記憶改竄的現世界物語

さも_samo

第16話:ジェミニの仮面

「ハァ....はぁ....」

やっとの事で気持ちの整理がついた。
胃の痛みは依然消えない。

しかしこの状況....。

どう考えても『ジェミニの仮面』が原因だ。

ミレイ・ノルヴァがあの男を消した時に残ったあの仮面が消えている。

その仮面を誰かが【付けた】としたら....。

思いつく限り最悪の可能性。
この血みどろパーティの主催者を止めに行かないと....。

でもどうやって?

仮面を誰が付けたかすら分からないこの状況で、何が出来るのだろうか。
犯人を探す事?
殺されに行くこと?

待て、困惑するな。

こんなハチャメチャな状況で最適解を見つけるのに重要なことは他でもない、【冷静でいる事】だ。

地面に目を落とすと、そこにはテラが男に仕掛けたトラップがあった。
トラップの要。金槌。

武器を探すところから始めないと....なんて思っていたがそんな必要は無かった。
そうだよ、足元に落ちてるじゃないか。

灯台下暗しと言う言葉を痛感しながら、地面の金槌を拾い上げる。

何処からか闘士が湧いてきた。

バキッ.....。と大きな音が鳴る。
その音の正体、あぁ。考えるだけで嫌になる。

犯人はまだ近くに居た。

俺等がバーミアの世界から帰ってくると見越して待ってやがった。

ならその狙いにハマってやろう。

ただいまだ。犯人!

ドアを抜け生首転がる地獄道をただひたすら走る。
死体を見ないように上を向きながら、一目散に逃げるように走る。

音の鳴った方へ....音の鳴った方へ....。

グシャリグシャリと内蔵を踏む音が聞こえる。
足から伝わる妙に柔らかくて気持ち悪い感覚。

あぁ、クソ。
どうして俺がこんな目に....。

階段を走りながら音の鳴る方へ近づいて行くと、次第に最上階に付いた。

ここに来るまでに俺は何人の死体を見たのだろう。
反吐が再び喉までこみ上げて来ている。

ゴクリ――――

苦い。最高に苦い。
舌に反吐が触ってないのに苦いと分かるこの感覚。

ドアの向こうで乱闘が起きているのだろう。
かなりの音が外に漏れている。

バァン。と大きな音を立ててドアを蹴り開ける。

そこには仮面を付けた....女?が男の首元を掴んで空中に浮かせている場面があった。

「お兄様!?」

テラが思わず声を上げる。

仮面を使えた女がこちらをクルリと向く。
ニタァ....とねっとりした笑いを見せる仮面。

笑う仮面だなんてなんと非現実的な....。

気色悪いにも程がああるその光景に、気付いたら体が勝手に動いていた。
金槌を持つ右手に力が入る。

助走を付けて仮面の女に飛びかかる。

金槌をこれでもかと言わんばかりの勢いで振り下ろした。

ゴスッ、と言う鈍い音とその感覚が自分に伝わるまでの数秒。

この女、腕で金槌を受け止めやがった。
骨折じゃ済まないだろうに....怯む様子一つ見せずに、止めた。

呆気に取られて居ると、地面に着地する前に横腹に蹴りが入った。

込み上げていた反吐が出るのと同時に、俺は後ろに吹っ飛ばされた。
女....いや、もはや人間の筋力じゃない。

涙目になりながらも女の方を見る。
首を絞める握力が強くなり、男の首はすっ飛んだ。

「お兄様ああああああああああああ!」

テラが目を見開いて恐怖している。
季子がパッとテラの目を塞いだが、テラはその季子の手を払った。

「テラ!落ち着いて」

頭を抱えて膝から崩れ落ちるテラ。
これが子供に出来る表情か?と思うほどに鬼気迫る顔で仮面の女を睨むテラ。

この場にいる全員が女にその視線を向けた。
その視線を感じたのか、仮面はますます笑った。

殺気と恨みと恐怖が混ざった複雑な視線に対してのこの【笑い】。
あの仮面はまさしく【狂気】そのものだった。

腹の痛みが引くのと同時に、記憶の改竄が出来ないとちっとも役に立たない自分を呪った。

「【ロストブランク】」

ミレイ・ノルヴァが能力を唱えたが、何も起こらなかった。

何故?と言いたげな顔をしているミレイ・ノルヴァの背後に俊介が立つ。

「ミレイ、あれはパラメーターとして存在してないんだ」

「どういう事?」

「最初っから【0】なんだよ、あの仮面は」

「じゃぁ一体どうして見えてる訳?」

「さぁな、でも証明なら出来る」

俊介が胸ポケットからメモ帳を取り出す。
紙を一枚破った。

「【ウッドソード】」

俊介がそう唱えると同時に紙はくないの様なモノになった。

ヒュゥン――――と風を切りながら進むくないは、グサリと女の額に刺さった。
額から大量の血が噴き出す。

「ほらな?」

女は額に刺さったくないを抜くと、俊介に向かって猛スピードで投げた。
パシッと指でしないを弾く俊介。

その化物じみた身体能力にも、やはりどこか【恐怖】を覚えた。

「確かに存在しているけど存在していない仮面....」

「まさかこんな形で遺品を見つける事になるとはな」

「え?」

「分からないか?このレプリカ仮面じゃない【本物】の仮面がシュンの遺品って事さ」

「レプリカ仮面?」

「これは本物の仮面が作ってる【レプリカ】。だんだんジェミニの事も分かってきたよ」

正直サッパリだ。
俊介がこうもあっさりジェミニの事を飲み込めるのも。

この緊迫した状況下で無駄話できることも....。

「さ、本物の仮面の在り処を教えてもらうか」


俊介が女に向けて右手を向ける。


「【ウッドソード】」

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