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怪談殺し

ダイナソー

刀と飛翔

 武者とヤミコは巨体の頭を目指す。
 上昇する竜の背から、武者がヤミコへ指示を飛ばす。
「さっき言った通りに! 頼むぜヤミコ!」
 ヤミコは武者に見える様にサムズアップし、武者は更に上へ、ヤミコは巨体の腹へ近づく。
 直後、腹から突き出る土の槍がヤミコに襲いかかる。ヤミコの乗る竜はそれを避け、ヤミコも巨体の腹へ飛びつく。ヤミコの手の表面にはスパイク状に氷が精製され、巨体の腹にガッチリと食い込む。そしてヤミコは其処を起点に分厚い氷の壁を発生させる。
 氷は巨体の腹から胸へ広がって行き、氷で覆われた胸から石の矢が放たれるのを防ぐ。
 ニャルの脇腹から飛び出した巨大な腕が、巨体の腹の上に居るヤミコを掴みにかかる。
 ヤミコは其処から落下して、その巨大な腕から逃れる。
 ヤミコは落下しながら叫ぶ。
「飛竜さん!」
 ヤミコの叫びに答える様に、竜がヤミコに接近する。そしてヤミコはなんとか竜にしがみついた。

「ヤミコは上手くやったな! よし! 俺達の出番だ!」
 巨体の胸が氷に覆われていくのを確認し、武者を乗せる竜は更に更に上を目指す。
 氷が石の矢を防ぐおかげで、武者は安全に上を目指す事が出来た。
 そして遂に武者は巨体の頭上へ到着する。
 武者は意識を集中させ、巨体の正確な魂の核の位置を割り出す。
 武者は巨体に乱雑に配置された目玉と目が合い、良い知れぬ恐怖に体が震える。
「はっ! 武者震いさ!」
 そう言った後、武者は己に活を入れる様に叫ぶ。
「行くぞおおおぉぉぉ!」
 意を決して武者は竜から飛び離れ、巨体の持つ魂の核へと一直線に飛び込んだ。
 誰よりも速く、何よりも速く、自分の力を信じて飛び込む。超高速の一撃は誰にも止められない。そう信じて刀を振り上げる。
 だが。
 その刀は止まった。
 止められた。
 その巨体から飛び出した存在に武者は一瞬躊躇した。
 それは其処にいる筈の無い存在。
 明美の姿が其処に在った。

 巨体から飛び出したそれは、とても良く出来た明美の偽物だった。
「しまっ……」
 武者がそう言うか言わないかの内、武者の全身を何本もの土の槍が貫く。
 武者は全身の苦痛に、声にならない悲鳴を上げる。
 偽物の明美は武者に言う。
「僕はね、僕は君の事が妬ましかった。僕は彼女の一族を三百年間も思い続けて来た。だのに! 君はぽっと出の存在のくせに! まるで君は彼女の守護者だ!」
 偽物はその手に土の槍を持ち、理不尽な怒りを武者に吐き出す。
「これからは僕が彼女の守護者になる! だから! だから君は此処で死ね!」
 偽物は土の槍を構える。既に致命傷を負った武者を、更に確実に殺すため。
 武者は目の前の敵に悪態の一つでもつきたかったが、まるで自分の体で無いかの様に上手く体が動かず、声を出すのも苦しかった。
 遂に武者の心臓を、土の槍が貫こうとした、その時。
 偽物の体へ氷の槍が飛来し、その急所を貫く。
 ヤミコが竜に掴まった後、武者を追って巨体の頭上までやって来ていた。
「武者さん!」
 ヤミコは叫んだ。
 だが武者にはその声は聞こえず、その目にも塵になって消えていく偽物とその先に有る、巨体の魂の核だけが見えていた。
 それでも武者は最後の力を振り絞り、刀を持つ手を上げ、巨体の魂の核へ向けて刀を投擲する。
 武者は刀に思いを込めた。何者にも止められない。誰にも惑わされない。ただ目の前の敵を滅ぼす為の刀。
 そして武者の手から放たれた刀は超高速で飛翔する。
 巨体から何枚もの石の壁が刀を阻もうと現れる。
 だが刀は止まらない。武者が思いを込めたその刀はもはや誰にも止められない。
 刀は何枚もの壁を貫き、遂には巨体の魂の核を貫いた。

 ゆっくりと地上へ沈んで行く巨体の上で武者はゆっくりと目を閉じた。

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