怪談殺し
教室と爆炎
朝。明美の家の前。
「明美ちゃんおはよう」
玄関から出て来た明美をヤミコが笑顔で出迎える。
「闇子ちゃんおはよう。今日は良い天気だね」
二人は挨拶を交わし、学校へ足を進める。
今日の天気は快晴。素晴らしい一日の始まりを思わせるものだった。
「三虎ちゃんが今日は少し後から学校に来てくれって。なんでだろうね?」
明美は不思議そうにヤミコに質問する。
「さあね。まあ、行ってみれば分かる事だと思うよ」
明美はヤミコの答えに頷く。
「そうだね。それと最近雪女の怪談がこの町で広まってるらしい。注意しないと」
雪女の怪談というのはヤミコの事だ。
だがヤミコはまるで赤の他人の事の様にその話題に乗る。
「そうだね。雪女の怪談……気をつけないとね」
明美は歩きながら拳を構え、その拳で空を切る。
「でもどんな奴が相手でも私達が皆を守るよ!」
そんな明美を見ながら、ヤミコは複雑な心境だった。
闇子の記憶の中でもこれまでに何人もの人間を脅威から守れずに殺されている。現に闇子自身が数日前に殺されている。明美にはその事実が見えていない。もし、これ以上明美の大切な人々が殺される事があれば明美はどうなるのか? ヤミコはそう考えていた。
同時刻。明美達の学校の教室。
三虎は担任とクラスメイトを集め、緊急の会議を開いていた。議題はこれからの皆と明美、そしてヤミコとの付き合い方についてだ。
「今、明美ちゃんは闇子ちゃんが死んだ事を認められなくて、別の子を闇子ちゃんだと思い込んでる。そういう事なんだね? 三虎ちゃん」
女子生徒の言葉に三虎は頷く。
「それで俺達にも明美に調子を合わせてほしいってお前は言うわけだ」
男子生徒の言葉に三虎は頷く。
「勿論無理にとは言わないの。でも、もし私達に付き合っても良いという人達には協力してほしいの。なるべく明美には混乱する事の無い様に、平穏に過ごしてほしいから……協力しても良いと言う人は手を挙げてほしいの」
そう言いながらも三虎は明美を狙う怪談や要人がいる限り、明美に本当の平穏は訪れないだろうと考えていた。明美にはせめて学校の中でだけでも平穏に過ごしてほしい。だがその為には学校の皆の協力が必要だ。でなければ、明美はこの学校の中でも孤立して生きていく事になる。
三虎の目の前のクラスメイト達は何やらそれぞれで話し合っている。
クラスメイトの半分も協力してくれれば十分だろうとも三虎は考えていた。
それだけにその後のクラスメイト達の反応は三虎にとって嬉しい誤算だった。
クラスメイトの全員が三虎達に協力すると手を挙げた。
三虎はその眼に浮かんだ涙を拭った。
明美達は学校に着き、明美達の教室の有る二階へと来ていた。
「闇子ちゃん! 早く!」
明美は階段を上ってくるヤミコを急かす。
明美はヤミコに目を向けた後、教室の前で待っている三虎に目を向け、笑顔で手を振る。
三虎もまた明美に笑顔で手を振った。
その時だった。
「え? あ? え?」
爆炎と爆音、明美は今、目の前で起きた事が理解できず、只々言葉にならない言葉を口にするだけだった。
明美のよく知る教室が燃えている。
明美のよく知る親友が燃えている。
ついさっきまで明美に笑顔で手を振っていた親友、三虎が燃えている。そしてそれはもう動かなかった。
明美はようやく理解した。
だが明美はそれがまた理解できなくなり、極度に混乱し。
「アーッ!? アーッ!?」
明美は頭を抱えてその場にへたり込み、奇声を発し続け、その体は動かなくなった。
「明美ちゃん! 落ち着いて! 明美ちゃん!」
ヤミコは明美の両肩に手を当てながら、明美に何度も呼びかける。
「アーッ!? アーッ!?」
だが明美にはヤミコの言葉も聞こえていなかった。
ヤミコは今どうすれば良いのか考えていた。そうして考えている内にヤミコは爆炎の奥から此方を見ている人影に気付いた。
ヤミコはゆっくりと立ち上がり、その人影から明美を守る様に、明美の前で拳を構えた。
爆炎の中からゆっくりと緑装束の忍者が現れ、言う。
「肝心の要人を爆殺し損ねたか。それに我らの忌むべき存在が、怪談がまた新たに要人に協力しているなど、お前も要人なら恥を知れ」
忍者が刀を構える。突きの構えだ。
ヤミコは何も言えない明美の代わりに何か言い返してやりたかったが、目の前の忍者に対してそんな事に意識を向けている暇など無かった。ヤミコは今の自分が、怪談として生まれたばかりの自分が、目の前の要人に対抗出来るだろうか? どちらにせよチャンスは一瞬だろうと考えていた。
ヤミコは全精神を集中する。
忍者の全身に気が満ち、そして超高速加速突進した。
ヤミコの体を刀が貫く。
「怪談如きが我らに叶うと思うな」
忍者はヤミコを嘲笑った。それは忍者にとって致命的な油断だった。
忍者もそれに気づいた。
忍者の足元が凍り付き、動かない。
そしてヤミコの体を貫く忍者の刀から手元までもが凍り付き、忍者はすでに身動きが取れなくなっていた。
「ま、待て、待ってくれ」
忍者の言葉に耳も傾けずヤミコは忍者を氷漬けにした。
ヤミコはなんとかその刀から体を引き抜き、明美の元へ戻った。
明美はなんとか会話が出来る様にはなっていたが、その顔は涙でグチャグチャだった。
「闇子ちゃん。傷が酷いよ。死んじゃ嫌だよ」
ヤミコは己の傷を見た後、明美に笑顔を向ける。
「大丈夫。心配しないで。私は前よりも少し頑丈だから」
だが明美は同じ言葉を繰り返す。
「闇子ちゃん。傷が酷いよ。死んじゃ嫌だよ」
もう明美の心は限界なのだろうとヤミコは考えていた。
「大丈夫。明美ちゃん。今はゆっくり休んで」
そう言いながらヤミコは明美を抱きしめ続けた。
「闇子ちゃん。傷が酷いよ。死んじゃ嫌だよ」
明美は壊れたレコードの様に同じ言葉を繰り返していた。
「明美ちゃんおはよう」
玄関から出て来た明美をヤミコが笑顔で出迎える。
「闇子ちゃんおはよう。今日は良い天気だね」
二人は挨拶を交わし、学校へ足を進める。
今日の天気は快晴。素晴らしい一日の始まりを思わせるものだった。
「三虎ちゃんが今日は少し後から学校に来てくれって。なんでだろうね?」
明美は不思議そうにヤミコに質問する。
「さあね。まあ、行ってみれば分かる事だと思うよ」
明美はヤミコの答えに頷く。
「そうだね。それと最近雪女の怪談がこの町で広まってるらしい。注意しないと」
雪女の怪談というのはヤミコの事だ。
だがヤミコはまるで赤の他人の事の様にその話題に乗る。
「そうだね。雪女の怪談……気をつけないとね」
明美は歩きながら拳を構え、その拳で空を切る。
「でもどんな奴が相手でも私達が皆を守るよ!」
そんな明美を見ながら、ヤミコは複雑な心境だった。
闇子の記憶の中でもこれまでに何人もの人間を脅威から守れずに殺されている。現に闇子自身が数日前に殺されている。明美にはその事実が見えていない。もし、これ以上明美の大切な人々が殺される事があれば明美はどうなるのか? ヤミコはそう考えていた。
同時刻。明美達の学校の教室。
三虎は担任とクラスメイトを集め、緊急の会議を開いていた。議題はこれからの皆と明美、そしてヤミコとの付き合い方についてだ。
「今、明美ちゃんは闇子ちゃんが死んだ事を認められなくて、別の子を闇子ちゃんだと思い込んでる。そういう事なんだね? 三虎ちゃん」
女子生徒の言葉に三虎は頷く。
「それで俺達にも明美に調子を合わせてほしいってお前は言うわけだ」
男子生徒の言葉に三虎は頷く。
「勿論無理にとは言わないの。でも、もし私達に付き合っても良いという人達には協力してほしいの。なるべく明美には混乱する事の無い様に、平穏に過ごしてほしいから……協力しても良いと言う人は手を挙げてほしいの」
そう言いながらも三虎は明美を狙う怪談や要人がいる限り、明美に本当の平穏は訪れないだろうと考えていた。明美にはせめて学校の中でだけでも平穏に過ごしてほしい。だがその為には学校の皆の協力が必要だ。でなければ、明美はこの学校の中でも孤立して生きていく事になる。
三虎の目の前のクラスメイト達は何やらそれぞれで話し合っている。
クラスメイトの半分も協力してくれれば十分だろうとも三虎は考えていた。
それだけにその後のクラスメイト達の反応は三虎にとって嬉しい誤算だった。
クラスメイトの全員が三虎達に協力すると手を挙げた。
三虎はその眼に浮かんだ涙を拭った。
明美達は学校に着き、明美達の教室の有る二階へと来ていた。
「闇子ちゃん! 早く!」
明美は階段を上ってくるヤミコを急かす。
明美はヤミコに目を向けた後、教室の前で待っている三虎に目を向け、笑顔で手を振る。
三虎もまた明美に笑顔で手を振った。
その時だった。
「え? あ? え?」
爆炎と爆音、明美は今、目の前で起きた事が理解できず、只々言葉にならない言葉を口にするだけだった。
明美のよく知る教室が燃えている。
明美のよく知る親友が燃えている。
ついさっきまで明美に笑顔で手を振っていた親友、三虎が燃えている。そしてそれはもう動かなかった。
明美はようやく理解した。
だが明美はそれがまた理解できなくなり、極度に混乱し。
「アーッ!? アーッ!?」
明美は頭を抱えてその場にへたり込み、奇声を発し続け、その体は動かなくなった。
「明美ちゃん! 落ち着いて! 明美ちゃん!」
ヤミコは明美の両肩に手を当てながら、明美に何度も呼びかける。
「アーッ!? アーッ!?」
だが明美にはヤミコの言葉も聞こえていなかった。
ヤミコは今どうすれば良いのか考えていた。そうして考えている内にヤミコは爆炎の奥から此方を見ている人影に気付いた。
ヤミコはゆっくりと立ち上がり、その人影から明美を守る様に、明美の前で拳を構えた。
爆炎の中からゆっくりと緑装束の忍者が現れ、言う。
「肝心の要人を爆殺し損ねたか。それに我らの忌むべき存在が、怪談がまた新たに要人に協力しているなど、お前も要人なら恥を知れ」
忍者が刀を構える。突きの構えだ。
ヤミコは何も言えない明美の代わりに何か言い返してやりたかったが、目の前の忍者に対してそんな事に意識を向けている暇など無かった。ヤミコは今の自分が、怪談として生まれたばかりの自分が、目の前の要人に対抗出来るだろうか? どちらにせよチャンスは一瞬だろうと考えていた。
ヤミコは全精神を集中する。
忍者の全身に気が満ち、そして超高速加速突進した。
ヤミコの体を刀が貫く。
「怪談如きが我らに叶うと思うな」
忍者はヤミコを嘲笑った。それは忍者にとって致命的な油断だった。
忍者もそれに気づいた。
忍者の足元が凍り付き、動かない。
そしてヤミコの体を貫く忍者の刀から手元までもが凍り付き、忍者はすでに身動きが取れなくなっていた。
「ま、待て、待ってくれ」
忍者の言葉に耳も傾けずヤミコは忍者を氷漬けにした。
ヤミコはなんとかその刀から体を引き抜き、明美の元へ戻った。
明美はなんとか会話が出来る様にはなっていたが、その顔は涙でグチャグチャだった。
「闇子ちゃん。傷が酷いよ。死んじゃ嫌だよ」
ヤミコは己の傷を見た後、明美に笑顔を向ける。
「大丈夫。心配しないで。私は前よりも少し頑丈だから」
だが明美は同じ言葉を繰り返す。
「闇子ちゃん。傷が酷いよ。死んじゃ嫌だよ」
もう明美の心は限界なのだろうとヤミコは考えていた。
「大丈夫。明美ちゃん。今はゆっくり休んで」
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