史上最強の魔王様(俺)が勇者殿を倒すらしいです

土佐 牛乳

1話


 ミーンと唸るような暑さの中、二人の青年が街中で向き合っていた。
 巨大な剣の先を俺の方に向けて、一人の青年がこう言った。

「おめえが魔王って冗談もほどほどにな」

 苦笑すら混じった口舌。それに呆れた俺は言い返す。

「あのなあ、人は見た目によらないって言うだろ。まあ確かに序盤で魔王ってのも信じれないよなあ……」

 今日、異世界ここに来たばかりの彼であろう。
 そして俺は、彼の相手をしているのだ。

 この世界で、絶対に倒さなければならない”魔王”として(相手が信じているかどうかは別にして)。

「ふん! おめえみたいな頭のおかしい魔王なんているか。だいたい魔王ってのは手下に指図をして、俺たち勇者の邪魔をするような存在だろう。もしかしてあれか? 『人望が無さ過ぎて手下はいないんですぅ』って感じか?」

 ぐうも出ないような洞察力と俺のモノマネのような言い方にイラッときながら、俺はこう言い返した。

「んじゃ決闘を申し込む。手加減はしないぞ」

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