記憶改竄的現世界物語
第7話:生きる牢獄、生きる楽園。
「この犯人本当に何者なんだろうな、コイツ【戦闘慣れ】してやがるぞ」
俊介がマジの顔で話す。
戦闘慣れ....?それは異能力者との戦闘慣れということなのだろうか?
「発信機だよ。あの仮面には発信機が取り付けられていた」
「犯人は自分を見つけるには予知か具現化能力が必要って計算していたんだろうな。自分の仮面に発信機をつけてやがった」
「一応気付いたからすぐに破壊したけど、多分信号は向こうに送られている。まいったねこりゃ」
まいったねって....。
季子の身震いは依然収まる気配を見せない。
よほど深くトラウマを踏んだのだろう。
今にも泣きそうな表情をしている。
ポンッと一つ背中を叩いてやった。
上の空になっていた目にハイライトが戻る。
「大丈夫か?」
「え、えぇ」
「んで俊介。これからどうするつもりなんだ?俺等の事がバレたって事は最悪の場合【追っ手】が俺等を殺しにやって来るって事だろ?」
「そうなるな」
なんとまぁ無責任な....と怒り一つ入れてやりたい気分だったが、俊介の表情から余裕の笑みが消えていないのを見て、何か策があるのだろうと思った。
「まぁ追っ手が来るならそれはそれで【好都合】だ。なにせ相手を【探す手間】が省けるんだからな」
「暗殺でもされたらどうすんだよ」
「そん時はそん時さ。殺される覚悟がないなら犯人捜しはやめた方がいい」
策があっても、それはあくまで【自身の為の】策らしい。
まぁしかし、自分と同じ異能力者にポンポン出会い、その能力者の一人が別の能力者を殺すために手を貸せって言っているんだ。
命が惜しく無い訳ではないが、かと言って惜しんで蹉跌するわけにもいかない。
俺は【覚悟を決めなければ】ならないようだ。
「あーもう分かったよ....」
━…━…━…━…
Barでのハチャメチャな会話が終わった後、俺は家に帰ることにした。
季子と別れ、考え事に耽っていた。
瞬間、世界から色が消える。
何事かと思って後ろを振り返っても誰も居ない。
あの話をした後、いきなりの追っ手か?と警戒態勢を取る。
視線を前に戻すと、そこには一人の女性が居た。
「うわっ!?」
思わず声を出してしまった。
銀髪ロング、ピンクに近い紫色の美しい瞳。
そして冷たく凍ったこの眼光。
この圧迫感は....俊介と同じ種族か?
「初めまして勝治」
声が出ない。
脅された時に近い、そんな感覚。
「私はミレイ・ノルヴァ....。【時と運命を司る女神】」
女神、やはり俊介と同じタイプの....。
「貴方俊介の事は知ってるのよね?なら話が早いわ。私は俊介の....なんなんでしょうね?」
「まぁ関係者とでも思って。今日は貴方に【警告】しに来たの」
警告....?
「貴方が季子に協力したのは正直失敗だったと思うわ。だからこその警告。犯人を探すなら自分の命を最優先に考えなさい。人の命を救うのが先だなんて言って自分のコトから目を逸らすのは絶対にダメ。きっと自分の命だけじゃなく大切な人の命まで奪うことになるわ」
「それは一体...」
再び世界から色が消え、瞬き程の一瞬で色彩が取り戻されると、もう目の前にミレイ・ノルヴァと名乗った女神は居なかった。
やっと声が出たと思った瞬間の出来事。
俊介の関係者、【時と運命を司る女神】。警告。
色々な情報が頭の中を一度に行ったり来たりする。
季子ならこの程度の情報処理パパパッと済ませてしまうのだろうが、常人かそれ以下の俺にとってそれは地獄以外のナニモノでもない。
俊介....本当に何者なんだ。
まぁ少なくとも追っ手ではなかった様だが、警戒するに越した事は無いなと改めて思い知らされた。
なにせ相手は【異能力者】なのだから。
o0O○O0o0O○O0o0O○O0
その後特に劇的と言える変化は起こらず、俺は無事に家に到着し、そして何の問題も無くこうして朝を迎えた訳だが....。
「なんでお前が居る訳?」
「ん?朝だから起こしてあげようと思って」
目の前で俺のスマホをいじる季子。
「パスコードはどうしたんだよ」
「解いた」
「解いた!!?」
季子から発せられたその一言で、寝起き特有の眠気が一気に吹っ飛んだ。
4ケタのパスコード。
普通に考えて10000通りあるその数字をどうやって導き出し....いや、もう気にしたら負けなのだろう。
行動力においても頭脳においても、コイツに【常識】は通用しない。
てか待て、俺のスマホが弄られてるって事は....。
「お前写真フォルダ弄ってねぇよな....?」
「え?これの事」
があああああああああああああ。
見られた....。見られてしまった....。
家族にすら見せたことのない、それを....。
コイツは...コイツは!
「今すぐ改竄してやる!さっさとそのハイド解除しろおおおおおおおお!」
「いいじゃない、別に悪くないと思うよ?」
見られては行けなかった...。
「この【ポエム】」
そう、一昔前に書いていたポエムノートをそのまま写真に撮って削除するのを忘れていた。
引越しをした際にノートを捨てる事になったのだが、妙に思い入れがあったからいずれ消せばいいやと思って写真に残しておいたのだ。
まさかこうやって掘り起こされるとは思わなかった....。
もう....追っ手でもなんでもいいから俺を殺してくれ....。
「特にこの【月明かりに照らされた君を、ただずっと見て居たい。】なんて、王道的で面白いじゃない」
「声に出して読むなああああああああああ」
「あの....すんません。マジで勘弁してもらえませんか」
今までに無い綺麗な笑顔でニコリと笑う季子。
この鬼畜めが....。
「んで?どうやって俺の部屋に入ったんだ?」
「ん」
そう言って窓に指を指す季子。
見ると窓の鍵が空いて....って待て。
「ここ2階だぞ?」
「ん」
再びベランダの窓を指差す季子。
気になってベランダから外を見るとあら不思議、ハシゴがかけられているではありませんか!
「てめぇ!マジでふざけんな!」
折りたたみ式のハシゴを急いで回収して、ベランダに置く。
窓の鍵を締めた。
罪悪感一つ感じないケロリとした表情を見せる季子。
その清々しいまでの顔に、溜まった怒りも何処かに行った。
あぁ、なる程。親無しに自立して育つとこうなるのか....と内心哀れみの感情さえ浮かんだ。
「んで?朝っぱらから【ハイド】使って音すら立てずに家に不法侵入した目的は?」
「不安だから一緒に登校しようと思って」
あぁ、そうか。
そう言うセリフはときめくシチュエーションで言って欲しいもんだ。
「インターフォンってご存知?」
「ご存知」
「次からはそれを使ってくださいね」
こうして俺の退屈な【生きる牢獄】だった日常は、騒がしい日常へと【変化する】。
俊介がマジの顔で話す。
戦闘慣れ....?それは異能力者との戦闘慣れということなのだろうか?
「発信機だよ。あの仮面には発信機が取り付けられていた」
「犯人は自分を見つけるには予知か具現化能力が必要って計算していたんだろうな。自分の仮面に発信機をつけてやがった」
「一応気付いたからすぐに破壊したけど、多分信号は向こうに送られている。まいったねこりゃ」
まいったねって....。
季子の身震いは依然収まる気配を見せない。
よほど深くトラウマを踏んだのだろう。
今にも泣きそうな表情をしている。
ポンッと一つ背中を叩いてやった。
上の空になっていた目にハイライトが戻る。
「大丈夫か?」
「え、えぇ」
「んで俊介。これからどうするつもりなんだ?俺等の事がバレたって事は最悪の場合【追っ手】が俺等を殺しにやって来るって事だろ?」
「そうなるな」
なんとまぁ無責任な....と怒り一つ入れてやりたい気分だったが、俊介の表情から余裕の笑みが消えていないのを見て、何か策があるのだろうと思った。
「まぁ追っ手が来るならそれはそれで【好都合】だ。なにせ相手を【探す手間】が省けるんだからな」
「暗殺でもされたらどうすんだよ」
「そん時はそん時さ。殺される覚悟がないなら犯人捜しはやめた方がいい」
策があっても、それはあくまで【自身の為の】策らしい。
まぁしかし、自分と同じ異能力者にポンポン出会い、その能力者の一人が別の能力者を殺すために手を貸せって言っているんだ。
命が惜しく無い訳ではないが、かと言って惜しんで蹉跌するわけにもいかない。
俺は【覚悟を決めなければ】ならないようだ。
「あーもう分かったよ....」
━…━…━…━…
Barでのハチャメチャな会話が終わった後、俺は家に帰ることにした。
季子と別れ、考え事に耽っていた。
瞬間、世界から色が消える。
何事かと思って後ろを振り返っても誰も居ない。
あの話をした後、いきなりの追っ手か?と警戒態勢を取る。
視線を前に戻すと、そこには一人の女性が居た。
「うわっ!?」
思わず声を出してしまった。
銀髪ロング、ピンクに近い紫色の美しい瞳。
そして冷たく凍ったこの眼光。
この圧迫感は....俊介と同じ種族か?
「初めまして勝治」
声が出ない。
脅された時に近い、そんな感覚。
「私はミレイ・ノルヴァ....。【時と運命を司る女神】」
女神、やはり俊介と同じタイプの....。
「貴方俊介の事は知ってるのよね?なら話が早いわ。私は俊介の....なんなんでしょうね?」
「まぁ関係者とでも思って。今日は貴方に【警告】しに来たの」
警告....?
「貴方が季子に協力したのは正直失敗だったと思うわ。だからこその警告。犯人を探すなら自分の命を最優先に考えなさい。人の命を救うのが先だなんて言って自分のコトから目を逸らすのは絶対にダメ。きっと自分の命だけじゃなく大切な人の命まで奪うことになるわ」
「それは一体...」
再び世界から色が消え、瞬き程の一瞬で色彩が取り戻されると、もう目の前にミレイ・ノルヴァと名乗った女神は居なかった。
やっと声が出たと思った瞬間の出来事。
俊介の関係者、【時と運命を司る女神】。警告。
色々な情報が頭の中を一度に行ったり来たりする。
季子ならこの程度の情報処理パパパッと済ませてしまうのだろうが、常人かそれ以下の俺にとってそれは地獄以外のナニモノでもない。
俊介....本当に何者なんだ。
まぁ少なくとも追っ手ではなかった様だが、警戒するに越した事は無いなと改めて思い知らされた。
なにせ相手は【異能力者】なのだから。
o0O○O0o0O○O0o0O○O0
その後特に劇的と言える変化は起こらず、俺は無事に家に到着し、そして何の問題も無くこうして朝を迎えた訳だが....。
「なんでお前が居る訳?」
「ん?朝だから起こしてあげようと思って」
目の前で俺のスマホをいじる季子。
「パスコードはどうしたんだよ」
「解いた」
「解いた!!?」
季子から発せられたその一言で、寝起き特有の眠気が一気に吹っ飛んだ。
4ケタのパスコード。
普通に考えて10000通りあるその数字をどうやって導き出し....いや、もう気にしたら負けなのだろう。
行動力においても頭脳においても、コイツに【常識】は通用しない。
てか待て、俺のスマホが弄られてるって事は....。
「お前写真フォルダ弄ってねぇよな....?」
「え?これの事」
があああああああああああああ。
見られた....。見られてしまった....。
家族にすら見せたことのない、それを....。
コイツは...コイツは!
「今すぐ改竄してやる!さっさとそのハイド解除しろおおおおおおおお!」
「いいじゃない、別に悪くないと思うよ?」
見られては行けなかった...。
「この【ポエム】」
そう、一昔前に書いていたポエムノートをそのまま写真に撮って削除するのを忘れていた。
引越しをした際にノートを捨てる事になったのだが、妙に思い入れがあったからいずれ消せばいいやと思って写真に残しておいたのだ。
まさかこうやって掘り起こされるとは思わなかった....。
もう....追っ手でもなんでもいいから俺を殺してくれ....。
「特にこの【月明かりに照らされた君を、ただずっと見て居たい。】なんて、王道的で面白いじゃない」
「声に出して読むなああああああああああ」
「あの....すんません。マジで勘弁してもらえませんか」
今までに無い綺麗な笑顔でニコリと笑う季子。
この鬼畜めが....。
「んで?どうやって俺の部屋に入ったんだ?」
「ん」
そう言って窓に指を指す季子。
見ると窓の鍵が空いて....って待て。
「ここ2階だぞ?」
「ん」
再びベランダの窓を指差す季子。
気になってベランダから外を見るとあら不思議、ハシゴがかけられているではありませんか!
「てめぇ!マジでふざけんな!」
折りたたみ式のハシゴを急いで回収して、ベランダに置く。
窓の鍵を締めた。
罪悪感一つ感じないケロリとした表情を見せる季子。
その清々しいまでの顔に、溜まった怒りも何処かに行った。
あぁ、なる程。親無しに自立して育つとこうなるのか....と内心哀れみの感情さえ浮かんだ。
「んで?朝っぱらから【ハイド】使って音すら立てずに家に不法侵入した目的は?」
「不安だから一緒に登校しようと思って」
あぁ、そうか。
そう言うセリフはときめくシチュエーションで言って欲しいもんだ。
「インターフォンってご存知?」
「ご存知」
「次からはそれを使ってくださいね」
こうして俺の退屈な【生きる牢獄】だった日常は、騒がしい日常へと【変化する】。
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