過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~神妹と純夜~

サーシャの世界ダンドリオン

今、俺の目の前で女の戦いが繰り広げられている
口汚い罵り合いでもなく、陰湿なシカトなどでもない
正々堂々と殴り合っているのである

ドォォォォォォン!
ゴォォォォォォン!

片方は絶世の美女だ。流派は神拳流体術?
もう片方は可愛らしい。流派は拳神流体術
けたたましい衝撃音と凄まじい衝撃破が辺りを覆っている

時は少し遡る

□□□□

帝都エクスペイン・『居住区』ユウジ邸 ~前日~

「サーシャ!明日ヘイネがくるぞ!」
{本当ですか?ユウジ様!楽しみです}
俺は嬉しさ爆発でサーシャに知らせた。サーシャも嬉しそうだ

〔ユウ様?ヘイネってどなたですの?〕
やっべ!セリーヌには教えてなかった・・・

「えっと。。。俺の最愛の人だな」
〔・・・え?最愛ってマリー姉様じゃなかったんですの?しかもサーシャ意外にもいるんですの?〕
教えてなくてすいません!サーシャでいっぱいっぱいでした

「今愛しているのは4人だ。そして今の最愛がヘイネだ」

セリーヌにヘイネの正体や出会いのいきさつ
悠久の時間の中での愛や数々の約束の話
そして転移してからの今までの時間などを話した

〔そうですの。女神さまですの。セリーヌも楽しみですの〕

(なんか複雑そうな顔だな。まぁ出会いをくれた神であり、引き裂いた神でもあるもんな・・・。思うところはあるよな)

こうしてその日は夜が更けていった

□□□□

side -セリーヌ- ~開始~

昨夜ユウ様から新たな恋人を紹介すると言われましたの
なんでも女神様でマリー姉様やセリーヌ達とユウ様を導いてくれた方らしいですの
そしてマリー姉様やセリーヌ達とユウ様を引き裂いた方でもあるらしいですの
・・・複雑ですの
女神様がいなかったら、きっとユウ様には逢えなかったですの
女神様が意地悪しなかったら、きっとユウ様とずっと一緒にいられましたの
深い感謝もあれば、許しがたい憎悪もありますの
マリー姉様ならきっと怒りますの
セリーヌはどうしたらいいんですの・・・

セリーヌは今、サーシャと宿屋で待機してるんですの
ユウ様と女神様が来るのは午後かららしいですの
午前中は二人きりにさせてあげて、午後から4人でデートするらしいですの。4人でデートですの?

ユウ様と女神様がきましたの
ユウ様はとても幸せそうですの
ユウ様もマリー姉様やセリーヌと同様複雑な心境であったはずですの
それでも今は・・・

『初めまして、でいいのかな?セリーヌちゃん』
〔初めましてですの。女神様!〕
『ヘイネでいいよ?』
〔畏れ多いですの!〕

〔〔とてもお美しいですの!こんなに美しい人初めて見ましたの。マリー姉様よりきれいですの。マリー姉様の前では言えないですの〕〕

『誉めてくれてありがと。それとマリーちゃん怒っちゃうから言わないでね?』
〔!なんでわかったんですの!?〕
「最初は驚くよな?ヘイネは心が読めるんだよ」
{私も最初は驚きました}

どうやら女神様は心が読めるらしいですの。さすが女神様ですの
それにしてもユウ様だけでなくサーシャまで楽しそうですの
サーシャは嫉妬深い女性ですの
マリー姉様に比べたら大したことないにしても、ですの
そんなサーシャまで嫉妬に駆られることなく楽しそうですの
セリーヌも楽しくしたいですの。でも・・・

『ユウジ。3人にしてもらってもいい?』

しばらく4人で話していたら女神様がユウ様に退室を促しましたの
なにかユウ様には話せないことですの?

『セリーヌちゃん。まずはごめんね。ユウジから色々聞いたと思うけど、ユウジから引き離しちゃって本当にごめんなさい。今ならわかるけど逢えないって辛いよね。ユウジを好きになって、逢えない日々がこんなに苦しいなんて思わなかったよ。許してもらえるとは思わないけど謝らせて欲しいの。本当にごめんなさい』
女神様は深々と頭を下げましたの

〔・・・〕

〔〔女神様なのに謝ってくれましたの・・・。確かに引き離されたのは許せませんの。でも女神様がいなかったらユウ様に逢えなかったですの。逢えなかったら許せないって気持ちも沸かなかったはずですの。逢わせてくれたから許せない気持ちと、ユウ様を好きになる気持ちと、ユウ様と一緒に幸せになれる気持ちがわかりましたの。深い感謝ですの。それに女神様は今もセリーヌ達と同じように苦しんでますの。同じ苦しみがわかる女性ですの。許せない気持ちがなくなった訳じゃないですの。でも今はそれよりも同じ愛しい人を想う女性同士仲良くしていきたいですの。ユウ様が愛し、愛されるもの全てセリーヌが守りますの。これがセリーヌの答えですの!だから女神様にかける言葉は・・・〕〕

〔女神様!ユウ様と逢わせてくれてありがとうですの!ユウ様を好きになる機会をくれてありがとうですの!ユウ様と幸せになる未来をくれてありがとうですの!そして・・・心から謝ってくれてありがとうですの!セリーヌは感謝の気持ちでいっぱいですの!女神様!本当にありがとうございます、ですの!〕

女神様とサーシャは驚いてましたの
驚いた女神様も美しかったですの

『セリーヌちゃん、ありがと。そして、これからもよろしくね?』

〔よろしくですの!一緒にユウ様を支えますの!セリーヌは、女神様もサーシャも仲良くしたいですの。いっぱい好きになりたいですの。だから二人の事いっぱい話して欲しいですの!〕

その後は打ち解けたかのようにたくさん話しましたの
セリーヌはもともとお話は好きでしたの
だから二人の話は新鮮で楽しかったですの
話が進む内に夜の話になってましたの
セリーヌはまだ経験がないですの
だから凄く興味がありましたの!

女神様もユウ様とさっきまで愛し合ってたらしいですの
愛し合ってた内容まで話してますの!
す、すごいですの。大人ですの。大人の世界は凄いですの
セリーヌも大人になったら覚悟を決めて話さないと、ですの

話を興味津々に聞いていたら、
サーシャは毎夜ユウ様にご寵愛を頂いているとか、羨ましいですの
セリーヌは『約束』があるから、まだご寵愛は頂けないですの

そんな時女神様が

『毎夜?セリーヌちゃんはどうしてるの?』
アオイと一緒に寝てますの〕
そういえば、女神様は知らないんでしたの

『う~ん。セリーヌちゃんは淋しくないの?ユウジとせっかく一緒になれたのに、ユウジを求めたくはならない?』
〔淋しいですの。求めたいですの。でも、セリーヌはユウ様と『約束』がありますの〕
15まではお預けですの・・・それまでは我慢ですの

『淋しいならそれは良くないと思うよ?私はユウジと全員平等に愛することって『約束』してる。サーシャちゃんだけが満足してて、セリーヌちゃんが淋しい想いしてるならそれは約束を守れてないと思う。ユウジがセリーヌちゃんを大切に想う気持ちは尊重したいし、尊重してあげて欲しいよ?でも私とした『約束』も守らないとダメだと思う。何もエッチなことするばかりじゃないよね?』

〔{???}〕
女神様はなにをいいんたいんですの?
サーシャもわからなそうですの

『例えばサーシャちゃんは、ユウジと一緒にいるのが毎夜じゃないと我慢できない?セリーヌちゃんは、アオイちゃんとでないと我慢できない?何もエッチなことするだけじゃないと思う。一緒に抱き合って寝たりするだけでも幸せにならない?一緒に過ごす時間を共有するだけでも幸せにならない?愛し合う以上の幸せは得られないかもしれないけど、少なくとも今よりかは淋しくはならないはずだよ。』

それから女神様の提案で、
交互にユウ様のお部屋に伺うようにすることに決めましたの
ただしユウ様のご希望があった際はお互い融通しあうように、とのことですの

〔〔なるほどですの。確かに結ばれるだけが幸せではないですの。ユウ様に抱きしめられて寝られるなら幸せですの。ユウ様と寝るまで一緒にいられるなら幸せですの。でもサーシャはそれでもいいんですの?〕〕

〔サーシャはそれで構わないんですの?〕
{いえ、私こそ配慮が足りませんでした。申し訳ありません、セリーヌ様}

『サーシャちゃんも無理言ってごめんね?でもみんなが幸せになれるようにしたいの。協力してね?』

その後も楽しく会話は続きましたの
女神様はとても美しくて、優しくて、温かい人でしたの
優しいマリー姉様と同じですの。お姉ちゃんみたい・・・・・・・・ですの

だからこそセリーヌは確認したかったですの
ユウ様のお側に、隣に、最愛になれるだけの力があるのかどうか
こんなに優しいお姉ちゃんみたいな人が、
同じく大好きなマリー姉様に殺されてしまわれないかどうか
どちらの姉様も失いたくないですの!だから・・・

〔女神様!セリーヌと勝負して欲しいですの!〕


side  -セリーヌ- ~終了~


冒頭に戻る

□□□□

サーシャの世界ダンドリオン

ドォォォォォォン!
ゴォォォォォォン!

爆音と轟音が鳴り響く中、俺はサーシャに膝枕してもらいながら寛いでいた
まぁ二人楽しそうだし、いいよね
いきなり戦うとか言い出した時は焦ったよ

「会話?会議?楽しかった?」
{はい、ヘイネ様の思慮深さとセリーヌ様の優しさに改めて感嘆しました}
サーシャがそこまで言うとは気になるな

『いくよ~、セリーヌちゃん?』
〔はいですの!まけませんの!〕

ドォォォォォォン!
ゴォォォォォォン!

爆音と轟音がする度にスイとレンがビクついている
なかなか聞けない音だしな
普段のサーシャの鍛練はこんな音しないし

「みんな仲良くやれそうでよかったよ。サーシャもセリーヌとは上手くやれそう?無理してない?」
{お気遣いありがとうございます。セリーヌ様はとてもお優しい方です。無理などする心配はありません}
なら大丈夫だな、サーシャのなでる手の気持ち良さに眠くなる

そういえば、ヘイネと張り切りすぎたしなぁ
確かにちょっと眠いかも?

『どんどんいくよ?大丈夫?』
〔まだまだいけますの!〕

ドォォォォォォン!
ゴォォォォォォン!

なんだろう?二人の出す異音が子守唄に聞こえてきた
通常ではあり得ない状況での睡眠欲
よほど安心しているのか、はたまた疲れているのか
完全に眠りに誘われた

{お休みになられますか?}
「少し頼む、サーシャ」

愛しい最愛ヘイネと愛しい愛姫セリーヌ舞う戦うのを眺めながら
愛しいメイドサーシャの膝枕で俺は完全に意識を手放した

・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。

しばらくして俺は目覚めた
なんか気持ちいいな~と思ってたら膝枕してもらってたんだっけ
目を開けたら、そこには微笑むサーシャがいた
美しい・・・見惚れた

「・・・おはよう、サーシャ。いつ見てもきれいだ」
{おはようございます、ユウジ様。ありがとうございます}
少し赤くなりながらもおはようのキスをしてくれる

「もうおわっ・・・」

ドォォォォォォン!
ゴォォォォォォン!

ア、ハイ。マダナンデスネ
サーシャは苦笑していた

『セリーヌちゃん、楽しいね?』
〔はいですの。楽しいですの!〕

しばらくサーシャの膝上でまったりしながら二人を眺めていた
本当楽しそうだなぁ~。セリーヌもはしゃいでるぞ
まぁでもヘイネがいなしながらセリーヌに付き合ってるみたいだな
セリーヌがあんなに嬉しそうな顔してたら仕方ないか

{お二人とも凄いですね。いつ決着がつくかわからないです}
「どちらも本気じゃないみたいだからな。鍛練・・・いや、じゃれあってるっと言った感じか」

いつまでも続きそうなじゃれあい戦いにも終わりがきた

〔女神様!そろそろ全力でいきますの!〕

そう言ってセリーヌは腰に装着している、
クマさんポーチから一つの人形を取り出した

(おいおい、本当に全力じゃねえか!やりすぎだろ!)

セリーヌは取り出した人形に、親指を少し噛み流れ出た血を吸収させていく
血を吸収した人形からは突如赤いオーラが溢れ出した
そしてセリーヌは、その人形にキスをした
赤いオーラは人形からセリーヌに徐々に纏いはじめる

〔セリーヌの全力ですの!一撃で決めますの!お覚悟ですの!〕

セリーヌの異様な雰囲気にヘイネも真剣な表情になっていた
そして赤いオーラが完全にセリーヌを覆った

〔いきますの!拳武解除リミッターオンですの!・・・魔幻義血蝶閃鈴、ですの~!〕

爆音とともにヘイネへと突進していくセリーヌ

ドゴォォォォォン・・・!

サーシャの世界ダンドリオンを大きく揺るがす衝撃音とともに二人の舞姫ヘイネとセリーヌ演舞戦いは終了した

・・・。

俺とサーシャは、倒れているセリーヌと抱き抱えているヘイネの側に急いで駆け寄った

『ダメだよ?セリーヌちゃん。無理したら。体に負担かかってるじゃない』
〔いいんですの。戦ってる時にわかりましたの。今のセリーヌじゃ全く勝負にすらならないですの。だから試したかったですの。どこまで力が届くか、ですの。でもまだまだでしたの!もっと精進しますの!〕

可愛く拳を握り締め、決意するセリーヌ
そんなセリーヌを姉が妹を見守るかのように、温かい眼差しで見つめるヘイネ

『でも、無理したらダメだよ。無理しない範囲で頑張ろ?』
〔わかりましたですの!お姉様!〕
可愛らしく微笑むセリーヌ

「『{お姉様!?}』」
あ~、これはあれですわ~。お約束ですわ~

『え、えっと?』
ヘイネはなにやら困惑した顔で俺を見てきた

「え~っと。よくあるんだよ、そういうテンプレな話。自分より遥かに強い同性の相手に畏敬の念を込めたり、はたまた恋しちゃったりすると、お姉様!、とか呼んじゃう体育会系の女の子」
セリーヌは完全な体育会系だしな~

『え!?セリーヌちゃん、私に恋しちゃったの!?でも・・・困るよ?私はユウジ一筋だし・・・』
いやいや、ヘイネ天然かよ!でも一筋なのはありがとうございます!

〔お姉様・・・。セリーヌの、セリーヌの愛は受け取れませんの!?〕
『えええ!?』
こ、こいつは。完全な悪ノリじゃねえか

「セリーヌはいい加減にしろ!話が進まんだろ」
セリーヌにチョップをおみまいする

〔てへっ。ごめんなさいですの、ユウ様〕
てへっ。じゃねえ!でも、可愛かったので許す!

『え?えっと?とりあえずセリーヌちゃんは、私に恋はしてないんだよね?』
本気でわかってなかったのか。なんかこんなヘイネも可愛いな

「安心しろ、ヘイネ。セリーヌの悪ふざけだ。畏敬の念の方だろ?」
〔ですの!優しく、美しく、温かいだけじゃなく、更に強いなんて素晴らしいですの!だから、お姉様ですの!〕
きらっきらな尊敬の眼差しでヘイネを見つめている

『えへへ、ユウジ?私に初めて妹ができたよ?』
そっか。神様は家族いないんだったな。嬉しそうだ

「おめでとう、ヘイネ。よかったな?ちなみにセリーヌには義妹アオイがいるから、ヘイネは二人のお姉ちゃんだな!」

照れているヘイネが可愛いのと、そんなヘイネお姉様を慕うセリーヌが可愛いかったので二人の頭をなでなでした
もちろん物欲しそうな顔をしていたサーシャもな! 
仲間はずれはあかんよ?

ヘイネ女神に妹ができた瞬間だった


□□□□

帝都エクスペイン・『中央区』劇場

ヘイネとセリーヌのじゃれあいも終わり、俺達4人は仲良くデートを開始した
俺の右には腕を組んでるサーシャ、俺の左には手を繋いでるセリーヌ、そしてセリーヌと手を繋いでるヘイネだ
ヘイネはかなり上機嫌だ。妹ができて嬉しいのだろう
セリーヌも優しい姉ができてはしゃいでる
なんか微笑ましいな
セリーヌがその身長が上に、俺とヘイネの子供っぽく見えてしまうのはご愛嬌だろう
こんな可愛い子供なら大歓迎だ!
俺とヘイネの子供か・・・げへへ

しばらく帝都の商店街などをぶらぶら買い摘みながら歩いていると、煉瓦造りの大きく立派な荘厳さ溢れる建物が目に入ってきた
目の前の建物に一枚のポスターが貼られていた

【愛と逃避行のスペクタクル。身分差に悩む男女が駆け落ちし、愛を育んでいく冒険譚……壮大なスケールでお送りする恋物語】

「この建物なに?」
{劇場ですね、ユウジ様}
ふ~ん。劇場ねぇ、全く興味ないなぁ。スルーでいいだろ

〔懐かしいですの!ユウ様、セリーヌ観たいですの!〕
『面白そうだね?私も観たいかな、ユウジ』
{私も観てみたいです、ユウジ様}
「お、おう。観にいくか」
お嫁さん達は観たいらしい。スルーしなくてよかった

セリーヌは王女だからこういうのに親しみがあるんだろう
ヘイネは初めてのものに興味がある感じか
サーシャはこういうのに憧れがあるんだろうな
そして俺は興味がない、むしろ寝ないか心配だ
寝たりしたら最悪だしな。さっき昼寝しといて正解だった

中に入って席に座る
俺の左隣にヘイネ、右隣がサーシャ、そしてセリーヌは俺の膝上。セリーヌの専用になった

演劇は2時間にも及ぶものだった
身分差に悩む男女が駆け落ちし、追っ手や駆け落ち先でのトラブルなどに悩み、苦しみ、二人で解決していきながら愛を育んでいく
と言った、駆け落ちものの王道?物語だった
ハラハラする逃避行とドキドキの恋愛物語で、なかなか見応えがあった。終わったときには観客が拍手喝采だった
ヘイネ達はいたく感動したのか涙すら流している

(意外と楽しめたし、感動する内容だったけど泣くほどか?まぁ、敢えて雰囲気をぶち壊す必要もないしな。そっとしておこう)

劇場を出るとあたりはすでに薄暗くなってきていた
ヘイネとのデートの時間ももう終わりに近付いていた
俺達は演劇の感動の余韻を残したまま転移した


□□□□

王都近郊・平原

ヘイネと別れる時はいつもここだ
見晴らしがよく、アストラルを展開するには都合のいい場所だからだ
少しでもいい雰囲気にして気持ち良くヘイネを見送りたい
ヘイネとサーシャ、セリーヌは先程の演劇での話で盛り上がっているようだ
お互いの感想を言い合い、指摘し、演劇のあれこれについて語り合っていた。そんな時ヘイネが

『私はユウジのこの魔法アストラルが本当好きだよ?綺麗だし、とても癒されるから』
{そう言えば、先程の演劇の告白のシーンもこんな感じの満天な星空でしたね}
〔あの告白はとてもよかったですの!セリーヌは感動しましたの!〕

3人は劇中で行われた告白のシーンについて語り合い出した
やはりああいった、告白に憧れがあるのだろうか
そうか。憧れ、気に入ったのか
今はまさにそのシーンにピッタリなんだよな?なら・・・
無限書庫から記憶を引っ張り出し言葉を綴った

「お前達が側にいるだけで俺はこんなにも強くなれる。俺はお前達に救われているんだろう。お前達の笑顔も取り戻せない俺が、お前達を救えるはずもない。だからお前達の笑顔を俺に護らせてほしい。俺の命はお前達を護る為にある。犠牲じゃない。この命が果てるまで俺はお前達を護りたいんだ。俺が何よりも先にしなければいけなかったのは、この胸の想いをお前達に伝えることだったんだ。これからの人生を俺と供に、同じ所に立って、同じ所を見て、同じように歩いていってほしい。俺はお前達を愛している」

少し視点を俺達風にアレンジしてみた
こんな長いセリフ覚えられるはずないだろ!役者すごいな 
ちょっと恥ずかしかったが、三人を見てみた
三人は驚いていた。しかし顔は少し嬉しそうに見えた

『ユウジ、これ・・・』
{劇のセリフと同じやつ・・・ですよね?}
〔そうですの!告白のやつですの!〕
俺の言葉じゃないだけに少し心は痛む

「え~と。劇のセリフではあったけど、俺の気持ちも大差ないな。お前達を想うと強くなれるし、お前達の笑顔は命をかけてでも守り抜きたい。そして、俺と供にこれからの人生を歩んでいってほしいとも想っている。俺はお前達を愛している」
今度は心を込めて本心を伝えた

『ユウジ・・・ありがと。私も愛してる』
{ユウジ様・・・ありがとうございます。私も愛しています}
〔ユウ様・・・ありがとうですの!セリーヌも愛してますの!〕
三人とも涙を流して喜んでいた

満天に輝く星空の下で、俺と三人はどちらともなく、自然とキスし合った

三人の顔に伝う涙はきらきらと輝き、三人の美しさをより、引き立てているようだった


□□□□

side  -セリーヌ- ~ヘイネお姉様帰還~

まもなくお姉様は帰られてしまいますの
淋しいですの・・・
でもきっとユウ様のほうがお淋しいはずですの
今はまだずっと一緒にはいられないらしいですの

『そろそろ時間だね。サーシャちゃん、セリーヌちゃん、ユウジをよろしくね?』

{お任せください、ヘイネ様。また逢いましょう}
そうですの!また逢えるんですの!さよならはいらないんですの!

〔任されましたの!お姉様!また逢いますの!〕
お姉様を心配させないよう精一杯の笑顔ですの!

セリーヌ達の言葉を確認したお姉様はにっこり微笑んだですの
あまりにも美しい微笑みに心を奪われそうになりましたの!
そして、お姉様は静かにユウ様の元に歩み寄りましたの

「・・・」
『・・・』

ユウ様とお姉様は見つめ合ってますの
話さなくてもお互いがわかっているようでしたの
そんな二人の関係が羨まくして、でもとても素敵でしたの
セリーヌもいつかユウ様とこんな関係になりたいですの!

『じゃあ、いくね。行ってきます、私達だけ・・・・の勇者様』

「必ず迎えにいく!行ってこい、俺、俺達だけ・・・・の女神様」

・・・!
ユウ様もお姉様も、セリーヌやサーシャを含めてくれたんですの?

そうですの!
ユウ様はセリーヌ達だけの勇者様ユウ様で、
お姉様はセリーヌ達だけの女神様お姉様なんですの

一瞬まばゆい光が放たれましたの
目を開けるとそこにはもうお姉様はいませんでしたの
ユウ様は夜空を見上げてましたの
優しくて、美しくて、温かいお姉様・・
いないとわかるととても淋しいですの
セリーヌがこうなら、きっとユウ様はもっと・・・
なら、セリーヌがお慰めしませんといけませんの!
いつかのように!

〔ユウさ・・・〕
「よし!帰るか、サーシャ、セリーヌ!明日からも頑張るぞ!」
{はい!頑張ります!}
え?お淋しくないんですの?サーシャも当たり前のように?

びっくりしましたの!
セリーヌだってまだ淋しいのに、
こんなにも早く淋しさをふりきりましたの?

〔ユウ様?お淋しくないんですの?〕
「あはは。セリーヌもサーシャと同じこと聞くのな」

な、なんなんですの!?
ユウ様は笑い、サーシャはバツの悪そうな苦笑してますの!
訳がわからないですの!

「サーシャにも同じことを言ったが、淋しくないわけじゃない。でもまた逢える。次もヘイネを楽しませる『約束』もしている。ヘイネと逢えないわけじゃないんだ。いつまでもうじうじしてられないだろ?だから淋しくならないよう、セリーヌもサーシャと一緒で、俺の側にいてくれ」

{私はいつまでもユウジ様とともにいます}
〔はいですの!セリーヌもずっとユウ様のお側にいますの!〕

ユウ様もセリーヌと逢えない間に、
セリーヌ同様心も体もお強くなられたんですの
セリーヌが慰める必要がないぐらいに・・・
それはちょっと悲しいけれど、
今のユウ様は昔よりも更にカッコイイですの!

〔〔お姉様、見ていてくださいですの!ユウ様が愛するお姉様も、お姉様が愛するユウ様も、セリーヌが全部守ってみせますの!今はまだ力はないですが、いつか必ずユウ様と供にお迎えに参りますの!〕〕

セリーヌは夜空を見上げ小さい拳を握り締めてそう決意した


【加護 女神ヘイネ『神妹』を取得しました】


side  -セリーヌ- 終了

□□□□

帝都エクスペイン・『居住区』ユウジ邸 ~デート日の夜~

ヘイネとのデートを終えたその日の夜

いつもはサーシャを待つのだが今日は待たずにゆっくりする
ヘイネとのデートの日だけはサーシャがヘイネに遠慮して部屋にはこないからだ
部屋でまったりと寛いでいたら部屋をノックする音がした
サーシャか?珍しいな、と思いつつ扉を開けたらそこには、

〔こ、こんばんは、ですの。ユ、ユウ様。い、今お時間、よ、よろしいですの?〕

「セリーヌか。どうした?夜更かししない程度なら構わないぞ。とりあえず中に入れ」
(明らかに様子がおかしいな。なんかいつものセリーヌと違う。緊張してる?)

俺は夜の来訪者セリーヌを部屋の中へと招き入れた
セリーヌは部屋の中に入ったはいいがそのまま立ち尽くしていた
とりあえず俺はベッドに腰掛けるよう促しセリーヌの隣に座った

「それで?どうした、セリーヌ?」
〔・・・〕

(なんだ?どうした?セリーヌらしくないな。言い出しにくいことか?とりあえずセリーヌが言い出すまでは待つか。言い出しやすいようリラックスさせるのは重要だよな?もふもふしとこう!)

そして俺はセリーヌのふわふわの耳をもふもふし、
ふさふさの尻尾を優しくなでた

〔ぁん!ユウ様気持ちいいですの!〕
「何か話したいことがあるんだろ?セリーヌが言い出すまで待ってやるから焦らなくていいぞ?」

俺はしばらくもふもふを堪能した
お風呂上がりなのか、少し毛がしっとりしていた
そして話す決心がついたのか、セリーヌが口を開いた

〔ユウ様!今日『は』セリーヌと一緒に寝て欲しいですの!〕
「・・・へ?どういうこと?」
俺はきょとんとした

(どういうことだ?・・・いや、寝て欲しいってそういうことだよな?この間『約束』したばっかりだぞ?いくらセリーヌでもこんなに早く約束を反故しようとは思わないよな?)

〔実はですの・・・〕

それからセリーヌは今回の事について話し始めた
犯人はヘイネらしい。犯人と言うのは酷か?
セリーヌは『約束』はちゃんと守るらしい
それでもやはり淋しいのだ、と。俺を求めたいのだ、と
サーシャだけ幸せにして、セリーヌが淋しいのは、おかしいとヘイネに指摘されたのだ、と
エッチなことしないでも一緒に寝るだけでも幸せになれるんじゃないか、と

(なるほど。それで訪ねてきたのか。確かにヘイネの言う通りだ。セリーヌと愛し合わないのは俺の我が儘なのに、我が儘を押し付けるだけでセリーヌのフォローは何もしていなかった。こんな俺を慕って異世界イリアスまできてくれたのに、セリーヌにまた淋しい思いをさせてしまったな)

話し終えたセリーヌは不安そうな顔で俺を見つめていた
拒絶されたら、追い返されるかも、といった不安だろうか

(こんな顔は・・・。そういえば、昔俺を慰めてくれる前も不安そうなこんな顔してたな。きっと心の中で不安や拒絶されるかもしれないといった恐怖と戦っているんだろうな。言い出すのにも相当な覚悟と勇気が必要だったはずだ。子供だ子供だと思っていたが、セリーヌよりも俺のほうがよっぽど子供だった。俺がもっと早く気づいてさえいれば、昔も今もセリーヌにこんな顔をさせずに済んだのに・・・。いつのまにかセリーヌの慈愛のような愛に包まれ甘えきっていた。反省しないとな。まずはこんな顔は見たくない!)

俺は隣に腰掛けているセリーヌを抱きしめ語りかけた
セリーヌの不安を拭うよう優しくだ

「セリーヌ。今まで淋しい思いをさせて悪かった。そして気付いてやれなくてすまん。今後はセリーヌを淋しがらせないよう気をつけるよ。今日は俺と一緒に寝て欲しい。セリーヌに頼まれたからじゃない。俺がセリーヌと一緒に寝たいんだ。俺の我が儘聞いてくれるな?」

〔はい・・・ですの!〕

俺の胸の中で泣きながら嬉しそうにしているセリーヌを見て、改めてこの小さな小さな愛しい愛姫セリーヌを大切にしていきたいと想った

「愛している、セリーヌ」
〔愛していますの!ユウ様!〕

二人は見つめあいキスをした後、仲良く抱き合って眠りについた


その日以降の夜からは、サーシャとセリーヌが順番に部屋に訪れるようになった

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