怪談殺し
親友と死
武者はドリームランドの小さな部屋に来ていた。
何度も来た小さな部屋。だがいつもとは明確に違っていた。
その部屋には大きな椅子が置いてあった。
「この部屋には不釣り合いなほど立派な椅子だな」
武者の呟きに部屋の騎士が頷く。
「そうだ。これが神の玉座だ」
騎士の言葉を武者は疑う。
「そこまで立派なものかね。これが」
武者は玉座の表に回り込み、気づいた。
「この光はなんだ?」
玉座の上には小さな光が浮かんでいた。
騎士は武者に説明する。
「その光は神の力の一端だ。ようやく要人が力の継承をする前に死んだ。そうすればこの玉座に神の力が戻ってくる」
武者が騎士に質問する。
「その死んだ要人ってのは闇子の事か?」
武者の言葉に騎士は再び頷く。
「そうだ。お前の仲間の少女の事だ。だが悲しむな。彼女の死がお前に力を与える」
騎士がそう言うと、武者を玉座の光が取り巻いた。
光が武者の中に入り込む。
武者は体の中に新たな力が漲るのを感じていた。
「今までのお前は半人前の神の力を使って戦っていた。だから私の助けが無ければ超高速の行動が取れなかったが、このもう半人前の神の力を受け継ぐ事で、これからは私の助けが無くても超高速で行動が取れる様になる」
武者は試しに拳を突き出してみる。
武者の拳が超高速で空を切った。
「お前は神へ一歩近づいた。この調子であと九人の要人を殺すのだ」
騎士の言葉を聞いて、武者はある事に気付いた。
「あと九人? 要人はあと八人じゃないのか?それに残念だが俺は明美は殺さないぜ」
騎士は首を横に振る。
「お前が殺さなくても奴はそのうち死ぬ。それにお前はあの蛙男を殺した時に見逃している。奴は死の間際にその力を別の人間に移した。あの一瞬で力を継承するなど考えにくい事だが」
武者が口を挟む。
「明美が死ぬってのはどういう事だ?」
声を荒げる武者を制して騎士は言う。
「人間と怪談の寿命の差だ。私達にはまだまだ時間がある。それだけの話だ」
そこまで聞いて、武者は聞かなければならなかった事を思い出した。
「そういえばお前は神の子なんだってな。お前が新しい神になる事はしないのか?」
騎士は再び首を横に振る。
「私よりも神に相応しい者が居る。それがお前だ」
武者にはその事が分からなかった。
「どうしてお前よりも俺の方が神に相応しいと思うんだ?」
騎士は少しの間、黙っていたが。
「そろそろ話しておいても良いだろう」
騎士は再び語る。
「お前は神の生まれ変わりだ」
朝日を体に受けながら、武者は目を覚ました。
闇子の葬儀の翌日だった。
闇子は死んだのだ。
武者達は皆闇子の死を悲しんだが、誰よりも悲しんでいたのは明美だった。
明美は元々友人が少なく、明美にとって闇子は数少ない友人の一人であり、その中でも三虎と闇子は親友と呼べる人間だった。
そんな闇子の死に、ずっと明美はふさぎ込んでいた。
明美は今日もふさぎ込んでいるのだろうと、武者は考えていた。
だがその時、美味しそうな匂いと共に明美の鼻歌が聞こえてきた。
明美は明美なりに闇子の死を乗り越えたのかと、武者はそう考えながらキッチンへ向かった。
明美の用意した朝食を食べながら、武者と明美は他愛も無い話をしていた。
だがその明美の言葉に武者は何も言えなくなった。
「武者さん。今日は闇子ちゃんのお見舞いに行ってくるから、少し帰りが遅くなるね」
武者が何も言えないでいると、明美が武者の顔を覗き込みながら言った。
「武者さん。どうかした?」
武者は何を言って良いか分からないまま息をのみ、そしてなんとか言葉を口に出した。
「お見舞いって何処に行くつもりなんだ?」
武者の質問に明美は当然の様に答える。
「闇子ちゃんの家だよ。此処何日か闇子ちゃんが学校を休んでるから、今日はちょっと闇子ちゃんの様子を見て来るんだ」
武者には分かった。明美は壊れてしまったのだと。
何度も来た小さな部屋。だがいつもとは明確に違っていた。
その部屋には大きな椅子が置いてあった。
「この部屋には不釣り合いなほど立派な椅子だな」
武者の呟きに部屋の騎士が頷く。
「そうだ。これが神の玉座だ」
騎士の言葉を武者は疑う。
「そこまで立派なものかね。これが」
武者は玉座の表に回り込み、気づいた。
「この光はなんだ?」
玉座の上には小さな光が浮かんでいた。
騎士は武者に説明する。
「その光は神の力の一端だ。ようやく要人が力の継承をする前に死んだ。そうすればこの玉座に神の力が戻ってくる」
武者が騎士に質問する。
「その死んだ要人ってのは闇子の事か?」
武者の言葉に騎士は再び頷く。
「そうだ。お前の仲間の少女の事だ。だが悲しむな。彼女の死がお前に力を与える」
騎士がそう言うと、武者を玉座の光が取り巻いた。
光が武者の中に入り込む。
武者は体の中に新たな力が漲るのを感じていた。
「今までのお前は半人前の神の力を使って戦っていた。だから私の助けが無ければ超高速の行動が取れなかったが、このもう半人前の神の力を受け継ぐ事で、これからは私の助けが無くても超高速で行動が取れる様になる」
武者は試しに拳を突き出してみる。
武者の拳が超高速で空を切った。
「お前は神へ一歩近づいた。この調子であと九人の要人を殺すのだ」
騎士の言葉を聞いて、武者はある事に気付いた。
「あと九人? 要人はあと八人じゃないのか?それに残念だが俺は明美は殺さないぜ」
騎士は首を横に振る。
「お前が殺さなくても奴はそのうち死ぬ。それにお前はあの蛙男を殺した時に見逃している。奴は死の間際にその力を別の人間に移した。あの一瞬で力を継承するなど考えにくい事だが」
武者が口を挟む。
「明美が死ぬってのはどういう事だ?」
声を荒げる武者を制して騎士は言う。
「人間と怪談の寿命の差だ。私達にはまだまだ時間がある。それだけの話だ」
そこまで聞いて、武者は聞かなければならなかった事を思い出した。
「そういえばお前は神の子なんだってな。お前が新しい神になる事はしないのか?」
騎士は再び首を横に振る。
「私よりも神に相応しい者が居る。それがお前だ」
武者にはその事が分からなかった。
「どうしてお前よりも俺の方が神に相応しいと思うんだ?」
騎士は少しの間、黙っていたが。
「そろそろ話しておいても良いだろう」
騎士は再び語る。
「お前は神の生まれ変わりだ」
朝日を体に受けながら、武者は目を覚ました。
闇子の葬儀の翌日だった。
闇子は死んだのだ。
武者達は皆闇子の死を悲しんだが、誰よりも悲しんでいたのは明美だった。
明美は元々友人が少なく、明美にとって闇子は数少ない友人の一人であり、その中でも三虎と闇子は親友と呼べる人間だった。
そんな闇子の死に、ずっと明美はふさぎ込んでいた。
明美は今日もふさぎ込んでいるのだろうと、武者は考えていた。
だがその時、美味しそうな匂いと共に明美の鼻歌が聞こえてきた。
明美は明美なりに闇子の死を乗り越えたのかと、武者はそう考えながらキッチンへ向かった。
明美の用意した朝食を食べながら、武者と明美は他愛も無い話をしていた。
だがその明美の言葉に武者は何も言えなくなった。
「武者さん。今日は闇子ちゃんのお見舞いに行ってくるから、少し帰りが遅くなるね」
武者が何も言えないでいると、明美が武者の顔を覗き込みながら言った。
「武者さん。どうかした?」
武者は何を言って良いか分からないまま息をのみ、そしてなんとか言葉を口に出した。
「お見舞いって何処に行くつもりなんだ?」
武者の質問に明美は当然の様に答える。
「闇子ちゃんの家だよ。此処何日か闇子ちゃんが学校を休んでるから、今日はちょっと闇子ちゃんの様子を見て来るんだ」
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