創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜

RAKIHA

プロローグ

その昔、人間と魔族の間では戦争が絶えなかった。昼夜問わず、争い、奪い、そして殺し合い・・・そんな世界だった。
すでに300年は続いている戦争。いつ終わるのかわからない、戦士たちは疲弊しきっているのに戦い続ける。
どちらかの種族が滅びるまで終わらない。誰もがそう思っていた。



そんな戦争は、とある男の手によって終わった。



「私はこの戦争を終わらせにきた者だ!」



その男は一夜にして戦争を終わらせた。


傷ついた戦士を癒し


戦士たちを自らの国へと送り返し


人間界と魔界の中間に深い溝を作った



もうどちらからも、戦争を仕掛けることができないようにと



その光景を見たものは、男を神と称え、後世の者たちはこう呼ぶ


【救世の魔導師】



この男の名は瞬く間に知れ渡り、なんとか素性を知ろうとする者たちが血眼になり探したが、見つかることはなかったのだ
男は後世の者たちに語り継がれ、伝説となる








その男の秘密を知る者がいた。それは魔族のであり、極一部の権威を持つ者たちである。
そして、この男の正体・・・


「ふぅ。流石に少しだけ疲れたね」


男はソファに深く腰掛け、疲れを癒していた。魔法で瞬間的に癒してもいいのだが、魔法の疲れを魔法でとるのはあまり好きではないのだ。



「お疲れのようですね。エリアス」



男の名を呼ぶ者がいる。振り返ると白銀の長髪を持つ美しい少女が微笑みを浮かべながら立っていた。
彼女の名前はミラエル=ルシフェル。この魔界の長である魔王の娘であり、この男、エリアス=ロードヴルの婚約者である少女である。

白銀の長髪を下ろし、触覚のように伸びる部分を片方三つ編みにしている髪型をしている。目はサファイアのように美しい碧眼、身長はエリアスより少し低く、スレンダーな体型をしている。
本人はもう少し胸があればと思い悩んでいるようだが・・・



「あぁ。ただいまミラ。ちょっと疲れたから休憩中だよ」
「あれだけの魔法を使っておいてちょっとの休憩でいいだなんて・・・相変わらず規格外ですね」



エリアスは先の戦争を終わらせるため、多大な魔法を行使したのだ。並の魔導師なら、1000人が命をかけてもできないような魔法を、1人でやってのけたのだ。それを休憩で回復させるというのはどれほどのことか。
本人はあまり自覚がないのである。



「別に僕が規格外でもなんでもいいよ。今回は戦争が終わった。それでいいじゃないか」



隣に座ったミラを抱き寄せながら言う。300年続いた戦争が終わったのだ。今はそれでいい。ミラは頰を赤く染めながらエリアスの胸に身を預ける。




「そうですね。こうしていられる時間が増えたのはとても嬉しいです」



エリアスとしても、ミラと一緒にいる時間が増えるのはとてもうれしいことだ。
自らの白髪はくはつをいじりながら少し照れている。婚約者とはいえ、そのようなことを言われるのは照れくさいのである。



「そういえばエリアス。お父様が呼んでらっしゃいましたよ?なんでも今回の褒美がどうとか」
「褒美とか特に入らないんだけどな〜」



魔王からの呼び出しは褒美のことらしい。だが正直欲しいものはない。




「僕としてはもうミラを貰ってるからこれ以上欲しいものはないんだよね」
「と、突然そんなことを言うのはやめてください・・・///」



ミラがエリアスの胸に顔を埋めてしまう。本音だったんだが、本音だからこそ恥ずかしいと言うのもあるのだろう。



「とりあえずクラウの所に行こうか」



魔王の名前はクラウ=ルシフェル。
ミラの父であるが、エリアスは呼び捨てで呼んでいる。魔王から盟友として気安く呼ぶようにと言われているである。エリアスはミラの背中をポンポンと軽く叩き、魔王の部屋へと向かった








魔王の部屋に入った途端、魔王からお礼を言われた。



「エリアス!今回は本当に礼を言うぞ!おかぜで戦争を止めることができた!本当にありがとう!」
「いや、戦争がうっとおしくてミラとのんびり過ごせないから終わらせただけだからさ」



これがエリアスの戦争を終わらせた理由である。実は両者をこれ以上死なせないとかそんな理由はなかったのだ。なにがあってもミラが第一というのがエリアスのモットーである。



「だとしてもだ、今回のことは感謝してもしきれないのだ。なにか褒美をと思ってない・・・」
「じゃあミラともっといられるように計らってほしいよ。それが一番の褒美だね」



なんとも無欲と思うが、エリアスはこれが何より欲しかったのだ。ミラといられる時間は物や権力には変えられない。ミラは嬉しそうにエリアスの腕に抱きついて顔を押し当てている。



「そーか・・・わかった!これからしばらくはお主らはこちらの事情を考慮せずに行動してくれ。ミラもそれで良いか?」
「ええ。問題ありません。とても嬉しいですよ」



ミラもエリアスに甘える時間が欲しかったのだろう。若干にやついてるようにみえる。そして部屋を出るとき、魔王がミラにこう言った。



「とてもいい伴侶をもったな」
「・・・はい!」


ミラにそう言ってもらえて嬉しい。エリアスはそう思い、これからのことを考えウキウキしていた。








それから2人は思うままに行動した。川へ行ったり、草原に行ったり、魔物の狩へと赴いたり、2人で一緒に昼寝をしたりと、2人の時間を共にした。もちろん、夜も2人で愛し合ったりした。本当に充実した生活、そんな日々を謳歌していたのだ。



だが、二ヶ月ほど経った時、それは突然終わりを迎えた。





「はぁ、はぁ、はぁ」
「ミラ!しっかりしろミラ!」



ミラが謎の病を発病したのだ。普段なら病などにかからないのだがなぜ・・・
エリアスは悩むが、すぐに回復魔法をかける。



「【全快せよ】」



金色の光がミラを包む。最上級の回復魔法をかけたのだ。これですぐに良くなるはずなのだが・・・


バリンッ!!


「なッ!?」


魔法が弾かれた。これは普通の病ではない、相手の体を蝕み、衰弱させる呪いの類!



「ミラ!大丈夫か!」


魔王が部屋に駆けつけてきた。すると魔王の後方からも幹部たちが入ってきた。



「ミラ様!」「病にかかられたと!?」「大丈夫なのですか!?」



これだけ心配されているとは。




「信頼されているんだな」




しみじみとそう思う。この時、エリアスは覚悟を決めていた。ミラを、婚約者を救う唯一の手を行使することを。



「来たばかりで申し訳ないが、クラウたちは部屋から出て行ってくれ」
「な、なぜだ!」
「いまから最上級の回復魔法を使う。他に誰かがいると集中できないんだ」



この時、エリアスは嘘をついた。これから使うのは最上級の回復魔法ではない。もっと、残酷なものなのだ・・・


「そ、そうか!わかった!それでミラは治るんだな!」
「ああ、治るよ・・・」



魔王たちに告げた途端、彼らの顔には安堵が見えた。エリアスなら大丈夫。きっとなんとかしてくれるという信頼だろう。



「では!ミラを頼んだぞ!私は外で待っている!」



部屋から彼らが出て行ったが、ミラは不安そうにエリアスを見つめる。



「エリアス、なにをする、つもりですか?」



これから使う魔法に、不安を覚えているのだろう。一体なにをするのか、どうなってしまうのか、だがエリアスを信頼していないわけではないと、そういった顔だ。
と、突然エリアスは魔法を唱える。




「【時間よ緩やかに】」




周りの時間を遅くしたのだ。ただしエリアスとミラを除いて。




「ミラ、これから話すことをよく聞いてくれ」
「は、はい」





エリアスは続ける




「君が患っているのは、病ではない。呪いだ。それもかなり強力なものだ」
「なッ!呪い、です、か?」



途切れ途切れに答えを返してくる。とても辛いのがよくわかる。




「ああ、呪いだ。僕の解呪魔法も効かないんだ。おそらく、魔力そのものを無効にする呪いだ」
「・・・エリアス、なにを、するつも、りですか?」




不安なのだろう。心配なのだろう。怖いのだろう。いまからエリアスがすることがわかってしまったのかもしれない。




「魔力が効かないなら、魔力以外を使えばいいんだ」




続ける。






「僕はいまから、僕の全生命力、、、を使って、君の呪いを解く」




魔力ではなく、生命力を使用する。そんなことができるのはエリアスだけ。つまり、文字通り自らの命を賭して、ミラを救う。



「そ、んな・・・そんな!だめ、です!エリアス!」



ミラが涙を流しながらエリアスにしがみついてくる。愛する人がこれから死ぬのだ。それも自分のために。涙を流すのは必然だろう。




「ミラ、よく聞くんだ」



エリアスが力強く話す。まだ、話は終わっていないのだ。





「僕は自分の生命力の99%を使って君を救う。その時点で僕は生きられないだろう。だから、残りの1%の生命力をつかって、僕は転生の術を作り出し転生する」




ミラは涙を流し続けたまま、エリアスの話を聞いている。



「そしてこれから君にあるものを託す。それを受け取って欲しいんだ」



エリアスは懐から蒼に輝く宝石を埋め込んだ指輪を差し出すし、ミラの薬指にはめた。婚約の指輪のように。




「この宝石の中に、僕の記憶と君への思いを封印する。そして、転生した後に僕がこの指輪に触れた時、僕は君への思いと記憶を取り戻すだろう」
「思いを、封印?」
「そう、封印だ。君への思いはなくならない。そして記憶もだ。転生の時に受け継げるのは、僕の魔法と君に会うという使命だけだ。だから、ここに封印して再会の時に取り戻す。これをつけている間は、君の体の時間は止まる。不老不死ってやつかな」
「それまで・・・私は、私は1人に、なって、しまいます!!」




ミラは泣きじゃくり、エリアスの胸に顔を押し付け嗚咽をもらす。耐えられないのだろう。エリアスのいない世界など、色のない虹のようなものなのだろう。




「大丈夫。大丈夫、だか、ら」




エリアスも涙を流す。悲しいのだ。寂しいのだ。辛いのだ。彼女のいない世界は。だが、それでもやるしかないのだ。覚悟を決め、解呪の魔法を唱える。




「【我の生命力を持って行使する 呪いよ 消え失せろ】!」




途端、ミラの体を光が覆い、顔にも血色が戻ってきた。彼女は光が収まると同時に、ベッドから飛び降り、エリアスを抱きしめる。




「いかないでエリアス! !まだしたいことやあなたとの思い出を作りたいの!だから、お願い・・・行かないで・・・」




再び涙を流し懇願するが、エリアスには時間がなかった。生命力が尽きるのだ。エリアスは最後にミラへと口付ける。




それは短い時間だったが、とても愛のある、深い口付けだった。



そして・・・





「【我の、生命力、を持って、行使する、輪廻転生】!」




エリアスの周囲に膨大な魔法陣が展開される。これでしばらくお別れだ。そう思うとひどく悲しい。これから、彼女のいない世界で生きるのだ。同じ世界に転生するとはいえ、やはり寂しい。



ミラは涙を流している。それをみて、エリアスも一筋の涙を流した。




「じゃあねミラ。僕を、生まれ変わった僕を、また愛してほしい。僕も、愛しているから」



そう伝えた瞬間、ミラが何かを叫んだが、エリアスには聞こえなかった。



そして、エリアスは意識を手放した。








〜それから1000年後〜






「創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • ほんしんとう25

    魔道士で転生って色々応用効きそうでいいですね!どんどん最強な魔法を使うのを見たいです!

    0
コメントを書く