記憶改竄的現世界物語

さも_samo

第6話:巧妙な罠

先生の目はいつにも無くキラキラしていた。

季子が理解できないと言わんばかりの表情を見せている。
なる程。季子は先生の事を全く知らないのか....。

「訳あって季子の両親殺しの犯人を探してるんです」

季子がキッとした表情でこちらを睨む。
内密にして欲しかったのだろうか?

「大丈夫、俊介先生は信頼できるから」

「学校外じゃ俊介でいいよ。先生って呼ばれ慣れてなかったもんだから違和感がね」

先生....いや俊介は頭を掻きながら俺にそう言った。

「俊介は何者なんです?」

「僕かい?僕は【万物を司る神】だよ」

「万物の...なんですって?」

「季子も同じ反応するんだな....」

「そりゃみんなしますよ」

ハハハと乾いた笑いを見せる俊介。

「僕は万物を司る神。言ってしまえば【神様】さ」

季子の頭の中に?が浮かんでいるのが見て取れた。
俺が俊介の事をあっさり飲み込めたのは単に俺がバカだからなのだろうか?

だったら虚しい話だ。

「そうだねぇ....」

【ウッドソード】

先生がそう言うと、カウンターの椅子がカタカタと動き出した。

動き出した椅子が地面にドロリと溶け出す。

溶けた液体が一つの仮面を作り出した。

「店の中で能力使うなっていつも言ってるだろうが....」

「いいじゃねぇか、減るもんじゃないし」

「あのなぁ....」

店の店主、確か馬場さんと言っただろうか。
馬場さんが俊介にしかめっ面でそう話す。

どうやら馬場さんも俊介の事を色々知っているようだ。

視線を左に戻すと、そこにはガタガタ震えている季子がいた。

「おっと、ごめん。トラウマ踏ませちゃったかな」

「なんで、コレの事を...知ってるんですか....?」

「僕も異能力持ちでね、物体を別のものに変化させたり能力を付与できたりするんだ」

「さっき溶かした液体は【予言液】さ。欲しいものを数分間具現化してくれる液体」

俊介が仮面に触れると、仮面はグシャッと音を立てて液体に戻った。

右胸ポケットから針を取り出して突然指に指す。
ポタ...ポタ...と垂れていく血に、俊介は再び【ウッドソード】を唱えた。

滴る血液の一つがビンの形になり、地面にコトッと落ちる。
液体に戻った仮面をビンで掬うと、どこから取り出したのかコルクで蓋を閉めた。

「これをキミにあげるよ季子。これはきっと君の役に立つ」

季子は依然苦い顔をしていたが、その液体の入ったビンはちゃんと受け取った。

「欲しいものを具現化してくれるって、さっき何を思ったんっすか?」

「【季子の両親殺しの犯人】だよ」

「生命体は流石に具現化できないからね、それに一番深く関係するものが具現化したって訳」

「説明し忘れていたけど。具現化してるとは言え液体は液体だから、武器とかに変化しても触った時点で崩れちゃうんだ。気を付けてね」

俊介はニコニコしながらそう言った。
季子の両親殺しの犯人....それに一番関係するのがさっきの仮面....?

季子の記憶は依然【ハイド】で隠されていて見れない。

一体どんなトラウマを踏んだと言うんだ....?

両親殺し....犯人。恐らくだがさっきの仮面はその犯人が犯行時に付けていた仮面なのだろう。

掬い残した液体がボフッと音を立てて椅子に戻った。
もうこの空間に物理法則なんてものは存在しないのだろう。

そんなカオスな状況に、俺は【慣れ】始めている。

「さぁ、本題に戻ろうか」

俊介の表情が【マジ】になる。

「君達は季子の両親殺しの犯人を調べてるんだったね....さっきの仮面は犯行当時犯人が付けていたモノで間違い無いかい?」

「え、えぇ」

季子が俊介を信用しきってないのか、まだ妙にたどたどしい。
俺の時もそうだったが、会っていきなりトラウマを掘り返す行為は信用をガタッと落とす気がする。

まぁそれが俊介のやり方だというのだから手は出せないのだが....。

「なら犯人は組織だろうね。個人でやるなら覆面とかがメインなんだが、あえて自身をアピールする仮面だなんて何か【組織的権力】を示そうとしているとしか思えない」

「あ、あの」

「ん?どうしたんだい?」

「私の両親殺しは誰にも認識されてないんです」

「だから私は犯人が【異能力者】だと思っているんですけど、そんな能力者が自身の存在をアピールするって....一体誰にアピールしてるんですか?」

俊介は数秒間考える様な動作を取った。

「組織で動く犯罪者が快楽で殺人を犯すケースはかなり珍しい」

「だから快楽殺人では無いと仮定しよう。そうしたら一体犯人はなぜ犯行に及んだんだろうか?」

「答えはもうさっき言ったばっかりだ」

「【権力】を示したかったんだよ、君のご両親を【殺すこと】でね」

季子が身震いしたのを見て取れた。

「権力を示したかった相手が誰かは分からない。ただ、僕等の存在が向こうにバレたのは確かだよ」

「「え?」」

俊介は季子の持っているビンを指さした。

季子の顔が一気に青ざめる。

一体どう言う事だ....?

━…━…━…

車の音がコンクリートジャングルに反射して騒音が街を襲う。

帰宅ラッシュ。

黒い車。
高そうな黒塗りの車が通る。

タッ...タッ...ダン!

大きな音共に車に一人の人間がぶつかった。

当たり屋だ。

当たり屋は地面に着地すると同時に、大げさに痛がってみせた。
その場に膝から倒れこむ当たり屋。

ブゥーン――――

そんな当たり屋をものともせず、車は発進した。

パァーン。。。

爆音の破裂音と共に当たり屋に物凄い速度で追突した車。
血の雨が降り注ぐ。

辺りにいた住民が悲鳴を上げた。

╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬╬

帰宅ラッシュ。

車の音がコンクリートジャングルに反射して騒音が街を襲う。

特にこれと言った変化もなく、日々は流れていく。

車から傷は無くなっていた。
跳ね飛ばしたはずの死体も無かった。

「ハハ、まさかこんなに早く見つかるとはねぇ....」

電話越しに聞こえる機械音。

なんの変化も無い日常は、静かにゆっくりと進んでいく――――

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