史上最強の魔王様(俺)が勇者殿を倒すらしいです
2話
ここは魔王城の会議室。円卓のテーブルを囲むようにイスが5つ置いてあり、目の前の四つの空席を除いて、一つだけ大きい椅子に俺だけが座っている。
「魔王様! 聞いていますか?」
横で説明している女性をよそに俺は、テーブルに肘を立てながら、今日発売されるゲームについて考えていた。
「魔王様! いい加減にしてください」
ビシンッ! とリーノの叩いた鞭が、雷のように目の前で落ちた。
「ファッ⁉ あっすまん。もう一回だけ説明頼む」
いやあ、ついうっかり聞きぞびれてしまった。
「今日の転移勇者は6人。転生勇者は8人。過去最高の勇者移送の数です」
髪をぱさっと上げる彼女、名前はリーノと言う。魔王である俺の秘書だ。
金髪のロングの髪に、眉毛は全くと生えておらず、一見、ド田舎のヤンキーのような外見である。しかし、外見からは全くと感じ取れないが、堅気な性格だ。
「前例には全くない、一人の勇者が女神からのサポートアイテムによる攻略で、その勇者のレベリングが前代未聞の速さです。おまけにスキルハンターの称号を持っており、スキルの数も通常ではありえないレベルです。いくら”アイツら”に優遇されているとはいえ、ここまでとは……」
「今日は用事があるんだよなあ…… とにかく今倒すのは、その成長が早い勇者だけでいい?」
「そうですね。他はスライムすらも倒せないような勇者ですし…… いいでしょう今回は」
鼻くそをほじりながら俺は、今日の予定について考える。いちおう俺は、この世界と俺の元にいた世界を行き来することができる。とにかくゲリの開店時間にはあと2時間ってところか。そうなると4時間の猶予があるな。
「場所はアースラシア東地域のバセン村です。顔はこれを」
手渡されたのは一つの紙である。そこには倒すべき勇者の顔が描かれている。
「んじゃ行ってくるわ」
大きい椅子から重たい腰をあげ、テレポートの呪文を唱える。
「行ってらっしゃいませ魔王様」
なんで魔王自らが勇者の相手をするのかって、そりゃ俺にはリーノしか部下にいないからだ。
前までは部下はいたんだけどなあ。
まあ要するに俺には組織を動かすような才能は無かったということだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
何故、俺が魔王になってしまったのかを知りたいな。そんなことを思ってしまったそこの貴方。
どこから話せばいいのか…… とりあえずこの話は長くなるので、いずれ話すとしよう。
簡略に話すと、跡継ぎを求めていた前代魔王から、魔王の位を貰ったという感じだ。
バセン村に着いた。ポツンポツンとある家々をよそに、勇者の居場所を村の住人に聞くことにした。
「こんにちわ」
「魔王様ではないですか! おいみんな魔王様だ!」
歩いていた一人の好青年に声をかけると、俺を歓迎した。続々と村の人たちが俺を囲んでいく。
俺は異世界では、魔族には嫌われるものの、この村の住人には結構好かれている。
「魔王様! あの時はどうも」
「魔王様、ゆっくりしていってください」
「魔王様! 今日採れたてのヒューマの実です」
なぜこんなにも慕われているのかは、俺が魔王になってしまった話と関わりがあるため、同じ機会に話そうと思う。
「みなさんお元気そうで何よりです。今日は探している人がいて」
と言い、顔の描かれている紙をみんなに見せる。
「こやつは先ほど見ましたな」
一人の老人が、顎に手を当て答える。
「詳しく教えてもらえますか?」
「村の入り口の畑を手入れしていましたら、農道を北のヤンガー村に向けて歩いていましたぞ」
「ヤンガー村か…… 何か被害などはありましたか?」
「被害とは言えませんがなあ。村の受付嬢の若い娘が一人連れていかれましたぞ。よそ者は、何故ああも若い娘を虜にしてしまうんでしょうかねえ……」
真剣な顔で、連れていかれた娘の心配をしているのだろうか。
「私の娘なんです…… やめとけと言っても全くと話を聞かずに」
娘の母親らしい中年の女性が少々不機嫌な口調で答える。
「おそらく、この前回も言ったと思いますが、よそ者には若い女性を惚れさせる不思議な力があります。ただえさえ若い女性が少ない村で、こんなことが起こるのは、大変なことです」
俺は、ゆっくりとした口調で村の人たちに諭すように答える。
「そうなのか、あんなさえない男がモテるだなんて、やっぱりおかしいと思ったよ!」
村の若いハンサムな男性が怒鳴るように言う。
恐らく娘のことが好きなんだと思う。そうして彼は俺の手を握りしめると、願うようにこう続けた。
「どうか魔王様! ミサをお救いください」
間近で見ると、ハンサムな男性の体中に傷がある。どうにかして連れ去られた彼女を、勇者の魔の手から、助けようとした男性がここにいた。多分全くと歯が立たなかったのだろう。
それはそうだ。彼ら勇者には、普通の人には持っていないような絶大な力を、この異世界で召喚されたときに、神様から与えられるからだ。
そんなものはおかしい。
何も努力をしていないような男が、そんな力を得てしまう世界なんて。
俺はそんなものが許せなかった(俺が言えることではないが)。
「わかりました! 僕にお任せください!」
勇者が最終的に魔王を倒すなら、俺はすぐさま勇者を倒しに行こうと思うわけだ。
「魔王様! 聞いていますか?」
横で説明している女性をよそに俺は、テーブルに肘を立てながら、今日発売されるゲームについて考えていた。
「魔王様! いい加減にしてください」
ビシンッ! とリーノの叩いた鞭が、雷のように目の前で落ちた。
「ファッ⁉ あっすまん。もう一回だけ説明頼む」
いやあ、ついうっかり聞きぞびれてしまった。
「今日の転移勇者は6人。転生勇者は8人。過去最高の勇者移送の数です」
髪をぱさっと上げる彼女、名前はリーノと言う。魔王である俺の秘書だ。
金髪のロングの髪に、眉毛は全くと生えておらず、一見、ド田舎のヤンキーのような外見である。しかし、外見からは全くと感じ取れないが、堅気な性格だ。
「前例には全くない、一人の勇者が女神からのサポートアイテムによる攻略で、その勇者のレベリングが前代未聞の速さです。おまけにスキルハンターの称号を持っており、スキルの数も通常ではありえないレベルです。いくら”アイツら”に優遇されているとはいえ、ここまでとは……」
「今日は用事があるんだよなあ…… とにかく今倒すのは、その成長が早い勇者だけでいい?」
「そうですね。他はスライムすらも倒せないような勇者ですし…… いいでしょう今回は」
鼻くそをほじりながら俺は、今日の予定について考える。いちおう俺は、この世界と俺の元にいた世界を行き来することができる。とにかくゲリの開店時間にはあと2時間ってところか。そうなると4時間の猶予があるな。
「場所はアースラシア東地域のバセン村です。顔はこれを」
手渡されたのは一つの紙である。そこには倒すべき勇者の顔が描かれている。
「んじゃ行ってくるわ」
大きい椅子から重たい腰をあげ、テレポートの呪文を唱える。
「行ってらっしゃいませ魔王様」
なんで魔王自らが勇者の相手をするのかって、そりゃ俺にはリーノしか部下にいないからだ。
前までは部下はいたんだけどなあ。
まあ要するに俺には組織を動かすような才能は無かったということだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
何故、俺が魔王になってしまったのかを知りたいな。そんなことを思ってしまったそこの貴方。
どこから話せばいいのか…… とりあえずこの話は長くなるので、いずれ話すとしよう。
簡略に話すと、跡継ぎを求めていた前代魔王から、魔王の位を貰ったという感じだ。
バセン村に着いた。ポツンポツンとある家々をよそに、勇者の居場所を村の住人に聞くことにした。
「こんにちわ」
「魔王様ではないですか! おいみんな魔王様だ!」
歩いていた一人の好青年に声をかけると、俺を歓迎した。続々と村の人たちが俺を囲んでいく。
俺は異世界では、魔族には嫌われるものの、この村の住人には結構好かれている。
「魔王様! あの時はどうも」
「魔王様、ゆっくりしていってください」
「魔王様! 今日採れたてのヒューマの実です」
なぜこんなにも慕われているのかは、俺が魔王になってしまった話と関わりがあるため、同じ機会に話そうと思う。
「みなさんお元気そうで何よりです。今日は探している人がいて」
と言い、顔の描かれている紙をみんなに見せる。
「こやつは先ほど見ましたな」
一人の老人が、顎に手を当て答える。
「詳しく教えてもらえますか?」
「村の入り口の畑を手入れしていましたら、農道を北のヤンガー村に向けて歩いていましたぞ」
「ヤンガー村か…… 何か被害などはありましたか?」
「被害とは言えませんがなあ。村の受付嬢の若い娘が一人連れていかれましたぞ。よそ者は、何故ああも若い娘を虜にしてしまうんでしょうかねえ……」
真剣な顔で、連れていかれた娘の心配をしているのだろうか。
「私の娘なんです…… やめとけと言っても全くと話を聞かずに」
娘の母親らしい中年の女性が少々不機嫌な口調で答える。
「おそらく、この前回も言ったと思いますが、よそ者には若い女性を惚れさせる不思議な力があります。ただえさえ若い女性が少ない村で、こんなことが起こるのは、大変なことです」
俺は、ゆっくりとした口調で村の人たちに諭すように答える。
「そうなのか、あんなさえない男がモテるだなんて、やっぱりおかしいと思ったよ!」
村の若いハンサムな男性が怒鳴るように言う。
恐らく娘のことが好きなんだと思う。そうして彼は俺の手を握りしめると、願うようにこう続けた。
「どうか魔王様! ミサをお救いください」
間近で見ると、ハンサムな男性の体中に傷がある。どうにかして連れ去られた彼女を、勇者の魔の手から、助けようとした男性がここにいた。多分全くと歯が立たなかったのだろう。
それはそうだ。彼ら勇者には、普通の人には持っていないような絶大な力を、この異世界で召喚されたときに、神様から与えられるからだ。
そんなものはおかしい。
何も努力をしていないような男が、そんな力を得てしまう世界なんて。
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