過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~親愛とヒモ勇者~

『ユウにぃ、おはよ、早く起きるの~』

おはようございます。起きてます。
実は妹のいる生活に憧れてたので楽しみでした。
それにしても、お兄ちゃん、かと予想してたらまさかのにぃにぃ設定でした。マニアックすぎない?

「ヘイネ~。後5分~。」
うん、テンプレだよね

『え~。早くしないとたかし君来ちゃうの~』

え?たかし君ってだれ?
てか、ヘイネに悪い虫がついてるぞ!?
お兄ちゃんとして見過ごせない!

「たたたた、たかし君ってだれだ?ヘイネ」

『ん~内緒?』

「ダメだぞ、ヘイネ!ヘイネにはお兄ちゃんがいるだろ?」

『お兄ちゃんがヘイネの王子様なの~?』

「あぁ、そうだな。白馬も用意しちゃうぞ?」

『じゃあ、ちゅ~するの~!王子様とお姫様はちゅ~するんだよ!』

「そうだな、お姫様おいで~」  


頭が覚醒してきました。妹のチッスは格別でした。
お兄ちゃん大満足、妹を悪い虫から守りました。 
これ地球で売り出したら大盛況間違いなしだな

□□□□

(はぁ、ヘイネやばいな。いつも俺を飽きさせないもんなぁ。さすが女神!さす嫁だぜ!)

「にしてもレベル上がっても、う~さ~フォンの魔力量ちっとも貯まらないんだよな・・・。出来れば1ヶ月に1度は逢いたい。今回は旅立ちまでには逢いたいなぁ~」

(根本的な解決が必要だな、せっかく過去の知識を引っ張れる記憶創造があるんだから利用しない手はない)

頭の中がヘイネだらけになっていた所を、ある少女がぶち破ってきた。

「ユウジ様!ユウジ様!ユウジ様ああああああああああ」

(なに叫んでの!?なに叫んでの!?なに叫んでの!?部屋の外じゃサイレント使えないんだから目立つだろ!あのぽんこつメイドなんなんだよ!?)

居留守だ、居留守を使おう
アーナニモキコエナイーキコエテコナイヨー

「うわあああああああああん!あげでぐだざいよ~」

大声で泣き出すサーシャ
もう廊下には人だかりができている
寝坊したことにしました
たまちゃんに呼び出されて注意されました
なんだこれ?俺が悪いのか?ヘイネ助けて下さい!

「それで?サーシャさん。何かご用でしょうか?」 
俺は怒っている、猛烈に怒っている

「うぅ、ユウジ様、怖いです」 
うるうるさせた瞳で上目遣いは反則だと思います

はぁ~単純だな、俺も

「悪かったよ、おいで。それでどうした?」
サーシャの頭をなでなでしながら尋ねた

「はぁ~幸せれすぅ~。私はを鑑定してみて下さい」
こいつ絶対反省してないな?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サーシャ 18歳 ♀ レベル:3

種族:人間
職業:どじっ子メイド

体力:650/650(+500)
魔力:600/600(+500)
筋力:520(+500)
敏捷:400(+300)
器用:20(+100)
幸運:60(+10)

称号:ユウジ専属メイド
加護:勇者ユウジ『友愛』

技能:どじっ子/魔力眼/家事Lv.8/無詠唱/生活魔法/複合魔法
   愛情Lv.1

装備:(右)双剣『たんぽぽ』(左)双剣『かすみ』
    王宮式メイド服

B88・W50 ・H86
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「は?家事スキルたっか!?」

「食いつくのそこですか!?」
いいツッコミだ、サーシャ

「あ、ごめん。ごめん。こういうのってボケるのがテンプレじゃん?せっかく用意してくれたのに、使ってあげないとかわいそうじゃね?」

「なんで上から目線なんです!?」
頑張ったな、サーシャ

「本題に入ろう。・・・加護ついてるな」
なぜだ?いちゃいちゃしてるからか?他のメイドも?

「はい、嬉しいのですが、なんで友愛なんですか!」
かなり怒っているように見える

「へ?そこを指摘するの?う~ん。。。あ~もしかしたら・・・サーシャにずっと一緒に居てもいいか聞かれた時に確か友愛の気持ちを捧げたからか?」
そうだった気がする、今は親愛に近いんだけどな~

「あの時のですか?うぅ~なら仕方ないですね・・・」
しゅんとなるサーシャ、頭なでなで2倍拳だ

「今はちゃんと親愛してるから安心してくれ、それにしても加護以外にもおかしいのがある。まず複合魔法だ、何故こんな高位魔法が使えるようになった?それと愛情スキルってなんだ?」
なにかがおかしい、突然ついた加護もそうだが、他も不可思議だ

「え?愛情はともかく複合魔法は課題に入ってましたよね?生活魔法の課題に、です。見てて下さい」

そう言ってサーシャは俺が昨日見せたように、手の平の上で6種類の魔法を構成した、それだけじゃない
風や闇もコーティングしてだ、多少いびつで大きさはバラバラではあるが・・・十分すぎる結果だ

「な、なんでこれを?別々でよかったのに・・・」
俺は呆然としていたのだろう、サーシャは嬉しそうだ

「先日ユウジ様に見せて頂いた魔法がとても綺麗だったので、あのあとずっと練習してたんです」
ずっと・・・マジか

「場所は?魔力の供給は?」
この2つはどうした?場所はまだいい。魔力は?

「王宮には使われていないお部屋がたくさんありますので、魔力は王宮内にある購買所にてポーションを買い占めました」
少しバツが悪そうな笑顔を向けてくるサーシャ

よく見ると、寝不足なのか、ねていないのかもしれない
目の下にクマができていた

「無茶しやがって。ベッド貸してやるから休め。他になにか希望あるか?」  

そう言って、サーシャを横向きに抱え、お姫様抱っこの状態でベッドまで運んだ
顔を真っ赤にしながらもサーシャは尋ねてきた

「でしたら私が眠るまででいいので、そ、添い寝をして頂けないでしょうか?」

「あぁ、それぐらいなら構わないぞ。今回頑張ったごほうびだ」

お互いがベッドで横になり、サーシャは気恥ずかしそうにしながらもうれしそうに微笑んだ
相当疲れていたのだろう、すぐにすぅすぅと寝息をたてて眠りについたようだ

俺はサーシャの髪を梳きながら、今はただ愛しくて愛しくてたまらないこのメイドを抱きしめた

(いつのまにか、いや、最初からか。俺はサーシャに惚れて恋をしていたようだ。今はただ愛しくて愛しくてたまらない、そういえば確認していないスキルがあったな)


『愛情』Lv.3 ランク:∞

伝説の乙女スキル
対象のことを好きで好きでたまらないと取得できない
効果は段階で解放される、解放される効果は絶大の一言
解放条件は人それぞれ

(Lv)   (効果)      (解放条件)
・Lv.1 愛情度による加護取得  決意の告白
・Lv.2 全能力成長速度UP絶大    お姫様抱っこ
・Lv.3 全能力消費魔力減10      添い寝
・Lv.4 『乙女ヒール』解放      ???
・Lv.5 『貴方の側に』解放            ???
・Lv.6 『コウノトリ』解放      ???

(・・・。なんだこれ?効果やばすぎだろ!チートもチート。今後のサーシャの成長には役立つだろうが。神眼ですら解明できないものがあるとは・・・。ランクも無限大かよ)

□□□□

時は夕方
くぁ~、とかわいい欠伸をしたサーシャが起き出した
そして固まった
理解が追いつかないのだろう
それもそのはずだ
あれから俺はずっと抱きしめていたのだから

「おはよう、サーシャ。よく眠ってたな。もう体は大丈夫か?」
あぁ~サーシャ抱き枕もいい感じだな、作れないかな?

「まさか、あれからずっと、ですか?」
混乱しているのがよくわかる、対称的に顔はにやけている

「おっと、悪かったな」
俺は離すと見せかけて強く抱きしめた
テンプレ通り行くと思った?残念!
サーシャも嬉しそうだ、うん、かわいい

「サーシャ、ステータスと愛情スキルを確認してみな」
髪を梳きながら、サーシャの体の感覚を楽しんでいた
きっと驚くだろうな

「ユウジ様これって・・・。加護が『親愛』になってます!それにこのスキルは・・・」
サーシャが確認の意味を込めて、俺を見つめてくる

「まだ憶測の範囲だが、加護は愛情スキルのおかげだろうな。俺も知らないスキルだ。きっと今はサーシャしか持っていないスキルだな。それと加護が変わったのは俺自身に依るものだと思う。今回のサーシャは想像以上の頑張りだった。以前から好きではあったが、今はサーシャが愛しくてたまらない。きっとそれなんだろうな。どうする?明日の課題は無しでもいいと思うんだ」

頑張ってくれるのは嬉しいが、体調なんて崩された心配だ
明日は休暇でいいだろう
でもサーシャは違ったようだ

「いえ、課題をお願いします!ユウジ様が私を好いていらっしゃっるとおもうだけで、なんか力が沸いてくるようなんです。また頑張ったらごほうび貰えますか?」
期待するような眼差しで見つめてくる、かわいいな、ちくしょう!

「もちろん。でも今回のように無茶するのはダメだ。日常に差し障りがないようにできないなら俺の前以外での鍛練を禁止するからな?」 

「かしこまりました。以後気をつけます」

「そうしてくれ。じゃあ明日の課題にうつるか。まずは一つ俺のスキルをサーシャに複製して与える。『魔偽造』というやつだ。内容はステータスの偽造。今のサーシャのステータスは異常だ。鑑定持ちに見られたら大変なことになる。だから明日までに一般的なメイドさんレベルにまでステータスを偽造してくるんだ。一般的メイドさんレベルがわからないなら、同僚のステータスを見れば問題ないだろう。課題1ステータスの偽造。次に魔力操作のスキルだ。魔法はイメージで、大きさや形などを変化させられるのは教えたな?それをひたすらやれば自然と身につく。例えば、水魔法を氷にしていくのがわかりやすいだろう。課題2魔力操作の獲得。そしてしっかり休め。課題3しっかり休む。以上だ」

サーシャは愛情スキルがある
どれも簡単に終わるだろう、しっかり休んでほしい

「わかりました!しっかりクリアしてみせますね!」
力が溢れてくるのは本当なんだろう、元気よく返事をしてきた

結局サーシャは夜退室する前には課題をクリアしていた
まぁ予想の範囲内だ
そしてサーシャが退室しようとしたところで、

「サーシャ、これ。また朝みたいに騒がれたらたまったもんじゃないからな。ちょっとしたおまけで、少し魔力を込めておいた。一回分魔力補充できるようになってる。毎日帰る前には魔力補充しといてやるから、俺に渡すように。じゃあ、おやすみ」

そう言って俺は、サーシャに部屋の合鍵を渡した
さて、今日も鍛練に向かいますか

マジックキー 『ユウジの部屋の合鍵』
魔力保有量(10000) 詰め替え型の魔道具
1回だけ魔力補充が可能、能力には反映されない

□□□□

転移してから10日がたった
俺は毎日、日中は部屋でサーシャといちゃいちゃし、深夜に鍛練している

サーシャは頑張っている
毎日の課題は見事こなし自信がついてきたのだろう、最近は課題とは別に自己鍛練もしているみたいだ
毎日サーシャのステータスを開示してもらうようにしている
別に神眼があるから開示してもらう必要もないのだが、サーシャはこっそり偽造して報告してくる。レベルや能力、スキルなどをだ。魔偽造は神族以外には見破れない。だから隠せていると思っているようだ。俺を驚かせたいんだろう。だから俺も騙されているフリをした

サーシャは脅威の成長速度だ。
愛情スキルが影響しているのだろう、それと本人の頑張り
魔法だけでなく、武術系も鍛練しているらしい。当然俺は知らないことになっている。習っているのは、体術と暗殺術みたいだ。最初みた時は、あれ?俺暗殺されちゃうの?、と思った。他のメイドに確認したら、メイドの嗜みらしい。うん、わからん


俺とサーシャは現在王都近郊にいる
今日は実践訓練の日だそうで、勇者一行は強制参加だ
もちろん非戦闘職もいるので、戦闘は戦闘職のみだ
俺は戦闘は不参加だ、めんどくさいしね
護衛やメイドがぞろぞろと移動しているのは圧巻だ
注目の的だ。でも俺には別の注目が集まっていた

時は出発前に遡る

護衛隊長の挨拶が終わりいざ出発となったときに、サーシャが爆弾を落としてきたのだ

「ユウジ様!ユウジ様!手を繋いでもいいですか?」
それはもう甘えるにだ。かわいかったです

サーシャの発言にまわりが騒然のとなった
当たり前だ。これから訓練なのに有り得ない発言だからだ

「だ、ダメに決まってるだろ!遊びじゃないんだぞ!?」 

俺は慌てて断った。まわりの視線が痛かったからだ
本当は握りたい!でもわかってくれ、サーシャ!
サーシャはそれはそれは悲しい顔をした、泣きそうだ

「・・・。ちょ、ちょっとだけだよ?訓練中はダメだからな?」
こういう時折れるのは決まって男だ
サーシャは満面の笑顔だ
誰が見てもわかるぐらいに・・・だからだろうか

クラスの男子や護衛騎士達からは

「ち、白兎のくせにうぜぇ」
「リア充爆ぜろ」
「俺のサーシャちゃんをよくも!勇者様でも許さん!」
「訓練中に後ろから刺すか」

など、嫉妬の視線の嵐だ。また女子からは

「うわぁ・・・本当に手を出すとか引くわ~」
「白兎君って、なんか前々から危ない雰囲気出てたよね」
「勇者の力で無理矢理とか?」
「兎の皮を被った狼だったんだね~」

軽蔑、嫌悪、侮蔑、ゴミ、様々な視線が突き刺さった
俺のHPは0寸前です、ごめんなさい

でも専属メイド達は少し違った反応だった

「え?あの副メイド長が?」
「知らないの?いつも幸せそうじゃない」
「うん、うん。こっそり付き合ってたりして!」
「いいなぁ~、うらやましいです」

それはもう、乙女モード全開の視線だった

そんな訳で迫りくる視線の中、城下町や平原、観光名所などを巡りながら、本日の目的地に着いた

ダンジョン『魔山回廊』

普通ダンジョンは、最深部にダンジョンマスターが居て、それを倒すとダンジョン攻略完了、ダンジョンがなくなる
しかしここはダンジョンマスターがいなく、ダンジョン最深部のガーディアンを倒すと、魔山と呼ばれる山にいけるようになるらしい。つまりダンジョンの部分はあくまで腕試しというわけだ。現在83Fまで攻略済みらしい。

俺達は初日ということもあり、1Fから攻略を始めた
まぁ余裕だよね、みんなピクニック気分だ
10F、20F、30F、40F、50Fと調子よくきていたが、55Fを過ぎたあたりから、勇者達だけでは少し厳しくなり護衛騎士たちも参戦し始めた。それでもまだなんとかいけそうだ

俺が心配してるのはサーシャだ。こんなところ今のサーシャなら瞬殺できる。なにが心配か、そわそわしているのである
初の戦闘、そして双剣を使いたいのだろう、落ち着きがない
そんなとき勇者達の攻撃から漏れた魔物1匹がこちらに向かってきた。こちらには非戦闘職勇者と専属メイド達しかいない。仕方ない、と神剣ふぉるきなに手をかけた時、サーシャが猛然とかけだし、双剣たんぽぽとかすみを握りしめ一閃。魔物を跡形もなく消滅させた、そう、消滅である

(あれ?ここはまるで豆腐のようにスパっとって流れじゃないの?消滅しましたが?力をセーブしろよ、ぽんこつメイド!怪しまれるだろ!)

「ユウジ様やりましたよ!私、魔物倒しましたよ!」
初の魔物討伐が嬉しかったのか、こちらに駆け寄ってきた

非戦闘職勇者は全員口をあんぐり開けている
専属メイド達は驚きながら

「え?副メイド長あんなに強いの?」
「確かメイド長に直々に教わってるとか聞いた」
「強いってレベル?なんか弾け飛んでいなくなったけど?」
「あ~!またなでなでしてもらってる!」 

「お、おぅ・・・。よくやったな、サーシャ。さすがだ」
俺は頭を撫でながら労ったが、サーシャの耳元で

「力を抑えろ、バカ!バレるだろ!」
と強く注意した

注意されたサーシャは、俺に怒られたことで目に涙を溜めたが、そうとは知らない専属メイドたちの目には、なでなで効果で幸せの涙だと勘違いしたようだ

「ほら!幸せで感激してるじゃない!」
「はぁ~、勇者とメイドの恋とか物語みたい」
「いいなぁ~、恋とかしてみたいよ~」
「私達で副メイド長の恋を応援しなくちゃ!」

と、盛り上がっていた
メイドって暇なのか?とユウジは思いながらダンジョンを攻略していく。サーシャも時折魔物を倒していた、俺は何もしていない

結局68Fまで攻略して、その日は訓練が終わった
俺は何もしていない、サーシャは頑張っていた
だからだろうか、『ヒモ勇者』とあだ名がついた

ふ・ざ・け・ん・な!



ヘイネ~!聞いてくれ!みんなひどいんだ!
その日はちょっぴり目覚まし時計に多めの魔力を込めて、「ヘイネ」を設定した

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