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怪談殺し

ダイナソー

扉と鍵

 明美達が気付いた時には、すでに雷と老婆は爆破した穴から遠くに逃げ出していた。
「逃げられたな」
 武者の言葉を聞きながら、明美は倒れたままのニャルの元へ駆け寄る。
「ニャルさん!」
 明美の呼びかけにニャルは答えない。反応が無い。
 明美はニャルの元へ駆け寄ると、ニャルの息が有る事を確認する。
 ニャルはどうやら意識を失っているだけの様で、明美は安堵した。
「良かった」
 明美達はニャルの意識が回復するのを待った。

「うん? 明美さん?」
 夕日も完全に沈み、壁の穴から月の見えてきた頃、ニャルは目を覚ました。
「気がついたんだね! 良かった!」
 ニャルは明美に質問する。
「奴等は何処へ?」
 明美は先程の雷の顔を思い出し、少々動揺しながらもニャルに答える。
「もうここにはいない。私達も一緒に帰ろう」

 明美達は島から砂浜まで戻ってきた。
 砂浜では明美達を仲間達が温かく出迎えてくれた。
 始めに口を開いたのは滝の背中の上の三虎だった。
「なんとか皆無事に戻って来てくれて安心したの」
 三虎達は明美達を労う。
 全員の無事を確認し合い、その後フィリップがその全員に言った。
「みんなお腹も好いてるでしょう。今から作るので夕食にしましょう」

 夕食は焼きそばだ。
 明美は黙々と焼きそばを胃に運んでいく。
 そうしながら明美は考えていた。
 闇子は明美に言う。
「明美ちゃん。先生の事を考えてる?」
 実際、明美は雷の事を考えていた。
 だがそれ以外にも。
「それ以外にも色々」
 そして明美はニャルに視線を向けて切りだした。
「ニャルさん。色々聞きたい事があるんだ」
 武者と闇子もそれに同調する。
「そうだな。俺も色々聞かせてもらいたい」
 闇子が武者の言葉に頷く。
 ニャルは明美達の顔を見回した後、焼きそばを食べるのを止めて箸と皿を置いた。
「僕の知ってる範囲であれば質問に答えるよ。まずは何を語ろうか?」

「まずはあの巨大な怪談。あれが九頭龍? ニャルさんは知ってた?」
 明美の最初の質問にニャルは答える。
「知ってた。あの怪談はこの村で九頭竜と呼ばれていたものだよ。僕が海中に封印していた」
 明美は九頭竜の最後に話していた事を思い出しながら、次の質問を選ぶ。
「あの怪談は私に神になってくれと言っていた。神っていうのは何?」
 ニャルは少し考えてから、今の明美の質問に答える。
「神はドリームランドを統べ、世界をコントロール出来る力を持つ存在だよ。今はもう居ないけどね」
 ニャルは言葉を続ける。
「今は居ない。昔の人間との戦いで死んだんだ」
 武者が口を挟む。
「その神を殺したのが要人の先祖、つまり明美達の先祖って事か? そして明美達の先祖は神の力をそれぞれに奪った」
 ニャルは頷く。
「でもニャルさんは要人や人間を恨んでいない?」
 闇子も口を開いた。
 ニャルは少し難しい顔をした。
「昔は恨んでたよ。今でも完全には許してないかもしれない」
 少し間をおいて、ニャルが続ける。
「でもね、僕は人間にも色々な者がいる事を知ったんだ。それはあの九頭龍と一緒だよ」
 武者が再び口を挟む。
「ニャルや九頭龍はどうして人間に協力的になったんだ。そしてあの怪談もニャルと一緒だったのにどうして海底に封印されてたんだ」
 ニャルは武者の言葉に答える。
「僕と九頭龍は昔この村を襲った。もうすでに神が殺されてから百年以上経っていたけど。そして近衛……明美さんの先祖に敗れたんだ。何度も何度も」
 ニャルは昔の事を思い出していた。
「彼は僕達を殺さなかった。どんな者も死ぬべきではないと、本気でそう考えていた」
 ニャルの目は昔のこの村を見ていた。
「僕達は何度も戦い、そして敗れ見過ごされ続けるうち、彼や他の人間達への考えを改めてみようと思う様になったんだ」
 ニャルの目に涙が浮かぶ。
「彼は優しかった。僕らがあの島に住み着いても村を襲わないのであれば特に干渉してくる事も無かったし、僕達はいつしか彼に感謝の気持ちを持っていた」
 ニャルの目から涙が流れた。
「僕はあのまま静かにあの島で生きていこうと考えていた。だけど九頭龍は感謝のあまり彼を新たな神にしようと考えてしまった。そして再び彼以外の要人達を殺そうと襲い掛かった。要人の力をまた一つにまとめる為に」
 ニャルは涙を拭う。
「だから僕は彼等に協力し、九頭龍を海の底に沈めた。大切な友人を殺させないために」
 一通り語り終えた後、ニャルは明美に向き直る。
「勿論明美さんは彼とは違う。君は必要であれば殺さなくてはいけない命が在る事を知っているし、それは僕達も同じだ。でも僕達は誰よりも優しかった彼やその子孫である君に感謝の気持ちを持ち続けている」
 ニャルは明美に笑顔を向けた。
「さて、昔語りは此処までにしよう。他に何か質問はあるかな?」

「あの、雷先生達は何を探してたのかな?」
 明美の次の質問にもニャルは答える。
「彼らは鍵と地図を探していた。ドリームランドの地図と人がドリームランドへ入る為の鍵、そして」
 ニャルは言葉を続ける。
「ドリームランドの神の玉座の間へ入るための鍵」
 一瞬間が開き、再びニャルは言葉を続ける。
「僕はその神の玉座の間へ入るための鍵を探していたんです。でもそれだけでは人はドリームランドに入る事はできない。そこで必要になるのが」
 明美が口を挟む。
「扉」
 ニャルは少し驚いた表情を見せながらも頷く。
「そう。ドリームランドに入るためには扉と鍵がセットでないといけない……明美さんは何処でそれを?」
 ニャルの言葉に明美も答える。
「夢の中で九つの頭を持つ怪談が私に鍵と扉を探せって」
 ニャルは更に納得したように頷いた。
「そうか。それは九頭龍だと思う。彼も封印されながらも自分のすべき事を考えていたんだね。それが間違った事だったとしても」

「ニャルはどうして鍵を探してたんだ?」
 明美の質問が終わり、今度は武者がニャルに質問した。
 ニャルが武者の質問に答える。
「神の子に合い、新たな神になってもらう為。そして新たな神に二つの世界の通り道を封じてもらう為だね」
 ニャルの答えに武者が更に質問を重ねる。
「その死んだ神には子供が居るのか?」
 ニャルはその質問にも答えを返す。
「ええ。神には三人の子供が居て、その一人、アマデウスに僕は合いに行こうと思っている」

 次の日の朝。明美達はこの村を離れる準備をしていた。
 ゴミを片付ける明美とニャルは話をしていた。
「まさか明美さん達がアマデウスを知っているとは思わなかったよ。でも簡単にはアマデウスとの連絡も取れないんだね。それは少し残念かな」
 ニャルは本当に残念そうな顔をして見せた。
「武者さんも今度アマデウスに会った時に聞きたいことが沢山あると言ってた……何か分かったら連絡するよ」
 ゴミを片付け終わった後二人は連絡先を交換した。

 昼前、明美達はトラックに乗り込み、それをニャルが見送っていた。
 運転席から滝がニャルに語り掛ける。
「ニャルさんはこれからどうするんです?」
 ニャルは滝に答える。
「僕は扉を探そうと思っています。見つけた時は此方からも明美さんに連絡します」
 滝が車のキーを入れる。
「そうですか。ありがとうございます……それでは!」
 滝はニャルに手を振る。
 ニャルも滝に手を振る。
 そしてトラックは発進し、ニャルはそのトラックが走り去って見えなくなるまでずっと見ていた。

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