創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜
第5話 継承
お風呂場で半年ぶりに涙を流した。とっくに自分の心は壊れているもの
だと思っていたのだが、まだ壊れきっていたわけではなかったようだ。
こんなにも、涙が流れるのだから・・・
◇
「落ち着いた?」
「ぐすっ・・・はい」
しばらく泣いた後、涙は自然に止まった。心が軽くなった気がした。随分と溜め込んでいたのだろう・・・気を休めることができなかったので当然ではあるが。
「よし!決めたわ!ユリエルは今日から私の養子になりなさい!」
「え?・・・養子?」
いきなり言われたので困惑した。養子ということは、家族になるということだ。だが、突然言われても・・・・
「本当に、いいんですか?」
思わず敬語になる。やはりお願いする身としては気安く話しかけるということはどうかと思ったのだ。
「もちろんよ。私からいいと言ってるんだからいいに決まってるでしょ」
「それは・・・そうですが・・・」
だが僕がいていいのだろうか・・・迷惑をかけてしまうかもしれない。拷問部屋に身代わりの肉片を置いてきたので僕は死んでいることになっていると思うが、それでも追っ手が来ないという確証はない。がしかし、僕は一番重要なことを失念していた。
「あの・・・そういえばここはどこなんですか?」
自分の今いる場所を把握していなかったのである。大失態である。
「ん?ここは私の家だけど?」
「いえ、そういうころではなくて」
「冗談よ。ここは始原の森の中。森の魔力の中枢って言う所」
「なッ・・・始原の森!?そんなに遠くに飛ばされてきたのか・・・」
まさかそんなに遠くに飛ばされていたとは・・・・それなら追っ手が来ることはまずない。ここはあの辺境の街、カデアルから馬車と船で1年はかかるところにあるのだ。
だが、ここで僕は一つ失言をしたことに気がついた。
「飛ばされた?どういうこと?」
「あ・・・えーっと・・」
セレスさんから距離を取ろうと試みるが、後ろから抱きすくめられているため逃げられない。まあ逃げる必要はないのだが。
「・・・僕はカデアルの街から転移をして逃げてきたんです」
「転移!?転移魔法って言ったら、使える人なんてこの時代にはいないはずだけど・・・」
「え?」
今なんて言った?転移魔法を使える者がいない?だが、現に僕は転移を使って逃げてきたのだ。一体どういう・・・
するとセレスさんは僕を真剣な顔で見つめてきた。綺麗な顔が真近にあるのだが心拍数が上がるなどのことは一切なかった
「ユリエル。よく聞いて。本当に転移魔法が使えるのよね?」
「は、はい」
少し怖かった。まさか何かされるのではないかと。また、人体実験の材料にされるのかと、そんな不安が脳裏をよぎった。だが彼女の言葉は予想外のものだった。
「ユリエル。あなたは魔法がどこまで使えるの?」
「えっと・・・僕のオリジナルしか・・・」
「あなたのオリジナルはとてつもない魔法なのかもしれないわ。お風呂から上がったら、詳しく聞かせてちょうだい」
「え?別にここでも・・・」
「自分がのぼせかけてるのわかってる?」
そういえばなんか頭がクラクラする。本当にのぼせかけているようだ。ということで手早く身体を洗いお風呂場を後にした。
◇
お風呂場からあがり、セレスさんに水をもらい一息つく。この時間も、とても新鮮だった。そして本題に入る。
「あの・・・・僕の魔法って・・・」
「とりあえずは見ないことにはわからないわ。とりあえず外に行きましょう」まだ、日が昇って結構時間経ってるから外は明るいだろうし」
そういえばまだ昼だった。夜中に転移し気絶、目が覚めたのはそれからしばらくしてからだったのだ。
「わかりました。じゃあ外で魔法を使いましょう」
「・・・敬語は直さないの??」
そんなことを言って来るが、これからお世話になるだろう人だ。敬語を使う。これはもうすでに決めていたことだ。
「もう直す気はありません。これからはこう話します」
「うーん残念ね。別に敬語じゃなくてもいいのに」
そんな会話をしながら外に向かう。家から少し行ったところに草原地帯があったので、そこで魔法を見せることにした。
「なんでもいいから複数の魔法を1つずつ使ってみて」
「わかりました」
ということで詠唱に入る。と言ってもほとんど詠唱らしい詠唱は使わないのだが・・・・
「【十の剣】」
唱えると同時に、空中に10本の剣が出現する。それは自在に操ることができ、空を舞っている。
「せ、生成魔法・・・・」
セレスさんがなにやら驚愕の顔をしているが、僕は構わず次の魔法を行使する。
「【圧縮せよ】」
近くにあった木が圧縮され、潰れ、やがて掌の大きさくらいに小さくなってしまった。この魔法は途中で止めることができるのと、圧縮する強さをコントロールすることができるようだ。
「空間操作魔法・・・・ね・・・・」
セレスさんの顔が引きつっている。それほど驚くことをしただろうか?そして僕は最後の魔法を繰り出した。
「【消滅せよ】」
その瞬間。僕の前にあった木が5本ほど消滅した。全て跡形もなくだ。この魔法は範囲を指定することによって、空間ごと消滅させる魔法らしい。消滅した空間はすぐに戻るが。
「とんでもない子だったわね・・・」
セレスさんは呆れたとばかりに僕の方へとやって来る。
正直この魔法を見せただけでなにか変わるのだろうか?僕は不思議で仕方なかった。だが、セレスさんから驚きの言葉が発せられる。
「ユリエル。よく聞いてね?今あなたが使った魔法は全て、過去に1人しか使うことのできなかった、どの系統にも属さない魔法よ」
「え?」
何故か頭が痛くなる。彼女の言葉を聞く度にその痛みは強くなる
「しかも、その1人はあの300年戦争を止めたあの伝説の英雄よ?」
「伝説の・・・・英雄」
頭痛はひどくなるが、その名前を聞かずにはいられなかった。
「その・・・英雄は・・・何て名前なんですか?・・・」
その名前を、聞かなければない気がして仕方ない
そして、その名前を知ることになる
「名前?名前はわからないけれど、通称なら、【救世の魔導師】よ」
「救世の・・・魔導師」
その名を聞いた瞬間。なにか名状し難い感覚が全身を貫いた・・・
そして声が聞こえる
『継承だ。力を持って、彼女のもとへ』
頭に声が響いた瞬間。僕は自分の中に何かが入って来るのを感じた。
だと思っていたのだが、まだ壊れきっていたわけではなかったようだ。
こんなにも、涙が流れるのだから・・・
◇
「落ち着いた?」
「ぐすっ・・・はい」
しばらく泣いた後、涙は自然に止まった。心が軽くなった気がした。随分と溜め込んでいたのだろう・・・気を休めることができなかったので当然ではあるが。
「よし!決めたわ!ユリエルは今日から私の養子になりなさい!」
「え?・・・養子?」
いきなり言われたので困惑した。養子ということは、家族になるということだ。だが、突然言われても・・・・
「本当に、いいんですか?」
思わず敬語になる。やはりお願いする身としては気安く話しかけるということはどうかと思ったのだ。
「もちろんよ。私からいいと言ってるんだからいいに決まってるでしょ」
「それは・・・そうですが・・・」
だが僕がいていいのだろうか・・・迷惑をかけてしまうかもしれない。拷問部屋に身代わりの肉片を置いてきたので僕は死んでいることになっていると思うが、それでも追っ手が来ないという確証はない。がしかし、僕は一番重要なことを失念していた。
「あの・・・そういえばここはどこなんですか?」
自分の今いる場所を把握していなかったのである。大失態である。
「ん?ここは私の家だけど?」
「いえ、そういうころではなくて」
「冗談よ。ここは始原の森の中。森の魔力の中枢って言う所」
「なッ・・・始原の森!?そんなに遠くに飛ばされてきたのか・・・」
まさかそんなに遠くに飛ばされていたとは・・・・それなら追っ手が来ることはまずない。ここはあの辺境の街、カデアルから馬車と船で1年はかかるところにあるのだ。
だが、ここで僕は一つ失言をしたことに気がついた。
「飛ばされた?どういうこと?」
「あ・・・えーっと・・」
セレスさんから距離を取ろうと試みるが、後ろから抱きすくめられているため逃げられない。まあ逃げる必要はないのだが。
「・・・僕はカデアルの街から転移をして逃げてきたんです」
「転移!?転移魔法って言ったら、使える人なんてこの時代にはいないはずだけど・・・」
「え?」
今なんて言った?転移魔法を使える者がいない?だが、現に僕は転移を使って逃げてきたのだ。一体どういう・・・
するとセレスさんは僕を真剣な顔で見つめてきた。綺麗な顔が真近にあるのだが心拍数が上がるなどのことは一切なかった
「ユリエル。よく聞いて。本当に転移魔法が使えるのよね?」
「は、はい」
少し怖かった。まさか何かされるのではないかと。また、人体実験の材料にされるのかと、そんな不安が脳裏をよぎった。だが彼女の言葉は予想外のものだった。
「ユリエル。あなたは魔法がどこまで使えるの?」
「えっと・・・僕のオリジナルしか・・・」
「あなたのオリジナルはとてつもない魔法なのかもしれないわ。お風呂から上がったら、詳しく聞かせてちょうだい」
「え?別にここでも・・・」
「自分がのぼせかけてるのわかってる?」
そういえばなんか頭がクラクラする。本当にのぼせかけているようだ。ということで手早く身体を洗いお風呂場を後にした。
◇
お風呂場からあがり、セレスさんに水をもらい一息つく。この時間も、とても新鮮だった。そして本題に入る。
「あの・・・・僕の魔法って・・・」
「とりあえずは見ないことにはわからないわ。とりあえず外に行きましょう」まだ、日が昇って結構時間経ってるから外は明るいだろうし」
そういえばまだ昼だった。夜中に転移し気絶、目が覚めたのはそれからしばらくしてからだったのだ。
「わかりました。じゃあ外で魔法を使いましょう」
「・・・敬語は直さないの??」
そんなことを言って来るが、これからお世話になるだろう人だ。敬語を使う。これはもうすでに決めていたことだ。
「もう直す気はありません。これからはこう話します」
「うーん残念ね。別に敬語じゃなくてもいいのに」
そんな会話をしながら外に向かう。家から少し行ったところに草原地帯があったので、そこで魔法を見せることにした。
「なんでもいいから複数の魔法を1つずつ使ってみて」
「わかりました」
ということで詠唱に入る。と言ってもほとんど詠唱らしい詠唱は使わないのだが・・・・
「【十の剣】」
唱えると同時に、空中に10本の剣が出現する。それは自在に操ることができ、空を舞っている。
「せ、生成魔法・・・・」
セレスさんがなにやら驚愕の顔をしているが、僕は構わず次の魔法を行使する。
「【圧縮せよ】」
近くにあった木が圧縮され、潰れ、やがて掌の大きさくらいに小さくなってしまった。この魔法は途中で止めることができるのと、圧縮する強さをコントロールすることができるようだ。
「空間操作魔法・・・・ね・・・・」
セレスさんの顔が引きつっている。それほど驚くことをしただろうか?そして僕は最後の魔法を繰り出した。
「【消滅せよ】」
その瞬間。僕の前にあった木が5本ほど消滅した。全て跡形もなくだ。この魔法は範囲を指定することによって、空間ごと消滅させる魔法らしい。消滅した空間はすぐに戻るが。
「とんでもない子だったわね・・・」
セレスさんは呆れたとばかりに僕の方へとやって来る。
正直この魔法を見せただけでなにか変わるのだろうか?僕は不思議で仕方なかった。だが、セレスさんから驚きの言葉が発せられる。
「ユリエル。よく聞いてね?今あなたが使った魔法は全て、過去に1人しか使うことのできなかった、どの系統にも属さない魔法よ」
「え?」
何故か頭が痛くなる。彼女の言葉を聞く度にその痛みは強くなる
「しかも、その1人はあの300年戦争を止めたあの伝説の英雄よ?」
「伝説の・・・・英雄」
頭痛はひどくなるが、その名前を聞かずにはいられなかった。
「その・・・英雄は・・・何て名前なんですか?・・・」
その名前を、聞かなければない気がして仕方ない
そして、その名前を知ることになる
「名前?名前はわからないけれど、通称なら、【救世の魔導師】よ」
「救世の・・・魔導師」
その名を聞いた瞬間。なにか名状し難い感覚が全身を貫いた・・・
そして声が聞こえる
『継承だ。力を持って、彼女のもとへ』
頭に声が響いた瞬間。僕は自分の中に何かが入って来るのを感じた。
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