創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

第27話 授業

ユリエルが生徒会室を去った後、アラン=ダステルは生徒会準備室で泣き崩れていた。自分の弟に、赤の他人であると宣言されたのだ。生きていたという喜びをことごとく砕かれた感じがした・・・。


「アラン・・・大丈夫ですか?」


一緒にいた栗色の髪を持つ少女、マナ=アルデンヌがアランに声をかけるが、アランはなにも答えず、ただ俯いていた。そこにユリエルと話し終わった生徒会長であるレティラ=ガディネが、2人のいる準備室に入って来た。


「アラン・・・本当にどうしたの?」
「・・・・すみません・・・」


レティラが心配したようにアランに声をかけると、少し落ち着きを取り戻したようだ。そこで、2人の関係について説明をすることにした。


「ユリ・・・ユリエル=フロウド君は、私の弟です」
「「弟?」」
「はい」


2人は驚いていたが、アランは話を続ける。


「昔、とあることがあって亡くなったんだと思っていたんです。父からは、そう聞かされていました」
「あることとは何?」
「・・・悪魔に取り憑かれて死んだと・・・・」
「悪魔?」
「会長。悪魔は実在していましたか?」
「いえ、してないと思うわ」


アランは、1度だけ入ったユリの牢屋を思い出し、再び一筋の涙を流す。あの時のユリの姿を・・・思い出しているのだ。


「あの頃から1度も会っていないので・・・本当に父が言っていた通りに取り憑かれてしまったのだろうと・・・」


あの時、何かしてあげられることがあったはずなのにと、後悔してもしきれない思いがあった。そのせいで、ユリは自分のことを赤の他人だというように拒絶したのだろう。と思っている。

が、レティラの次の言葉を聞き、ユリがそのような態度を取っている理由を理解することとなる。


「ねえ、アラン」
「はい」
「彼から伝言・・・といえばいいのかしらね。とにかく言葉を預かってる」
「・・・っ!!一体どんな・・・!」

「・・・あの時の感触は覚えていますか?って・・」
「・・・あ・・・」


その言葉に、アランは思い出す。自分がユリエルにしてしまったことを・・・


「わ、わた、しは、あの子に・・・はぁ・・はぁ」
「アラン?ちょっと落ち着きなさい。何があったの?」
「大丈夫ですか?ほらお水です。飲んでください」


マナから差し出された水を飲み干し、アランは息を整える。少し取り乱してしまったのと同時に、あの肉を抉る感触を思い出したのだ。


「ありがとうマナ。落ち着いたわ・・・」
「とりあえず、あなたは彼と少し話す必要があるわね。明日、また彼を呼び出すから、ちゃんと話すのよ」
「・・・はい」


明日、ユリエルときちんと話さなければ・・・・。そう思うアランであった・・・。





僕が生徒会室から帰った後、丁度昼休みが終わる鐘がなった。教室にはまだ誰もいないので、今からみんなが帰ってくる頃だろう。
やることもないので、僕はいつものように読書をし始める。そのまま授業が始まるのを待っていると、僕に声がかけられた。


「えっと、ユリエル君・・・だったよね?」


僕の記憶にはない、藍色のショートカットヘアをした女子生徒だった。名前はわからないが、クラスメイトのようなのでとりあえず返事をしておく。


「そうですが・・。何か用ですか?」
「えっと・・今日遅刻して来たみたいだから、何かあったのかなと思って」
「特に何もありませんよ。少し寝坊をして学園長に少し怒られていました」


一応嘘ではない回答を返しておく。怒られてはないが、学園長とお話しをしていたのは事実だ。だが、この女子生徒はそこに疑問を持ってしまったらしい。


「え?なんで学園長なの?普通は担任の先生なんじゃ・・・」
「たまたま遭遇したんですよ。運が悪かったです」
「そ、そうなんだ・・・」


とりあえず納得してもらっただろう。僕は本の続きが読みたかったので話を終わらせようとした。が、女子生徒はまだ会話を終わらせる気は無かったようだ。


「あの・・もしかして私の名前とか覚えてない?」
「残念ながら」


僕が名前を呼ばないのでわかったようだ。特に名前を知る必要もないと思ったが、彼女は名乗ってくれた。


「私はミネア=フォルネス。クラスメイトだから、覚えてね」
「わかりましたよミネアさん」
「いきなり名前呼びなんだね」
「不快ですか?」
「いや、全然」


少しだけ、会話が弾む。だが、苗字があるということは彼女も貴族なのだろう。仲良くするのはいいが、信用はしない。


「でもよかったね。遅刻してきて」
「なぜですか?」
「先輩たちがユリエル君のこと探してたんだよ。いきなりAランククラスの子が現れたからって。部活とか研究会に呼び込もうとしてるんだと思うよ」
「ご忠告感謝します・・・」


僕はそれを聞いて、本当に家に篭ろうか検討するのであった。





授業が始まった。昨日先生が言っていた、モンスターや魔導師のランクについてだ。僕はセレスさんに習ったので特に必要ない。それ以前に、ルーンの知識ですでにインプットしてあるのだ。たいていの知識は持ち合わせている。


「いいか?昨日少し話したが、魔導師にはランクがあり、その中でも順位が決められている。FからSSSランクに区別されており、順位を上げるには自分より上の順位の奴を倒すか、魔導師としての実績を積むことだ」


ここもやったが、ふと僕の順位は幾つなんだろうかと気になった。確かランクカードに書いてあったので、帰ったら確認することにする。
余談だが、アドルには遅刻したことについて


「寝坊なら仕方ないよね」


とそれだけ言われ、特に何も言われることは無かった。面倒なことにならなくてよかった・・。そうしている間にも授業は進んでいく。


「そして、Sランク以上の魔導師は極端に数が減る。Aランクは今現在で1300人程いるが、Sランク以上は合計でも500人もいない。その中でも、一番上のSSSランクは4人しかいない。俺はあったことがないが、こいつらはSSランクの化け物を単独で討伐するほどの奴らだ。ここまでいかなくてもいいが、お前らはできるだけ高ランクになれるように頑張るんだぞ」


先生はSSSランカーが4人しかいないと言ったが、正確には5人になった。僕の存在は非公開なので、知る由もないだろうが・・・。


「次にモンスターの説明をするぞ。モンスターのランクは討伐の難しさで決まる。強いだけが高ランクではない。素早さや発見の難しさなどもランクの中に入るんだ。もちろんAランク以上なんてのは単独で討伐するのはかなり困難だ。Sランク以上に至ってはほとんど無理だ」


討伐がほとんど不可能に近いため、SSランク以上の魔導師がこれだけ少なく、それだけその戦力は重宝されるのだ。


「これがSSランク以上の魔導師が少ない理由の一つでもある。Sランクは優秀な騎士団1個団体がかろうじて倒せるレベル。SSランクに至っては国の軍隊が総力を挙げて討伐するレベルだ」


そんなに強いものだったのかと、今更ながら思う。そんなに強い風には見えなかったし感じなかった。あまりにあっけなく倒してしまったのでだ。


「最後にSSSランクモンスターについてだ」


これはセレスさんにも聞いていない。僕は少し興味を持ったので、真剣な様子で聞く。


「これは俺たちがいる大陸には生息していない。人間の領域と、魔族の領域の境目に大きな海があるだろう。あれは救世の魔導師が作ったと言われる亀裂に海水が流れ込んだものだが、あそこの中心に少し小さい大陸がある。あそこに生息していると言われている」


それは聞いたことがなかったが、何故だろうか?
僕は、そのことを理解しているように感じた。
いったいなぜ・・・?


「んで、この大陸は傍目からは小さく見えるが、何故か中に入るととてつもなく広い。おそらく、何らかの空間魔法が使われていると言われている。空間魔法なんて伝説の産物って言われているけどな」


僕は先生の話をボーっとしながら聞いていた。すると、終業の鐘がなった。

「じゃあ、今日はここまでな。各自解散!」



僕はその日の授業で感じた違和感を、気のせいにはできなかった。





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