ゼロの魔導騎士と封印の魔導書《グリモワール》
No.1―6 囚われの牢獄
「ここは………どこだ………?」
クリストは目を覚まして開口一番そう呟いた。
目を覚ましたその場所は、石の壁と鉄格子で造られたまるで牢獄のような小部屋。
なぜここにいるのかと、気を失う前の記憶を必死に辿っていく。
「俺はあのときソラミアを追いかけて………そうだ、あそこで俺は後ろから殴られて気絶して………。そうだ、ソラミアはどうなった!?」
慌てて辺りを見回すと、部屋のすみに横たわるソラミアの姿を見つけた。
「………ッ!おい、ソラミア!大丈夫か!?」
クリストは駆け寄って肩を揺すりながら叫ぶ。
するとソラミアの両目がゆっくりと開けられた。
「うぅ………。あれ、クリストさん………?」
「お、起きたか!大丈夫か?どこかケガしてるとかはないか?」
そう問われて、ソラミアは自分の現状を確かめる。
立ち上がり軽く体を動かすが、特に支障はない。
「多分大丈夫です………。それよりここは一体どこなんですか?」
「さあな。俺にも皆目検討がつかん。恐らくだが魔導教団のアジトの1つとかだろうけど………」
ソラミアの無事を確認して安心したのか、落ち着きを取り戻すクリスト。
「アジトですか………。それじゃあとりあえずここから出る方法を考えましょうか」
「出るっていったって鉄格子だぞ?どうすんだよ」
「私に任せて下さい!私の魔法で破壊します!」
そう言って左手を前に突き出すソラミア。
ソラミアが意識を集中させると、紫電が発生して徐々に勢いを増していく。
「行きます!はあぁぁぁッ!」
気合いの叫びと共に放たれた紫電は、鉄格子目掛けて一直線に宙を走る。鉄格子を破壊するには十分すぎる威力を秘めた一撃。
だが、その一撃が鉄格子を破壊することはなかった。
ソラミアが放った紫電が鉄格子に激突する直前。
突如鉄格子の前の空間に魔方陣が出現し、紫電を受け止めさせたのだ。
「なっ………!?」
渾身の一撃をあっさりと受け止められたソラミアは、驚愕の声をあげる。だが、クリストの反応はあくまで冷静だった。
「やっぱりな。破壊は不可能か………」
「………どういう事ですか?」
驚愕から立ち直ったソラミアがそう訊ねる。するとクリストは床に出現した魔方陣を指差し、続ける。
「この魔方陣、多分だけど防御魔術だな。それも相当強力なヤツ。これを破壊するんなら少なくとも魔導騎士10人、もしくは高火力の固有魔法の使い手がいないとな」
「………固有魔法、ですか」
固有魔法とは、全ての魔導士が最初に覚醒する基礎魔法を昇華させたものだ。ただし昇華させるにはかなりの努力と経験が必要であり、大半の魔導士は一生を賭けても昇華出来ないことが多い。
しかしその力はケタ違いに強く、基礎魔法を遥かに上回る威力と応用力の広さがウリだ。
 ただし、あまりにも強すぎるため使い手本人にも制御出来ずに『魔導器』と呼ばれる道具を使わなければ基礎魔法と大差ない力しか出ないという欠点もあるのだ。
「ソラミアの『ストライクボルト』は電撃属性の基礎魔法だからな。威力は高いけど制御が難しいだろ、その魔法」
「ええ、真っ直ぐにしか発射出来ませんから。でもこんな牢ぐらいは破れると思ったんですけどね………」
「ま、あの防御魔術があるんじゃ仕方ない。そんな事より訊きたいことがあるんだけど………」
「………訊きたいことですか?」
ソラミアからそう問われたクリストは、今までずっと気になっていた疑問を口にする。
「お前、なんで教団から追われてるんだ?」
「―――!」
その言葉を聞いた途端、かすかにその表情を硬いものにするソラミア。その表情から読み取れるのは、何かに対する恐怖。
「別に言いたくないなら言わなくてもいいけど。まあ俺がお前を助けるのは決定事項だからな」
そんなクリストの一方的な宣言。だがそれは最後まで見捨てないという強い覚悟を秘めている。
その台詞に、ソラミアは思わず声をもらす。
「どうして………?どうしてあなたはそんなに私の事を助けようとしてくれるんですか………?」
「なぜ助けるか、ね。それはだな………」
クリストがその答えを言おうとしたその時。
コツ………コツ………という足音と共に、ゼラスがこちらへと歩いてきた。
「む、起きたのか。ちょうどいい、貴様らに用があったところだ」
「………アンタもよくよくタイミングが悪いよな」
「ですよね………」
空気の読めないゼラスに非難の視線を向ける2人。
だがそんな事はどこ吹く風といった様子で受け流し、マイペースに話を進めるゼラス。
「そこから出ろ。ただし分かっているとは思うが、余計な抵抗は無駄だぞ?」
「だろうな。用意周到なアンタらの事だ、どうせそこらじゅうに防御魔術張り巡らせてんだろ?」
「………それだけではないさ」
そう言って懐からおもむろに柄に2本の剣が交差した紋章が描かれた短剣を取り出すゼラス。
そしてそれをクリストの首もとに突きつける。
「………なるほどね。俺は人質役ってワケ?」
「そういうことだ。さて生き残りの少女よ、貴様がこちらの要望を聞かねばこの少年を斬る。さあこの少年を見殺しにするか?」
ゼラスはソラミアを見てそう問いかける。まるで今後の展開が全て読めているかのような余裕の笑みを浮かべながら。
「………分かりました。あなた達の要望を聞き入れます。その代わり、その人には手を出さないで下さい」
「もちろんだとも。想定通りの展開でなによりだ」
クリストは目を覚まして開口一番そう呟いた。
目を覚ましたその場所は、石の壁と鉄格子で造られたまるで牢獄のような小部屋。
なぜここにいるのかと、気を失う前の記憶を必死に辿っていく。
「俺はあのときソラミアを追いかけて………そうだ、あそこで俺は後ろから殴られて気絶して………。そうだ、ソラミアはどうなった!?」
慌てて辺りを見回すと、部屋のすみに横たわるソラミアの姿を見つけた。
「………ッ!おい、ソラミア!大丈夫か!?」
クリストは駆け寄って肩を揺すりながら叫ぶ。
するとソラミアの両目がゆっくりと開けられた。
「うぅ………。あれ、クリストさん………?」
「お、起きたか!大丈夫か?どこかケガしてるとかはないか?」
そう問われて、ソラミアは自分の現状を確かめる。
立ち上がり軽く体を動かすが、特に支障はない。
「多分大丈夫です………。それよりここは一体どこなんですか?」
「さあな。俺にも皆目検討がつかん。恐らくだが魔導教団のアジトの1つとかだろうけど………」
ソラミアの無事を確認して安心したのか、落ち着きを取り戻すクリスト。
「アジトですか………。それじゃあとりあえずここから出る方法を考えましょうか」
「出るっていったって鉄格子だぞ?どうすんだよ」
「私に任せて下さい!私の魔法で破壊します!」
そう言って左手を前に突き出すソラミア。
ソラミアが意識を集中させると、紫電が発生して徐々に勢いを増していく。
「行きます!はあぁぁぁッ!」
気合いの叫びと共に放たれた紫電は、鉄格子目掛けて一直線に宙を走る。鉄格子を破壊するには十分すぎる威力を秘めた一撃。
だが、その一撃が鉄格子を破壊することはなかった。
ソラミアが放った紫電が鉄格子に激突する直前。
突如鉄格子の前の空間に魔方陣が出現し、紫電を受け止めさせたのだ。
「なっ………!?」
渾身の一撃をあっさりと受け止められたソラミアは、驚愕の声をあげる。だが、クリストの反応はあくまで冷静だった。
「やっぱりな。破壊は不可能か………」
「………どういう事ですか?」
驚愕から立ち直ったソラミアがそう訊ねる。するとクリストは床に出現した魔方陣を指差し、続ける。
「この魔方陣、多分だけど防御魔術だな。それも相当強力なヤツ。これを破壊するんなら少なくとも魔導騎士10人、もしくは高火力の固有魔法の使い手がいないとな」
「………固有魔法、ですか」
固有魔法とは、全ての魔導士が最初に覚醒する基礎魔法を昇華させたものだ。ただし昇華させるにはかなりの努力と経験が必要であり、大半の魔導士は一生を賭けても昇華出来ないことが多い。
しかしその力はケタ違いに強く、基礎魔法を遥かに上回る威力と応用力の広さがウリだ。
 ただし、あまりにも強すぎるため使い手本人にも制御出来ずに『魔導器』と呼ばれる道具を使わなければ基礎魔法と大差ない力しか出ないという欠点もあるのだ。
「ソラミアの『ストライクボルト』は電撃属性の基礎魔法だからな。威力は高いけど制御が難しいだろ、その魔法」
「ええ、真っ直ぐにしか発射出来ませんから。でもこんな牢ぐらいは破れると思ったんですけどね………」
「ま、あの防御魔術があるんじゃ仕方ない。そんな事より訊きたいことがあるんだけど………」
「………訊きたいことですか?」
ソラミアからそう問われたクリストは、今までずっと気になっていた疑問を口にする。
「お前、なんで教団から追われてるんだ?」
「―――!」
その言葉を聞いた途端、かすかにその表情を硬いものにするソラミア。その表情から読み取れるのは、何かに対する恐怖。
「別に言いたくないなら言わなくてもいいけど。まあ俺がお前を助けるのは決定事項だからな」
そんなクリストの一方的な宣言。だがそれは最後まで見捨てないという強い覚悟を秘めている。
その台詞に、ソラミアは思わず声をもらす。
「どうして………?どうしてあなたはそんなに私の事を助けようとしてくれるんですか………?」
「なぜ助けるか、ね。それはだな………」
クリストがその答えを言おうとしたその時。
コツ………コツ………という足音と共に、ゼラスがこちらへと歩いてきた。
「む、起きたのか。ちょうどいい、貴様らに用があったところだ」
「………アンタもよくよくタイミングが悪いよな」
「ですよね………」
空気の読めないゼラスに非難の視線を向ける2人。
だがそんな事はどこ吹く風といった様子で受け流し、マイペースに話を進めるゼラス。
「そこから出ろ。ただし分かっているとは思うが、余計な抵抗は無駄だぞ?」
「だろうな。用意周到なアンタらの事だ、どうせそこらじゅうに防御魔術張り巡らせてんだろ?」
「………それだけではないさ」
そう言って懐からおもむろに柄に2本の剣が交差した紋章が描かれた短剣を取り出すゼラス。
そしてそれをクリストの首もとに突きつける。
「………なるほどね。俺は人質役ってワケ?」
「そういうことだ。さて生き残りの少女よ、貴様がこちらの要望を聞かねばこの少年を斬る。さあこの少年を見殺しにするか?」
ゼラスはソラミアを見てそう問いかける。まるで今後の展開が全て読めているかのような余裕の笑みを浮かべながら。
「………分かりました。あなた達の要望を聞き入れます。その代わり、その人には手を出さないで下さい」
「もちろんだとも。想定通りの展開でなによりだ」
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