ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.1―12 王都地下貯水場
平和な昼下がりの王都。
多くの人が行き交う街の屋根を疾走する3つの影。
それはクリスト達執行部のメンバーだ。
「それで団長?今どこに向かってるの?」
「ああ、ハーネスの『マル秘☆情報網』によるとだな………」
「ちょっと待って!今なんかとんでもなくふざけた名前が聞こえた気がしたよ!?」
「『マル秘☆情報網』によるとだな………」
「アタシの疑問完全スルー!?」
とまあいまいち真剣さにかけるやり取りだが、これでもこれから敵の真っ只中にケンカを売ろうとしているところである。もちろん秘密裏にではあるが。
「つか団長、結局オレらどこ向かってんだ?」
「だからそれをこれから言おうとしてんだろ?え〜っと、ハーネスが言うには『王都地下貯水場』だとよ。ほら、ちょうど着いたぜ」
そう言って立ち止まったクリスト達の目の前にあるのは、王都の施設の1つである建物だ。この建物は王都の北端、つまり外壁にくっつくようにして建てられている。
「あそこが貯水場へと入り口だな」
「………でも団長、騎士団の警備が居るんだけど。どうやって入るの?」
ルーナがそう訊ねると、クリストは実に楽しそうな笑みで振り返って答える。
「決まってんだろ、倒して侵入るんだよ」
「つまりいつも通りってことだな!」
「………そゆこと。ただしユグド、お前はやり過ぎんなよ?」
「あったりまえだろ!オレを誰だと思ってんだ!?」
「いや、分かってるから尚更不安なんだけど………?」
「アタシも団長と同意見だよ」
あからさまに燃えるユグドとは正反対に、大きくため息をつくクリストとルーナ。それは『全力全壊』をモットーにするユグドの戦闘スタイル、つまり『とりあえず全部破壊して、それから考えよう』という適当極まりないものへの不安なのだ。
だが当の本人はそんなことを露知らず、
「おい団長、早くしろよ!さっさと戦いてぇ!」
 
「はいはい、それじゃさくっとやっちゃいますか」
「うん、アタシはここで見てるよ。気を付けてね?」
「りょーかいだ」
そう言って、クリストとユグドは屋根の縁を蹴って空中へと身を踊らせる。そして飛び降りた真下には、警備の騎士がいる。
「俺が右の2人をやる」
「そんじゃオレが左の2人だな」
空中で互いに言葉を交わすと、クリストは着地すると同時に立っていた騎士の1人の首筋に思い切り手刀を叩き込んで気絶させる。
「がっ………!?」
「な、なんだ貴様!?」
いきなり倒れた同僚と現れた不審者を見て、慌てて腰のホルダーから魔力拳銃を引き抜こうとする騎士。だがその手が拳銃を抜くよりも早く、クリストは道端に落ちていた石を顔めがけて蹴る。
「うおっ………!?」
飛んできた石を手のひらで受け止めた騎士。だがそれゆえに一瞬のスキが生まれた。そしてその一瞬はクリストにとって十分過ぎるほどで。
「せあっ………!!」
鋭い踏み込みからの右ストレートが騎士の顔面をまともに捉え、吹き飛ばす。それはまさに電光石火の一撃。
「ぐはあぁぁっ!?」
吹き飛ばされた騎士は、建物の壁に頭から激突して気を失ってしまう。ふぅ………と安堵のため息をついたクリストの背後から、陽気な声が飛んでくる。
「いやぁ〜、戦った!楽しかったな、団長!」
「あのなぁ、本番はここからなんだぞ?」
「わかってるよ、心配すんなって」
「………心配で胸がいっぱいだよね、団長」
「………だよな」
いつの間にか屋根の上から降りてきていたルーナの意見に同感のクリスト。だが今はのんびりと会話をしている暇はない。
「よし、行くぞ!」
そんな意気込みと共に、建物の中へと足を踏み入れるクリスト。それに続いてユグドとルーナも中へと入る。そして先を歩いていたクリストが真っ先に気づいた。
「………なんか人の気配がしねぇな」
「だよねぇ。照明とかは付いてるのに、人だけが居ないなんて………。まるで罠みたい」
「だよなぁ………。ほら、いかにも怪しい通路あるし」
そう言うクリストの目の前には、先の見えない十字路が。3人は無言で顔を見合せると――― 
「俺真ん中!」
「アタシ左!」
「オレは右!」
と同時に指をさす。奇跡的にも3人バラバラの道を選び、いざ歩き出そうとしたその時。
ユグドの足が何かを踏んだ。
正確に言えばカチッという音がして床の一部が凹んだのだ。
「………え?」
その瞬間ギロチンのように落ちてくる縦開きの扉。まさに先ほどルーナの言った通り、罠そのものである。
「おわあぁぁぁっ!?」
「チッ、なにやってんだ馬鹿!」
クリストはユグドの服の襟を掴むと、自分の体ごと後ろに倒れ込む。
「うぐぇっ!」
潰れたカエルのような悲鳴を上げて倒れ込んだユグドの足の裏すれすれを扉が通過、床と接触して大きな音を立てる。
「あ、危なかった………」
「んなことより、命の恩人の俺に感謝の言葉は?それとユグド重い、今すぐ俺の上から退け」
「あっと悪い、今退く。それと、感謝の言葉はねーからな。今まで何度戦場で助けたことか」
「それはそれ、これはこれだろ?」
「知るか!全部一緒だろ、そんなもの!」
「まあまあ、いいじゃない」
そんなつまらないことでケンカを始める2人を、ルーナが間に入って止める。やがて落ち着きを取り戻したクリストは、ユグドとルーナに指示を出す。
「よし、そんじゃユグドはルーナと一緒に左に行ってくれ。俺は真ん中に行くから」
「おう、死ぬんじゃねぇぞ?」
「気を付けてね、団長」
「ルーナもな。ユグドはまあ………瀕死ぐらいなら問題ないだろ」
「大いに問題あるわ!」
いつもの調子で言葉を交わしてから、それぞれの道へと進んでいく3人。そして今、それぞれの闘いが始まるのだった。
多くの人が行き交う街の屋根を疾走する3つの影。
それはクリスト達執行部のメンバーだ。
「それで団長?今どこに向かってるの?」
「ああ、ハーネスの『マル秘☆情報網』によるとだな………」
「ちょっと待って!今なんかとんでもなくふざけた名前が聞こえた気がしたよ!?」
「『マル秘☆情報網』によるとだな………」
「アタシの疑問完全スルー!?」
とまあいまいち真剣さにかけるやり取りだが、これでもこれから敵の真っ只中にケンカを売ろうとしているところである。もちろん秘密裏にではあるが。
「つか団長、結局オレらどこ向かってんだ?」
「だからそれをこれから言おうとしてんだろ?え〜っと、ハーネスが言うには『王都地下貯水場』だとよ。ほら、ちょうど着いたぜ」
そう言って立ち止まったクリスト達の目の前にあるのは、王都の施設の1つである建物だ。この建物は王都の北端、つまり外壁にくっつくようにして建てられている。
「あそこが貯水場へと入り口だな」
「………でも団長、騎士団の警備が居るんだけど。どうやって入るの?」
ルーナがそう訊ねると、クリストは実に楽しそうな笑みで振り返って答える。
「決まってんだろ、倒して侵入るんだよ」
「つまりいつも通りってことだな!」
「………そゆこと。ただしユグド、お前はやり過ぎんなよ?」
「あったりまえだろ!オレを誰だと思ってんだ!?」
「いや、分かってるから尚更不安なんだけど………?」
「アタシも団長と同意見だよ」
あからさまに燃えるユグドとは正反対に、大きくため息をつくクリストとルーナ。それは『全力全壊』をモットーにするユグドの戦闘スタイル、つまり『とりあえず全部破壊して、それから考えよう』という適当極まりないものへの不安なのだ。
だが当の本人はそんなことを露知らず、
「おい団長、早くしろよ!さっさと戦いてぇ!」
 
「はいはい、それじゃさくっとやっちゃいますか」
「うん、アタシはここで見てるよ。気を付けてね?」
「りょーかいだ」
そう言って、クリストとユグドは屋根の縁を蹴って空中へと身を踊らせる。そして飛び降りた真下には、警備の騎士がいる。
「俺が右の2人をやる」
「そんじゃオレが左の2人だな」
空中で互いに言葉を交わすと、クリストは着地すると同時に立っていた騎士の1人の首筋に思い切り手刀を叩き込んで気絶させる。
「がっ………!?」
「な、なんだ貴様!?」
いきなり倒れた同僚と現れた不審者を見て、慌てて腰のホルダーから魔力拳銃を引き抜こうとする騎士。だがその手が拳銃を抜くよりも早く、クリストは道端に落ちていた石を顔めがけて蹴る。
「うおっ………!?」
飛んできた石を手のひらで受け止めた騎士。だがそれゆえに一瞬のスキが生まれた。そしてその一瞬はクリストにとって十分過ぎるほどで。
「せあっ………!!」
鋭い踏み込みからの右ストレートが騎士の顔面をまともに捉え、吹き飛ばす。それはまさに電光石火の一撃。
「ぐはあぁぁっ!?」
吹き飛ばされた騎士は、建物の壁に頭から激突して気を失ってしまう。ふぅ………と安堵のため息をついたクリストの背後から、陽気な声が飛んでくる。
「いやぁ〜、戦った!楽しかったな、団長!」
「あのなぁ、本番はここからなんだぞ?」
「わかってるよ、心配すんなって」
「………心配で胸がいっぱいだよね、団長」
「………だよな」
いつの間にか屋根の上から降りてきていたルーナの意見に同感のクリスト。だが今はのんびりと会話をしている暇はない。
「よし、行くぞ!」
そんな意気込みと共に、建物の中へと足を踏み入れるクリスト。それに続いてユグドとルーナも中へと入る。そして先を歩いていたクリストが真っ先に気づいた。
「………なんか人の気配がしねぇな」
「だよねぇ。照明とかは付いてるのに、人だけが居ないなんて………。まるで罠みたい」
「だよなぁ………。ほら、いかにも怪しい通路あるし」
そう言うクリストの目の前には、先の見えない十字路が。3人は無言で顔を見合せると――― 
「俺真ん中!」
「アタシ左!」
「オレは右!」
と同時に指をさす。奇跡的にも3人バラバラの道を選び、いざ歩き出そうとしたその時。
ユグドの足が何かを踏んだ。
正確に言えばカチッという音がして床の一部が凹んだのだ。
「………え?」
その瞬間ギロチンのように落ちてくる縦開きの扉。まさに先ほどルーナの言った通り、罠そのものである。
「おわあぁぁぁっ!?」
「チッ、なにやってんだ馬鹿!」
クリストはユグドの服の襟を掴むと、自分の体ごと後ろに倒れ込む。
「うぐぇっ!」
潰れたカエルのような悲鳴を上げて倒れ込んだユグドの足の裏すれすれを扉が通過、床と接触して大きな音を立てる。
「あ、危なかった………」
「んなことより、命の恩人の俺に感謝の言葉は?それとユグド重い、今すぐ俺の上から退け」
「あっと悪い、今退く。それと、感謝の言葉はねーからな。今まで何度戦場で助けたことか」
「それはそれ、これはこれだろ?」
「知るか!全部一緒だろ、そんなもの!」
「まあまあ、いいじゃない」
そんなつまらないことでケンカを始める2人を、ルーナが間に入って止める。やがて落ち着きを取り戻したクリストは、ユグドとルーナに指示を出す。
「よし、そんじゃユグドはルーナと一緒に左に行ってくれ。俺は真ん中に行くから」
「おう、死ぬんじゃねぇぞ?」
「気を付けてね、団長」
「ルーナもな。ユグドはまあ………瀕死ぐらいなら問題ないだろ」
「大いに問題あるわ!」
いつもの調子で言葉を交わしてから、それぞれの道へと進んでいく3人。そして今、それぞれの闘いが始まるのだった。
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