記憶改竄的現世界物語

さも_samo

第3話:生きる目的

美和子にガバッと肩を掴まれ、彼女の恐ろしい表情が俺を貫く。

地面からニュルリとまた一つ人影が生える。

一つ、また一つと量産されていく美和子がこちらに近づいてくる。

「この人殺し」

「この人殺し」

「「人殺し!」」

無数の人殺しコールが飛び交う。

俺は....俺は。

「やめてくれええええええええええええええ」

そう叫ぶと同時に、無数の美和子は足から燃えていった。
ぎゃぁぁと言う悲痛な叫びと共に灰と化していく美和子。

「ここは君のイメージ世界だ。全部君の思った通りに動く....。」

「つまり勝治。お前は彼女に【消えてくれ】と願った」

先生....いや、俊介は狂気に似た笑顔でこちらを睨む。
この顔が心に刻まれていく。

俊介の姿がだんだん大きくなって行く。

「お前の生きる目的は本当に罪滅しなのか?」

そう言いながら俊介は右手をクルリと一回転させる。
するとどこからか風が発生し、灰は宙に舞い上がった。

【ウッドソード】

俊介が再びそう唱えると、その灰は額縁を形作った。

俺の手元にその額縁が落ちて来る。

絵はない。

白紙。

そんな状態の額縁に、宙に舞っていた残りの灰が槍のように突き刺さる。
全ての灰が額縁の中に収まると、さっきまで白紙だったはずの額縁に絵が出来上がっていた。

顔に涙を浮かばせ、ここから出してと言わんばかりにドンドンとこちらを叩く女の絵。

美和子の....絵。

「何が言いたい....?」

「君の生きる目的は別。単純に【死ぬのが怖いから】生きてるだけだって事さ」

フッ――――

俺のなかで何かが切られた。
もはや理性なんてものは吹っ飛んでいた。

大きな地震が起こる。
気付くと辺りは森に変わって、木々にはナイフが生えていた。

ナイフの実が磁石のように俊介に引き寄せられる。

ヒュン、ヒュンと音を立てながらナイフが飛び交い、俊介は手刀でそれを叩き落としていた。

カンカンと鋭い金属音が響く。

「おいおい、図星を突かれて今度は逆ギレか?」

「俺は....俺は....」

もはや無意識だった。
イメージ世界と言う単語だけが頭をよぎり、後は体が勝手に攻撃してくれていた。

何も考えられない真っ白な頭の中、耳に一つの音が響いた。

カツン――――

額縁が地面に落ちた音。
その音を聞いて、大きくなっていく地震がピタリとやんだ。
視線を下に落とす。

額縁には依然美和子が泣き顔でこちらに何かを訴える絵が描かれていた。

真っ白な頭の中に、本心が文字として書き起される。

【ワルイカ...ワルイノカ?】

【スキニイキテ、イキタイカライキテ】

【イキタイ イキタイ イキタイ】


【シニタクナイ】


ナイフが全て叩き落とされ、静寂が訪れた。
俊介は依然余裕の表情でこちらを見る。

「なぁ....先生。俺って何で生きてるんだろな?」

「人を殺しといてよぉ、消えてくれだってさ....。笑っちまうよ、ホント」

俊介は何かを考える様な仕草を取った。

「今の君...自分自身を客観的に見てみるんだ勝治。今の君は君自身にどう映っているんだい?」

「【怠惰】さ。救えないほどに」


俺がそう言うと、俊介はニッコリと笑った。


「そうかそうか。それはよかった」

ハハハと笑い出す俊介。

「え?」

「怠惰....。いいねそれ」

「は?....え?」

ペースを崩された。

やっと思考を再開した脳が再び思考を停止した。

「君には神になる素質がある。どうだい?【殺神試練さつじんしれん】を受けてみる気はないか?」

「殺人試練....?」

「ん?違う違う。殺人じゃなくて【殺神】」

俊介の後ろに【殺】と【神】の二文字が浮かび上がった。

殺神試練....?

「さっきも言った通り僕は【万物を司る神】だ。でも天界ってのは本当に腐っててね....」

「他の神はみんな保身に走ってばっかり....。まぁ仕方ないっちゃ仕方ないんだけどね....」

「単刀直入に言おう。僕は【側近】が欲しいんだ」

「側近....?」

俊介の表情から嘘の感情は見えなかった。

幼児のような、あどけない笑顔で話す俊介。

「そう、側近」

「待って。先生は本当に....何者なんだ?」

「だから何度も言ってるだろ?僕は【万物を司る神】さ」

困惑....いや、もう一周回って納得してる。

つまり、彼の言いたいことをまとめればこういう事だ。

【神になって側近になってよ!】

うん。やはり理解出来ない。

「まぁ今すぐになれるって話でもないし、詳しい話はまた今度って事で。じゃ、これからよろしくね~」

「ちょっ....まだ何にも」


━…━…━…━…
気付くと学校は放課後を迎えていた。
皆が下校支度を始めている。

女子が俊介先生の話題をしていたのが耳に入った。

「ね~新任の先生マジやばくない~?」

「分かる~」

「教え方も上手いしね~」

「何よりイケメンって言うのがね~」

「「ね~」」

その会話を聞き、俊介先生がやって来たのが夢でないことを理解した。
ドンッと背中を叩かれる。

「どうした勝治!今日一日中ボーッとしてたじゃねぇか。まさかお前....」

「俊介先生に惚れたのか....?」

友人....と言っても記憶の改竄で友人になった男が引き気味で聞いてきた。

「ちげぇよ、ただ知り合いに似てるな~と思ってな。ただ誰だったか思い出せなかったもんだから」

ハハハと乾いた笑いを見せる友人。

━…━…━…━…
そんな友人と別れ、僕は下校路に付いた。

何の変哲もない退屈な下校路。
でも俺の頭の中は退屈なんて言葉が存在しない状態だった。

理解不能の現象の連続。
俊介先生の就任。

俺の生きる目的....。


ブウゥン――――


車が横切る。

突然車のエンジン音が消える。

疑問に思って振り返ると、そこにさっき横切った車は無かった。
随分早い速度で行ったんだな、と思って視線を元に戻すと、今度は学生バックが消えていた。

「うおっ!!?」

突然地面が円形に消えた。
落ちるかと思ったが、透明なガラス板の様な何かで支えられて落ちることは無かった。

こんな事が出来るのは....。

「随分動転するのね....。とても異能力持ちとは思えない慌てぶりだわ....」



「誰?」


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