創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

第21話 顔合わせ

模擬戦が終わった後、僕たちは学園長室に戻ってきた。今は応接用のソファーに腰を下ろしながら、紅茶を飲んでいる。


「実は私は最初、あなたのランクを疑っていたのです」
「まあ、当然だと思います。5歳でSSSランクになった人なんていないわけですし」
「ええ。Sランクに上がるのですらかなりの修行がいるのですもの。半信半疑でした」
「その前にいいですか?」
「なんでしょう?」


僕は先程からかなり気になっていることを話すことにした。


「その言葉遣いはやめてくれませんか?」
「しかし、模擬戦とはいえ負けてしまった・・・それも自分より上のランクの方に敬意を表すのは魔導師としての・・・」
「じゃあ、僕からのお願いにします。敬語をやめて生徒に話すようにしてください」


学園長はその言葉に若干驚き、そして笑顔を作り承諾した。


「わかったわ。あなたがそこまで言うなら直すわ。あなたは生徒で、私は学園長だものね」


自分の立場と僕の立場を忘れてしまっては困る。こんな言葉遣いをされていては、確実に疑われてしまう。


「いやま、他に生徒がいるところで話すことになったらやめるつもりだったわよ?それくらいの区別はできるわ」
「僕的にはそういう言葉遣いをされるとかなりきついものがあります」


やはり普通に話し方をされるのが一番いい。気疲れしなくてもいいからだ。
と、僕はそろそろお暇することにした。


「じゃあ、僕はもういきますね。かなり長居してしまいました」
「あら?もう行くの?もっとお話していかないの?」


すでにここに来てから2時間は経っているのだ。流石にこれ以上長居するのは気がひける。僕はソファーから立ち上がり、扉の方へと足を向ける。


「もう家に帰りますよ。教室には誰もいないでしょうから」
「そうね。流石に誰もいないとは思うけど・・・自分の座席くらいは確認して来たら?」
「そうですね・・・行って見ます。ああ、それと学園長」
「?なに?」


僕はここに来るまでにあったことを話す。たくさんの視線を感じたのだが、僕には全く身に覚えがない。このことを学園長に話したところ、


「うーん。あなたはもう少し自分のことをよく知った方がいいわね。あと周りの価値観も」


とのことだ。全く意味がわからないが、とりあえず教室には向かうことにした。





教室のある2棟にやって来た。思った通り、生徒の姿は全くない。すでに今日の下校時刻を過ぎているのである。
とにかくBクラスの教室を目指す。


「あ、ここみたいだ」

しばらく廊下を進むと、1ーBという札のぶら下がった教室があった。教室の入り口にはクラス名簿と座席表が貼ってある。

「・・・窓際一番上の一番後ろから・・・」


ここの教室は席が後ろになるほど視線が上がるように、段になっている。僕は一番後ろの窓際のようだ。


「さて、一応教室の中に入っておこうか」


一度くらい入って行った方がいいだろうと思い、僕は教室に入った。やはり誰もいないが、そんなことはわかりきっていたことである。とりあえず自分の席に座ってみる。

前の黒板は問題なく見えるが、窓から入って来る心地よい風に、授業中に寝てしまわないか心配ではある。まあ、居眠りをしていてもいいのだが・・・


「まあ、別に真面目に通わなくてもいいらしいから、眠くなったら寝ようかな。貴族の子にどんな目で見られてもいいし」


そう結論づけ、僕は教室を後にした・・・





翌日。今日が僕にとって初めてのクラスの顔合わせである。クラスの比率はやはり貴族の方が高いようだ。平民の子は才能があり、学園に特待生として入った子が多いとのことだ。


「まあ、平民の子達とは仲良くしていきたいな」


そんな感じに考えている。貴族に関しては信用はできない。その子本人がいい子だとしても、親がそうとは限らないのだ。個人的に貴族が嫌いなのももちろんあるが・・・


「貴族の子に関しては警戒しておく必要がありそうだな。でもまあ、誰彼構わず毛嫌いするのはやめよう。ちゃんと付き合える子は付き合っていこう」


そんな感じのことを心に決めながら、学校に入った。





(なんでこんなに視線感じるんだ・・・)


教室を目指していたのだが、明らかに昨日より視線を感じるのである。なんだか上級生からも見られているような・・・


(この髪がそんなに嫌なんだろうか)

僕は、白銀の髪がそれほどまでに嫌われているのだろうと思っている。が、感じている視線には嫌悪などは感じられない。なんだか興味のあるような感じの視線だ。


(だめだな。気にせずいこう)


視線のことは諦めて、2棟に入り、教室に向かった。




教室の近くまで来たが、教室の中からはクラスメイトたちの談笑の声が聞こえてくる。もうそんなに仲良くなったのだろうかと、少しだけ驚きつつ教室に入る。


僕が入った瞬間に、空気が変わった。
クラスメイトたちが談笑をやめ、僕を見て来る。それは驚きと、物珍しさのこもった視線。やや頬を赤らめて見て来る者もいる。

(なんだ?昨日来てなかったから誰だとか思われてるのかな)


勝手にそう結論づけ、僕は自分の席へと向かい、席に着く。特にやることもないので、家に置いてあった本を鞄から取り出し読むことに。
クラスメイトたちはいまだに僕の方を見ているが、特に気にしない。が、1人の少年が僕に話しかけて来た。


「やあ、おはよう。君は昨日いなかった子だよね?僕はエルド=シュナイツァー。スレイ=シュナイツァー伯爵の長男だよ」


爽やかな見た目、物怖じしない性格から貴族ではないかと思っていたが、予想は的中したようだ。金髪の男にしては少し長い髪に翠の瞳がとても印象的な美少年という感じの少年だ。


「昨日はいきなり学園長に呼び出されたんです。あまりお気になさらず」


僕はあまりこの少年が得意ではないと、直感的に思った。なんというか、正義感の塊のような存在だと感じたのだ。一応無難に言葉を返す。その時に笑顔を忘れない。


「・・っ!そ、そうなんだ。学園長にね・・・」
「ええ。ですので昨日は教室に来ることができなかったのです」
「ちなみに・・・どうして呼び出されたんだい?」
「この髪の色のことですよ。染めているなら戻しなさいとね。生憎地毛なので、どうしようもありませんが」


話す時には微笑みを忘れずに会話をする。なんだか頬を紅潮させている女子が増えて来たが、僕とは関係がないだろう。そんな風に会話を続けるが、あることを忘れていたと、エルド君が言って来た。


「君の名前を聞いていなかったね。なんていうんだい?」
「・・・ユリエル=フロウドと言います。よろしくお願いしますね」
「ああ、こちらこそ」


そう言って、彼は他のクラスメイトの元に戻っていた。






少しの間、1人で読書をしていると、もう1人少年が声をかけてきた。今度の少年は、エルド君とは違いとても優しそうで性格の柔らかそうなイメージのする子だ。


「初めましてでいいよね?見ての通り君の隣の席だよ。僕はアドル。平民の出身だから姓はないんだ。君はユリエル君でよかったかな?」
「名前は知られていましたか。僕はユリエル=フロウド。僕も平民・・の出身ですよ」
「え?でも苗字があるじゃないか」
「これは昔助けてもらった人の苗字をいただいているだけなんです」


確かに元貴族ではあるが、僕は貴族なんかになりたくない。魔導師の肩書きだけで十分なんだ。本気でそう思っている


「そうなんだ・・・。平民同士仲良くしようね」
「はい。よろしくお願いしますね」
「なんで敬語なんだい?」
「すみません。これは昔からの癖でして・・どうも治りそうにないんです」
「そういうことか。じゃあ仕方ないね。これからよろしく!」


ホームルームの前に、2人の生徒と会話ができた。
ほとんどセレスさんとロドスさんとしか話して来なかったので、初日としては中々の成果だと思った。


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