創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

第34話 学園出発

あの学園長からの依頼を受けた一週間後。とうとう課外実習の日がやってきた。1年生たちは早朝に集合し、目的地の草原を目指すようだ。


「じゃあ、お願いね。念のため言っておくけど、ユリは来ていないことになってるから、姿は見られないようにね」
「分かっていますよ。魔法でちゃんと隠れますから安心してください」


1年生たちが点呼を取っている間に、僕は挨拶のある学園長と少し話をしている。彼女は僕が万が一にもバレないか心配のようだ。僕は属性魔法でも隠れることはできるが、今回はルーン魔法を使うことにしている。
最近は属性魔法ばかり使っていたので、ルーン魔法も使わないと感覚を忘れてしまいそうで怖い。そんなことはないと思うが、一応心配はしている。


「あ、そろそろ私の番ね。じゃあ行ってくるから、ユリはもう出発の準備をしていなさい」
「わかりました」
「あと・・・無茶はしないで」


最後に、真剣な声音で僕に忠告し、学園長は壇上へと上っていった。1年生は全員この集会場に集まっている。学園長の話が終わると、クラスごとに出発になるのだ。今日は皆、動きやすい運動用の服に着替えて参加をしているの。なので、たくさん動くという訓練を積みやすい。
最も、僕はいつも通りの制服だが・・・。


僕は舞台影から、学園長の話が終わるのを待っていた・・・・・。




それから10分後。学園長の話が終わった。流石に危険が付きまとう実習なので、入学式のように一言で終わるということはなかった。かなりの注意を呼びかけ、壇を降りた。


「じゃあユリ。気をつけるのよ。私は部屋に戻るから」
「十分気をつけますね。行ってきます」


僕は学園長と別れ、外へ向かう。まだ1年生は担任などから指示をもらっているため、鉢合わせることはない。
外に出てすぐに、僕は魔法を使う。


「【姿を隠せ】」


両腕が発光し、僕の姿が透明になり消えた。ルーン魔法で僕の姿を他人から消えないようにしたのだ。見えないだけであり、実態はある。なので触れることができるのだ。この魔法を纏ったまま、1年生が出てくるのを待っていると。


「あれか・・・」


最初に出てきたのはAクラスだ。事前に調べてはいたため、今回の依頼の人物はすぐわかった。
栗色の長髪と同色の瞳。スラッと長い手足に、まだ発達状態ながらそれなりにある胸部を持つ綺麗な人だ。僕はあの王女様に注意を向けながら今回の任務を果たすことになる。


(このまま歩いて守るのは都合が悪いな。機動力に問題が出てくる・・・)


僕1人でモンスターの相手をするならば問題はない。だが、生徒たちに気付かれずに王女様を守るのはそれなりに難しい。なので、僕はもう1つ魔法を使うことにした。機動力があり、周囲をよく見渡すことのできる魔法だ」


「【飛翔】」


僕は空を飛ぶことにした。本来なら、風魔法でも飛ぶことができるが、あれでは周囲に気付かれてしまう。周囲に風を起こすからだ。
その点、この飛翔は周囲に風を起こすこともない。追跡にはぴったりだ。


「じゃあAクラスは出発しますよ !」


Aクラスが動き出したので、僕は空を飛び、上から後をついて行く。学園から出ると、そこから先は大型の荷馬車に乗って移動する。この移動の手段も訓練の一環だ。僕は一生味わうことはないだろうが。


「・・・王都を出るまで暇だな・・・」


僕は空に浮かびながら、暇を持て余した・・・。





しばらくして、Aクラスがようやく王都を出た。ここから先はモンスターが出現する地帯である。生徒たちの顔も自然と引き締まっていた。移動中にモンスターに襲われた場合、担任の教師が撃退することになっているが、絶対に自信がある生徒が倒すこともできる。失敗してもフォローできるだけの教員がいるので、安心して放つことができる。


「・・・早速出たか。でもま、あれなら大丈夫だね」


Aクラスの荷馬車に向かってくるモンスターが数匹いた。狼型のモンスターで、名前は確かブラッドウルフ。僕も一度襲われたことのあるモンスターだ。


「【ウィンドランス】」


Aクラスの誰かが攻撃をしたようだ。見事に魔法はブラッドウルフの1匹に命中し、絶命させた。
中々上手な魔法だったので、誰が放ったのか見てみると、どうやら王女様のようだ。若干引っ込み思案の性格と聞いていたので、少し驚く。


「マリーちゃんやるぅ!!私も負けてらんないわ!!」


王女様に続けて、他の生徒たちも魔法を発動していく。この調子ならあまり問題はなさそうだと思い、周りの索敵に集中することにした。


「【周囲5キロ以内のモンスターの数と状況を伝えよ】」


ルーン魔法を使い索敵。特に問題のあるランクのモンスターがいないことを確認すると、僕はAクラスの状況を眺めていた。





一方Aクラス。先ほどの王女の行動をみんなが褒め称えていた。


「すごいねマリーちゃん。いきなり射って倒しちゃうなんて」
「た、たまたま当たっただけですよ////そんなに褒められることじゃ
・・ないですよ」
「いや、すごかったよ。私たち一瞬すくんじゃって魔法出せなかったもん」
「うんうん。やっぱりすごいよマリーは」
「あ、ありがとうございます///」


このマリー=カロリング第2王女は、少々引っ込み思案なところがある。姉のエリザ=カロリングはそれなりに強く出ることができる性格なのだが、マリーはそんな風に人と話すことができないと、悩んでいたのだ。

そんな自分を変えるため、この課外実習では頑張ると決めたのだ。先ほども一瞬竦みかけたが、強い意志を持ち、魔法を放つことができたのだ。


(私は・・・もっと強い人になるの!)


マリーの意思は固かった。この課外実習で、自分を変えるんだと、意気込んでいた。





課外実習は全部で3日間行われる。目的地の草原には小さな小屋がいくつもあり、モンスターを寄せ付けない魔法がかけられているのである。その小屋に生活に必要な設備が揃っているので、そこで生活することになるのだ。


「とりあえず、1日目は何もないようにしてほしいな・・・。とりあえず様子をみるか・・・」


僕はひとりごちりながら、1年生全クラスが草原に着くのを待ちながら、帰ったら学園長になにか要求しようと考えていた。

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