崩壊した世界に生き残ってしまった僕らの3156回戦争

UMA

chapter 000 : 僕が観測したプロローグは他人にとっては単なる途中経過でしかない。



あの時、僕らは夢を見ていた。


僕らの夢は、ヒーローとか、最強の魔法使いとか、そういったものばかりだった。

中でも僕···倉吉和斗くらよしかずとが一番なりたかったのは、超能力者であった。

理由は単純。

当時密かに大工さんに憧れていたらしい僕が、超能力に関するテレビだかなんだかを見て、

「ちょうのうりょくがあれば、あんぜんに、はやくおうちがつくれる!」

と、思ったようであった。

しかし、この昔の僕のめんどくさいのはここからで、なんと小学校5年生辺りまで、その厨二病臭い夢を抱き続けていてしまったのだ。

こうなってくると、精神年齢絶賛低下中の当時の俺に向けられた周囲の目は、それはもう白を通り越した純白の目と化していった。

そんな孤独な俺を、「俺もそういう系の物好きだ」と言って集まってきたのが、

あれから4,5年の時が過ぎた今でも親友関係で、現在進行形で共に家路についている3人だ。

まず一人目。

彼···水越大介みずこしだいすけは、
成績優秀(テスト前にアニメの時間を削って徹夜)、
スポーツ万能(漫画に出てくる技に憧れて超猛特訓)、
身長が高い(こればっかりは彼の体質だ)という、
一般的女子が彼氏にしたいランキング第一位に輝きそうな男だ。

その、あらゆる一般的女子から引かれるオタク力を除けば。

二人目。

桜茉日さくらまひるは、背が小さい、可愛げのある女子だ。
周りから、学力偏差値50,顔面偏差値95と呼ばれるほど、とにかくかわいいのだ。

しかし、その本性は······

生粋のゲームオタクなのだ。

好きなジャンルは乙女ゲーム。が、それは単に好きなジャンルというだけで、RPGでも、シューティングでも、全般的に何でもOK。つまりそういう女子だ。

三人目。

アニメといえば、こいつだ。
水越大介も相当なアニメオタクであるが、こいつは見るだけにとどまらず、短編アニメーションなどを趣味で制作しているような奴だ。

名を、酒匂健一さかわけんいちという。

pcをずっといじっているせいか、丸メガネをかけており、顔はわりと童顔。のくせに身長が170ぐらいあったりする。

余談だが、うちの高校の学年トップを陣取っているのはこいつだ。

で、そこに俺が加わる、と。

俺たちは、大抵行動を共にしている「親友」だ。

臭いセリフだが、友情を超えた何かで結ばれていると言っても過言ではない。

そして、今日も例のごとく一緒に帰っている、ということだ。

「先週の『月末』、まさかあそこでヒロインが死ぬとか···」
「気持ちは分からんでもないが、何となく死んじゃう雰囲気あったからなぁ」
「それでも俺は信じてたッ!」

などと、何時も空想の話をしながら帰る。

何も変わらない。いつもの日常。

だからこそ、願う。

「アニメの世界が、現実になったらな」と。

超能力が使えて。

よく分からない戦争とかに巻き込まれて。

1万年に1度しか現れないような奴に覚醒して。

そうなったら、きっと毎日が楽しくなるのに。



でもそれは、危険な考えだった。

そんなこと、思わなければよかったんだ。

《日常》が、良いものなのだと、早く気付くべきだったんだ。

何も起きない、平和が一番だと、思うべきだったんだ。

でも後悔しても、もう遅い。

時間は、戻らない。

一方通行だ。

ようやく《日常》の大切さに気づいた。



でもそれは、《日常》が日常ではなくなってから、ずっとずっと経ってからの事だった···

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