過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~奴隷と王女~

僕はアオイ。奴隷だよ

人間に里を襲われて、親や兄弟、里の人達大勢が殺された
抵抗した者はみんな皆殺し
抵抗しなかった人やできなかった・・・・・・僕はみんな捕らえられて奴隷商に売られた
僕は別に人間を恨んでいない
里でも一人ぼっちで忌み子扱いされていたから
復讐も何もない、ただこの先どうなのかが不安なんだ

{おい、こいつらを帝都まで運んでいくぞ} 
{エルフじゃねえか!大儲けできるな!}

町の奴隷商の人達が話している
僕達は帝都に運ばれるらしい
帝都エクスペイン。一度里を抜け出していったことがある
きれいな建物や様々な人達がいた気がする
今後ずっと奴隷ならいい人に買われたいな

□□□□

帝国エクスペイン領・街道

今僕達は馬車の檻の中で帝都まで運ばれている
男性と女性それぞれ別々に分けられている
僕は男性のところだ。あ、あの僕、女の子だよ?
確かに薄汚れてて髪も短いしぺったんこだけど・・・
数日馬車に揺られていたら、途中大声が響いた
どうやら盗賊に襲われているみたい

{てめぇら!男は皆殺し、女は奪え!}
{エルフもいるじゃねぇか!夜が楽しみだな!}

あれ?もしかして僕やばいんじゃないの?
殺されちゃう?

奴隷商の馬車には屈強な冒険者さんが護衛についてるみたいで、どんどん撃退してるみたい
ふぅ、助かった、男性と間違われて死んじゃうとか最悪だよ
ホッとしたのも束の間、様子がおかしくなってきた
当初は撃退されて怯んでいた盗賊達だが急に統率が取れはじめてきたみたい
おかしいなって思っていたら盗賊側に盗賊らしくない立派な人がいる
その人は屈強な冒険者さんを片っ端から殺している

え?やばいんじゃない?殺される?

既に女性側の檻は奪われているみたい
後は皆殺しと物資の略奪だけ
矢が飛来してきたりして檻の中の男性達もどんどん死んでる
僕は死体となった男性達に覆いかぶされるような形になって下敷きになっていた
重いし、吐きそうだし、怖いし、泣きそう、泣いてた
きっと殺されるんだ・・・

僕は神様を恨んだ
エルフなのになんで魔法が使えない体にしたのか
だから忌み子として疎まれた。親や兄弟、里の人達から
いつも一人ぼっちだった。誰かに必要とされたかったのに
何のために生まれてきたのかな・・・

・・・。

しばらく人生を諦め呆けていたら静かになった
あれ?助かったの?
死体を押しのけて恐る恐る外を見たら、

『あら、生きていたんですの?』
い、生きてました、ごめんなさい・・・

小さい少女が声をかけてきた
僕よりもきっと下。耳と尻尾があるから獣人、狼人族かな
きれいな青髪にツインテール、ちょっと吊り目
何より特徴的なのが翡翠と碧眼のオッドアイ

『聞こえているんですの?』
あ!無視した感じになっちゃった・・・

「あ、あの・・・盗賊は?」
『あら?女の子でしたの?盗賊はみんな倒しましたの。弱かったですの』
やっぱり間違われてた・・・でもこの子が盗賊を?

『名前はなんて言うんですの?今開けますの』
「僕はアオイ。アオイだよ。助けてくれてありがとう」
『別に助けたわけじゃないですの』
え?檻を素手で開けてるよ!?鎖も素手!?

解放された僕は当たりを見回してみた
生き残ったのは僕だけみたい・・・
辺りには無数の死体が転がっていた
あっ。現在の主人の奴隷商も死んじゃってる
この場合所有権移るんだよね?
奇妙なのは盗賊らしき人達の死体の中には頭部がない人もいるぐらい

僕を助けてくれた女の子は慣れた手つきで遺体から持ち物を回収していた
旅慣れてるのかな

『アオイ、これなんですの?』
あ、呼び捨てなんだ。まぁいいけど

女の子がまさぐっていた遺体は、盗賊の中で盗賊らしからぬ人だったやつだ
そして僕に見せてきたそれはマジックアイテムだった

「それマジックアイテムだよ。魔力を流せば何なのかわかるよ」
『はぅ、魔力ないんですの。アオイ代わりにやるんですの』

(え?魔力ないの?魔法使えなくてもマジックアイテム使える位は普通ない?)

女の子の代わりにマジックアイテムを起動すると、武闘大会の参加資格だった

(あ~道理で強いわけだよね、なんか立派な身なりだったし。なんでそんな人が盗賊を?)

疑問は沸いたが、とりあえず今はよしとしよう

「これ武闘大会の参加資格みたいだよ。この人、予選突破したみたいだよ」
『予選とかあったんですの。じゃあこれあれば出られますの?』
え?出るの?冗談でしょ?

「出る気なの?嘘でしょ?勝てるわけないよ?怪我するよ?」
『武闘大会出る為に帝都目指してたんですの。優勝するんですの。アオイありがとうですの』
優勝って・・・。でも帝都目指してるのか

女の子はひとしきり遺体から持ち物を回収して、ブローチに収納していた
あれもマジックアイテムじゃないの?
さっき魔力ないって言ったような・・・

「あ、あの。そのブローチもマジックアイテムじゃないの?さっき魔力ないって言ってたけど・・・」
『マジックアイテムですの。だけどこれは特別製ですの。魔力がなくても使えるんですの』
そんなの聞いたことないよ・・・なんなのこの子?

しばらくすると女の子は回収作業が終わったみたい
まだ小さいのにしっかりしてる

『終わりましたの。そろそろ行きますの。アオイはどうするんですの?』
「僕、奴隷だから・・・」
(えっと、元所有者死んじゃったから、今はこの女の子がご主人様なんだよね?)

『そんなの見ればわかりますの』
「い、今、僕の所有者は・・・えっと、な、名前は?」
(そういう事を言いたいんじゃないよ。あ、名前教えて貰ってないや・・・)

『セリーヌはセリーヌですの!』
「今、僕の所有者はセリーヌ様だよ。元主人の奴隷商死んじゃってるから」

『そうなんですの?でもセリーヌは奴隷は・・・いらないんですの。奴隷がいるほど困ってないですの。どうすればいいんですの?』
「僕を奴隷商に売るか、奴隷から解放するしかないと思う。でも奴隷の解放にはたくさんお金かかるらしいから、ほとんどの人はいらない奴隷は奴隷商に売るはずだよ」
(そうだよね、エルフなのに魔法使えない僕は・・いらないよね)

『奴隷商に売るですの・・・。そんな汚い格好させられるなんてかわいそうですの。なら解放してあげますの。どれだけかかるんですの?』
「そ、それは僕にもわからないよ。奴隷商に聞かないと。ただどっちにしても、奴隷商に行かないと僕逃亡奴隷になっちゃうから・・・」
(え?売らないの?しかも解放!?全くの他人なのに!?)

『わかりましたの。じゃあアオイ行きますの。アオイは馬乗れますの?』
「ううん、乗れないよ」
(他のみんなは乗馬教わってたけど、僕忌み子で嫌われてたしね)

『仕方ないんですの。セリーヌに捕まるですの。行きますの』
「あ、ありがとう」
(うわぁ、なんかすごいいい匂いするなぁ、セリーヌ様)

こうして僕とセリーヌ様は帝都エクスペインに向けて旅立った

□□□□

帝国エクスペイン領・とある大きな町

セリーヌ様と帝都に向けて馬を駆けながらしばらくすると町が見えてきた
まだ十分日は高いので素通りするのだろうと思っていたら

『とりあえず今日はここまでですの』
「え?まだ日は高いようだけど?」
(まだ次の町まで全然余裕だと思うんだけど・・・)

『アオイ、汚いし臭いですの。きれいにしますの』
「ご、ごめんなさい」
(そんなハッキリ言わないでよ!汚いけどさ。しかも、く、臭いんだ・・・セリーヌ様と比べたらそうなんだろけど。)

落ち込んでる僕を気にもしないでどんどん進んでいく
セリーヌ様が立ち止まったのは如何にも高そうな宿
僕なんかじゃ一生縁が無いような場所だった

(ほわぁ~。高そうな宿~。セリーヌ様のお召し物も立派なものだし、貴族様なのかな?でも貴族様が一人で旅もしないだろうし・・・)

『アオイ、何してますの?いきますの』
「う、うん」

中に入るとそれはもうきらびやかな世界が広がっていた
あまりにも世界が過ぎるので僕は戸惑った

〔いらっしゃっいませ。ご休憩でしょうか?それとも、ご宿泊でございましょうか?〕
『泊まりますの』

(受付の方に今ちらりと見られた?そうだよね。こんな汚い奴隷いたら気になるよね)

〔そちらは奴隷でよろしいでしょうか?お客様お一人様のお部屋と奴隷用の部屋とで1泊金貨2枚でございます〕
『・・・?アオイと一緒の部屋でいいですの。二人部屋頼みますの』
「セ、セリーヌ様!?」 

〔・・・畏まりました。お二人様部屋で1泊金貨4枚でございます〕
『よろしく頼みますの』
(え?え?セリーヌ様と一緒の部屋?僕奴隷なのに?)

こうして戸惑っている僕を余所に部屋に着いた
中には二つのベッドに高級感溢れる椅子やテーブルなど
なんか僕場違いな感じがするんだけど・・・

『早速アオイをきれいにしますの。一緒にお風呂入りますの』
「奴隷なのにお風呂!?いいの?普通奴隷はお風呂とか高級なもの入らないよ?」
(お風呂って王族とか貴族とかが入る、あれだよね?)

『アオイをきれいにするためなのに入らなくてどうするんですの?』
「いや、お湯とかもらって体拭けばいいと思うけど・・・」
(奴隷はきっとみんなそうだと思うんだけど・・・)

『お風呂あるのにお湯頼む必要ないですの。早くするんですの』
「う、うん。わかったよ」

セリーヌ様と一緒にお風呂に入った僕は体の隅々までセリーヌ様に洗ってもらった
最初は自分で洗えるからと言ったけど、いいんですの、と押し切られた。世話好きなのかな?
初めてのお風呂は気持ち良かった
貴族様とか毎日だよね?羨ましいな~

頭を洗ってもらっていた時にセリーヌ様から

『あら?アオイ、可愛い顔してますの。前髪で顔隠してるのもったいないですの』
「あ、ありがとう。髪は自分で切ってたから、敢えて顔見えないようにしてるの。僕嫌われ者だったから・・・」

『そう・・・なんですの。でも今は違いますの!セリーヌはアオイ嫌いじゃないですの。女の子は可愛くしないといけないですの!あとで整えますの』
「ええ!?いいよ、僕可愛くないし・・・」

『いいんですの、いいんですの。じゃあアオイ、セリーヌも洗って欲しいですの』

セリーヌ様の頭を洗うことになった僕は驚いた
こんなにしなやかで細くさらさらな髪初めて触れたよ
手を髪にあてるとまるで水が流れるように自然と梳かれる
獣人の特徴である耳と尻尾はふっさふさでなんかきもちいい
よほどいい生活してるのがよくわかる
それでも威張り散らさないんだから不思議な子だ

『アオイ、とりあえずこれを着ますの。あとでアオイの服も買いに行きますの』

渡されたのは見たこともないようなきれいなドレスだった
いやいやいや、奴隷はこんなもの着ないよ!

『それ着たら早速アオイの髪整えて、アオイを可愛くしますの♪』
「お、お願いします」

なんだろう?セリーヌ様がうきうきされてるような?
う~ん、前髪は切って揃えますの、とか
全体的にきっちり揃えず敢えてバラツキを、とか
なんか地味だから一工夫をしたいですの、とか
どうなってるんだろう?
髪とかはあまり興味ないからなんでもいいけど気になる  

『できましたの!アオイ可愛いですの!』
「こ、これが、僕?」

鏡を見せてもらった僕は目の前に映る僕をみて目を見開いた
髪全体は違和感がないぐらいに、多少バラツキがあるよう揃えられてる
前髪だけは顔が隠れないようきれいに揃えられている
更に特徴的なのが上下左右の髪の一房ずつを高い位置でまとめ結んでいるみたい。あれ?これって・・・
銀髪ツーサイドアップのぱっつんショートヘアだった
どれだけ詰め込んじゃったの!?

『少し違うけど、セリーヌと似たお揃いの髪型ですの!姉妹みたいですの。セリーヌがお姉ちゃんですの』

セリーヌ様のツインテールと僕のツーサイドアップ
少し違うけど似ているよね
でもセリーヌ様がお姉ちゃんって・・・
どう見ても年下にしか見えないよ、年下だよね?年上なの?
でもセリーヌ様嬉しそうだし、僕も満更じゃなかった
なんか優しくされたの初めてだったし、本当の姉妹ってこんな感じなのかな

『じゃあ、アオイの服買いに行きますの。お腹空いたしご飯も食べますの』
「ぼ、僕の服とかいらないよ!帝都までそんなにかからないし、そもそも奴隷だから」
(奴隷に服買うとか聞いたことないよ!)

『なに言ってますの。毎日同じもの着ているわけにはいかないですの。女の子がお洒落をして可愛くするのは義務らしい・・・・・ですの』
「そんな義務聞いたことないよ。誰が言ってたの?」

『セリーヌの大切な人ですの。{可愛い女の子はお洒落をする義務がある。せっかく可愛いのにそれを活かさないのは生まれてきた意味がない。神への、俺への冒涜だ。できない環境なら仕方がない。でもできる環境があるならしないのは怠慢だ。興味あるなしの問題じゃない。可愛い女の子は常に可愛くあれ。可愛く生まれた以上は可愛くするのが義務であり、それが女の子の生きる目的だ。夢も希望もどんどん持て、更に可愛くなる。逆に絶望する時もあるだろう、でも可愛くいることを忘れるな。可愛さを忘れなければ生きる目的もなくならない。だから可愛い女の子は可愛くして俺を楽しませろ!てか、楽しませてください!お願いします}って言ってましたの。だから可愛いアオイは可愛くする義務があるんですの』

僕はあぜんとしていた。傲慢、押し付けもいいところだ
でもここまで酷いと逆に清々しい、悪い人じゃなさそう
僕が可愛いかはわからないけど、それを生きる目的にしてもいいんだ・・・
こんな僕でも夢や希望を持てば可愛くなれるのかな? 
絶望しても可愛くいることを忘れなければ生きる目的も忘れないか
めちゃくちゃで意味がわからないよ、でもなんかいいと思う
一度は絶望して諦めた僕だけど、もしまたあったらそうしてみよう
なんだろう、めちゃくちゃな人らしいけど会って話してみたいな・・・
セリーヌ様に付いていけば会えるのかな、会ってみたいな

『アオイ、ぼっ~としてどうしたんですの?行きますの』
「うん!お願いします!」

まずは可愛くなる努力をしてみよう!
可愛くなれるかどうかはわからないけどやってみたい!
セリーヌ様みたいに可愛くなれる自信はないけれど、可愛くするのが義務みたいだから
奴隷を奴隷のように扱わないセリーヌ様に甘えるようで、心苦しいけど僕ができる範囲で頑張ってみよう!

□□□□

帝都エクスペイン・北門

数日後、僕とセリーヌ様は目的地の帝都エクスペインに着いた

道中セリーヌ様とはたくさんの話をした
セリーヌ様は異世界の人であるとか
大切な人も異世界の人で、今この世界にいるので追いかけてきたとか
夢物語かと思って驚いた

さらにセリーヌ様は王女様というのにも驚いた
身なりは確かに貴族然としているから王女様にも見える
でも王女様が愛しい人を一人で追いかけてくるとか、僕が知ってる王女様とのイメージとは全く異なるよ
しかも異世界だし。すごいよ、セリーヌ様

セリーヌ様の愛しい人はユウ様だと言うのも教えてもらった
ユウ様のことを話している時のセリーヌ様はいつもと違って完全な乙女だった
セリーヌ様もこんな表情もあるんだね
僕もユウ様には興味があった
生きる目的、頑張れる目的を決意させてくれた人だから

ユウ様に耳や尻尾をもふもふされるのがセリーヌ様の幸せみたい
僕も耳を触らせてもらった。もふもふで癖になりそう
尻尾も触ろとしたら憤怒された。なんで!?
尻尾はユウ様専用らしい。そ、そうなんだ、残念

セリーヌ様はやはりお世話好きらしい
王女様だよね?奴隷である僕にも色々世話をしようとする
上のお姉さんによくお世話をしていたらしく、癖みたいなものだそうだ

そしてセリーヌ様は甘えん坊だった
大体のことは一緒にするよう言われる
お風呂や食事、買い物や寝る時など
そのあたりはやはり年相応なのかな、と思う

なんだかんだ言って短かったけど、セリーヌ様との旅は楽しかった
セリーヌ様も僕を奴隷扱いしなかったし、酷いこともされなかった。
むしろ奴隷なのに本当にいいの?ってことばかりだった
僕を一人の女の子として見ていた
セリーヌ様も楽しそうに笑っていた気がする
そうだったら・・・いいな
本当にいいご主人様。離れたくないな・・・

『やっと着きましたの。大会頑張りますの!』
あぁ、遂に到着しちゃった。セリーヌ様とお別れなのかな

『早速宿を探しますの。アオイと一緒に・・・・・・・入れる大きいお風呂のある宿がいいですの』
あれ?セリーヌ様忘れてる?奴隷商に行かないの?

「セリーヌ様、奴隷商には行かないの?」
『奴隷商?なんでですの?』
えええ!?忘れちゃったの!?

「僕、奴隷だから・・・。奴隷はいらないって、前言ってたよね?所有者はセリーヌ様だから、奴隷商に売るか、奴隷解放してくれないと、僕逃亡奴隷になっちゃうよ」
『あら?アオイ奴隷でしたの?すっかり忘れてましたの』 
え?本当に?確かに奴隷扱いされなかったけど忘れる?

『う~ん。困りましたの。セリーヌはアオイのお姉ちゃんだし、アオイはお友達・・・ですの。一緒にいたいですの。解放したら一緒に居てくれますの?』
「え?この前奴隷・・はいらないって言ってたよ?」
(お姉ちゃんはいいとして、僕が友達?)

『そうですの。奴隷・・はいらないのですの。奴隷がいるほど困ってないですの。アオイは奴隷じゃないですの。お友達ですの。だから解放したら一緒に居てくれますの?』
「う、うん。僕なんかが友達でいいなら」
(セリーヌ様、僕を必要としてくれるんだ・・・嬉しい)

『ありがとうですの!アオイ!大好きですの!』

アオイに勢いよく抱き着くセリーヌ
その笑顔はとても可愛らしかった
アオイもまたそんなセリーヌを可愛らしいと感じていた

『じゃあ、早速アオイを解放しにいきますの』
ずんずん進もうとしたセリーヌをアオイは止めた

「セリーヌ様。友達・・としてお願いがあるの。僕の奴隷解放はしなくていいよ。その代わりに僕と正式に奴隷契約してほしい!セリーヌ様が奴隷をいらないのは知ってるよ。それでも契約をしてほしい」 

『?なんでですの?解放しても一緒にいてくれるなら契約する必要ないですの』

「解放してくれても一緒にいるよ、友達だから。でも奴隷だったからセリーヌ様に出会えた。奴隷だったからお姉ちゃんができた。奴隷だったから初めて友達ができた。僕にとってセリーヌ様の奴隷でいることは何にも替えがたい宝物なんだ。だから友達セリーヌ様と一緒にいられるなら契約を結ぼうが、解放されようがどっちでもいいんだ。だったら僕は友達セリーヌ様との確かな絆である、奴隷契約を結びたい」

『アオイはそれで本当にいいんですの?』
セリーヌの顔は真剣だった

「うん!友達としてお願いしたいよ!」
アオイの顔は晴れやかだった

しばらく考え込むセリーヌ 
それをただひたすら見つめるアオイ

『ふぅ。困った、奴隷友達ですの。友達のお願いなら聞いてあげますの。アオイ、行きますの。奴隷友達契約しにですの』

困ったと言いつつもその顔は慈愛に満ちた笑顔だった
そんなセリーヌ友達の顔をみて、またアオイも満面の笑顔を返すのだった


奴隷と王女の奇妙な出会いは、新たな友情を育む奇跡だった

「過去と現在を結ぶ異世界ストーリー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く