手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~

ノベルバユーザー168814

ダンジョン改造


 マスタールームへと戻った俺とがとった行動はまず、先程の反省を活かすべく早速ダンジョン内の魔物達へと「ダンジョンの階層増やしちゃうんで頑張ってね」と伝える事だった。

『と、言うわけでダンジョンの階層増やしていくから衝撃に備えろよミスト』
『だから、どういう訳なのさ!』

『そんなわけで階層増やすから、オークの族長にも備えるように伝えてくれ』
『マスター!? そんな訳ってどんな訳なんだよ!?』
『じゃ、そう言う事で』
『あ、ちょい!』

 俺はダンジョンマスター権限の1つであるダンジョン内なら誰にでも繋がると言う引きこもりを量産しそうな能力である念話で連絡を入れることにした。

 ミストや族長がガヤガヤと煩いが無視した。

 これでミストとホブゴブリン族長への指示は終わったしオークの族長にも伝えるようには言った。
 あとはユキムラ達にも連絡を入れて……と。

『あー、あーユキムラ聞こえてるか?』
『おぉ、主! このユキムラ、お声をかけていただき感銘を受けます!』
『まぁ最近は構ってないもんな、一段落したら行くよ』
『有り難き幸せ! ……して、何かご入り用が?』
『あ、そうそう。ダンジョンの階層増やすから、何かあったら大変だし気を付けてくれ』
『はっ、皆にも伝えます!』
『んじゃ、早速始めるから』
『ご武運を』

 別に何かと戦うわけでは無いんだけどな。

 前置きは置いて早速始めていこう。

 増やす階層は森林エリア、迷宮エリア、墓地エリアの3種類に1層づつ、計3層の追加で使うDPは1万5000DPの予算範囲内に収まる。

「階層増加!」

 ぶっちゃけそんな台詞を言う必要は全くなく、それどころか無言で目の前に写るパネルのようなものを操作するだけでダンジョンの機能は色々使えるがこれは雰囲気的な奴だ。

 どこかのヒーローが変身と叫んだりするアレとほぼ同義だと思ってもらえると助かります。だがラビィが冷ややかな目で見てくるので2度と言わないと言うことだけは決めた。

 やはり女子にはこのロマンが分からないと言うことだろう。男女が分かり合う日はまだ訪れないと思う。

 少し揺れたかなと言う軽い振動があり、大体30秒程で収まる。
 これでダンジョンの階層は増えた訳だが、作業はこれで終わりではないのだ。

「次は内装だな」
「でもさ、前の階層と一緒なら真似するだけで良いんじゃない?」
「ふっ、甘い。イチゴミルクよりも甘いわ!」

 俺は勢いよく立ち上がり、ラビィに向かって叫ぶ。

「良いか、1つの層を攻略して次の層も見栄え、罠、攻略難易度が同じだったら詰まらんだろうが! そんなものただの時間稼ぎだぞ!」

 俺はダンジョンマスターだ。
 ダンジョンを作る側の責任として冒険者にはとことん頑張ってもらいたい訳で、ダンジョンの難易度も下に行けば行くほど上げるべきだと思う。

 つまり、簡単な第1層森林エリアよりも第2層森林エリアの難易度は上げるべきなのだ。

 時間稼ぎをしたいのなら全部を迷宮エリアに変えて100層位作ってるわ。

「良いかラビィ。お前は大体と言う自覚があまりにも無さすぎる」
「クロトが冒険者呼び込まないからじゃん」

 ごもっともです。

「……つまりだ、冒険者には必死になって挑んで貰うために内装はきちんとしなきゃ行けない。ダンジョン難易度が高ければ評価も高いわけだ。つまり、ダンジョンの評価はお前の評価でも有るわけだ」
「私の?」
「そう、評価とは魅力! 人気に繋がるわけであり世間からお前が認められる事になるのだ!」
「そ、そうだね! それで、何か関係あるの!?」
「ない!」
「無いのに言ったの!?」

 勢い任せに言ってみただけだしなぁ。
 何にせよ階層毎にダンジョンの攻略難易度は上げていくべきだと俺は考えているからな、これはダンジョンマスター命令です異論は認めん。

「まぁクロトがマスターだもんね、私じゃどうやったら良いかなんて分かんないし任せるよどういう内装にするの?」
「そうだな、それについては少し考えがある」


◇◇◇

「ねぇクロト考えってなに? 早く教えてよー!」
「ええい、ごねるな! 服を引っ張るな!」

 俺とラビィはダンジョンを出て森の中を歩いている。
 見てからのお楽しみと言う感じで黙って連れ出したのでこの有り様だ。

「あぁ……我が君の成し得るであろう神話の一端を、我はここで目に焼き付けよう……!」

 こっちもこっちで五月蝿いな。
 何だかんだで出ていくとユキムラ達に伝えたところ、阿鼻叫喚の護衛は誰にする選手権が開催された訳で、なんかんやルーレットにて黄金のスライム、モチが選出された。

 このスライム、言動がやたらと演出過多な気がするし遠回りなしゃべり方をする。

「我が君の視線。あぁ、やはり素晴らしい。この素晴らしさをどのように例えようか……そう、それはまるで……」

 聞かないことにしよう。
 この喋りだけで詩集が作れてしまいそうだし、何より真面目に聞いてるとこっちが疲れてくる。

 良い奴なんだろうけど軽く引いちゃうおれを許して欲しいところだが、ユキムラもモチもロクロウも何故にこうまで俺に尊敬の眼差し的なものをぶつけてくるのか、謎である。
 もしや気のせいで俺の勘違いですよと言うオチかも知れないので聞くに聞けないよな。

「着いたぞ」
「ここって森の外れだっけ? 初めて来たよ」
「ラビィは外に出られてないからな」

 ダンジョンの本体と言うか分身とか妖精なのか分からないがそう言う類いであるラビィは外に出ることは余りない。と言うか俺が出ないようにお願いしているのだが、その理由としてはただ1つでこのラビィに万が一があればどうなるのか検討がつかないからだ。

 ダンジョン自身であるラビィだがそのラビィ自身が傷つけばダンジョンに何か影響があるかもしれないしこのラビィが死んでしまえばダンジョンも崩壊する可能性も捨てきれず、かと言って検証することも出来ない。

 それならばと多少心苦しいではあるが大人しくしてもらう他なかった、こればかりはスマンと思っている。

「うーん、外って気持ち良いね!」
「うん、そうだな」

 周りを見渡し深く深呼吸をして大きく伸びをしたラビィはどことなく嬉しそうだ。

「あれ、クロトが私を出さないのってダンジョンが危ないからだよね? なんで今日は出したの?」
「たまには出るのも良いかなってな。それにずっとダンジョンに引きこもるのも可哀想だろ、俺はさすがにそこまで鬼じゃないからな。護衛のモチもいるし大丈夫だろ」

 その辺で空中回転を決めてポーズをとっているモチをチラリと見てラビィに視線を戻す。
 太陽の光が反射してあいつ眩しすぎる。

「んじゃそろそろ教えるよ」
「わーい、何するの?」
「ふっふっふ、まぁ見てろって」

 俺の持っている使えるのか使えないのか今一はっきりしない魔法やスキルの数々、その中でも殆ど使用していないアレを使おうと考えた。

「これで良いかな」

 かつてあの俺の出会った中でも最強であり、今でもその位置を揺るがすことのないアンデット、リッチであるミスト。かつてはワイトであったが……進化していよいよヤバいあいつとの戦いを思い出す。

 あれはまともにやり合えば死んでたな、2秒くらいで死んでた自信があります。

 そのミストに勝った棒倒し、そこで使用した裏技と言うか卑怯な戦法と言うか……良いか勝てばいいんだよ異論は認めない。

 俺はその時1つのスキルを使用した。
 それが【魔物化】のスキルだ。
 それを今回は活用する事にしたのだ。

 これがあればダンジョンの防衛機能がもっと上がる、きっかけは今は森林エリアで何処を彷徨いているのか分からない砂の魔物は奇襲と言う面ではスライム達にも引けを取らない程だ。

 そして思った。
 この世で1番恐ろしいのは自然災害だ。
 地震や台風、津波など人間ではどうやっても対処が仕切れない災害は魔法のあるこの世界においても有効ではないだろうか?

「ものは試しってな」

 その辺の丁度良い木に触れ、唱える。

「【魔物化】」

 なんと言うことでしょう、ただ地面に根を張り幹と枝を上へ上へと伸ばし太陽の光を浴び続けているだけだった大木は、匠の手により姿こそ変わらないものの、その機能は旧石器から近未来にまで到達するではありませんか。

 少し古くなった木製の床を踏んだときに鳴る軋みの音が聞こえたかと思うと根がびっしり生えて埋まっている筈の地面が盛り上がり徐々に根が這い出てくる。

 移動型大木の出来上がりであった。

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