手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~
縄張り問題
「うわ、豚じゃん」
そう呟いたコスケの言葉にその場が固まる。
俺の思考も一瞬飛び、気がついてコスケのどこにあるのか分からない口を慌てて抑えたが時すでに遅し。
「スライムごときがぁっ! ワテらオークをバカにするでごわすかぁ!」
コスケの呟きが聞こえたのか、血管をプチっとした腰簑野郎であるオークが手に持ったこん棒を振り上げて激怒する。
「ま、待て! 話の途中だろ!」
「うるさいでごわす! お前らの話しなんぞ聞く耳持たないでごわす!」
「ま、マスター……どうしてくれんだよ」
相当頭に来ているのか、オークはこん棒をぶんぶんと振り回し始めた。
それが近くの木に当たると、折れるまではいかないがかなり深く陥没させていた。力やべぇ。
なんとか話を戻そうと族長が必死に宥めて見るが失敗したようだな。
そしてなんか俺を責める目線を送ってきやがるのだが、俺関係ないよね?
「そもそもだ! 人間なんぞと一緒にいる時点で話す価値なんて無いでごわす!」
怒りの矛先が何故か俺に向き、決して速くはないが力強く地面を踏み鳴らし俺へ接近してくる。
うわぁ、あれで殴られたら死ぬな。
◇◇◇
「あ゛い゛、ずびばぜんでしだ」
現在俺の目の前で顔が腫れに腫れまくって土下座しているオークが1匹。
「あんまり調子に乗らないで欲しいんだよ、豚野郎」
「ぼんどうに、ずびばぜん!」
勢いよく頭を下げたオークの頭は地面に埋まるほどの威力。
さて、何があったかと言うとだな。
1.オークが突っ込んでくる。
2.コスケが前に出る。
3.瞬殺して今に至る。
俺の中のスライムの強さがどんどん上がっていく。
と言うよりは素早さと身のこなしを活かしてコスケが顔面を集中的に狙ってたからだな。
股間にスマッシュ決めていたときは、こっちまでヒュッてなった。
「な、なんなんだ……ズライムな"のに、づ、づよすぎる」
その気持ちはよーく分かる。
筋肉と言うものがない粘液生物が鍛えた所でこんなことになるとは思わないんだが、本当に理解不明だな。
今度色々と調べてみるか? 何て事を考えつつ、族長に目配せからの問い。
「オークと何かあったのか?」
「あー、そうだな。実はここ最近縄張りにちょっかいを出されててな、オークの奴等が俺達の縄張りを奪おうとしてくるんだよ」
族長から聞いた話だ。
ゴブリンとオークはそれほど仲が良くなかったみたいだ。
そんな2種族が手を取り合うと言うことは出来る事もなく、縄張りを離して生活していたらしい。
その2種族はそれぞれが独自の生活を確立させ、極力関わらずに生きてきていたのだが、ある日ゴブリン族の方で異変が起こった。
まだ沢山あった筈の食料が盗まれ、飢餓に陥ってしまったのだ。
そうして徐々に数が減っていき、手遅れになる寸前で俺の庇護を受け、ゴブリン達は再建することができた。
まぁゴブリンもオークも繁殖力が高い、恐らく誰にでも分かるように、食料を盗んだのはオーク達で間違いないだろう。
特にオークは一度の交配で2、3匹同時に産む何てことはざらにあるようで、食料の減りもゴブリンより圧倒的に早い。
無いなら盗れば良いっていう感じで躊躇い無くゴブリンから奪った。
生きるためとは言え、盗みはいかんだろう……。
だがゴブリン達は俺の元へ集った為に食料が充実し、更に自ら生産する迄に至った訳だ。
そんな潤ったゴブリン達は既に食糧難になった事などは気にしていない様子だった。
その結果、オーク達はどんどん躊躇いがなくなり、歯止めが効かなくなっていき、食料を盗むどころか縄張りにまで手を出し始めたらしい。
そこまでされては黙っている訳にもいかない族長は直談判しては、追い返されると言うことを繰り返していたんだそうだ。
ゴブリン……今はホブゴブリンであるコイツらの縄張りは現在は俺の縄張りと言っても過言ではない。
族長達が勝手に言っているだけだが、実質トップの様なものである俺の縄張りを侵すことは配下として許せないと言うことで解決しようとしていたとのことで。
「それ相談しようぜ?」
「マスターの手を煩わせる訳には行かなかったんだよ……俺らあまり役にたってねぇから」
役には立ってると思うんだけどな、畑作業とか。
「それに、今はマスターの物だが元々は俺達の縄張りに喧嘩を売ってきてるんだ、これはホブゴブリン族の問題でもある」
「そう言われれば何とも返しづらいな」
若干喧嘩を売られてたとは言え、俺としてはそこまで大事には至っていない。
なにせ、ゴブリンの縄張りって俺の物なんだって思ったのは今だからな。
俺の縄張りって意識があるのはダンジョンの中なので、「ゴブリンの縄張りは貴方の物ですよ?」なんて言われてもいまいちピンと来ない。
実際問題、族長が隠し事してるから気になっただけであり、話を聞いた段階で俺が介入する必要無いなと判断は下した。
この争いに終止符を打つのはホブゴブリン達に任せる事にしよう。
「で、どうするつもりなんだ? 具体的には」
「話し合いって事にしたいんだが……」
「まぁ、そんなことしても根本的には解決しないよな」
話し合った所でオークの食糧難が解決する訳ないし、向こうも止まるに止まれない状況だろう。
「ワテらは引き下がる訳には行かないのでごわす! 産まれてくる家族の為にも、成長する若い連中にも未来を残す為に! 年寄りが死ぬのはまだ許せるでごわすが、これから沢山の経験をする子供の未来を奪わせる訳には行かないのでごわすよ!」
やだ、このオークカッコいい。
見た目のわりには一族思いの良いやつである。
ただ、未来を奪わせ無いために他種族の未来を奪っちゃいかんよ。
悩みどころだな、オークとしては引き下がれないし、ホブゴブリン達も黙って見ている訳にも行かない。
「族長、そもそもゴブリンの頃は力がかなり弱かった筈だが、あの強そうなオーク達をどうやって対処していたんだ?」
少し鍛えてたとは言え、スライムであるユキムラにボコボコにされるほどゴブリンは弱かった。
進化を経て、割り増し強くなったが最初から体がでかく力強いオークに対処するのは無理だと思っている。
「あぁ、あいつら力があるせいで頭は悪いんだ。罠とか仕掛けて追い払ってたんだよ」
「誰が脳ミソ筋肉でごわすかぁ! はい! すみません黙っているでごわす!」
族長の言葉に反応するオークだが、コスケが跳ねると大人しくなる。哀れだ。
なるほど、罠か……。
道理で罠張り大会のときにやけに手際が良いと思ったよ、進化で器用さが上がったんじゃ無くて手慣れてたって事か。
ふむふむ、オークは見たまんまって感じなんだな。
それにしてもさっきの木を陥没させた力は面白いな、うちに怪力自慢がいても良いかもしれない。
「オーク……良いね」
「ま、マスター? まさかあいつらを従わせるつもりか!?」
おっと呟きが漏れていた様だ。口笛吹いとこ。
「あのアホどもが居ても良いことなんてないし、それに言うことを聞くとも思えないぞ! コスケ殿もなんか言ってくれよ」
「え? 僕基本的に主君の意見は賛成だよ? 否定するわけないじゃん」
さも当然と言った風に族長へ告げるコスケ、味方がいない族長はガックリと項垂れた。
「でも俺もそう易々とダンジョンに入れる訳じゃない。本当に役に立つかなんて分からないからな」
「だろだろ!? だから止めとけって!」
「それにそうするとお前らも気が収まらないと思うし」
2種族の問題に勝手に第3者がやって来て無理やり解決すれば、どちらも面子が立たないし、心から納得もしないだろう。
そもそもこの2種族で解決しなければならない事だが、今のままでは平行線だ、落とし所を作るくらいなら良いだろう。
と言うわけで、俺はオークと少し話すことにした。
「なぁ、俺から1つ提案があるんだが?」
土下座中のオークに視線を合わせるようにしてしゃがみ、告げる。
俺と目があったオークは驚いた様な顔をしてわなわなと震える。
「に、人間が喋りかけてきてる!?」
またその反応か、飽きたぞ。
そう呟いたコスケの言葉にその場が固まる。
俺の思考も一瞬飛び、気がついてコスケのどこにあるのか分からない口を慌てて抑えたが時すでに遅し。
「スライムごときがぁっ! ワテらオークをバカにするでごわすかぁ!」
コスケの呟きが聞こえたのか、血管をプチっとした腰簑野郎であるオークが手に持ったこん棒を振り上げて激怒する。
「ま、待て! 話の途中だろ!」
「うるさいでごわす! お前らの話しなんぞ聞く耳持たないでごわす!」
「ま、マスター……どうしてくれんだよ」
相当頭に来ているのか、オークはこん棒をぶんぶんと振り回し始めた。
それが近くの木に当たると、折れるまではいかないがかなり深く陥没させていた。力やべぇ。
なんとか話を戻そうと族長が必死に宥めて見るが失敗したようだな。
そしてなんか俺を責める目線を送ってきやがるのだが、俺関係ないよね?
「そもそもだ! 人間なんぞと一緒にいる時点で話す価値なんて無いでごわす!」
怒りの矛先が何故か俺に向き、決して速くはないが力強く地面を踏み鳴らし俺へ接近してくる。
うわぁ、あれで殴られたら死ぬな。
◇◇◇
「あ゛い゛、ずびばぜんでしだ」
現在俺の目の前で顔が腫れに腫れまくって土下座しているオークが1匹。
「あんまり調子に乗らないで欲しいんだよ、豚野郎」
「ぼんどうに、ずびばぜん!」
勢いよく頭を下げたオークの頭は地面に埋まるほどの威力。
さて、何があったかと言うとだな。
1.オークが突っ込んでくる。
2.コスケが前に出る。
3.瞬殺して今に至る。
俺の中のスライムの強さがどんどん上がっていく。
と言うよりは素早さと身のこなしを活かしてコスケが顔面を集中的に狙ってたからだな。
股間にスマッシュ決めていたときは、こっちまでヒュッてなった。
「な、なんなんだ……ズライムな"のに、づ、づよすぎる」
その気持ちはよーく分かる。
筋肉と言うものがない粘液生物が鍛えた所でこんなことになるとは思わないんだが、本当に理解不明だな。
今度色々と調べてみるか? 何て事を考えつつ、族長に目配せからの問い。
「オークと何かあったのか?」
「あー、そうだな。実はここ最近縄張りにちょっかいを出されててな、オークの奴等が俺達の縄張りを奪おうとしてくるんだよ」
族長から聞いた話だ。
ゴブリンとオークはそれほど仲が良くなかったみたいだ。
そんな2種族が手を取り合うと言うことは出来る事もなく、縄張りを離して生活していたらしい。
その2種族はそれぞれが独自の生活を確立させ、極力関わらずに生きてきていたのだが、ある日ゴブリン族の方で異変が起こった。
まだ沢山あった筈の食料が盗まれ、飢餓に陥ってしまったのだ。
そうして徐々に数が減っていき、手遅れになる寸前で俺の庇護を受け、ゴブリン達は再建することができた。
まぁゴブリンもオークも繁殖力が高い、恐らく誰にでも分かるように、食料を盗んだのはオーク達で間違いないだろう。
特にオークは一度の交配で2、3匹同時に産む何てことはざらにあるようで、食料の減りもゴブリンより圧倒的に早い。
無いなら盗れば良いっていう感じで躊躇い無くゴブリンから奪った。
生きるためとは言え、盗みはいかんだろう……。
だがゴブリン達は俺の元へ集った為に食料が充実し、更に自ら生産する迄に至った訳だ。
そんな潤ったゴブリン達は既に食糧難になった事などは気にしていない様子だった。
その結果、オーク達はどんどん躊躇いがなくなり、歯止めが効かなくなっていき、食料を盗むどころか縄張りにまで手を出し始めたらしい。
そこまでされては黙っている訳にもいかない族長は直談判しては、追い返されると言うことを繰り返していたんだそうだ。
ゴブリン……今はホブゴブリンであるコイツらの縄張りは現在は俺の縄張りと言っても過言ではない。
族長達が勝手に言っているだけだが、実質トップの様なものである俺の縄張りを侵すことは配下として許せないと言うことで解決しようとしていたとのことで。
「それ相談しようぜ?」
「マスターの手を煩わせる訳には行かなかったんだよ……俺らあまり役にたってねぇから」
役には立ってると思うんだけどな、畑作業とか。
「それに、今はマスターの物だが元々は俺達の縄張りに喧嘩を売ってきてるんだ、これはホブゴブリン族の問題でもある」
「そう言われれば何とも返しづらいな」
若干喧嘩を売られてたとは言え、俺としてはそこまで大事には至っていない。
なにせ、ゴブリンの縄張りって俺の物なんだって思ったのは今だからな。
俺の縄張りって意識があるのはダンジョンの中なので、「ゴブリンの縄張りは貴方の物ですよ?」なんて言われてもいまいちピンと来ない。
実際問題、族長が隠し事してるから気になっただけであり、話を聞いた段階で俺が介入する必要無いなと判断は下した。
この争いに終止符を打つのはホブゴブリン達に任せる事にしよう。
「で、どうするつもりなんだ? 具体的には」
「話し合いって事にしたいんだが……」
「まぁ、そんなことしても根本的には解決しないよな」
話し合った所でオークの食糧難が解決する訳ないし、向こうも止まるに止まれない状況だろう。
「ワテらは引き下がる訳には行かないのでごわす! 産まれてくる家族の為にも、成長する若い連中にも未来を残す為に! 年寄りが死ぬのはまだ許せるでごわすが、これから沢山の経験をする子供の未来を奪わせる訳には行かないのでごわすよ!」
やだ、このオークカッコいい。
見た目のわりには一族思いの良いやつである。
ただ、未来を奪わせ無いために他種族の未来を奪っちゃいかんよ。
悩みどころだな、オークとしては引き下がれないし、ホブゴブリン達も黙って見ている訳にも行かない。
「族長、そもそもゴブリンの頃は力がかなり弱かった筈だが、あの強そうなオーク達をどうやって対処していたんだ?」
少し鍛えてたとは言え、スライムであるユキムラにボコボコにされるほどゴブリンは弱かった。
進化を経て、割り増し強くなったが最初から体がでかく力強いオークに対処するのは無理だと思っている。
「あぁ、あいつら力があるせいで頭は悪いんだ。罠とか仕掛けて追い払ってたんだよ」
「誰が脳ミソ筋肉でごわすかぁ! はい! すみません黙っているでごわす!」
族長の言葉に反応するオークだが、コスケが跳ねると大人しくなる。哀れだ。
なるほど、罠か……。
道理で罠張り大会のときにやけに手際が良いと思ったよ、進化で器用さが上がったんじゃ無くて手慣れてたって事か。
ふむふむ、オークは見たまんまって感じなんだな。
それにしてもさっきの木を陥没させた力は面白いな、うちに怪力自慢がいても良いかもしれない。
「オーク……良いね」
「ま、マスター? まさかあいつらを従わせるつもりか!?」
おっと呟きが漏れていた様だ。口笛吹いとこ。
「あのアホどもが居ても良いことなんてないし、それに言うことを聞くとも思えないぞ! コスケ殿もなんか言ってくれよ」
「え? 僕基本的に主君の意見は賛成だよ? 否定するわけないじゃん」
さも当然と言った風に族長へ告げるコスケ、味方がいない族長はガックリと項垂れた。
「でも俺もそう易々とダンジョンに入れる訳じゃない。本当に役に立つかなんて分からないからな」
「だろだろ!? だから止めとけって!」
「それにそうするとお前らも気が収まらないと思うし」
2種族の問題に勝手に第3者がやって来て無理やり解決すれば、どちらも面子が立たないし、心から納得もしないだろう。
そもそもこの2種族で解決しなければならない事だが、今のままでは平行線だ、落とし所を作るくらいなら良いだろう。
と言うわけで、俺はオークと少し話すことにした。
「なぁ、俺から1つ提案があるんだが?」
土下座中のオークに視線を合わせるようにしてしゃがみ、告げる。
俺と目があったオークは驚いた様な顔をしてわなわなと震える。
「に、人間が喋りかけてきてる!?」
またその反応か、飽きたぞ。
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