創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

第31話 面倒ないざこざ

生徒会室から去った後、僕は機嫌が悪かった。正直、あの部屋に入った瞬間に要件はわかった。謝罪の1つでもあれば、僕もここまで機嫌が悪くはならない。だが、あの場であったのは弁明だ。僕が最も聞きたくなかったものだ。それを言われた瞬間に、僕は魔法を使っていた。あれでもかなり手加減した魔法だ。

本当に怒りに任せていたら、もっとすごいことになっていた・・・。


(ダメだよユリ。もっと冷静にならなきゃ)


突然、頭の中に声が響く。だが、別段驚きはしない。この声は僕の契約している精霊のものだ。彼女たちはたまにこうやって喋りかけてくるのである。


(わかっているよ。僕は冷静さ)
(嘘。さっきも私を使おうとしてた・・・)
(ついカッとなっちゃったんだ。気をつけるよ)
(私を使ったら、本当に大変だから・・・)


それを言うと、彼女の声は途絶えた。精霊界に戻ったのだろう。パスは繋がっているので、僕が呼べばいつでも来てくれる。


「・・・とりあえず、食堂でも行こうかな」


僕はアドルがいるであろう食堂へ向かった。




食堂には昼食をとるのであろう生徒たちがたくさんいる。食堂はかなり広く、2階もあるのでスペースには困らない。2階と言っても、この食堂自体が3階にあるので、実質4階になる。が生徒が多いことは変わらないので、アドルを見つけるのに戸惑ってしまう。


「やっぱりすごい見られてるな・・・・」

先程から僕を見る視線がすごい。特に女子生徒からの視線だ。僕には見られる理由がわからないので、とにかく放置することにする。
と、そこで探していたクラスメイトの声がした。


「あれ?ユリエルじゃないか。奇遇だね」


隣のクラスメイト、アドルが僕の元にやって来た。


「すいませんね。午前の授業も休んでしまって」
「昨日もだったけど、どうしたんだい?ああ、まずは席に座ろうか」


僕らは唯一空いていた窓側の席に座る。ここは2階(4階)なので、王都の街がそれなりに見える。僕らはそこで話すことにした。


「実はですね。僕はしばらく授業に出ないんです」
「え?どうして?」
「学園長に魔道工学の研究をしてみないか、と言われたんです」
「それで・・・研究をするために授業を休むの?」
「ええ。学園長に許可は取ってありますから」


嘘はいっていない。僕には中等部の勉学は意味がない。魔導師としての知識はすでに兼ね備えてある。

「・・・ユリエルは、それでいいの?」
「え?」


アドルは僕の発言に意を唱えるようだ。


「クラスに馴染む前に教室に来なくなって、それじゃ友達とかできないよ?」
「別に友達を作るために行くわけでは・・・それにいつまでも行かないというわけではありません」
「それでもだよ。クラスメイトと仲を深めておくのがいいと思うんだ」


アドルは、他の人たちとも仲良くしておいたほうがいいと言う。が、何故だろう。僕は全くそうは思わない。


「仲良くなって、どうするんですか?」
「え?それは、休日に一緒に遊んだり・・・」
「僕にそれは必要ないですよ。遊ぶためにここに来たわけではないのです」
「でも、仲のいいひとがいないとつまらないよ」
「僕は既に何人か仲のいい人ができましたが・・・」
「・・・数人でしょ?」
「僕は浅く広くより、深く狭くのほうがいいんですよ」


実際、この学園には貴族の子供が多い。僕は正直いい環境だとは思わないのだ。


「ねえ、もう一度考えてから決めようよ。研究だけじゃなくて、他のことにも興味を向けてさ」
「・・・・検討しておきます」

それだけ言い、僕は立ち去ろうとした時だった。


「おい!!そこどけよ!!」


突然大きい声で怒鳴られた・・・気がした。名前などは特に呼ばれていないので、僕ではないだろうと、そのまま無視をする。

「おい!聞こえてるだろうが!!無視すんじゃねえよ!!」


僕は胸ぐらを掴まれそうになったが、軽く避け、その男を見据えた。見た目は逆立った金髪をしている、お世辞にも美形とは言い難い顔の男だった。僕は男に声をかけた。その後ろには2人の取り巻きと思われる男が2人いた。


「なんですか?」
「そこは俺たちの場所だ。さっさと消えろ」
「よく理解できませんね。俺たちの場所?ここはあなた方が購入された場所なのですか?」


僕は返すが、その回答が気に食わなかったらしく、激昂した様子で怒鳴って来た。


「うるせえぞ!!てめぇらは下級生だろ!上級生に席を譲るのが常識だろ!」
「生憎、僕はあなたを上級生に見ることができません。そんな幼稚な理由で通るとでも?」


周りを見れば、かなりの生徒がこの金髪の残念な人を嫌悪の視線で見ている。視界の端ではオロオロしたアドルが僕に止めるように言って来た。


「ユ、ユリエル・・・早く席を譲ろうよ・・」
「そうはいきません。この理解不能なゴミにお灸を据えなければ」


この言葉に、残念な人は完全に怒ってしまったらしい。


「てめぇ・・言わせておけば・・・いいぜ。表出ろや。魔法で潰してやるよ」
「あなたごときの魔法でですか?失礼ですが、自分の価値を見直したほうが良いのでは?」
「て、てめぇ・・・とにかく表来いや!!」


僕はめんどくさかったが、この残念な人に教えてあげるために外に出た。何を教えるかって?自分の残念さを。




僕らについて来た見物人を交えながら、残念な人は威勢良く僕には宣言する。


「おい!この人だかりの前でお前に土下座させてやるぞ!」
「あ・・はい」


ここまで来てなんだが、残念すぎて逆に哀れだ。残念な人は僕には魔法を放って来た。


「【ウィンドランス】!」


風魔法の攻撃だ。速さも精密さもそれなりにあるので、流石は自称上級生だと思う。


「はっ!どうだ!!怪我する前に降参したほうだいいんじゃねーか?」
「あーはいそうですね」


僕はなんだか魔法を使うのもバカらしくなったが、使わないとどうやって勝ったのかを聞かれるため。手っ取り早く終わらせることにした。


「【風の大砲ウィンドキャノン】」


風の大きな弾丸が、向かってくる風の槍もろとも吹き飛ばし、残念な人に向かっていく。とてつもない速さで。


「はぁ!?んなバカなグフッ!!」


何か言ったようだが、風の大砲は止まらず、その身体に直撃し吹っ飛ばす。その残念な人は、無様な姿を周囲に晒しながら倒れ込んでいた。無様な格好で。


「とりあえず終わったから、もう僕に関わらないように暗示をかけるか・・・」


最後にその人に暗示をかけ、いざこざは終了した。周りの野次馬たちは呆気にとられたように、僕を見ていた。


(流石に一言言ってから帰ろう)


そう思い、僕は周囲の人たちに見えるように、帰る道の階段を登り、とてもいい笑顔で挨拶をする。


「じゃあ皆さん。お騒がせしました。僕はこれで」


その後僕は背中を向けて立ち去るが、背後から色んな声と音がしたが、気にせずに研究室に戻った。



後日、この時の話が話題になり、その残念な人は退学になった。それとは別に、ユリエルのことも話題になり、Bクラスにユリエルの姿を見にくる人が増えたという。

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