極寒の地で拠点作り
街にて
「まずは、薬屋……だっけ?」
通りを逆戻りし、人通りの多い商店街を左に見る。通り過ぎる途中も商店街は賑やかで、どの店も大盛況の様だった。
見た感じ、現実の食べ物に限りなく近い物からゲテモノっぽい物まである。この世界では食べる必要が無いので食べ物はほぼ娯楽品だ。帰りに暇だったら寄ろうかな。
「そうそう、ユズのMPポーション買う為にね?」
「私は別にいいんだけどね……」
「だーめ、絶対困るから!一応私の分も買いに行くからどっちにしろ行くんだよ」
そういえば闇魔法の消費MP見てなかった。
レベルアップに必要なポイントと同じ様に、他の魔法より二倍必要とか言われないよね……
そういえばハープはさっき、初めて武器スキルにポイントを振ったと言った。とすると、あの対洞窟うさぎ戦は全て自己流の攻撃だったということになる。そう考えると流石ハープだ、と言いたくなる。
そうして私は歩きながらウィンドウを開いて、闇魔法の詳細を確認しながらハープの横を歩く。
ふーん、暗転はフラッシュと同じMP2で心の闇は5か……一通り確認した所でハープが何かに気づいた様で、
「あ!ユズ、駄目だよ?歩きウィンドウなんてやったら」
まさか歩きスマホよろしく、歩きウィンドウなる言葉があるとは……
続けてハープが、
「怖いお兄さんとかにぶつかったら私、フォロー出来ないよ?」
む……確かに。
NPCならまだしも、プレイヤーの人だったら目をつけられたら終わりだ。流石にマナーとかそういう所もあるので、いつもの何とかなるでしょ精神は張らないでおく。私もちゃんとそこら辺は節度を弁えるのだよ、えっへん。
何か少し偉そうにしている私を見て、ハープが変な目で見てる。
「ど、どうしたの?いきなり止まって、腰に片手当てて胸なんか張っちゃって……」
今の私は真っ黒なローブを着込んで、立ち止まって左手を腰に当てて胸を張っていた様だ。なるほど、確かにおかしい。流石に今はフードは被って無いけど、そうでなくてもそのポーズなら充分怪しい。
そういえば、露出度で言えば対極的な私達だけど思ってた程目立ってはいない。それでもハープは長いコートの両端を掴んで前の方を隠している。今の状態では、どちらかと言えばハープの方が怪しいかもしれない。
「ん、いや……特に何も無いよ?」
「……そうなの?」
「そうそう」
まだ少し引き気味に確認してくるハープは大方、理由も無しにそんなことやってるなんて……とか失礼なことを考えてるに違いない。
そして、そうこう話している間に薬屋に着いてしまった。
お金は二人共同で使うことにしてたから、二人合わせて1960G。40G分は宿……じゃなくて休憩スペースで消費した分だ。これに、採り過ぎた洞窟うさぎの角×28を売ることで多分2000Gを越す。
「薬屋でうさぎの角なんか買ってくれるのかな」
「どうだろう?とりあえず聞いてみよっか」
「うん……すみません。これって買い取ってもらえますか?」
私は薬屋の人にインベントリのウィンドウから取り引きの項目を選んだ。薬屋の人はそれを見て、
「ああ、問題無いよ。洞窟うさぎの角を28個でいいのかい?」
あ、いいんだ。
どうやら、NPCだからシステム上、薬屋で使わなくても買い取ってくれるらしい。
「はい、お願いします」
「じゃあ買い取らせてもらうよ。はい、280G」
洞窟うさぎの角は一つ10Gだったみたいなので、280Gとなった。これで、合計2240Gとなる。
「じゃあユズ、選んでいいよ」
「何個くらいがいいかなぁ?」
MPポーションは、上・中・下、で売られており、上は30回復200G、中は15回復100G、下は5回復30Gだった。
私の追加効果含めたMPは32だ。うーん、私が使える闇魔法は勿論、他の魔法もLv.1だけど一応あるし……上を一個で下を大量、かな?消費MPも少ないし、ちょくちょく回復していけば問題無いと思う。
「それじゃあ、これにするよ」
結局私が選んだのは、上×1に下×10だった。
ギルドホームで休むことでHPやMPが全回復するシステムになっているから、毎回戻っていればこれくらいで足りると思う。
私は薬屋の人に商品を渡して、
「MPポーション(上)が一個、MPポーション(下)が十個……これでいいかい?良ければ500Gだよ」
「はい」
「はい、ちゃんと頂いたよ。それではまたのご来店待ってるからねー」
そう言って快く手を振ってくれる。
NPCとはいえ、気持ちがいい素振りだと思った。
「さてと……ユズのポーションも買ったことだし、この後どうする?」
「あー、じゃあさ。行きに通ってきた商店街の方行ってみようよ」
本来の目的は達成された。
そこで、さっき暇になったら行こうと決めていた商店街に向かうことにした。
「いいね。私も帰るついでにいいかな、とは思ってたから」
と、ハープも同じことを考えてた様なので早速元来た道を戻って、休憩スペースの前の角を曲がり商店街に入る。
中に進むにつれ、香ばしい匂いが強くなっていく。屋台に並ぶ料理は見慣れている物からそうでない物が混じって並んでいる。
「わぁ……ねぇ、ユズ!何食べる?あ、あまり変なのはやめてね?」
「大丈夫だって、ゲテモノ程美味しいってこともあるんだし。ここはゲームの中だから何かあっても問題無いよ!うん、何とかなる」
「うん、多分何とかならない。口の中いっぱいに謎の食べ物と謎の味が広がるのはなんか危険な気がするから、ちゃんとマトモなの選んでね?」
「えー?じゃあ……んーとね、じゃああの焼きそばみたいなの」
その焼きそばみたいなの、と言うのは、見るからに辛そうな真っ赤な麺系の料理のことだ。
「じゃあ買ってくるね?」
私は焼きそばもどきの屋台に向かう。
「あの、すみませーん」
「はい、いらっしゃい!コスバそば、一つ10Gだよ!」
私は屋台の店主さんに20Gを渡す。
すると、妙に語呂の良いコスバそばなる商品二つを渡してくれた。
「はい、二つねー?ありがとうございましたー」
私はそれらの入ったプラスチックっぽいパックを両手で持って、ハープの所へ持っていった。
「買ってきたよー」
「おー!……それにしても赤いね」
「そうだね、どんな味がするんだろ」
多分辛いんだろう。それは一番この色が示している。そして私達はパックを開けた。
「それじゃあ、いただきまーす」
「いただきまーす」
ハープに合わせる様に言って、麺を啜る。
辛いのに気を付けて食べようとした……が、
「……ん?」
「……あれ?」
私達は顔を見合わせる。
多分ハープは私と同じことを考えている。
「……あ、甘っ!」
「何これ、どうしたらこんなに……」
このコスバそばなるそばは、その真っ赤な見た目に反してかなり甘い……そんな食べ物だった。
不味い、とまではいかないけどどこまでも微妙な味だった。
私達は何とか最後まで食べて、ああなんか失敗したな、と思った。
「ま、まあゲテモノじゃないからセーフ?」
「ギリギリアウトだと思うの。やばい、まだ甘いぃ……」
食品選びに失敗した私達は、もう少しだけ見て回ろうと先へ進んだ。
すると、何やら人だかりが出来ていて何があるのかな、と思っていると、
「うおおおおお!ラスト50杯目ぇ!タイムはっ!?」
聞き覚えのある五月蝿い声が聞こえてきた。
その声の主のブラストさんは何かの料理のタイムアタックでもしているのか、タイムを気にしている。
「ご、五分二十三秒……!」
「お、ブラストやるじゃーん」
と、ブラストさんの横にいる黒髪短髪の比較的背の高い女の人がそう言った。
「はははっ、この程度っ!このブラストさんにはお手の物よ!」
はっはっは、と笑い続けるブラストさん。
正直この人は苦手なので早く立ち去ることにしよう。
「ハープ、行こっか」
「そうだね」
ハープも同じ様に感じているらしく、即答だった。私達は足早にその場から逃げる様に去ろうとしたけど、
「……ん?あ、そこにいるのはこの前のお嬢さん方じゃないか!」
気づかれた。
私達とブラストさんの間の人混みが割れ、姿が完全に見えた。人混みは私達の方を見ているため、かなり恥ずかしかった。しかし何故気づかれたのか、不思議だ。
「元気だったか?と言ってもつい昨日のことだがな!」
相変わらず笑い続けるブラストさんを前にした所で、その横にいた女性がこちらに向かってきて、
「ごめんなさいね?多分あの人が迷惑かけただろうけど」
と、謝ってきた。
「は、はぁ……」
ハープは生返事をする。
「とりあえず自己紹介ね。私は『シェーカ』、あの人の付き添いよ」
そう言ってその人はにっこりと微笑んできた。
通りを逆戻りし、人通りの多い商店街を左に見る。通り過ぎる途中も商店街は賑やかで、どの店も大盛況の様だった。
見た感じ、現実の食べ物に限りなく近い物からゲテモノっぽい物まである。この世界では食べる必要が無いので食べ物はほぼ娯楽品だ。帰りに暇だったら寄ろうかな。
「そうそう、ユズのMPポーション買う為にね?」
「私は別にいいんだけどね……」
「だーめ、絶対困るから!一応私の分も買いに行くからどっちにしろ行くんだよ」
そういえば闇魔法の消費MP見てなかった。
レベルアップに必要なポイントと同じ様に、他の魔法より二倍必要とか言われないよね……
そういえばハープはさっき、初めて武器スキルにポイントを振ったと言った。とすると、あの対洞窟うさぎ戦は全て自己流の攻撃だったということになる。そう考えると流石ハープだ、と言いたくなる。
そうして私は歩きながらウィンドウを開いて、闇魔法の詳細を確認しながらハープの横を歩く。
ふーん、暗転はフラッシュと同じMP2で心の闇は5か……一通り確認した所でハープが何かに気づいた様で、
「あ!ユズ、駄目だよ?歩きウィンドウなんてやったら」
まさか歩きスマホよろしく、歩きウィンドウなる言葉があるとは……
続けてハープが、
「怖いお兄さんとかにぶつかったら私、フォロー出来ないよ?」
む……確かに。
NPCならまだしも、プレイヤーの人だったら目をつけられたら終わりだ。流石にマナーとかそういう所もあるので、いつもの何とかなるでしょ精神は張らないでおく。私もちゃんとそこら辺は節度を弁えるのだよ、えっへん。
何か少し偉そうにしている私を見て、ハープが変な目で見てる。
「ど、どうしたの?いきなり止まって、腰に片手当てて胸なんか張っちゃって……」
今の私は真っ黒なローブを着込んで、立ち止まって左手を腰に当てて胸を張っていた様だ。なるほど、確かにおかしい。流石に今はフードは被って無いけど、そうでなくてもそのポーズなら充分怪しい。
そういえば、露出度で言えば対極的な私達だけど思ってた程目立ってはいない。それでもハープは長いコートの両端を掴んで前の方を隠している。今の状態では、どちらかと言えばハープの方が怪しいかもしれない。
「ん、いや……特に何も無いよ?」
「……そうなの?」
「そうそう」
まだ少し引き気味に確認してくるハープは大方、理由も無しにそんなことやってるなんて……とか失礼なことを考えてるに違いない。
そして、そうこう話している間に薬屋に着いてしまった。
お金は二人共同で使うことにしてたから、二人合わせて1960G。40G分は宿……じゃなくて休憩スペースで消費した分だ。これに、採り過ぎた洞窟うさぎの角×28を売ることで多分2000Gを越す。
「薬屋でうさぎの角なんか買ってくれるのかな」
「どうだろう?とりあえず聞いてみよっか」
「うん……すみません。これって買い取ってもらえますか?」
私は薬屋の人にインベントリのウィンドウから取り引きの項目を選んだ。薬屋の人はそれを見て、
「ああ、問題無いよ。洞窟うさぎの角を28個でいいのかい?」
あ、いいんだ。
どうやら、NPCだからシステム上、薬屋で使わなくても買い取ってくれるらしい。
「はい、お願いします」
「じゃあ買い取らせてもらうよ。はい、280G」
洞窟うさぎの角は一つ10Gだったみたいなので、280Gとなった。これで、合計2240Gとなる。
「じゃあユズ、選んでいいよ」
「何個くらいがいいかなぁ?」
MPポーションは、上・中・下、で売られており、上は30回復200G、中は15回復100G、下は5回復30Gだった。
私の追加効果含めたMPは32だ。うーん、私が使える闇魔法は勿論、他の魔法もLv.1だけど一応あるし……上を一個で下を大量、かな?消費MPも少ないし、ちょくちょく回復していけば問題無いと思う。
「それじゃあ、これにするよ」
結局私が選んだのは、上×1に下×10だった。
ギルドホームで休むことでHPやMPが全回復するシステムになっているから、毎回戻っていればこれくらいで足りると思う。
私は薬屋の人に商品を渡して、
「MPポーション(上)が一個、MPポーション(下)が十個……これでいいかい?良ければ500Gだよ」
「はい」
「はい、ちゃんと頂いたよ。それではまたのご来店待ってるからねー」
そう言って快く手を振ってくれる。
NPCとはいえ、気持ちがいい素振りだと思った。
「さてと……ユズのポーションも買ったことだし、この後どうする?」
「あー、じゃあさ。行きに通ってきた商店街の方行ってみようよ」
本来の目的は達成された。
そこで、さっき暇になったら行こうと決めていた商店街に向かうことにした。
「いいね。私も帰るついでにいいかな、とは思ってたから」
と、ハープも同じことを考えてた様なので早速元来た道を戻って、休憩スペースの前の角を曲がり商店街に入る。
中に進むにつれ、香ばしい匂いが強くなっていく。屋台に並ぶ料理は見慣れている物からそうでない物が混じって並んでいる。
「わぁ……ねぇ、ユズ!何食べる?あ、あまり変なのはやめてね?」
「大丈夫だって、ゲテモノ程美味しいってこともあるんだし。ここはゲームの中だから何かあっても問題無いよ!うん、何とかなる」
「うん、多分何とかならない。口の中いっぱいに謎の食べ物と謎の味が広がるのはなんか危険な気がするから、ちゃんとマトモなの選んでね?」
「えー?じゃあ……んーとね、じゃああの焼きそばみたいなの」
その焼きそばみたいなの、と言うのは、見るからに辛そうな真っ赤な麺系の料理のことだ。
「じゃあ買ってくるね?」
私は焼きそばもどきの屋台に向かう。
「あの、すみませーん」
「はい、いらっしゃい!コスバそば、一つ10Gだよ!」
私は屋台の店主さんに20Gを渡す。
すると、妙に語呂の良いコスバそばなる商品二つを渡してくれた。
「はい、二つねー?ありがとうございましたー」
私はそれらの入ったプラスチックっぽいパックを両手で持って、ハープの所へ持っていった。
「買ってきたよー」
「おー!……それにしても赤いね」
「そうだね、どんな味がするんだろ」
多分辛いんだろう。それは一番この色が示している。そして私達はパックを開けた。
「それじゃあ、いただきまーす」
「いただきまーす」
ハープに合わせる様に言って、麺を啜る。
辛いのに気を付けて食べようとした……が、
「……ん?」
「……あれ?」
私達は顔を見合わせる。
多分ハープは私と同じことを考えている。
「……あ、甘っ!」
「何これ、どうしたらこんなに……」
このコスバそばなるそばは、その真っ赤な見た目に反してかなり甘い……そんな食べ物だった。
不味い、とまではいかないけどどこまでも微妙な味だった。
私達は何とか最後まで食べて、ああなんか失敗したな、と思った。
「ま、まあゲテモノじゃないからセーフ?」
「ギリギリアウトだと思うの。やばい、まだ甘いぃ……」
食品選びに失敗した私達は、もう少しだけ見て回ろうと先へ進んだ。
すると、何やら人だかりが出来ていて何があるのかな、と思っていると、
「うおおおおお!ラスト50杯目ぇ!タイムはっ!?」
聞き覚えのある五月蝿い声が聞こえてきた。
その声の主のブラストさんは何かの料理のタイムアタックでもしているのか、タイムを気にしている。
「ご、五分二十三秒……!」
「お、ブラストやるじゃーん」
と、ブラストさんの横にいる黒髪短髪の比較的背の高い女の人がそう言った。
「はははっ、この程度っ!このブラストさんにはお手の物よ!」
はっはっは、と笑い続けるブラストさん。
正直この人は苦手なので早く立ち去ることにしよう。
「ハープ、行こっか」
「そうだね」
ハープも同じ様に感じているらしく、即答だった。私達は足早にその場から逃げる様に去ろうとしたけど、
「……ん?あ、そこにいるのはこの前のお嬢さん方じゃないか!」
気づかれた。
私達とブラストさんの間の人混みが割れ、姿が完全に見えた。人混みは私達の方を見ているため、かなり恥ずかしかった。しかし何故気づかれたのか、不思議だ。
「元気だったか?と言ってもつい昨日のことだがな!」
相変わらず笑い続けるブラストさんを前にした所で、その横にいた女性がこちらに向かってきて、
「ごめんなさいね?多分あの人が迷惑かけただろうけど」
と、謝ってきた。
「は、はぁ……」
ハープは生返事をする。
「とりあえず自己紹介ね。私は『シェーカ』、あの人の付き添いよ」
そう言ってその人はにっこりと微笑んできた。
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