奈、すーちゃん、ほら。いくよ」
俺は麗奈とすーちゃんを起こしながら言った。
「ふぁぁ。分かったよぉ。おじさんばいばぁい」
『またくるわねぇ!ばいばい!』
おじさん達に手を振りながら俺らは店を出た。
「アイツらに何かあったらどうすればいい」
『なぁに、俺らが助けに行きゃあいいだろ』
おじさんの目に水滴が見えたが、聞こえた言葉といっしょに見なかったことにしようと思った。
帰り道、ヤガスが申し訳なさそうに言った。
『聞きたいことはあると思いますが、どうかこのことに関しては何も聞かないでください』
「ああ、分かってるよ。この答えは自分達で見つける事にする」
『伶斗様がそうおっしゃるなら私とて不満はございません』
『本当にありがとうございます』
ヤガスにも言えない事はあるのだから、それを聞くのは良くないもんな。
俺は、今日の事はずっと忘れずにいようと思った。
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