怪談殺し
戦場と決戦
ドリームランド。城下町の巨大な広場。
其処には異系の姿に変貌したニャルと、ニャルを取り囲む地上の兵士達と空中の竜達、そしてニャルと相対する黄金の騎士が居た。
「あなたが玉座の間から出て来るとは珍しいですね。アマデウス」
騎士はニャルの一切の挙動を見逃さない様に注意しながら、その重く鋭い声を発する。
「お前はこの世界から追放した筈だ。どうして此処に居る?」
ニャルは笑い声を漏らしながら騎士の問いに答える。
「僕はその昔、扉を作り十人の勇士を招き入れ、そして父や貴方達兄妹と戦った。その時の扉を使えば貴方の張った結界など簡単に突破出来た。まあ、肝心の扉とその鍵を捜すのに三百年程掛かりましたが」
騎士は新たな問いをかける。
「お前が此処に来た目的は何だ?」
ニャルは相変わらず笑い声を漏らしながら答える。
「目的は神の玉座へ行き、僕が新たな神になる事」
騎士は首を横に振る。
「認められないな。そもそも神になる為には未だに要人達が奪った力が戻っていない。特に魂の核が無ければ、お前も神になる事は出来ない」
ニャルは笑い声を止め、冷静な声で答える。
「兄さんは嘘が下手ですね。僕と違って嘘が下手だ。それとも知らないのですか? 要人から力を回収せずとも神の子の力を玉座に戻せば、僕達が神になる為の十分なエネルギーが集まる。僕達兄妹は元々神の力を分け与えられて生まれたのだから」
騎士はニャルへ最初で最後の警告をかける。
「お前が大人しく引き返すのなら我々も手を出さない。だがお前がこの先へ進むと言うのなら我々全員が相手だ」
ニャルは騎士の警告に嘲笑で答える。
「僕に警告をしている気なのかもしれないが、あなた達では時間稼ぎが精々でしょう? それでも僕と戦いますか?」
そしてニャルは右足を前に進める。
「警告はした。全員かかれ!」
騎士の号令と共に兵士達がニャルへ殺到する。
ニャルはその場に居る者達全員を嘲笑する様に、その両手のかぎ爪を振るった。
球体の映像を頼りに中央の城へ進んでいた明美達であったが、巨大な城が見え、更に城と同じ程の大きさの巨体を持つ異系の怪物の姿を確認し、さらにその足を速める。
ヤミコが驚いた様な声を出す。
「何あれ!? ニャルさんが化け物になってドリームランドの中央へ向かったとは聞いてたけど、あんなに巨大だとは聞いてないよ!?」
武者がヤミコの言葉に答える。
「俺も大体三メートルの背丈だって聞いた筈なんだけどな。その百倍はあるな……あいつの能力的に考えて土でも取り込んで巨大化してるんじゃないか?」
明美は武者の言葉を聞きながら決意を固める。
「どんな敵であれ私達が止める。でないと世界中の人達が死ぬ」
武者が口を挟む。
「雷の言っていた事が全部本当ならな」
武者は言葉を続ける。
「はたして嘘つきはニャルか……雷か……行ってみれば分かるけどな。っと何か飛んで来るぜ」
武者の眺める先、中央の戦いから三人へ向けて飛来する三つの影が有った。
ニャルと騎士達の戦いはもう半刻以上も続いていた。
兵士達がニャルの巨体へ近寄ればその体から飛び出る土の槍に迎撃され、近寄らなければ地面から突き出す土の槍に襲われる。一カ所に集まれば地面が陥没して生き埋めにされ、散り散りになればニャルの体から生み出される土人形達に各個撃破される。それでも地上の兵士達が壊滅せずにいられるのは、騎士の的確な戦闘の指示が有ってのものだった。
空中の竜達もニャルの攻撃に苦戦している。ニャルの体からは雨の様に石の矢が精製され竜達を襲う。この矢を受けた竜達がニャルの近くに居た兵士達に降り注ぎ、近くを飛ぶ竜達に当たらなかった石の矢は、遠方に待機する兵士達や竜達を襲う。
騎士は状況が明らかに不利である事を分かっていた。だが先程から戦場へ近づく三つの気配に希望を持っていた。
騎士は兵士達を鼓舞する。
「皆頑張るんだ! もうすぐ強力な味方が到着する!」
三人の元へ飛来した影の正体は、三体の竜だった。
一体の竜が走る三人の横を飛びながら、その大きな声で三人に語りかける。
「皆様! 我々の背にお乗りください! アマデウス様の命により皆様を戦場へお送りします!」
武者が竜に答える。
「アマデウスか! そりゃ助かる! 乗らせてもらうぜ!」
残りの二体の竜も三人の横へ近寄り、三人はそれぞれの竜の背に飛び乗った。
中央広場の戦況は混迷を極めていた。
ニャルは一切の攻撃の手を緩めず、騎士が兵士達を指揮するのも限界を迎えようとしていた。
「このままでは……」
騎士はそう言いながらも、三つの気配が戦場へ飛来するのを感じていた。
騎士は落下して来る竜を弾き、地面から生えて来る土の槍を避けながら三つの気配に希望を託す。
「神の器よ、頼んだぞ」
戦場へ三人が到着する。
竜の背の上で武者は明美とヤミコに指示を出す。
「俺はあのデカブツの頭に感じる魂の核を狙う。ヤミコは俺の援護。明美は地上に居るニャルの本体を探し出して叩いてくれ」
明美は武者に問う。
「あのデカブツが本体じゃないの!?」
武者は答える。
「ああ! その様だぜ!」
明美は頷き、その大きな声で言う。
「分かった! 地上は任せて! 二人も気を付けて!」
そう言って、明美は竜の背から飛び降りた。
武者は明美が高速で遠ざかって行くのを見送り、そして己に活を入れる。
「よし! 俺達も行くぞ! 死ぬ気で付いてこいよ! ヤミコ!」
戦場で明美は簡単にニャルを見つけ出す事が出来た。
見つけ出す事が出来た。というよりは不意に明美の前にニャルが現れたと言う方が正しい。
明美の前に現れたニャルの姿は、そのかぎ爪意外は明美のよく知る青年のものだった。
ニャルは相対する明美に優しい笑顔を向ける。
「どうやら元に戻れた様で良かった」
明美はニャルに問いかける。
「ニャルさんは何が望みなの? 世界中の人から意識を奪うつもりだって話は本当の事?」
ニャルは笑顔を崩さないまま、明美の問いに答える。
「ええ、だけどあなた以外の世界中の人間と言うのが正しい」
ニャルは言葉を続ける。
「僕の望みはあなたのための楽園。あなたが幸福に暮らせる世界。その為に明美さん、あなたを拘束させてもらう」
ニャルはかぎ爪を構え、それに呼応する様に明美も拳を構える。
そして二人は真正面から衝突した。
其処には異系の姿に変貌したニャルと、ニャルを取り囲む地上の兵士達と空中の竜達、そしてニャルと相対する黄金の騎士が居た。
「あなたが玉座の間から出て来るとは珍しいですね。アマデウス」
騎士はニャルの一切の挙動を見逃さない様に注意しながら、その重く鋭い声を発する。
「お前はこの世界から追放した筈だ。どうして此処に居る?」
ニャルは笑い声を漏らしながら騎士の問いに答える。
「僕はその昔、扉を作り十人の勇士を招き入れ、そして父や貴方達兄妹と戦った。その時の扉を使えば貴方の張った結界など簡単に突破出来た。まあ、肝心の扉とその鍵を捜すのに三百年程掛かりましたが」
騎士は新たな問いをかける。
「お前が此処に来た目的は何だ?」
ニャルは相変わらず笑い声を漏らしながら答える。
「目的は神の玉座へ行き、僕が新たな神になる事」
騎士は首を横に振る。
「認められないな。そもそも神になる為には未だに要人達が奪った力が戻っていない。特に魂の核が無ければ、お前も神になる事は出来ない」
ニャルは笑い声を止め、冷静な声で答える。
「兄さんは嘘が下手ですね。僕と違って嘘が下手だ。それとも知らないのですか? 要人から力を回収せずとも神の子の力を玉座に戻せば、僕達が神になる為の十分なエネルギーが集まる。僕達兄妹は元々神の力を分け与えられて生まれたのだから」
騎士はニャルへ最初で最後の警告をかける。
「お前が大人しく引き返すのなら我々も手を出さない。だがお前がこの先へ進むと言うのなら我々全員が相手だ」
ニャルは騎士の警告に嘲笑で答える。
「僕に警告をしている気なのかもしれないが、あなた達では時間稼ぎが精々でしょう? それでも僕と戦いますか?」
そしてニャルは右足を前に進める。
「警告はした。全員かかれ!」
騎士の号令と共に兵士達がニャルへ殺到する。
ニャルはその場に居る者達全員を嘲笑する様に、その両手のかぎ爪を振るった。
球体の映像を頼りに中央の城へ進んでいた明美達であったが、巨大な城が見え、更に城と同じ程の大きさの巨体を持つ異系の怪物の姿を確認し、さらにその足を速める。
ヤミコが驚いた様な声を出す。
「何あれ!? ニャルさんが化け物になってドリームランドの中央へ向かったとは聞いてたけど、あんなに巨大だとは聞いてないよ!?」
武者がヤミコの言葉に答える。
「俺も大体三メートルの背丈だって聞いた筈なんだけどな。その百倍はあるな……あいつの能力的に考えて土でも取り込んで巨大化してるんじゃないか?」
明美は武者の言葉を聞きながら決意を固める。
「どんな敵であれ私達が止める。でないと世界中の人達が死ぬ」
武者が口を挟む。
「雷の言っていた事が全部本当ならな」
武者は言葉を続ける。
「はたして嘘つきはニャルか……雷か……行ってみれば分かるけどな。っと何か飛んで来るぜ」
武者の眺める先、中央の戦いから三人へ向けて飛来する三つの影が有った。
ニャルと騎士達の戦いはもう半刻以上も続いていた。
兵士達がニャルの巨体へ近寄ればその体から飛び出る土の槍に迎撃され、近寄らなければ地面から突き出す土の槍に襲われる。一カ所に集まれば地面が陥没して生き埋めにされ、散り散りになればニャルの体から生み出される土人形達に各個撃破される。それでも地上の兵士達が壊滅せずにいられるのは、騎士の的確な戦闘の指示が有ってのものだった。
空中の竜達もニャルの攻撃に苦戦している。ニャルの体からは雨の様に石の矢が精製され竜達を襲う。この矢を受けた竜達がニャルの近くに居た兵士達に降り注ぎ、近くを飛ぶ竜達に当たらなかった石の矢は、遠方に待機する兵士達や竜達を襲う。
騎士は状況が明らかに不利である事を分かっていた。だが先程から戦場へ近づく三つの気配に希望を持っていた。
騎士は兵士達を鼓舞する。
「皆頑張るんだ! もうすぐ強力な味方が到着する!」
三人の元へ飛来した影の正体は、三体の竜だった。
一体の竜が走る三人の横を飛びながら、その大きな声で三人に語りかける。
「皆様! 我々の背にお乗りください! アマデウス様の命により皆様を戦場へお送りします!」
武者が竜に答える。
「アマデウスか! そりゃ助かる! 乗らせてもらうぜ!」
残りの二体の竜も三人の横へ近寄り、三人はそれぞれの竜の背に飛び乗った。
中央広場の戦況は混迷を極めていた。
ニャルは一切の攻撃の手を緩めず、騎士が兵士達を指揮するのも限界を迎えようとしていた。
「このままでは……」
騎士はそう言いながらも、三つの気配が戦場へ飛来するのを感じていた。
騎士は落下して来る竜を弾き、地面から生えて来る土の槍を避けながら三つの気配に希望を託す。
「神の器よ、頼んだぞ」
戦場へ三人が到着する。
竜の背の上で武者は明美とヤミコに指示を出す。
「俺はあのデカブツの頭に感じる魂の核を狙う。ヤミコは俺の援護。明美は地上に居るニャルの本体を探し出して叩いてくれ」
明美は武者に問う。
「あのデカブツが本体じゃないの!?」
武者は答える。
「ああ! その様だぜ!」
明美は頷き、その大きな声で言う。
「分かった! 地上は任せて! 二人も気を付けて!」
そう言って、明美は竜の背から飛び降りた。
武者は明美が高速で遠ざかって行くのを見送り、そして己に活を入れる。
「よし! 俺達も行くぞ! 死ぬ気で付いてこいよ! ヤミコ!」
戦場で明美は簡単にニャルを見つけ出す事が出来た。
見つけ出す事が出来た。というよりは不意に明美の前にニャルが現れたと言う方が正しい。
明美の前に現れたニャルの姿は、そのかぎ爪意外は明美のよく知る青年のものだった。
ニャルは相対する明美に優しい笑顔を向ける。
「どうやら元に戻れた様で良かった」
明美はニャルに問いかける。
「ニャルさんは何が望みなの? 世界中の人から意識を奪うつもりだって話は本当の事?」
ニャルは笑顔を崩さないまま、明美の問いに答える。
「ええ、だけどあなた以外の世界中の人間と言うのが正しい」
ニャルは言葉を続ける。
「僕の望みはあなたのための楽園。あなたが幸福に暮らせる世界。その為に明美さん、あなたを拘束させてもらう」
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