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怪談殺し

ダイナソー

海面と分身

「社長、このビルの爆破予告です。既に地下駐車場の入り口は爆破されて通れなくなっています」
 夜、オタマ社の社長室。
 そこに赤装束の忍者、半蔵が入ってくるなりそう言った。
 オタマ社の社長、川津は短く半蔵に質問する。
「社員は?」
 半蔵は川津の質問に答える。
「あと十分ほどで避難が完了します」
 半蔵の報告を聴き、川津はすぐに決断する。
「私達も避難する。屋上のヘリコプターでだ」
 社長室にはその二人の他に、心配そうな表情を浮かべる十代後半程の少女が居た。
 その少女の視線に気づき、川津は少女に優しい顔を向ける。
「杓は何も心配する必要は無い。今まで通り私達が皆でお前を守る」
 川津の娘、杓は心配そうな表情のまま頷いた。

 オタマ社のビルの正面に在るビルの屋上で、武者は狙撃銃のスコープを覗いていた。
 武者の視線の先では、争う様に入口から出て来る社員達の姿が在った。
「社員はどんどん出て来てるが、肝心の重役達が姿を見せないぜ」
 武者の横で同じく狙撃銃のスコープを覗く雷は、武者の言葉に短く返す。
「集中して」
 雷の言葉に構うことなく、武者は喋り続ける。
「既に他の逃げ道は塞いでるから、地上から逃げるとすれば正面玄関からしか無いんだがな」
 雷は特に何も言わなかったが、二人はほぼ同時にスコープを覗くのを止め、鞘から刀を抜いた。
 直後、二人の目の前に青装束と、黄装束の忍者が現れた。

 オタマ社のビルの屋上に半蔵と川津と杓の三人は到着した。
 ヘリコプターへ向かいながら川津は半蔵に今後の予定を指示する。
「私達が島に着いたらお前は部下達に、爆破騒ぎを起こした馬鹿が誰なのか調査させてくれ。その後はいつも通りだ」
 三人は速足でヘリコプターに乗り込む。
 既にパイロットと何人かの重役達が、三人をヘリコプターの中で待っていた。
 離陸するヘリコプターの中で杓は隣に座る川津に尋ねる。
「今回も大丈夫だよね? 前の翼竜の騒ぎの時みたいにすぐに解決するよね?」
 川津は杓に答える。
「ああ、今回も一時的に非難するだけだ。杓は何も心配する必要は無い」
 そして川津達を乗せたヘリコプターは離陸した。

 青装束と、黄装束の忍者をそれぞれ切り捨てながら、武者と雷の二人は遠くの空に去っていくヘリコプターを見ていた。
「一応用意してあるが、ロケットランチャーで狙ってみるか?」
 武者の提案を雷はを却下する。
「明らかに射程外でしょ。後はターボと十金さんに任せるとしよう」
 二人がオタマ社の社員達が避難を完了させたのを見届けた後、武者は爆弾の起爆スイッチを押した。
 崩壊していくオタマ社のビルを見ながら、二人はその場から姿を消した。

 海上のヘリコプターの中。
「今、連絡が入りました。ビルが爆破されました。ビルの周囲を警戒していた要人の二人も連絡が取れません。恐らくは殺されたのでしょう」
 半蔵からの報告を聴きながら、川津は歯噛みした。
「これでこちらに残った要人は二人、会社の本部も本当に爆破された……あの要人達の仕業か?」
 半蔵も、川津も虎の尾を踏んでしまったのでは? と考えていた。
「お前の部下が教室を爆破した時の被害者に、竜宮院家の末娘が交ざっていたそうだな? あの要人達は竜宮財団と繋がっていて、それでこんなに早く私達にここまでのダメージを与えて来たと考えるべきか」
 川津の横で杓は不安気に半蔵の顔を見る。
「もうすぐ島の屋敷に着きます。杓様はまずそこでお休みください……大丈夫です。我々が何とかします」
 半蔵は杓を心配させまいと気遣っていたが、先程から嫌な予感が拭いきれない。
 川津も半蔵と同じく、先程から嫌な予感を感じていた。
 川津は半蔵に頼み込む。
「半蔵、雇い主と部下の関係としてでなく、昔からの友人として頼む。私達に何かがあった時、その時は娘の杓を最優先で助けてくれ」

 川津達を乗せたヘリコプターのはるか後方、戦闘機の中で十金はミサイルの発射スイッチに親指を構えていた。
 すでにヘリコプターをロックオンし、射程内に標的を捉えている。
「くたばれ、糞野郎」
 十金は敵の断末魔を創造しながらミサイルの発射スイッチを親指で押した。
 戦闘機から亜音速のミサイルが放たれる。
 ミサイルはヘリコプターにグングン迫り……着弾! 爆発! ヘリコプターは空中で四散した。

「お父さん!」
 ミサイルの着弾する直前、半蔵は杓を抱えてヘリコプターから跳び離れていた。
 落下していく空の中で、杓は川津と目が合った。その直後だった。
 父の最後を、少女はただ見送る事しか出来なかった。
「杓様、少しの間黙っていてください。でないと舌を噛みます」
 そして半蔵は海面に着水する。更に半蔵は杓を抱えたまま海面を走り出す。
 半蔵は島を目指して一直線に走る。
 そこへ戦闘機が迫り、戦闘機の機銃が半蔵を狙って弾丸を掃射する。
 半蔵は一気に超高速へ加速して弾丸を避けながら、島へと足を速める。
 更に半蔵は戦闘機の目を欺くため、超高速移動から高速移動、高速移動から超高速移動へと繰り返し、残像を生み出す。
「分身の術!?」
 戦闘機の中で十金は驚愕した。
 今や海面には、何人もの半蔵が島を目指して走っていた。
「糞!」
 これではどの半蔵を狙えばいいのか分からないと、十金は憤慨する。
 そのまま半蔵は島の森林に入り込んだ。
「まあいい、後は頼みましたよ。ターボ様」
 十金を乗せた戦闘機はその場を飛び去った。

 島の屋敷の前で半蔵は足を止め、抱えていた杓を地面に下した。
「杓様、私の後ろへ」
 半蔵は杓を守る様に前に出る。
 半蔵と杓の視線の先には、鎖を振り回す老婆の姿が在った。
「自己紹介しようか。私はターボ、神の子だ」

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