手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~
罪悪感とはこれ如何に
さて朝だ。
昨日は最悪な夢を見てしまったので眠りが浅かった。
もう既に眠い。
「クロトー! 早く行こうよー!」
そんな俺の気心も知れず、元気だけが取り柄です! を体現したような存在、ラビィが手を振っている。
俺達はオーク達の様子を見るつもりだ。
オークは人数が多いので第3層の村エリアに住まわせるには些か不便だ。
だが丁度良いところに第5層が空いていたのでそこに住んで貰うことにした。
そこからは食料や木材などをDPで出したり、森の木を少し伐採して家を建てるために使ったりしている。
今日はその進み具合を見て何かアドバイスとか出来ることがあれば手伝おうと思っている。
どうせ暇なのだからこれくらいしていてもバチは当たらないと思うんだ。
さて、そんなわけでやって参りました第5層。
状態としては第3層の様に土の地面に所々草が生えていると言う平凡な田舎の様な土地柄だ。
あと、そこ気を使って森と同じような地面にしているぞ。生活が急に変わると戸惑うからな。
「ラビィ、もたもたしてないで早く行くぞ」
「遅かったのクロトだよね!?」
◇◇◇
そんなわけでやって参りました第5層。
まだオーク達が仲間になり数日程度しか経っていないので景色は殺風景だ。
所々に作りかけの家と主な材料である木材がところ狭しと置かれており、オーク達が行ったり来たりしている。
あと、ホブゴブリン達も少なからず手伝いに来ている。
あいつらも家を1から作った経験があるから役に立つだろうし、族長もそれを分かってて少なからず派遣したんだろう。
本来の家と言うのは何ヵ月もかかるものだが、ホブゴブリン達は数週間位だったな。
まぁ明らかに人間よりは筋力があるし、手先も割りと器用だったからかもしれない。
ホブゴブリン、恐るべし。
で、今回更にオークが60匹と言う大人数が集まり家を経てることになり、その分家の数は増える。
だが、ホブゴブリンよりも力が強いオークそれも60もいればあっという間に出きるのではないか?
そう思っていた時期が俺にもありました。
工事は全然進んでおらず、どういうわけか後退したりしているのだ。
こいつら絶妙に頭が悪かった。
ホブゴブリンの指示を理解出来ず、最後には自分勝手に材料を使って無駄にしてしまうのだ。
それと手加減と言うのはものを知らないのか、たまに木材をへし折っている。
そしてかなり不器用。
紐を縛ることすらままならず、上手くいかずに頭を剥げるほど掻いていたりするのだ。
たぶん剥げるほど頭を掻きたいのは助っ人ホブゴブリン達の方だろう。
今も遠い目をしてるのだから。
「……これは酷いね」
「あぁ、こうなったら全員で手伝うしか無いだろうな」
何よりホブゴブリンが可哀想になってきた。
◇◇◇
そんな訳で、すぐにダンジョン内にいるホブゴブリンや十勇士、ミストにウノーサノーその他ゾンビを呼び集めた。
ダンジョンの防衛? どうせ誰も来ないよ。悲しみ。
訓練? 家が完成するまでお休みしてくださいお願いします。
つまり暇すぎるので新しい仲間のために家を作ってやろうと言うことだ。
断じてオークが使えないとか思った訳じゃない、嘘です。
それから暫くして作業は順調に進んでいる。
手持ちぶさたな俺も何かをしたい、族長辺りに聞いてみるか。
「族長、何かやることはあるか?」
「お、マスターか。マスターはゆっくり休んでてくれ、俺達がやるから」
そう言われて追い出されてしまった。
俺は使えない奴扱いされてないだろうな? それだと悲しいぞ。
「そ、そんな顔してみるなよ……マスターは俺達よりも働いてるから、少しは休んで欲しいだけだって」
言えない、働いてないなんて言えないよ!
まてよ、そもそもなんで俺が忙しいと思ってるんだこいつ。
「そりゃ、マスターはあんまり出てこないからな。ダンジョンマスターってのがどういうものか俺達にはわかんねぇけど、ここに来れないくらい大変なんだろ? こんなとき位休んでくれ」
何こいつ、良い奴だな。
あと感じるのは罪悪感です。
俺はただ面倒だから外に出てないだけで、マスタールームでだらけているだけの生活だと言うのに……!
あぁ、涙が出てきた。
「な、泣くなってマスター! う、嬉しいのは分かるけど……こう目の前で泣かれるのは流石に恥ずかしいからよ!」
なんと言う事だ、罪悪感で泣いていると言うのに休みを貰えた嬉しさで泣いていると勘違いされている。
どうしよう、ちゃんと伝えた方が良いだろうか。
いや、幻滅されたらダンジョンから出ていってしまうかもしれない。
そうなるとこの先やって行けないんだけど。
「お、俺は仕事に戻るぜ! 代わりにラビィの嬢ちゃんに任せる!」
俺がぐだぐだ考えていると、ホブゴブリンの族長はあっと言う間にどこかへ言ってしまった。
その代わりと言ってはなんだがラビィが来た。
「クロトー、族長がクロトの相手しろって追い出されちゃったんだけど」
「いやすまん、向こうの勘違いが原因なんだけどな」
今あったことを正直に話す。
ダンジョンの内部の事を1番知ってるのはラビィだから。
「はー、なるほど。仕事してないのに休めって言われたら罪悪感あるもんね」
「そうなんだよな、俺は一応ダンジョンマスターだし仲間の魔物の為にも何かしてあげたいんだけどな」
「うーん、あ、そうだ! ダンジョンの強化なんかしたらどうかな。クロトはダンジョンに来て長いけどあんまり成長してないし」
ぐぅ、痛いところを突いてきおるわこやつ。
そう考えると俺、本当に何もしてなくね? と思い始めてくる。
「うん、ラビィに諭されるとは俺もまだまだだな」
「クロト、私のことバカにしてない?」
「うん、してる」
「酷いな!」
俺、ラビィの尊敬出きるところは底抜けに明るいところだけだと思うの。
「まぁまぁ、ラビィの意見も最もだし。ここは二人でダンジョン造りと行こうぜ?」
「ふーんだ。私をバカにする人と一緒に作るのなんて嫌だよー」
頬を膨らまし、そっぽを向いてしまった。
うん、言い過ぎたかもしれない。
「ごめん……ラビィの事をちゃんと考えてなかった、ここは1つダンジョンの階層を任せるって事で許してくれ!」
「クロトが正直に謝るなんて! 感動したよ! 許すから頭上げて!」
チョロい、チョロチョロチョロいですわ。
頭下げてるから分からないだろうが下から見れば俺は凄い悪い顔をしているに違いない。
ラビィはこんな奴だがダンジョンに必要な存在……だと思うから極力協力してもらいたいし、俺が撒いた種なのは事実なので階層1つで許してもらおう。
「じゃあ私の階層はイチゴミルクで……」
「却下だ」
「なんで!?」
なんでも何も無いと思う。
やはりアホの子ラビィだな。
いつだって通常運転な彼女は放っておいて、これからダンジョンの強化をしていこうと決意する。
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