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怪談殺し

ダイナソー

両親と殺人犯

 八月。盆の入り。
 明美と武者は早朝から近衛家の墓参りに来ていた。
 二人は墓を掃除し、墓前に花と線香を備える。そして近衛家の先祖に拝む。
 無言の時が流れる中、明美は武者にも意識を向けていた。
 それは武者も同じで、二人はお互いを意識し合う様になっていた。
 二人は拝むのを止め、お互いを見た。
 二人の目と目が合う。
 明美は気恥ずかしそうに顔をそむける。
 ふと明美は武者に話しかけた。
「お父さんもお母さんもね、十年ぐらい前かな。私が小さい頃に亡くなったんだ」
 明美は気恥ずかしさを紛らわしたいという気持ちもあったが、それよりもこの事を武者に話す良い機会だという気持ちもあった。
「二人共殺されたんだ。私が家の外に出てる間の出来事だった」
 明美は話を続ける。
「犯人はまだ捕まってなくてね、刀傷が残ってた事以外の証拠は無いんだ」
 武者は明美に何と声を掛けるべきか分からなかった。
 明美は武者に困った様に笑ってみせる。
「こんな話をしてごめんね。でも武者さんには知っていてもらいたかったんだ」

 二人は近衛家の墓を離れ墓地の中を歩く。
「明美の両親はどういう人間だったんだ?」
 武者が素朴な疑問を口にした。
 その疑問に明美は答える。
「私が小さな頃までの記憶だけど、とても優しい二人だったよ」
 そう明美は微笑みながら武者に言う。
「お金も沢山残してくれたからね。他に親戚も居なくて孤独だったけど、今まで何とか生きて来れたよ」
 その明美の微笑む顔はどこか寂しげでもあった。

 二人が墓地の入口へ戻ってきた時。
 二人の目の前に奇怪な姿が歩いてきた。
 その者は忍者の姿をしていた。
 赤い忍者装束の男で、腰には刀を差している。
 忍者が二人に近づき、二人は警戒態勢を取る。
 しかし以外にも忍者の目はにこやかで、そしてこう言った。
「明美殿、探したぞ。貴殿を迎えに来た」
 明美は警戒をしたまま、目の前の忍者に語り掛ける。
「どなたですか?」
 明美の警戒した目に対し、忍者の目はにこやかなままだ。
 忍者は自己紹介する。
「私は要人六人衆の頭目、半蔵と言う。貴殿にも我らの宿願……世界平和を成就するために協力してもらいたい」
 武者も警戒をしたまま、目の前の半蔵に語り掛ける。
「その世界平和の為にどんな協力をしろってんだ?」
 途端に半蔵は武者に冷酷な目を向ける。
「明美殿、まずはそこの煩い怪談を殺して見せろ。怪談は人類の敵だ。我々の敵だ」
 二人の警戒心が一気に高まる。
「断ります。武者さんを殺せなんて言う人は信用できない」
 明美はハッキリと忍者の提案を断った。
「断るのなら貴殿も死ぬ事になる」
 半蔵が腰の刀を抜く。
「やれるものならやってみろ」
 武者も腰の刀を抜いた。
 明美も拳を構える。
「武者さん、気を付けて。こいつ得体が知れない」

 瞬間、超高速の半蔵の刀が武者を襲う。
「相手は要人だ! 気を付けろ!」
 重く鋭い声が武者の頭の中に響く。
 それと同時に武者は超高速の刀に反応する。
 間一髪で武者は刀を避け、半蔵に切り返す。同じく超高速の斬撃だ。
 半蔵は武者の刀を軽々と避ける。
 そしてそのまま半蔵は武者に足払いをかけ、武者を転ばせる。
 半蔵が転んだ武者に刀を突き立てようとする。
 だがそれよりも早く明美が半蔵を蹴り飛ばしに行く。
 半蔵は武者に突き立てようとしていた刀の向きを変え、明美の体に刀が向かう。
 明美は右へステップして刀を避け、その体勢から蹴りを放つ。
 半蔵はこの蹴りを片手で受け止める。
 武者が寝たままの体勢で刀を横に振り、半蔵の足を切り裂こうとする。
 半蔵は明美の足を持ったまま横振りの刀を跳んで避け、跳んだままの体勢で明美を近くの墓石へ投げつける。
 明美は頭を守る体制で墓石に突っ込み、体を強く打ち付けた。
 半蔵の着地とほぼ同時に武者が立ち上がる。
 再び武者と半蔵は刀を構えなおす。
 直後、武者と半蔵は突撃し、二つの刀が交差した。
 二つの刀が交差した後、一瞬どちらも動かなかったが、武者の体がよろめき倒れた。
 倒れた武者にとどめを刺すべく、半蔵がゆっくりと武者へ近づく。
 それを阻止するべく立ち上がった明美が突進する。
 半蔵は明美の蹴りを避け、明美に切り返す。
 明美の肌が浅く切られる。
 明美は殴りかかるたび、半蔵に切り返される。
 その傷は全て浅く、明美はすぐに自分がもてあそばれている事が分かった。
 しかし明美が半蔵に殴りかかるのを止めれば、半蔵は武者にとどめを刺すだろう。明美は半蔵に殴りかかり続けるしかなかった。
 そうしている内に明美の体の傷は増えていき、多くの血を失った明美はとうとうその場に跪いた。
 戦闘能力に圧倒的な差がある事を明美は思い知らされた。
 明美の闘志は消えかけていた。
 半蔵が優し気な声で明美に語り掛ける。
「今一度聞こう。あの怪談にとどめを刺し、私に忠誠を誓え。そうすれば貴殿の命は保証しよう」
 明美の答えは決まっていた。
「やだね」
 半蔵は言う。
「何故だ?」
 半蔵の問いに明美は答える。
「彼を愛しているから」
 明美の言葉を聞いた半蔵はそれを嘲笑し、刀を振り上げる。
「お前は馬鹿だな。まるでお前の両親の様だ。ならばあの時の両親の様に私がお前を殺してやる」
 その言葉を聞いた明美は怒りがこみ上げてきた。
 自分の両親を殺したのはこいつなのだと明確に分かった。
 明美の闘志が再び湧き上がる。
「死ね!」
 半蔵の刀が超高速で振り下ろされる。
 明美の感覚が研ぎ澄まされる。更に。更に。
 そして明美は振り下ろされる刀を両手で受け止めた。
 真剣白羽どりだ。
「なっ!?」
 半蔵の目が驚きに大きく見開かれた。
 明美は叫ぶ。
「武者さん! 立って!」
 その言葉に答える様に武者は立ち上がる。
「言われなくても!」
 半蔵は焦っていた。
 半蔵は刀を動かそうとするが、明美がしっかりと抑えつけた刀は梃子でも動かない。
 武者が走り、半蔵の首を切り落としに掛かる。
 半蔵は刀を手放し、武者の斬撃をブリッジの姿勢で回避。そのままバック転し、武者達との距離を離す。
「なかなか思っていたよりもやる」
 半蔵はそう言いながら、明美の今までに無いほどの闘志を感じていた。
 明美は半蔵の刀を投げ捨てて立ち上がる。
 半蔵は今これ以上戦うのは得策ではないと考えていた。
「今日はここまでにしておこう。さらば!」
 半蔵は煙球を地面に投げつけ、その場から姿を消した。

「逃げたか」
 武者は刀を鞘に納めた。
「みたいだね」
 明美はその場にへたり込んだ。
 武者が明美を心配して言う。
「すぐ病院に言った方が良い。救急車を呼ぼうか?」
 明美は頷く。
「そうだね。ちょっと血を流しすぎてもうあんまり歩けそうじゃない」
 明美は言葉を続ける。
「でもやっと私の敵を見つけた。お父さん。お母さん。私達が必ずあいつに罪を償わせるから」
 明美は硬くそう誓った。

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