極寒の地で拠点作り

無意識天人

突然のダンジョン

 
「えーっと、INTを上げて……これでいいかな」

「ユズ、振り分けられたら見せてー」

「わかったー」

私達は今、昨日上がったレベル分の各ポイントを振り分けている最中である。

因みに今の私のステータスは


ユズ
Lv.8

主要ステータス
【HP:34/34】
【MP:17/17(+5)】

【STR:22】
【VIT:10】
【AGI:10】
【DEX:10】
【INT:19(+2)】

スキル
【ラビットハンター】

レベルが1上がるごとに得られるステータスポイントは3ポイントずつの様で今回はSTRとINTにだいたい半分ずつ振った。STRに振った理由は昨日の洞窟うさぎの時の様に、MPが無くなった時に杖で殴るためだ。そしてラビットハンターの恩恵を得るためでもある。

「ほら、ユズ。私も出来たわよ」

ハープも振り分けられた様で私にウィンドウを向けてもらった。

「ありがとう……うーん、どれどれ」


ハープ
Lv.8

主要ステータス
【HP:34/34】
【MP:17/17】

【STR:19(+2)】
【VIT:10】
【AGI:22(+2)】
【DEX:10】
【INT:10】

スキル
【ラビットハンター】

ハープのステータスはこんな感じだった。
ハープの武器はダガーで、昨日のを見る限りAGI重視っぽい。この振り方ならラビットハンターの効果がより強く発揮されるからこのスキルはハープにはピッタリだったみたい。
というか、DEXとかINTは良いとして私もハープもVITには振っていない。他人事みたいだけど、二人して防御力初期値とかどうするんだろ。まあ私も変えるつもりは更々無いし、無くとも魔法でどうにかするつもりだし多分どうにかなる。
魔法と言えば今回武器スキル、私で言えば魔法スキル。それは今回まだ振らないことにしといた。六種類の中から一つ選びたいのでもう少し考えてからにしたかったからだ。

「さて、振り分けも終わったことだし今日もやっていきますか!えっと、次はスピードイーグルだっけ?」

「あ、待ってユズ」

二日目の始まりに意気込んでいた私だけれど、ハープに止められた。

「え、何?」

「今日は素材集めの前に街に行くよ」

ハープが言うには、昨日の対洞窟うさぎ戦で私がすぐにMPを使い尽くしてしまったのでMPポーションを買いに行こうっていう話だった。
お金は初めから持ってる1000G、それから採り過ぎた洞窟うさぎの角を売れば充分以上だと思う。

「いやいや、いいよ、大丈夫だってそんな気にしなくても」

「気にするの。ユズのことだからどうせ『MP無くなっても杖で殴れば多分何とかなるから大丈夫』なーんて思ってるでしょ」

「いや、そんなこと…………あるかも」

「でしょ?そんな調子じゃ、魔法使いじゃなくてただの脳筋だよ」

「の、脳筋って!」

酷い言われようだったけど、仕方ない。
私の何とかなるでしょ精神がそうさせているのだから。それにしても最近は自覚させられっぱなしだ。

「まあ、とりあえず街に行くけど、途中でレベル上げもしていくからよろしく」

と、いう訳で私達は街に向かうことになったのだった。






◇道中◇

「ていっ」

「キィッ!」

ファットキャタピラーとかいうずんぐりむっくりな芋虫を倒して私達は一息つく。

「うぇぇ、気持ち悪い……」

「あはは、ユズはしょうがないなぁ」

「どうしてハープは平気なの?」

若干ハープに引きながら問う。
私がいつも以上に距離を取って攻撃している中、ハープは単身三、四匹ほどの集団に突っ込んでメッタ刺ししていた。

「どうしてって言われても平気だから平気としか」

そういえば、小さい頃よく私の手の上に乗った蟻とか芋虫とか取ってもらってたのを思い出した。あの頃からそうだったね、とか考えているけど今大事なのはそんなことじゃない。

「それで、どうする?」

「どうしようか」

うん、迷った。私達は山の中にいる。
街へはただ南下していけば着いた筈なのにどうしてこうなった。地図を見ても私達のギルドホームと街の間にはちょっとした森があるだけで、それも迷うほどじゃない。
最も不思議なのは私達の現在地が、地図上では北の荒野よりの、東西に山を置く平地であることだ。さっきも言ったように私達は山の中にいる。明らかにおかしい。

「地図にも山なんて載って無いよね」

「うん、その筈なんだけど……うーん」

いつも私より先を行って先導してくれるハープが唸ってる。これはかなりやばいかもしれない。

「もしかして、ここって『ダンジョン』の中なのかな……」

「ダンジョン?」

「うん。でもこんな、いきなり出現することは無い物の筈なんだけど……」

ハープが言うダンジョンとは、この世界の至る所に予め存在する構築物のことで、最奥にいるボスと呼ばれる敵を倒すことで希少なアイテムやらスキルやら装備が手に入るらしい。入ったら最後、一度死ぬまで出られないっていうけど。
しかし、ここは元からあった物では無く突発的に現れた物らしい。何故なら、こういったものが出現したりする様になったなら運営から告知されるし掲示板にも書かれる筈だとハープは言う。
それが本当ならこれは何らかのバグか、はたまたその運営のイタズラ心による隠し要素だとも考えられるとも言う。

「ねえ、ハープ。悩んでても仕方ないから先に進んでみない?戻ってもここから出られる保障はない訳だし、何かあってもその時考えればいいし」

こう何時までも考えていても何も始まらないと思った私はハープに提案してみた。

「うん、そう、だね。そうしようか……あは、まさかユズのその行き当たりばったりな性格が正しくなる日が来るとは」

「えー、ちょっとそれどういうこと?」

私もハープのちょっと皮肉った答えに笑いながら答える。

「よし、じゃあとりあえずもう少し登ってみよう!」

「おー!」

そういって私達はダンジョンを進み始めた。


暫く進んで、洞窟うさぎの時と同じ感じの崖に空いた穴の様な洞窟を見つけた。少し違うのは、入り口の所になにやら正八面体の青白いオブジェクトが浮いていることだった。確か昔やったゲームにセーブポイントとして出てきた様な気がする。

「どうしよう、近付いてみる?」

「見た感じ敵じゃなくてただのオブジェクトみたいだし。うん、良いと思うよ」

そう言って私達はその正八面体に、触れるか否かの所まで近付いた。すると、その物体の前にヴォン、とウィンドウが出現した。

「うわっ、びっくりしたぁ」

「私も……」

今まで何の反応も無かったものだから、いきなり効果音付きでウィンドウが出て驚いてしまった。
そして、そのウィンドウには文字が表示されている。

「えー、なになに?『ここから先は闇の迷宮、立ち入るならば心して入られよ。』……だってさ」

闇の迷宮、そういうからには暗いのかな?
ん、あとその行の下に何か書いてあるような……

「ハープ、その下に何か書いてない?」

「え?あ、ホントだ。えっと、『注意:このダンジョンには敵が出現しません。』……え!?」

やっぱりこのダンジョンは特殊な物らしい。
敵が存在しない、それなら私達でも攻略できるかもしれない。なんとなく裏がある様にも感じたけど考えても仕方ないし、ここは甘えておこう。

「どうする、ユズ?……と言ってもさっき決めたばかりだったね」

ハープもどうするかは決まってる様だった。

「うん、考えてても始まらないからね。まあ多分大丈夫。二人で協力すれば何とかなるよ!」

「よし、じゃあ入ろう!」

「うん!」

そうして、初のダンジョン突入を決め、早速入って下っていくのだった。

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