極寒の地で拠点作り
ユニークスキル その二
「もしかして……貴方達、二人ともユニークスキル持ちだったり?」
盗賊Aを無力化してこの街の要請に答えたけど、盗賊Aは下っ端だったらしい上に一人なので、二人でたったの50Gしか貰えなかった。
そんな所で、少し経ってからシェーカさんにこっそりそう聞かれた。
「はい、まあ一応……」
恐らく、シェーカさんは私達と同じくユニークスキル持ちだ。
私達みたいに偶然ダンジョンに出くわした感じでなければ、そんなレアなスキルを持っていることは相当強いプレイヤーである何よりの証拠。そんなエリートな人が通常プレイで手に入るスキルやら魔法やらを知り尽くしていない筈が無い。
だから、隠しても無駄だと思った私は正直に答えた。それに対して何も言ってこないハープは多分、私と同じ考えだと思う。
「貴方達、プレイ開始から何日目?」
と、続いてシェーカさんが聞いてきた。
ここも正直に答えて、
「昨日始めたばかりです……一応」
と、私は『一応』の所でハープを見る。
私達はあのダンジョンにかなり長い時間入っていた筈、それなのに対して時間が過ぎていない。そこだけはやはり疑問のままだった。
だから、本当に今日が今日なのか確信が未だ持てないから、一応と答えた。
「えっ……えっ?き、昨日なの?詳しく聞かせて欲しいですよ?」
一瞬、シェーカさんの口調がおかしくなる。
まあ驚くのも仕方無いか、と思った。
私達はあの疑問のことも聞きたかったので、あまり包み隠さずに過程を話すことにした。
「へぇ……突然発生のダンジョン、闇の迷宮、強制混乱、神様ね。何よりも時間か……」
話しきった所でシェーカさんは考え始めた。
数十秒その状態のままでいた時、シェーカさんが話し始めた。
「多分……そういう時間の感覚を鈍くさせる特殊な魔法がかかっていたとか、後はそういうシステムになっていて現実と時間経過をずらして貴方達のいたダンジョンだけ時間を遅くさせたとか……でもまだ時間経過に関する技術はまだテストプレイ中なんじゃ……?」
途中まで考えを伝えてくれたけど、また考え込んでしまった。でも疑問が少しでも晴れることに繋がったので嬉しかったし安心もした。
まあログアウトすれば、本当に今日の一日前が昨日であるか分かるんだけどね。でもどうしよう、一日以上経ってたりとかしたら……リアル浦島太郎とか洒落にならない。
「うーん……あ、ごめんなさいね?色々考え込んじゃって。その割には良い答えは返せなかったけど」
「いえいえ、とんでもない!私達の疑問に答えて下さってありがとうございます」
「どういたしまして……それと、話は戻すけどいいかしら?」
話を戻す、というのは盗賊団が襲って来る前の話題、要するにユニークスキルそのものの話だ。
「ユニークスキルは皆が皆持っている訳じゃない、って言ったわよね?」
ハープが質問した時のことだ。
私達は頷く。
「ユニークスキル、というかユニークシリーズってね?周りと差をつけるためにあるって言うけど、よくそれを実感する時があるのよ。それっていつか分かる?」
うーん、とハープが唸る。
駄目だ、私も分からない。
「私達のレベルが上がる時よ。ステータスポイント振り分けするでしょ?誰でも3ずつレベルが1上がるごとに振り分けられる……単調よね。だから、素のステータスでは極振りでもしない限りそんなに変わらないのよ。このゲームには職業とかそういうものが明確に存在しないからステータスも変わらないって理由もあるわね」
うんうん、と私達は聞き入る。
確かにそうだ。
Lv.1の時のステータスなんかは皆同じみたいだし、追加効果やスキルが無ければ振り分け方が違うだけで、レベルが同じなら総ポイントは同じな筈だ。特にHPとMPなんて振り分け対象外だから素のステータスでは私もハープも同じ値だ。
「でも極振りはリスクが高過ぎて、わざわざやる人は殆どいない。そこで……」
パンッ、とシェーカさんが手と手を叩く。
「ユニークシリーズが出てくるって訳。ユニークシリーズの追加効果は勿論、ついてくるユニークスキルも比較的通常スキルよりも強力だからね。それで他プレイヤーとの差をつけるのよ……このゲームのテーマで『協力』ってあるでしょ?」
出た。また協力、何が協力だ。
人間関係壊す程、それを試してくるなんて運営はどうかしてる。
「今でこそダンジョンの数はかなり少ないけど、この世界にはまだ見つけられていないダンジョンがあるって考えが浸透してるわね。で、この広過ぎる世界をたった一人で見つけるのは大変だからギルドメンバーやらその辺りで『協力』して、探して攻略するのよ。そのギルドホームの戦力の増強にも繋がるしね?だから山とか歩いてるとたまに、血眼になって探す、どっかのギルドホームのダンジョン捜索班を見かけるわよ」
「へぇー」
だとすれば、私達が遭遇した様な突然発生するダンジョンなんかは大きな発見になるんじゃないだろうか。
「まあ長めに話しちゃったけど、結局何が言いたいかって言うと、このゲームで強くなるのにはユニークシリーズは必要不可欠ってことよ」
「へぇ、なんか色々教えてもらっちゃってありがとうございました」
「いやいや、私の考えを聞いてもらっただけだから別に問題無いわ……あ、そう言えば気づいてたかもしれないけど、私もユニークスキル持ちよ。この装備もユニークシリーズだから。まあ同じ持ち同士、よろしくお願いするわね」
「こちらこそ」
それにしても、ユニークスキル持ち同士を持ち同士って言うんだ。覚えておこう。
「さて、私はそろそろあの人の所に戻るけど貴方達はどうするの?」
そういえば決めてなかった、というより帰ることだけを考えていた。Lv.2ギルドホームの素材はまだ集めきれてないけど、今日は色々あり過ぎて疲れた。二日目にして、どうしてこんなことになったんだろう。
考えても仕方無いから、とりあえず素材集めに適した場所を聞いてみることにした。
「一応、ギルドホームに帰ろうとは思っていたんですけど……ギルドホームのレベルを2に上げようとしていた所で、あとスピードイーグルとモグモグラなんですけど何処か良い所って無いですかね?」
「えーっとねー……ああ、そうそう!こことここだ」
いつの間にか地図を広げていたシェーカさんは地図上に指を差した。その場所は私達が洞窟うさぎを狩っていた山の南側にある山で、ギルドホームから行くか、ここから直接行くか迷う。
疲れているけど、折角強い力を手に入れたんだからどうしても使いたくなってしまう。
「ハープ、どうしよっか?」
「ギルドホームから行ったとすると、またあの川を迂回しなきゃいけないし……ここからだと単純に遠いし」
結局、私達はここから直接向かうことにした。
また、突然ダンジョンに出くわしたらなんて、それこそ願い下げだ。そうならないことを願うまでだ。
「じゃあ私はこの辺で……あ、そうそう!良かったらフレンド設定しておかない?」
フレンド設定をしておけば、フレンドが近くにいる時に知らせてくれるらしいし、遠くにいてもフレンドにメッセージが届くみたいだった。
「じゃあ、お願いします」
「ありがとうねー」
そう言ってシェーカさんは私達にフレンド申請を送った。
その数秒後、目の前にウィンドウが表示された。
私は、フレンド申請を許可しますか?の欄の、はいの部分を押す。
「完了したみたいね……じゃあ、何かあったらそれで連絡してくれていいから。何時でもいいわよ?」
「はい。なんかスキルやら何やら色々教えて頂いてありがとうございました!」
ハープがお礼を言う。
「いいのよ……それじゃあ、また」
そう言って手を振ってくれた後、シェーカさんは去っていった。
「ふう……優しい人だったね」
「そうだね、親切に色々教えてくれたし」
大人の女の人とこんな形で仲良くなるなんて思わなかったから、なんか新鮮だけどかなりありがたかった。
「じゃ、私達も行くとしますか!」
「うん!」
私達は立ち上がり、街の出口へと向かうのであった。
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