記憶改竄的現世界物語
第21話:異例
その後、ミレイ・ノルヴァはこの事件を【0】にした。
死者こそ復活しないが、今回のこの事件で騒がれる事はまずないだろう。
神の能力は本当に恐ろしいと痛感させられた。
テラは兄の正体によるショックがジワジワと来ていたらしく、精神を壊してしまった。
完全な鬱症状だ。むしろ今まで良く頑張ったと思う。
自分の家族が連続殺人犯で、しかも何者かに精神を奪われているなんてそう簡単に耐えられる話じゃない。
季子に関しても傷が癒えなかったらしく、未だに植物状態だ。
先生が身体的な傷は全て治したが、それでも精神にガッポリと空いた傷が癒える事は無かった。
――――そんな最悪な状況の中、学校が合併された。
休校期間は終了。半強制的にいつもの退屈な日常へと逆戻り。
....。
出来た方が幸せかも知れない。
もはや後戻りは出来ない。
退屈だが危険のない牢獄と、刺激は強いがどう考えても命が短い....。
考えても嫌になるだけだやめよう。
俺は手に入れたんだ。
牢獄の鍵を、怠惰な自分への報復方法を。
━…━…━…━…━…
「それでは先生、教室に」
新しく合併された学校の教頭が先生を招く。
コツ、コツと音を立てるヒール。
日本の平均身長を超える高身長女性。
茶髪なのか黒髪なのか....赤髪にさえ見える不思議な髪質をした女性が入ってきた。
「この期に新しく入られた新任の【木村 奈恵】先生だ」
クラスメイトの誰かが「キムナエ先生」とつぶやきクラスに笑いが起こる。
ここもか....。と内心思う中、目の前に居るキムナエ先生の奇妙な【違和感】が気になって仕方がない。
記憶世界に浅入りした。
彼女の記憶世界が妙に狭いのだ。
それこそ何か【莫大な力で壁を作った】ような....。
仕方ない。
記憶世界に入り込む。
よく見ると壁に少しヒビが入っていた。
壁から光が漏れていたので覗いてみると、そこに俊介先生が居た。
「先生!何してんスか」
「....」
返事はない。
それもそうだ。
あの光は記憶光だ。
先生が喋るわけ.....待て。
なんでこの女の記憶に俊介先生が居るんだ?
あ~クソ。この壁邪魔だ。
手にハンマーを握り、壁を思いっきり叩く。
ヒビが少し大きくなったがビクともしない。
....仕方ないか。
両手を壁に向けて深く【改竄】する。
この壁になんの意味があるのかさえも分からない。
しかし....。
「何やってるの?」
!?
青い髪のショートボブ。
何処かミレイ・ノルヴァに似た服。
「貴方が何をやってるのかって聞いてるのよ」
「お前は....」
「貴方普通の人間みたいだけど、どうやってこの世界に入ったの?」
「....」
一方的に自分のペースで話すこの女....。
種族的には神なのだろう。俊介先生やミレイ・ノルヴァに似たような気迫を感じる。
「俺の能力で入りました。壁の向こうに居た俊介先生が気になって壁をとっぱらおうと....」
「貴方もしかして勝治?」
ドクリと鳴る鼓動。
心拍数が爆上がりした。
「なんで名前を....」
「あ~なるほどね。ほ~....。貴方があの」
青髪のその女性はこちらの目を調べるように伺って来る。
その曇一つ無い綺麗な瞳に、思わず目を逸らしてしまった。
「私はニーナ・ノルヴァ【記憶を司る女神】よ」
「記憶を....?」
「そう。記憶」
「私の専門は記憶なんだけど、まさか私の能力を人間が使えるとは思わなかったわ」
何処か膨れた表情でそう言うニーナ・ノルヴァ。
「その壁は壊さない事をおすすめするわ。貴方の生存率を圧倒的に下げる事になる」
「どうして?」
「気になるなら壊してみなさい。触らぬ神に祟りなしってね」
パッと消えて目の前0距離で出現したニーナ・ノルヴァは額に一つデコピンを入れて消えていった。
「一体なんだったんだ....」
壁を壊すな?でも気になるなら壊せ?
もはや暴力だ。
理不尽以外の何者でもない。
この先生と俊介先生との関係性も気になるが、それを壁で隔ててる理由がもっと気になる。
奇妙なのはこの壁が自分で作ったものに見えないことだ。
精神が歪んだ人間は極たまに記憶を壁で隔てる事があるが、だとしたら壁が綺麗すぎる。
セメントを流し込んだような壁....。
しかも何かの強い念が壁を壊そうとしている。
こんな奇妙な記憶世界は初めてだ。
生存確率を下げる....?
あの不穏すぎる発言も気になるが、もはや生存率なんて関係ない領域に来ている俺にとって取るべき選択は一つしかない。
壁を...消す。
▼□▲▽■※▼□▲▽■※
!!?
追い出された。
記憶世界から突然追い出された。
「じゃぁ奈恵先生よろしくお願いします」
「....先生?」
「あっ!はい。よろしくお願いします」
何処か虚ろな目をしていた奈恵先生の目にハイライトが戻り、教頭は教室を後にした。
学校が準備中というだけあってこの日は午前で下校だったのだが、奈恵先生の正体は結局つかめずじまいだった。
しかし知れば知るほど奇妙だ。
あんな綺麗な壁を見たのも初めてだし、記憶世界から追い出されたのも初めてだ....。
季子から仮面を奪った時も物凄い向かい風に追い出されそうになったが、そんな風を感じるまもなく追い出された....。
木村 奈恵....。
一体何者なんだ。
死者こそ復活しないが、今回のこの事件で騒がれる事はまずないだろう。
神の能力は本当に恐ろしいと痛感させられた。
テラは兄の正体によるショックがジワジワと来ていたらしく、精神を壊してしまった。
完全な鬱症状だ。むしろ今まで良く頑張ったと思う。
自分の家族が連続殺人犯で、しかも何者かに精神を奪われているなんてそう簡単に耐えられる話じゃない。
季子に関しても傷が癒えなかったらしく、未だに植物状態だ。
先生が身体的な傷は全て治したが、それでも精神にガッポリと空いた傷が癒える事は無かった。
――――そんな最悪な状況の中、学校が合併された。
休校期間は終了。半強制的にいつもの退屈な日常へと逆戻り。
....。
出来た方が幸せかも知れない。
もはや後戻りは出来ない。
退屈だが危険のない牢獄と、刺激は強いがどう考えても命が短い....。
考えても嫌になるだけだやめよう。
俺は手に入れたんだ。
牢獄の鍵を、怠惰な自分への報復方法を。
━…━…━…━…━…
「それでは先生、教室に」
新しく合併された学校の教頭が先生を招く。
コツ、コツと音を立てるヒール。
日本の平均身長を超える高身長女性。
茶髪なのか黒髪なのか....赤髪にさえ見える不思議な髪質をした女性が入ってきた。
「この期に新しく入られた新任の【木村 奈恵】先生だ」
クラスメイトの誰かが「キムナエ先生」とつぶやきクラスに笑いが起こる。
ここもか....。と内心思う中、目の前に居るキムナエ先生の奇妙な【違和感】が気になって仕方がない。
記憶世界に浅入りした。
彼女の記憶世界が妙に狭いのだ。
それこそ何か【莫大な力で壁を作った】ような....。
仕方ない。
記憶世界に入り込む。
よく見ると壁に少しヒビが入っていた。
壁から光が漏れていたので覗いてみると、そこに俊介先生が居た。
「先生!何してんスか」
「....」
返事はない。
それもそうだ。
あの光は記憶光だ。
先生が喋るわけ.....待て。
なんでこの女の記憶に俊介先生が居るんだ?
あ~クソ。この壁邪魔だ。
手にハンマーを握り、壁を思いっきり叩く。
ヒビが少し大きくなったがビクともしない。
....仕方ないか。
両手を壁に向けて深く【改竄】する。
この壁になんの意味があるのかさえも分からない。
しかし....。
「何やってるの?」
!?
青い髪のショートボブ。
何処かミレイ・ノルヴァに似た服。
「貴方が何をやってるのかって聞いてるのよ」
「お前は....」
「貴方普通の人間みたいだけど、どうやってこの世界に入ったの?」
「....」
一方的に自分のペースで話すこの女....。
種族的には神なのだろう。俊介先生やミレイ・ノルヴァに似たような気迫を感じる。
「俺の能力で入りました。壁の向こうに居た俊介先生が気になって壁をとっぱらおうと....」
「貴方もしかして勝治?」
ドクリと鳴る鼓動。
心拍数が爆上がりした。
「なんで名前を....」
「あ~なるほどね。ほ~....。貴方があの」
青髪のその女性はこちらの目を調べるように伺って来る。
その曇一つ無い綺麗な瞳に、思わず目を逸らしてしまった。
「私はニーナ・ノルヴァ【記憶を司る女神】よ」
「記憶を....?」
「そう。記憶」
「私の専門は記憶なんだけど、まさか私の能力を人間が使えるとは思わなかったわ」
何処か膨れた表情でそう言うニーナ・ノルヴァ。
「その壁は壊さない事をおすすめするわ。貴方の生存率を圧倒的に下げる事になる」
「どうして?」
「気になるなら壊してみなさい。触らぬ神に祟りなしってね」
パッと消えて目の前0距離で出現したニーナ・ノルヴァは額に一つデコピンを入れて消えていった。
「一体なんだったんだ....」
壁を壊すな?でも気になるなら壊せ?
もはや暴力だ。
理不尽以外の何者でもない。
この先生と俊介先生との関係性も気になるが、それを壁で隔ててる理由がもっと気になる。
奇妙なのはこの壁が自分で作ったものに見えないことだ。
精神が歪んだ人間は極たまに記憶を壁で隔てる事があるが、だとしたら壁が綺麗すぎる。
セメントを流し込んだような壁....。
しかも何かの強い念が壁を壊そうとしている。
こんな奇妙な記憶世界は初めてだ。
生存確率を下げる....?
あの不穏すぎる発言も気になるが、もはや生存率なんて関係ない領域に来ている俺にとって取るべき選択は一つしかない。
壁を...消す。
▼□▲▽■※▼□▲▽■※
!!?
追い出された。
記憶世界から突然追い出された。
「じゃぁ奈恵先生よろしくお願いします」
「....先生?」
「あっ!はい。よろしくお願いします」
何処か虚ろな目をしていた奈恵先生の目にハイライトが戻り、教頭は教室を後にした。
学校が準備中というだけあってこの日は午前で下校だったのだが、奈恵先生の正体は結局つかめずじまいだった。
しかし知れば知るほど奇妙だ。
あんな綺麗な壁を見たのも初めてだし、記憶世界から追い出されたのも初めてだ....。
季子から仮面を奪った時も物凄い向かい風に追い出されそうになったが、そんな風を感じるまもなく追い出された....。
木村 奈恵....。
一体何者なんだ。
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