創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

第36話 愛情過多な精霊たち

翌日。日が昇る前に僕は目を覚ました。正確に言えば、起こされたというべきか。僕は昨日1人で眠ったのを確認している。そして、僕が自分の家で出ていることを知っているものはいない。となると必然的に、彼女・・ たちに起こされるということになる。


「ユリ・・・・ユリ!起きてユリ!」
「ん・・・んぅ・・・」
「起きないと色々植え付けちゃうわよ?」
「・・っ!」


恐ろしい単語が聞こえたので、反射的に身体を起こす。まだ少し寝惚け眼だが、視界に映る緑髪の美しい少女のを確認した。僕に馬乗りになっているのだが・・・。


「・・・ユグ・・・まだ日も昇ってないよ・・・」
「何を言ってるの?あなたは任務の途中でしょ?なら早めに行くことに越したことはないわ」
「まだ眠いんだよ・・・というか、起こすために出て行きたの?」
「あら?ダメかしら?私の主を起こしに来たのよ?」
「主はやめてよ・・・」


先程からの会話を聞いていればわかると思うが、この緑髪の美少女は僕の契約精霊だ。僕より少し背が高く、綺麗な翠の瞳を持っている。そして彼女は、とても高位の精霊なのである。


「ていうかいま何時なの?」
「4時30分よ」
「まだまだ時間あるじゃないか・・・はぁ。とにかく起きたんだから、植え付けはやめてよ?」
「えーいいじゃない。私の本来の力が常に使えるようになるのよ?」
「本らの力を使う方法ならあるから・・・。それにこれ以上化け物になってどうするんだい」
「残念ね。種ならいつでも準備できてるのに」


彼女はことあるごとに、僕に自分の力を与えようとしてくる。が、僕はそれを毎回丁重にお断りしている。その力は本当にピンチになった時に使うことにしている。違う方法で。


「とりあえず朝食を食べようかな。ユグも食べる?」
「じゃあ、いただくわ。あなたのご飯を食べるのも久しぶりね」
「そうだ「ん?ご飯・・・食べるよ」」


僕が返事をしようとした時、僕らの声ではない声が聞こえた。


「フリーム・・・起きちゃったの・・」
「ん・・お腹すいた・・」
「寝てばっかりで魔力を補給してないからでしょ・・」
「まあいいじゃないか。これなら後の2人も起こした方がいいかな?」
「あの2人・・・まだ寝てるよ」


僕の契約精霊は全部で4体。それぞれみんな女の子の姿を取っている子達だ。
炎、水、自然、光、この4つの属性の精霊たちだ。


「じゃあま、リビングで待っててね。すぐ作るから。とりあえずユグは僕の上から降りてね」
「ああ、ごめんね」


ユグに降りてもらい、僕はベッドから起き上がると、着替えるために精霊たちにリビングに向かってもらい、着替えを始める。
着替え終わったら、朝食の準備だ。





朝食の準備中。ユグが僕に話しかけてきた。


「今日はどんな感じで行くの?」

今日の予定を聞きたかったようだ。


「とりあえず、今日も王女様の護衛・・・もとい監視をしながら、危険モンスターを先に駆除して行くよ。いなかったら・・・ずっと監視だけになってしまうけどね」
「本当に退屈な依頼よね。なんでユリは受けたの?」
「退屈だと・・・眠くなる・・・」
「あなたはいつもでしょ・・・」


僕が依頼を受けた理由・・・よく考えてはいなかったが、大体学園長の依頼だからだろう。


「学園長の依頼だからかな。一応お世話になってるわけだし。あと、貸しを作って起きたかったのもあるかな?」
「ふーん。まあなんでもいいわ。私たちはあなたについて行くだけだから」
「私・・・も・・・」
「はは。ありがとう2人とも。っと、できたよ」


そんな話をしているうちに、朝食が完成した。今日は甘いフレンチトーストにしてみた。僕の精霊たちは、みんな甘いものが好きだからだ。もちろん僕も好きだが。


「じゃあ、食べようか。蜂蜜はそこにあるから」
「ありがとう。いただきます」
「いただき・・ます」


それから2人は会話もすることなく、夢中で朝食を食べ、4枚ほど追加で作るはめになった。




朝食を食べた後、いつものようにソファーに腰掛けながら紅茶を楽しんでいた。フリームは食べ終えた後、眠くなったようで、今は僕の膝を枕にして眠っている。


「本当にこの娘はよく眠るわね」
「まあ、いつものことじゃないか」
「あなたにかなり甘えてるのもね・・・」


ユグは少し不機嫌そうに呟く。それを誤魔化すように紅茶に口をつける。


「そういえばユリ」
「ん?」
「・・・あなたの復讐はどうなったの?」


少し、心配と興味の混じった視線で僕に問いかけてきた。


「相手には会ったよ。殺してないけど」
「そう。でも、感情に任せて攻撃しようとしなかった?」
「あの時は、フリームが制御をかけてくれたから、大丈夫だったよ」
「この娘も中々やるようね・・・」
「うん。今はこんなんだけど、本当に頼りになるよ・・」


僕はこの精霊たちを、人間よりも信用している。僕と契約をしたのだから、もう家族も同然だ。


「ユリの記憶は・・・私たちはみんな見たわ」
「・・・初耳なんだけど・・どう思った?」


まさか勝手に見られているとは思わなかったが・・・まあ、恥ずかしい記憶はあまりないので構わない。


「・・・見ていられないと思ったわ。最初はね、恥ずかしい思い出でもあるんじゃないかって気持ちで、記憶を見ていたの」
「それはそれで困るんだけど・・・」
「契約したての頃だったから、好奇心が勝っちゃったのよ。初めての契約だったわけだし」
「あの頃からか。あまりいい思い出はないからね」
「代わりにあの記憶を見てしまったのだけど・・・。よくあれで自我が保てたものね」
「必死だったんだ。ここで死ぬわけにはいかないと思ったんだ。僕には使命があると・・・思って」
「・・・その使命ってなんなの?」


ユグが聞いてくる。前々から気にはなっていたのだろう。
だが、僕も使命があることはわかるのだが、肝心のその内容がわからないのだ。


「わからないんだ。だけど、多分これが関係しているってことは分かってる」
「それは?」
「ミラエル=ルシフェル。この人の名前がとても引っかかるんだ」


その名前は、突然頭に浮かんだ名前。全く知らないのに、呼ぶたびに何故か、心が締め付けられる、とても懐かしい感じがするのだ。


「その人物が関係しているってこと?」
「多分そうなんだと思う」


何故か、確信めいたものがある。ユグはその答えを聞くと、紅茶を飲みながら続けた。


「ま、あなたの目的がなんでもいいんだけどね。私たちはあなたの手助けをすることに変わりはないわ」
「・・ありがとう」

僕は素直にお礼を言った。こんなに尽くしてくれているのだ。僕はとてもいい契約精霊を持ったものだ。が、少し困ったところもある。


「もっと頼ってもいいんだからね?1人でなんでも抱え込んじゃうんだから」
「・・・なんで隣に移動した?」


ユグは僕の隣まで移動し、腕を絡ませてきた。


「大丈夫よ。私たちはちゃんと力になるんだから。もっと頼って。ね?」
「ん・・・私も・・・頼って?」
「ふ、2人とも・・・・力強い・・・・」


フリームもいつの間にか起きたようで、腰に手を回ししがみついている。女の子としての柔らかさがあるが、僕の心拍数は上がらない。というか苦しい・・・。


彼女たちは少し愛情が過多なのである。もちろんあとの2人もだが・・・。

少し気をつけないと、愛情が強すぎてよくないことになるかもしれない。
その心配で、僕の心拍数は上がっていた・・・冷や汗とともに・・・。

コメント

  • 通りすがりの猫好き

    本来が本らになってますよ

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品