怪談殺し
明美と闇子
夕方。対策本部には新しく花子の姿が在った。
「花子ちゃんは私の家で預かる事になったの。で、知らない使用人と一緒に居るより私や明美と一緒に居る方が良いと思ったの」
そう言いながら三虎は明美を見る。
「思ったのだけれど」
三虎の言葉の意味を明美は理解していない様だ。
「明美お姉ちゃん。なんか変なんだけど」
花子が正直に思った事を明美に言う。
「花子ちゃん。明美はちょっと疲れてるだけなの」
三虎が花子を諭す様に言う。
「二人共ひどいな。私はいつも通りだよ。それよりも早く闇子ちゃんのお見舞いに行こ?」
明美がおかしくなっているのは誰の目にも明らかだった。
明美の目は虚ろで、常に何かを探す様に辺りを見回し、何度も闇子の事を口にしていた。
三虎はそんな明美を見るのがとても辛かった。
「それじゃあ、今日集まってもらったのは他でもない、闇子を殺した忍者についてなの。明美はおかしくなる前、闇子は忍者に殺されたって言っていたの」
明美が異議を唱える。
「闇子ちゃんは死んでないよ! 今ちょっと元気が無いだけだよ。でも闇子ちゃんを酷い目に合わせた忍者は許せない。絶対に許せない」
武者が明美に賛同する。
「ああ! 今弱ってる闇子の為にも、忍者を見つけ出して罪を償わせないといけない」
三虎は呆れた様に武者を見る。
「武者さん。貴方までおかしくなったの?」
武者は首を横に振る。
「別に俺もおかしくなっちゃいないぜ。ただ、明美を全員で否定するのはそれこそ不憫だ。誰か一人ぐらい明美の味方でいてやらないと」
三虎はため息をつく。
「それもそうなの。でもこのままじゃ話が前に進まない。明美と武者さんの二人はちょっと席を外してて欲しいの」
トラックの外。
明美と武者の二人はトラックの傍で話し合っていた。
「皆ひどいんだよ。私が変になったとか、おかしくなったとか、おかしくなってるのは皆の方なのに」
武者は黙ってその話を聞く。
「きっと怪談か何かの仕業だ。じゃないと皆、闇子ちゃんが死んだなんてひどい事言う筈がない」
武者は黙ったまま明美の言葉に頷く。
「まともなのは私と武者さんの二人だけだ。ねえ、武者さんはいつでも私の味方だった。これからもそうだよね?」
明美の不安気な言葉に、武者は寂しげな顔を向けながらも頷く。
「ああ、俺はいつでもお前の味方だ」
明美の不安そうな顔がパッと明るくなった。
「ありがとう。私の本当の味方は武者さんだけだよ。そうだ、喉とか乾いてない? 何か飲み物を買って来るよ」
その場を走り去って行く明美の後姿を見ながら、武者はその拳を強く握りしめた。
やり場の無い怒りや寂しさを武者はどうする事も出来なかった。
明美は自動販売機の前に来ていた。
ガコンッとジュースの缶が落ちる。明美は続けてもう一本のジュースを買おうとした。
「なかなか良い学校だな」
明美はその言葉に振り返る。そこには黒装束の忍者が居た。
「半蔵様はお前を殺す様に言っているが、お前はあの出来損ないと違う。その才能を殺すのは惜しい。どうだ? 考え直さないか?」
明美の頭に血が上っていく。明美が聞く。
「出来損ないって言うのは闇子ちゃんの事か?」
忍者は頷く。
「その通り。奴らの家系は代々落ちこぼれだ」
明美は拳を構える。
「その言葉を取り消せ。そしてお前は許さない。絶対にだ」
忍者も刀を構える。
「それは残念だ」
そして二つの影が衝突した。
勝負は一瞬だった。
お互いに超高速で接近し、忍者が降りぬいた刀を明美は紙一重で避け、そのまま忍者の頭を殴りぬけた。
忍者は盛大に吹き飛ばされた。
明美がゆっくりと地面に転がる忍者へと近づく。その眼は冷酷に忍者を見ていた。
倒れた忍者が不意に転がり、転がりながら二枚の手裏剣を明美へ投げる。
明美はその手裏剣を一枚づつ両手で受け止めると、忍者へ向けて投げ返した。
忍者の両目に手裏剣が刺さる。忍者はその場で身を悶える。
「楽に死ねると思うなよ……」
明美の声も驚く程冷酷なものだった。
忍者は何とかこの場を離れようと立ち上がろうとした。
しかし忍者はその場で転んでしまった。
転んだ後で忍者には分かった。地面が冷たい。地面が凍っているのだ。
忍者へ近づく明美の足音は止まっていたが、新たな足音が忍者に迫っていた。
恐らく新たな怪談が現れたのだと忍者は考えた。そしてこのままでは自分が死ぬのは時間の問題であろうとも。
忍者の取るべき行動は一つだった。
明美の目の前で忍者は自爆。爆発四散した。
だが明美にとってそんな事は最早どうでもよかった。
爆発による煙が晴れた後、明美の視線の先には一人の少女の姿が在った。
「闇子ちゃん!」
明美はその少女に跳び付いた。
「アケミ……チャン?」
その白い雪の様な少女は明美の事を知っている様だった。
「ヤミコ……ソレガワタシノナマエ?」
その少女、ヤミコは闇子とは別の存在だった。
だが明美にはヤミコと闇子が同じに見えていた。
「闇子ちゃんどうしたの? ちょっと変だよ?」
そう言いながらも明美はとても嬉しそうだった。
そんな明美にヤミコは言う。
「ワタシノキオクハオボロゲデ……ダカラワタシハキオクヲモトメテイル」
ヤミコは明美に困ったような笑顔を向けた。
「闇子ちゃん。もしかして記憶喪失に?」
ヤミコは頷いた。
「花子ちゃんは私の家で預かる事になったの。で、知らない使用人と一緒に居るより私や明美と一緒に居る方が良いと思ったの」
そう言いながら三虎は明美を見る。
「思ったのだけれど」
三虎の言葉の意味を明美は理解していない様だ。
「明美お姉ちゃん。なんか変なんだけど」
花子が正直に思った事を明美に言う。
「花子ちゃん。明美はちょっと疲れてるだけなの」
三虎が花子を諭す様に言う。
「二人共ひどいな。私はいつも通りだよ。それよりも早く闇子ちゃんのお見舞いに行こ?」
明美がおかしくなっているのは誰の目にも明らかだった。
明美の目は虚ろで、常に何かを探す様に辺りを見回し、何度も闇子の事を口にしていた。
三虎はそんな明美を見るのがとても辛かった。
「それじゃあ、今日集まってもらったのは他でもない、闇子を殺した忍者についてなの。明美はおかしくなる前、闇子は忍者に殺されたって言っていたの」
明美が異議を唱える。
「闇子ちゃんは死んでないよ! 今ちょっと元気が無いだけだよ。でも闇子ちゃんを酷い目に合わせた忍者は許せない。絶対に許せない」
武者が明美に賛同する。
「ああ! 今弱ってる闇子の為にも、忍者を見つけ出して罪を償わせないといけない」
三虎は呆れた様に武者を見る。
「武者さん。貴方までおかしくなったの?」
武者は首を横に振る。
「別に俺もおかしくなっちゃいないぜ。ただ、明美を全員で否定するのはそれこそ不憫だ。誰か一人ぐらい明美の味方でいてやらないと」
三虎はため息をつく。
「それもそうなの。でもこのままじゃ話が前に進まない。明美と武者さんの二人はちょっと席を外してて欲しいの」
トラックの外。
明美と武者の二人はトラックの傍で話し合っていた。
「皆ひどいんだよ。私が変になったとか、おかしくなったとか、おかしくなってるのは皆の方なのに」
武者は黙ってその話を聞く。
「きっと怪談か何かの仕業だ。じゃないと皆、闇子ちゃんが死んだなんてひどい事言う筈がない」
武者は黙ったまま明美の言葉に頷く。
「まともなのは私と武者さんの二人だけだ。ねえ、武者さんはいつでも私の味方だった。これからもそうだよね?」
明美の不安気な言葉に、武者は寂しげな顔を向けながらも頷く。
「ああ、俺はいつでもお前の味方だ」
明美の不安そうな顔がパッと明るくなった。
「ありがとう。私の本当の味方は武者さんだけだよ。そうだ、喉とか乾いてない? 何か飲み物を買って来るよ」
その場を走り去って行く明美の後姿を見ながら、武者はその拳を強く握りしめた。
やり場の無い怒りや寂しさを武者はどうする事も出来なかった。
明美は自動販売機の前に来ていた。
ガコンッとジュースの缶が落ちる。明美は続けてもう一本のジュースを買おうとした。
「なかなか良い学校だな」
明美はその言葉に振り返る。そこには黒装束の忍者が居た。
「半蔵様はお前を殺す様に言っているが、お前はあの出来損ないと違う。その才能を殺すのは惜しい。どうだ? 考え直さないか?」
明美の頭に血が上っていく。明美が聞く。
「出来損ないって言うのは闇子ちゃんの事か?」
忍者は頷く。
「その通り。奴らの家系は代々落ちこぼれだ」
明美は拳を構える。
「その言葉を取り消せ。そしてお前は許さない。絶対にだ」
忍者も刀を構える。
「それは残念だ」
そして二つの影が衝突した。
勝負は一瞬だった。
お互いに超高速で接近し、忍者が降りぬいた刀を明美は紙一重で避け、そのまま忍者の頭を殴りぬけた。
忍者は盛大に吹き飛ばされた。
明美がゆっくりと地面に転がる忍者へと近づく。その眼は冷酷に忍者を見ていた。
倒れた忍者が不意に転がり、転がりながら二枚の手裏剣を明美へ投げる。
明美はその手裏剣を一枚づつ両手で受け止めると、忍者へ向けて投げ返した。
忍者の両目に手裏剣が刺さる。忍者はその場で身を悶える。
「楽に死ねると思うなよ……」
明美の声も驚く程冷酷なものだった。
忍者は何とかこの場を離れようと立ち上がろうとした。
しかし忍者はその場で転んでしまった。
転んだ後で忍者には分かった。地面が冷たい。地面が凍っているのだ。
忍者へ近づく明美の足音は止まっていたが、新たな足音が忍者に迫っていた。
恐らく新たな怪談が現れたのだと忍者は考えた。そしてこのままでは自分が死ぬのは時間の問題であろうとも。
忍者の取るべき行動は一つだった。
明美の目の前で忍者は自爆。爆発四散した。
だが明美にとってそんな事は最早どうでもよかった。
爆発による煙が晴れた後、明美の視線の先には一人の少女の姿が在った。
「闇子ちゃん!」
明美はその少女に跳び付いた。
「アケミ……チャン?」
その白い雪の様な少女は明美の事を知っている様だった。
「ヤミコ……ソレガワタシノナマエ?」
その少女、ヤミコは闇子とは別の存在だった。
だが明美にはヤミコと闇子が同じに見えていた。
「闇子ちゃんどうしたの? ちょっと変だよ?」
そう言いながらも明美はとても嬉しそうだった。
そんな明美にヤミコは言う。
「ワタシノキオクハオボロゲデ……ダカラワタシハキオクヲモトメテイル」
ヤミコは明美に困ったような笑顔を向けた。
「闇子ちゃん。もしかして記憶喪失に?」
ヤミコは頷いた。
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