手違いダンジョンマスター~虐げられた魔物達の楽園を作りたいと思います~

ノベルバユーザー168814

侵入者を対処

 さて、俺のダンジョンに侵入した初めてのお客様は冒険者らしい。
 なんでも道に迷った的な感じでここを見つけるとは……どんな確率だよ、めっちゃ迷惑じゃん。

 そんなことよりいい情報が手に入った。冒険者が迷子でも来たと言うことは街か何かが近くにあると言うことだ。何れは降りたいが今は無理。

 焦ったのはドウとか言う人の発言だ。ギルドに報告する義務とか、洒落にならないんで止めてもらっても良いですかね? 戻る提案をしていたのだがリーダーに説得されて戻らないようだった。

 良かったー、改めて来られたら絶対に攻略されるじゃん。獲物は逃がさないぞ、ふっふっふ……。

「クロト、侵入者は殺すの?」

 いきなり物騒なこと言わないで貰えます? 可愛い顔して発言は悪魔かな? まぁダンジョンとしては当然だよね、これって一応不法侵入だからね、ここにそんな法律あるか分かんないしダンジョンに適応されてるかなんて絶対ない。

「うーん、迷いどころだな。殺したら情報が手に入らないし、帰ってこないと不信に思ったギルドがもっと強いやつを連れてきたら此方が危ないし。でも生かしておいても冒険者が増える一方で休まらない気がするんだよね」

 どっちに転んでも面倒なんだよね、ビビりな俺にはそのストレスは耐えられません! 
 俺が出ていってこの事秘密にして? ってお願いしたら、は? 誰お前? ダンジョンマスター、頭沸いてんのかで、首チョンパだ。この案も却下。

「こうなったらギルドから新手が手配されないことを祈りつつ殺ってしまおう」
「殺らなきゃ私達が死んじゃうからね。その方が良いよ」
「問題は殺れるかなんだけどね」

 実際、森林エリアには軽く罠を仕掛けてはいるのだが、魔物は配置してない。でもユキムラはサスケに指示を出していたし、恐らくはサスケ達が偵察中だろう。連絡を入れてみようか。

『サスケ、聞こえてる?』
『ん? おぉ、旦那、聞こえてるぜ』
『俺もモニターから動きは見てるけど直に感じたことを聞きたいな』
『そうだな、概ね攻略されることをは無いと思うね。何時でも仕掛けることは出来る。この程度の相手なら不意をつけば一瞬だ』

 何この子、超逞しいんですけど。てか、え? 倒せるの? 待って、スライムだよね君、弱小種族だよね。戦闘力5のゴミな筈だ、おい、誰だ人の部下にゴミとか言ってる奴、許さんぞ。

『え? 何とか出来るわけ?』
『ん? 問題ないぜ? ……あぁ、旦那が心配してるのは俺達の実力か、安心してくれ正面から挑むなんてしないって、俺の役割は……ま、見ててくれ』
『お、おう。任せるわ……あ! 取り敢えず気絶に留めてくれる? まだ何も決まってないから殺したらマズイ』
『了解した。そんじゃ、作戦の準備を開始する。散!』

 何最後の……散! って、カッコいいなオイ。正面から挑まないって事は不意討ちとかかな? まあ、サスケに任せちゃった訳だし、後は、見ておくだけだね。

 冒険者達は……あ、いた。罠に注意しながら慎重に進んでる様だな。因みに入ってきた冒険者達の素性もある程度分かった。

 先頭を歩いているガタイの良い男がリーダーであるキン。そしてその後ろをキョロキョロしながら歩いているギン。この2人は兄弟らしいが全く似ていない。そして最後の1人が俺をドキドキさせてくれやがったドウだ、なんか頭良さそうだな。
 因みに全員がCランク冒険者と結構強目っぽい。サスケ、本当に大丈夫なのだろうか、死んじゃったら葬式しなきゃ……いやいや、死なないように祈るしかないな。

 そんでもって、人が入ってきたお陰でDP稼ぎのチャンス到来! 
 DPは相手の強さにも寄るらしく、正直な話、ランクなんて目安にしかならん。
 今入ってきている3人で1日辺りのDP収入は600DPだ、少ないのか多いのか分かりません。

 しかも1日はいてくれないと収入として入らない訳だ、だからこそ迷いやすい森林エリアと迷宮エリアを作ったのだ。
 冗談だ。そんなこと全く考えてなかったよ、危うく無駄になる所だった。いやぁラッキーラッキー。

 その冒険者達は今下から上へと上がって宙吊りにされる編みの罠を回避しやがった。ちくしょう。
 だがその罠はまだまだ可愛い物よ……ふふふ、とくと味わうがいい。

「あー! 惜しいね!」

 ラビィは悔しそうに腕を振る。何この生き物可愛いんですけど。
 しかし、この森林エリアにはもっとえげつない罠が有るのだ。とくとご覧あれ。

『旦那、準備は終わったから旦那の合図で開始するぜ』

 仕事が早いなー、正直俺に頼まなくてもユキムラいるじゃん。総大将じゃん、直属の上司無視するってアンタ……。お陰で罠を見せるのは次の機会に持ち越しだよ。

「サスケが動くよ」
「どこまで通じるか見ものだね!」

 どこ目線何ですかそれは、貴女一応1番下ですからね?

『じゃ、お願い』
『了解した』

 さて、モニターに集中しよう。

 冒険者達は順調に進んでいき、悉く罠を回避する。流石はベテランと言ったところだ。どんどん回避されて俺は半泣きだ。

 冒険者達もそれほど疲れてはいないようで足取りはまだ軽い。

『やっぱり出来立ては大したことないな!』
『キン、油断するなと言っただろう』
『でもよぉ、魔物すら出ねぇのに何を警戒すんだよ』
『兄さん、ドウさん、何か来ますよ』

 ギンの警告により3人は身構えた。直ぐに対応しようとする辺り、並みの腕前じゃないよな。だが、警戒していた3人は目の前に現れたものを見て警戒と構えを解いた。

『なんだよ、スライムじゃねぇか。こんな殆ど無害なやつに警戒とかい見ねぇな』
『ギン、驚かせるな』

 ふぅ、とため息を吐くドウ。3人の前に現れたスライムはその辺で草を取り込んでは消化を繰り返しており、3人に襲いかかる素振りすら見せない。

 あのスライム、もしや! ……だめだ、見分けがつかないから誰とか分かんない。多分だがサスケの部下かな、かなり危険だが何してるんだか。危ないよー、逃げてくれー。

 一方の冒険者3人組はスライムを無視して通り過ぎようとしてスライムとすれ違う。その時、事態は動いた。

 突如木の上に潜んでいた5匹のスライムが3人の冒険者に飛びかかり、3匹はそれぞれが顔にへばり着き呼吸を止め、もがこうとするまでの数瞬の間に残りの3匹は体に巻き付いて動きを止める。
 なんとか抜け出そうとしていた3人だが時間を掛ければかけるほど、もがけばもがくほどスライムが絡まり、やがて動かなくなった。

 え? ちょっと意味分かんないんですけど。何コレ、え? 奇襲? ヤバい理解が追い付かないな。

『へいへいへいへい! サスケ君何よそれ!』
『旦那か、上手くいっただろう? 旦那から教えて貰った隠密を生かして囮を使って奇襲に特化したんだ。初見なら交わせねぇし、初見じゃなくても回避はさせねえ戦術だ』

 いや、スライムは物音たてずに動くから偵察向きかなと思って教えてみたけどさ、まさかここまで優れるとか思わないじゃん。

『もう、忍者だな』
『なんだそれ、カッコいいな』
『俺の居たところの部隊かな、暗殺特化の影。その姿は誰にも見せずにただ標的を捕らえるために洗練された技術を持つ最強の集団、忍びだ』
『カッコいいな。俺達も部隊名を忍者にしよう』

 まぁ、そこはどうぞって感じだ。
 おっと、冒険者の事を考えなきゃだな。

『今からそっちいくから』
『分かった。目が覚めても動けないように縛り付けておく』

 仕事がテキパキしてるね。十勇士って皆こうなのかな? だとしたら後9人もヤバいのがいるのでは……。

『ねぇ、サスケ。十勇士で1番強いのは誰?』
『ん、あぁ、そうだな、相性にもよるから分からないが正直な話、大将が最強だな、俺は1度も勝ててない』
 おうふ……ユキムラ最強説。

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