異世界で災害使って無双する(仮)

水無月 葵

#12 カフェ・サイフォンス

「ライバル店が現れた!」

 威勢の声が、食堂に響く。

「シャルさんどうした!?」

 俺はシャルさんを落ち着かせて、事情を聞く。

「言葉通りよ! ライバル店ライバル店!」

 シャルさんは焦りながら「ライバル店 」を連呼する。

「宿屋にライバル店等有るのか? そもそもライバル店って……この店繁盛してねぇーじゃん」

「何!?」

 あっ! と俺は急いで口を塞いだ。どうやら心の声が出てしまったようだ。

「ライバル店とは?」

 落ち着いた表情で萌恵が聞く。

「カフェよ! カフェ!」

 シャルさんは、机を叩きながら言う。

 ……カフェ? この異世界でもカフェが有るのか?

「カフェって何処に出来たんですか?」

 いつでも落ち着きの有る、萌恵がシャルさんにカフェの場所を聞く。

「ギルドの近く! 名前は、カフェ・サイフォンスよ!」

 聞いていないのにカフェの名前まで言うシャルさん。

「カフェ・サイフォンス? あぁ! あれか!」

 横で聞いていたリョウが、手を叩きながら呟く。

「知っているのかい!?」

 それに飛び付くように反応するシャル・リベル様。

「知らない」

 そのリョウの発言にリョウ以外全員椅子から転げ落ちる。

「おいっ! 知らないのかよ!」

「それより……」

「俺の突っ込みは無視ですか、そうですか!」

 俺の華麗な突っ込みを無視するシャル・リベル様。

 後で痛め付けてやるか。

「お願いが有るんですよ!」

 シャルさんは、立ち上がりお願いを良い始める。

 さてどうやって痛め付けるかな……パラライズ? 頭突き? それとも……

「それお願いとはズバリ!」

「嫌だ」

 シャルさんの言葉を遮るように断る。

「まだ何も言ってない! その願いは……その店の偵察である!」

 自信満々に発言する。

「……さて眠いし寝るか」

 俺は面倒なので部屋に戻ろうとしたが、シャルさんに阻まれる。

「何処に行くんだい? ツバサ君」

「部屋」

 俺は即答。

「お願いします! 何でもしますから偵察に行ってください!」

 いきなり敬語に……ん?

「今なんでもするって言ったな?」

「何でもするとは言ってない」

 古いな、おい!

××××××××××

「いらっしゃいませー」

 若い男性が威勢の良い挨拶。

 店内は意外と綺麗かつお洒落。客で賑わっており、満席に近いほど席が埋まっていた。

「お客様何名様で?」

 見たら分かるだろって言う突っ込みをしたくなるが、止めておこう。

「えと……んと……」

 個々で人見知り発動!

「どうしたんですか? 師匠? あっ三名で」

 リョウが代わりに何名か告げる。

「三名様ですね。此方へどうぞ」

 案内されたのは、端っこのテーブル席。そこに行くまでに色んな人に見られたが気にしない気にしない……

「お冷やをお持ち致しますので少々お待ちください」

 若い男性は、それだけ言いカウンターに戻った。

「……思ったより綺麗な場所だな」

 俺達は、シャルさんのお願いでこのカフェに偵察に行かされている。まぁ俺は最初は嫌々だったが……

「お冷やをお持ち致しました」

 男性店員は、お冷やを人数分配り終え「ごゆっくり」と頭を下げ、またカウンターに戻っていった。

「なぁなぁ偵察って何するんだ? メニューを見るとか、値段を見るとかか?」

 メニューを見ながら二人に聞く。

「さぁ? 個々の店の看板メニューとかじゃないですか?」

 俺の質問に、真っ先に答えたのはリョウだった。そして「いやいや」と首を振る萌恵。

「違うでしょ! 飲み物の種類でしょ? コーランド有るかな?」

 コーランドとは?

 俺が疑問に思っているうちに、店員さんがきて、メニューを聞き始めた。

「メニューをお伺いします」

 丁寧に話す男店員。

「えと……私はコーランド一つ」

「俺は……カフェオレ一つ」

「え? あ……じゃあ俺もコーランドで!」

 俺と萌恵がコーランド、リョウがカフェオレを注文した。

「了解しました。ご注文を確認いたします……」

 そして小説注文を確認し始める。

「以上でよろしかったでしょうか?」

「「「はい」」」

 三人同時に返事して、恥ずかしかったのは俺と萌恵だけだったことは秘密で有る。

××××××××××

「お待たせ致しました! ご注文の品です」

 カウンターから出てきたと思われる、男店員がトレーを持って此方の席に戻ってきた。

「えぇーと……コーランドの方が二人様でしたね。どうぞ」

 男店員は俺と萌恵の前に、黒くてシュワシュワと鳴っている液体を置いた。

「そしてカフェオレがお一人様ですね。どうぞ」

 そう言いながら、男店員はカフェオレをリョウの前に置いた。

「ではごゆっくり……」

 男店員は、頭を下げてカウンターに戻る。

「これが……コーランド?」

「はい。そうですが?」

 目を輝かせながらコーランドを飲み始める萌恵。俺も恐る恐る口に運ぶ。

「――ッ!? コーラじゃん!」

 コーランドの味は、コーラその物だった。

 確かにコーランドってコーラって名前ついてるけど、本当にコーラだったとは……異世界恐るべし……

「リョウはコーランドを飲まないのか?」

 カフェオレを飲んでいるリョウに質問する。

「俺は、炭酸が飲めないのですよ……」

 へー……炭酸は美味しいのにな……ってこの異世界には炭酸って言葉が有るのか!?

 俺はそんな異世界と、現実世界の共通点を見つけ、なんだか嬉しくなりながらコーランドコーラを再び飲み始める。

××××××××××

「……それで、偵察を忘れてたの?」

「とどのつまりそうですね」

「おいっ! 何してんだ!」

 目の前でプリプリ怒っているシャルさんと、俺との会話に口を挟む様にリョウが

「でも個々の飲み物より美味しかった」

 と、口を滑らす。

 あっ……はいっ! 俺しーらない。

「――ッ!? それは本当?」

 泣きそうなシャルさんに、追い討ちを掛けていくリョウ。

「うん」

 もうやめて! シャルさんの心はズタボロよ!

「うわーん」

 突如泣き出すシャル・リベル様。

「おいっ! リョウ! シャルさんのメンタルをズタボロにするな!」

「でも師匠。美味しかったですよね?」

「まぁ美味しかったけど……あっ!」

 後ろの泣き声が段々上がっていく。

「おいっ! 何とかしろ! このままじゃ、俺がこの宿屋に居ずらくなるだろ!」

「そういえばツバサ君! 追加料金払ってないでしょ!」

 シャルさんはいきなり泣き止み俺の前に立ち塞がる。

 変わり身はやっ! そういえば……忘れてたな。ここ最近色々な事が起こり過ぎて忘れていた……

「えっと……何日追加ですか?」

 俺は恐る恐る聞く。そしてシャルさんは自信満々に

「五日! つまり銅貨十五枚いただきます!」

 そっか個々に来てから八日も経つのか……

 そんなことを考えながら財布を開き、銀貨一枚を手渡す。

「えっと……追加料金とこれからも居続けるからその分の追加料金の銀貨一枚」

「銀貨? なん泊するの?」

 銀貨を受け取ったシャルさんは、銀貨を持ちながら聞く。

「えっとじゃあ……二週間と一日で」

 俺はざっと計算し、泊まる期間を言う。だが二週間の意味が分かっていないらしく、俺は十五日間と言い直す。

「萌恵ちゃんは?」

 次は萌恵に泊まる期間を聞く。

「えっ? じゃあ私もツバサ君と同じく……」

「じゃあ追加で銅貨三十六枚ね」

 なんて細かい……

 萌恵はそれを聞いて、財布から銅貨を出そうとする。

「嫌っここは俺が払うよ」

 が、それを遮るように俺は口を挟む。

「えっ!? いやっツバサ君に払わせるのは何か……悪い気が……」

 心配そうに見つめる萌恵。うおナイスフェイス! ……じゃなくて

「いや、大丈夫だよ。はいシャルさん銀貨一枚」

「はいっ毎度あり! お釣りは要らないよね?」

「要るわ!」

 地味に煽ってくるシャルさんに、超弱のパラライズを打ち続ける。

「ガハッ……わ、分かったから! お釣り渡すからぁ~! パラライズを解いて下さいツバサ様~!!」

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