この世にに魔術は存在する

釵ヱ乃 あいぬ

2話 開く壁

「えーと、一学期の途中からですがこの3年A組に入ることになった、塚西君です。ほら、塚西君こっちへ」
眼鏡をかけた30代前半に見受けられる女性がカイトを手招きする。

「今日からこのクラスでお世話になる塚西カイトです。好きなものは魔術で、趣味は魔読書です。よろしくお願いします」

カイトはなぜ冷たい目を向けられているのかわからないという顔をして、指定された席に座る。

「それでは一時限目を始めます。日直、挨拶を」
「起立!礼!着席!」
元気のよい挨拶を教室に響き渡す日直。
席についたカイトは教室の中を見渡す。
教室の一番後ろの一番右の席に座ったカイトの目にまず一番最初に入ったのは先ほど校庭で謎の行為を行っていた生徒である。カイトと同じクラスのようだ。
カイトがその生徒を眺めていると目が会い軽く一礼される。

「こーら!塚西君!北本君!授業中ですよ!集中しなさい!全く…」

ーー転校初日から怒られた。最悪だ…

カイトが北本と呼ばれた生徒に目を向けると目をそらされた。


10分休憩に入ると北本がカイトへ近づいてくる。
「今日の朝のことといい、先程の授業のここといい、申し訳ありませんでした。ところで本題に入るのですが、あなたの自己紹介が少し気になりまして…放課後また僕の所に来ていただけませんか?まぁ今朝のことを見られたら拒否権はありませんが。では」
「うぉーい、では。じゃないだろ!いきなりベラベラ喋りあがって…まさかとは思うけど秘密を知られたからには生きて帰さない展開にならないでよね?」
カイトは心配そうな目を向ける。
「安心して下さい。協力的であれば命だけは保証します。あと今朝の事はくれぐれも口外禁止で」
ーー安心できる要素が全くないんだが…


放課後カイトは言われた通り北本の所に行き、ついてくるように言われたのでそのまま北本についていく。
5階ーーーこの学校の最上階の端の行き止まりまでついた時北本が立ち止まる。

「お、おい?北本…まさかここを通るわけないよな?つかぶつかるからな?それこそ魔法かなんかないと…」
「まさか、普通に通るわけありませんよ。しかしここは開きます。あなたが好きと仰っていた…魔術で。」
北本が意味深な言葉を続ける。

「ワルグリウス・シュルゲンツ!扉よ…開け!」

そんな中二臭い言葉に目を輝かせるカイトの前に見える壁は一度光を放ったように見えたが特に変化はない。
しかし、北本はその壁に向かっていきやがてカイトの視界から消えた。
「えっ…ちょっと?!どこだ北本?!」
『ここですよー早く来てくださーい』
エコーのように声がこだまして聞こえる。

北本のように恐る恐る壁に足を伸ばすと壁にはぶつからず、足が壁を貫通した。

「っ…」
カイトはあまりの衝撃に言葉もでない。

体が完全に壁の奥へ入り、カイトは自分が入ってきた方向を見るとそこには扉があった。
前を見るとそこには教室と同じくらいの部屋があり、北本を含めた男女生徒が複数人いた。

そして北本はこう言った。

「ようこそ塚西君。校内清掃部…もとい、魔術研究部へ。この世に魔術はーーーー」


突如その時、記憶がリンクした。



「魔術はーーーー魔術は存在する」



こうしてチュートリアルは終盤を迎える

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