ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.1―15 団長の戦い
クリストが戦場を離れた後。
そこに残されたユグドとルーナは、大勢の魔術師相手に戦闘を繰り広げていた。ユグドが前衛、ルーナが後方支援という布陣で挑む2人。
通常ならばたとえどれだけ連携しても勝てない相手。
だが、固有魔法の力はその常識を簡単に打ち破る。
「うおりゃぁぁっ!」
と炎を纏ったユグドの拳が、前から襲い来る魔術を片っ端から殴り飛ばし、迎撃していく。炎球であろうと風の刃であろうと、真っ正面から殴り、掴み、ねじ伏せる。それはまさに猪突猛進。
「おいおい、嘘だろ!?」
「なんなんだよこの怪物は!人間じゃねぇ!」
相手の魔術師達がそんな驚きの声を漏らす。まさか正面から力ずくで挑んでくるとは思いもしなかったのだろう。そして、魔術を捌く片手間に放たれた炎が、確実に魔術師達を昏倒させていく。
「龍人族ナメんじゃねーぞ!」
「くそっ、囲んで叩きのめせ!」
叫んで突撃するユグドを囲むかのように、今までの倍の魔術が殺到する。さすがにかわしきれないと判断して、回避しようとしたユグド。
だが、魔術師達はそれを許さない。
「『白き精霊よ・極大の冷気持ちて・凍てつかせよ』!」
その詠唱で発動した《フリージング・フィールド》が足元の水を瞬時に凍結させ、ユグドの動きを奪う。
ユグドの炎ならば脱出は容易だろうが、そんなことをしていれば迫りくる魔術であの世行き確定だ。
(くそっ、どうする………!?)
ユグドが迷ったその時。
水を跳ねる音と共に、暗闇の奥から少年が走り出てくる。その少年は瞬時に状況を把握したらしく、ルーナに向かって一言。
「ルーナ、俺の速度上げろっ!」
「わ、分かった!『加速』ッ!」
ルーナがクリストに杖を向けて唱えると、クリストの身体を魔力の光が覆う。それと同時にクリストの走る速度が一気に急上昇して―――
ズバン!という音を立てて、クリストの姿が掻き消える。そして次の瞬間にはユグドの前へと飛び出していた。
「おおぉぉぉぉぉぉっ!!!」
獣のような咆哮を上げて、目にも止まらぬスピードで連撃を叩き込む。煌めいた剣閃が魔術を片っ端から無効化していく。
その隙に炎で氷を溶かしたユグドが、クリストの隣に並び立つ。
「助かったぜ、団長」
「油断してんじゃねーよ、ユグド!」
「おいおい、オレが油断してるように見えたのか?」
「油断じゃなかったら単なる実力不足だな」
互いに軽口を叩き合うと、目の前の魔術師達を見据える。
「ユグド、残り10人だけど………全員やれるか?」
「余裕だぜ。だから団長はフリウスを頼む」
「おうよ、任せとけ。ルーナはユグドの援護をしてくれ!」
「分かったよ、団長!」
それぞれに指示を出すと、クリストはユグド目掛けて駆け出す。だがそれを黙って見逃すほど、魔導教団の魔術師は甘くない。
「素直に行かせると………思ったか!?」
生き残った10人にゼラスも加わって、一斉に魔術を発動。その暴力の嵐がクリストの身体を飲み込もうとしたその1秒前―――
「団長の邪魔はさせないよ!『減速』ッ!」
「その通りだぜ!『分け隔つ炎壁』ッ!」
ルーナの魔法が魔術の速度を遅くし、ユグドの魔法が炎の壁を造り出す。それは一瞬、されど一瞬。
―――サンキューな、2人とも!
そう心の中で感謝して、暴力の嵐のすぐ脇を駆け抜ける。クリストの接近に気づいたフリウスは魔法で迎撃するが、その全てをクリストの剣が無効化させる。
そして剣を思い切り弓を引くように引き絞ると―――
「いっ………けぇぇぇぇぇぇ!!!」
全ての体重を乗せた突きを放つ。
その渾身の突きはフリウスの心臓へと魔法を蹴散らしながら一直線に突き進み―――
ガキィィィンという衝突音を立てて、その寸前で停止する。それはフリウスが懐から抜いた2本の短剣で受け止めた音だ。
至近距離で2人の視線が交錯する。
「………遅い」
そう囁いて、フリウスはクリストの顔目掛けて右手の短剣を振る。それを上体を反らして回避したクリストは、カウンターでミドルキックを叩き込む。
「―――らあっ!」
「ぐっ………!」
みぞおちへと蹴りを入れられたフリウスは、そのまま地面に膝をつく。それを好機と見たクリストは追撃しようとして―――
「―――っ!?」
風を切って飛んできたものを反射的に剣で弾く。それはフリウスが持っていた短剣の1本だ。そして剣を振ったことにより、一瞬無防備になったクリストの腹に、素早く立ち上がったフリウスの右ストレートが飛ぶ。
ドン!という衝撃が走り、クリストの身体が2メートルほど吹っ飛ばされる。思わず咳き込むクリスト。
「チッ、咄嗟に直撃は避けたハズなんだけどな。さすがは騎士団長ってとこか?」
「いえいえ、『元騎士団長』ですよ。今の私は魔導教団実行部隊の隊長ってところですかね?」
「んなもん別にどうでも良い。興味ねーよ」
「そうですか?ボクはあなたに興味ありますよ?」
「気持ち悪いこと言うなよ!」
そう叫んで、クリストは突撃していく。一刻も早くこの戦いにケリをつけ、ソラミアとの依頼を果たすために。
そこに残されたユグドとルーナは、大勢の魔術師相手に戦闘を繰り広げていた。ユグドが前衛、ルーナが後方支援という布陣で挑む2人。
通常ならばたとえどれだけ連携しても勝てない相手。
だが、固有魔法の力はその常識を簡単に打ち破る。
「うおりゃぁぁっ!」
と炎を纏ったユグドの拳が、前から襲い来る魔術を片っ端から殴り飛ばし、迎撃していく。炎球であろうと風の刃であろうと、真っ正面から殴り、掴み、ねじ伏せる。それはまさに猪突猛進。
「おいおい、嘘だろ!?」
「なんなんだよこの怪物は!人間じゃねぇ!」
相手の魔術師達がそんな驚きの声を漏らす。まさか正面から力ずくで挑んでくるとは思いもしなかったのだろう。そして、魔術を捌く片手間に放たれた炎が、確実に魔術師達を昏倒させていく。
「龍人族ナメんじゃねーぞ!」
「くそっ、囲んで叩きのめせ!」
叫んで突撃するユグドを囲むかのように、今までの倍の魔術が殺到する。さすがにかわしきれないと判断して、回避しようとしたユグド。
だが、魔術師達はそれを許さない。
「『白き精霊よ・極大の冷気持ちて・凍てつかせよ』!」
その詠唱で発動した《フリージング・フィールド》が足元の水を瞬時に凍結させ、ユグドの動きを奪う。
ユグドの炎ならば脱出は容易だろうが、そんなことをしていれば迫りくる魔術であの世行き確定だ。
(くそっ、どうする………!?)
ユグドが迷ったその時。
水を跳ねる音と共に、暗闇の奥から少年が走り出てくる。その少年は瞬時に状況を把握したらしく、ルーナに向かって一言。
「ルーナ、俺の速度上げろっ!」
「わ、分かった!『加速』ッ!」
ルーナがクリストに杖を向けて唱えると、クリストの身体を魔力の光が覆う。それと同時にクリストの走る速度が一気に急上昇して―――
ズバン!という音を立てて、クリストの姿が掻き消える。そして次の瞬間にはユグドの前へと飛び出していた。
「おおぉぉぉぉぉぉっ!!!」
獣のような咆哮を上げて、目にも止まらぬスピードで連撃を叩き込む。煌めいた剣閃が魔術を片っ端から無効化していく。
その隙に炎で氷を溶かしたユグドが、クリストの隣に並び立つ。
「助かったぜ、団長」
「油断してんじゃねーよ、ユグド!」
「おいおい、オレが油断してるように見えたのか?」
「油断じゃなかったら単なる実力不足だな」
互いに軽口を叩き合うと、目の前の魔術師達を見据える。
「ユグド、残り10人だけど………全員やれるか?」
「余裕だぜ。だから団長はフリウスを頼む」
「おうよ、任せとけ。ルーナはユグドの援護をしてくれ!」
「分かったよ、団長!」
それぞれに指示を出すと、クリストはユグド目掛けて駆け出す。だがそれを黙って見逃すほど、魔導教団の魔術師は甘くない。
「素直に行かせると………思ったか!?」
生き残った10人にゼラスも加わって、一斉に魔術を発動。その暴力の嵐がクリストの身体を飲み込もうとしたその1秒前―――
「団長の邪魔はさせないよ!『減速』ッ!」
「その通りだぜ!『分け隔つ炎壁』ッ!」
ルーナの魔法が魔術の速度を遅くし、ユグドの魔法が炎の壁を造り出す。それは一瞬、されど一瞬。
―――サンキューな、2人とも!
そう心の中で感謝して、暴力の嵐のすぐ脇を駆け抜ける。クリストの接近に気づいたフリウスは魔法で迎撃するが、その全てをクリストの剣が無効化させる。
そして剣を思い切り弓を引くように引き絞ると―――
「いっ………けぇぇぇぇぇぇ!!!」
全ての体重を乗せた突きを放つ。
その渾身の突きはフリウスの心臓へと魔法を蹴散らしながら一直線に突き進み―――
ガキィィィンという衝突音を立てて、その寸前で停止する。それはフリウスが懐から抜いた2本の短剣で受け止めた音だ。
至近距離で2人の視線が交錯する。
「………遅い」
そう囁いて、フリウスはクリストの顔目掛けて右手の短剣を振る。それを上体を反らして回避したクリストは、カウンターでミドルキックを叩き込む。
「―――らあっ!」
「ぐっ………!」
みぞおちへと蹴りを入れられたフリウスは、そのまま地面に膝をつく。それを好機と見たクリストは追撃しようとして―――
「―――っ!?」
風を切って飛んできたものを反射的に剣で弾く。それはフリウスが持っていた短剣の1本だ。そして剣を振ったことにより、一瞬無防備になったクリストの腹に、素早く立ち上がったフリウスの右ストレートが飛ぶ。
ドン!という衝撃が走り、クリストの身体が2メートルほど吹っ飛ばされる。思わず咳き込むクリスト。
「チッ、咄嗟に直撃は避けたハズなんだけどな。さすがは騎士団長ってとこか?」
「いえいえ、『元騎士団長』ですよ。今の私は魔導教団実行部隊の隊長ってところですかね?」
「んなもん別にどうでも良い。興味ねーよ」
「そうですか?ボクはあなたに興味ありますよ?」
「気持ち悪いこと言うなよ!」
そう叫んで、クリストは突撃していく。一刻も早くこの戦いにケリをつけ、ソラミアとの依頼を果たすために。
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