怪談殺し
世界と意識
ニャルがかぎ爪を繰り出す。
明美は受け流し、カウンターの拳を放つ。
ニャルは拳を避け、そのまま明美の背後へ回り込んで蹴りを放った。
明美は背中から蹴りを受けて吹き飛ぶ。
直後、明美は受け身をとって体勢を立て直す。
ニャルは明美に言う。
「あなたは僕に勝てない。その運命は受け入れてほしい」
明美もニャルに言う。
「運命は結果だ。過程じゃない。この戦いは私がニャルさんに勝つ為の過程だ」
ニャルは明美に宣告する。
「その結果は貴方の敗北になる。それが運命だ」
明美はニャルの言葉を聞かずに問いかける。
「ニャルさんは傲慢で嘘つきだ。でも私の為の世界を作ると言った時、ニャルさんの目は真剣だった。本当の事を言っている目だ。どうしてそんな事を考える様になったのか? 私はそれが知りたい」
ニャルは答える。その目は真剣だ。
「僕はあなたの一族が好きだ。僕はあなたが好きだ。初めてあなたに会った時、僕はあなたの為に人間と怪談を引き離そうと決めた。あなたに再び合った時、僕はそれだけでは足りないと考え直した」
ニャルは明美へ哀れみの目を向ける。
「あなたの一族はあの世界で生きて行くには優しすぎた。それはあなた自身も同じだ。貴方の心は弱く、一度はあの世界に押しつぶされた。あの世界はあなたには厳しすぎる」
ニャルは言葉を続ける。
「だから僕はあなたの為に世界を作り直すと決めた。世界から怪談を引き離すだけでなく、世界中の人間から意識を奪う。そして新たな意識を与える。あなたを想い、敬い、愛する、その為だけに世界中の人間が生きる様になる」
明美は否定する。
「それは違う」
明美は否定する。
「それは生きているとは言わない」
明美は否定する。
「そんな世界はまっぴらごめんだ」
そして明美は否定する。
「ニャルさんの考えは間違っている」
その時だった。
戦場を蹂躙していた巨体が、ゆっくりと地上へ沈み始めた。
ニャルは狼狽える。
「馬鹿な……」
その時、不思議な事が起こった。
上空から飛来した武者の刀が明美の手に収まったのだ。
その刀を受け取った時、明美は理解した。これは武者が明美の為に想像した新たな怪談だという事を。武者の命は今にも尽きようとしているという事を。
明美は刀を構える。
「ニャルさん……貴方が私を想う気持ちは本物だ。だけど……私は貴方を許せない」
刹那、明美は超高速で突進する。
ニャルはそれを迎え打つべく、かぎ爪を交差させる。防御態勢だ。
直後、刀とかぎ爪が衝突し、火花が散る。
得物が押し合う。
明美は刀に想いを乗せる。武者が明美を想った様に、明美も武者に応える様に、二人の想いが刀を押す。
そして。
遂に刀がかぎ爪を打ち砕き、ニャルの体を切り裂いた。
「貴方ならきっと僕の考えを否定すると思った……貴方達ならきっと僕を止められると思った……だから僕は貴方達に扉を見つけた事を教えた」
ニャルはゆっくりと地面に両膝を突きながら、明美に語る。
「明美さん……謝っても謝りきれないが……僕は……僕の浅ましい心は……武者さんに……嫉妬せずにはいられなかった」
そこまで言い終わって、ニャルは塵になって消えた。
明美は受け流し、カウンターの拳を放つ。
ニャルは拳を避け、そのまま明美の背後へ回り込んで蹴りを放った。
明美は背中から蹴りを受けて吹き飛ぶ。
直後、明美は受け身をとって体勢を立て直す。
ニャルは明美に言う。
「あなたは僕に勝てない。その運命は受け入れてほしい」
明美もニャルに言う。
「運命は結果だ。過程じゃない。この戦いは私がニャルさんに勝つ為の過程だ」
ニャルは明美に宣告する。
「その結果は貴方の敗北になる。それが運命だ」
明美はニャルの言葉を聞かずに問いかける。
「ニャルさんは傲慢で嘘つきだ。でも私の為の世界を作ると言った時、ニャルさんの目は真剣だった。本当の事を言っている目だ。どうしてそんな事を考える様になったのか? 私はそれが知りたい」
ニャルは答える。その目は真剣だ。
「僕はあなたの一族が好きだ。僕はあなたが好きだ。初めてあなたに会った時、僕はあなたの為に人間と怪談を引き離そうと決めた。あなたに再び合った時、僕はそれだけでは足りないと考え直した」
ニャルは明美へ哀れみの目を向ける。
「あなたの一族はあの世界で生きて行くには優しすぎた。それはあなた自身も同じだ。貴方の心は弱く、一度はあの世界に押しつぶされた。あの世界はあなたには厳しすぎる」
ニャルは言葉を続ける。
「だから僕はあなたの為に世界を作り直すと決めた。世界から怪談を引き離すだけでなく、世界中の人間から意識を奪う。そして新たな意識を与える。あなたを想い、敬い、愛する、その為だけに世界中の人間が生きる様になる」
明美は否定する。
「それは違う」
明美は否定する。
「それは生きているとは言わない」
明美は否定する。
「そんな世界はまっぴらごめんだ」
そして明美は否定する。
「ニャルさんの考えは間違っている」
その時だった。
戦場を蹂躙していた巨体が、ゆっくりと地上へ沈み始めた。
ニャルは狼狽える。
「馬鹿な……」
その時、不思議な事が起こった。
上空から飛来した武者の刀が明美の手に収まったのだ。
その刀を受け取った時、明美は理解した。これは武者が明美の為に想像した新たな怪談だという事を。武者の命は今にも尽きようとしているという事を。
明美は刀を構える。
「ニャルさん……貴方が私を想う気持ちは本物だ。だけど……私は貴方を許せない」
刹那、明美は超高速で突進する。
ニャルはそれを迎え打つべく、かぎ爪を交差させる。防御態勢だ。
直後、刀とかぎ爪が衝突し、火花が散る。
得物が押し合う。
明美は刀に想いを乗せる。武者が明美を想った様に、明美も武者に応える様に、二人の想いが刀を押す。
そして。
遂に刀がかぎ爪を打ち砕き、ニャルの体を切り裂いた。
「貴方ならきっと僕の考えを否定すると思った……貴方達ならきっと僕を止められると思った……だから僕は貴方達に扉を見つけた事を教えた」
ニャルはゆっくりと地面に両膝を突きながら、明美に語る。
「明美さん……謝っても謝りきれないが……僕は……僕の浅ましい心は……武者さんに……嫉妬せずにはいられなかった」
そこまで言い終わって、ニャルは塵になって消えた。
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