過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~学者と貪愛~

『迷宮区』闘技場 魔術大会本戦 ~昼~

魔術大会本戦のベスト4戦が全て終了した
準決勝は俺とシャル、アオイとブラッドだ
ブラッドの事は今まで全く見ていない
男だし、興味もない。まぁアオイなら大丈夫だろう
それよりもだ・・・

{お師匠様~、一緒にお昼を食べるのじゃ~}

なんなんだよ、お前!急に懐きすぎだろ!
くっ・・・猫撫で声とか!可愛いじゃないか!
意外と甘え上手なのか?もしかしてこれが素か?

「そのお師匠様ってなんなんだよ?」
もはや敬語とかなしなし!めんどくさい!

{妾の魔法の先生なのじゃから、当然お師匠様なのじゃ!}
う~ん。まぁ平民やら貴様とかよりかはいいかぁ~

「一緒に食べるのは構わないが、俺は義妹や友達と食べる約束がある。当然一緒になるぞ?」
いいのか?早速様子を見させてもらうぞ?

{構わぬのじゃ!お師匠様の友達は妾の友達なのじゃ!}
どんな理屈だよ!お前ジャ○アンかよ!

ベッタリとくっついてくるエステルに苦笑しつつ、アオイやシャル達が待つ待合室に向かった

(ベッタリとくっつくんじゃない!腕に感触がダイレクトにきてるから!・・・ふむ、やはりいいな。でかいのは素晴らしい。いやいや、小さいのも素晴らしいよ?俺はどんなのだって愛せるから)

出迎えてくれたアオイやシャル達はそれはもう驚いて目が点になっていた
普段のエステルとは全く違うエステルだから驚くのは仕方ない。俺だって驚いているからな
ある程度の事情説明をアオイやシャル達にはしておくことにする。まぁ友達として仲良くしよう、みたいな簡単なやつだが

{うむ、そういうことなのじゃ!妾は早く魔法を習いたいし、お師匠様の事はいたく気に入ったのじゃ!だからみなもよろしく頼むのじゃ!}
魔法を習いたいって欲望が先かよ!まぁいいけどさ・・・

『ユ、ユウジ義兄さん?』
アオイがどうしたものか、と不安そうに視線を飛ばしてくる

シャル達も困惑しているみたいだな
う~ん、どうしたものか・・・

{?・・・なにか妾は間違ったことをしておるのか?お師匠様?}
げっ!お前もかよ、エステル!不安そうに見るなよ~

困ったぞ・・・
俺はコミュ症だったんだぞ!ハードル高すぎだろ!
シャル達はまずどうしたんだっけ・・・

「と、とりあえずは形からかな?シャル達もそうだったしな。お互い敬語はなしでいこう。それから・・・様とかもなしでいいんじゃないか?エステル、知ってるかどうか知らないが、このアオイは身分はいちお奴隷だぞ?でも俺の大切な家族だ。それでもいいんだよな?」

{も、もちろんじゃ!アオイとやらよろしく頼むのじゃ!}
エステルはエステルで必死だなぁ。まぁ今までが今までだしなぁ

アオイが俺に視線を飛ばしてきたので無言で頷いた
賢いアオイならきっと理解してくれるだろ

『よ、よろしくね?エステルさん』
{よろしくなのじゃ!}
おぉ!凄く嬉しそうな顔がするな。こんな顔もできるのか

「よしよし、二人とも頑張ったな。まだいきなりってのは難しいだろうが少しずつ仲良くなっていけばいい。エステル、今の気持ちを忘れるなよ?アオイが話しかけてくるまでの間に感じた感情は大切なものだ。エステルがアオイを少しでも見下すようなことをすればまた同じような気持ちになる。相手の事をよく見て想いやる気持ちを忘れるな?魔法は想いの丈ほど強くなる。想いやりを忘れるな」
まぁ魔法と絡めて教えてやればエステルはすぐ理解するだろ

{わかったのじゃ!今の言葉忘れないのじゃ!}
年相応の可愛らしい笑顔するなぁ~。まだ12だもんな~

「よし、ならご褒美だ!アオイもありがとな。アオイにもご褒美だ!」

俺は頑張った二人の頭に手を乗せ優しくなでてみた
エステルがどのような反応をするのかも気になったからだ
無理してるようなら咄嗟の事だ。手を振り払いのけるだろう

『はぅ~~~~』
{な、なんじゃ!?・・・お、おぉ!お師匠様!これは気持ちいいのじゃ!もっとして欲しいのじゃ!}

アオイはなでなでが好きだからな相変わらず可愛い反応をする
エステルは意外な反応だな?あまりなでられたことがない?
まぁ頑張ったらご褒美は当たり前だし今後もそうするか
にしてもアオイの髪もそうだがエステルの髪もさらさらだなぁ
さてアオイはこれで大丈夫だ、次は・・・

「え~と。恐らくシルヴィとエルナはシャルの場合と変わらないんだよな?」

〔当たり前です。親しくできることは光栄ですが、だからと言って礼儀は崩せません。エステル様、よろしくお願いします〕
相変わらずクソ真面目なやつだな。でも仲良くする気はある、と

【わ、私もシルヴィちゃんと同じだよぉ。エステル様よろしくお願いしますぅ】
エルナは単に人見知りなだけだな。シルヴィに便乗した形か

{よ、よろしくなのじゃ。お師匠様、これでいいのか?妾は間違っておらぬか?妾もこの二人には敬語とやらがいいのか?}
いつもと変わらない対応だから困惑してるのか

「こういう友情の形もあるってことだな。エステルの部下達と変わらない態度だからと言って無下に扱うなよ?友達と部下は違う。部下を友達と同じように扱えとも言わない。ただ友達は特別なものなんだ、と思えばいい。アオイと同様に想いやりは大切だ。これから少しずつでいい。部下と友達の違いを理解していくんだ」

{なるほどのう。理解したのじゃ!シルヴィにエルナと言ったか?妾はこんな態度で悪いが、二人ともよろしく頼むのじゃ!}
え?理解したの?早すぎないか?いや、エステルならありえるか?

「よし、三人とも頑張ったな!シルヴィにエルナもありがとな、ご褒美だ!」

シルヴィとエルナをそれぞれなでようと手を指し伸ばすが、

〔気安く触らないでくださいね〕
【ハクト君のなでなでは気持ちいいよねぇ】
{おぉ・・・気持ちいいのじゃ~。頑張れば、ご褒美をもらえるのは本当のようじゃな}

シルヴィには手を振り払われた
エステルじゃなくお前が振り払うのかよ!
片方の手が空いてしまったので、せっかくだしエステルをなでみたが結果的にはよかったみたいだ
まさかシルヴィはここまで計算して・・・いや、単に照れただけだな。うん、そう思うことにしよう

さて残るはシャルだけだな。シャルは迷ってるみたいだ
シャル自身は砕けた関係を切望している
しかし身近な友人であるシルヴィ達はシャルに、身分が上の自分に対して敬称を使っている
その方がいいのか?いや、むしろそれが当たり前だ
それでも・・・。みたいな感情が伺い知れる
助け舟を出すか。いつも甘えさせてもらってるしな

「シャル。シャルが望むようにしていいんじゃないか?俺の国には、自分がされて嫌なことは相手にもするな、って言葉がある。言い換えれば、シャルが敬称扱いされるのを望まないならエステルにもしないほうがいい。自分が望まないことを避けるには自分から行動することも大切なんじゃないか?」

[ハクト様・・・。エステルさん、よろしくお願いしますわ。わたくしのことはシャルとお呼びになってくれると嬉しいですわ。仲良くしましょう]
{わかったのじゃ、シャルよろしくなのじゃ!}

「いいか、エステル?シャルはきっといい友達になってくれる。もちろん、アオイやシルヴィ達もエステルとは仲良くしてくれるはずだ。その中でも特にシャルは仲良くしてくれる、仲良くなれる存在のはずだ。これを一般的には親友と言う。友達の中の友達。お互いが想い、想いやれる、そんな理想的な関係だ。これから少しずつでいい、親友と呼べるような関係を築いてみせるんだ。そうしたら必ずエステルは今よりも強くなれる」

{親友・・・。今よりも強く。想いが、想いやりが魔法を強くするのじゃな!うむ、お師匠様勉強になったのじゃ!}
エステルは理解が早くて助かる。いい関係を築いて欲しいものだ

疲れたな・・・。やっと全員とりあえずはなんとかなった
うっ。シャルとエステルから期待の眼差しが、、、
わかってますよ、やりますよ

「よ、よし、二人とも頑張ったな!シャルもありがとな、ご褒美だ!」

[ハクト様~~~]
{お師匠様~~~}
二人とも色っぽい声出すんじゃない!ムラムラするわ!

二人の頭を優しくなでる
シャルもエステルも気持ち良さそうだ
俺も疲れたし、癒されたい

□□□□

エステルを交えた昼食も終わり今は食後のティータイムだ
早速エステルに頼み込まれたので魔法を教えている

「いいか?エステルの最大の欠点は高い魔力を活かしきれてないところだ。魔法に呪文は必要ない。魔法に大事なのはイメージだ。想像だ。想いだ。無詠唱さえ手に入れればエステルの切り札の錬成が更に強くなる。生活魔法から無詠唱をやってみろ。火を使うイメージ、水を使うイメージをするんだ」

{お師匠様、わかったのじゃ!}
うんうん、元気のいい生徒は先生好きだぞ!

さてとエステルは魔法の練習させとけばいいとして、俺にはしなければならないことがある
それは準決勝の相手であるシャルだ

「なぁ、シャル?本当に戦うのか?エステルとの試合見てたろ?」
[見ておりましたわ。お二人とも素晴らしい戦いでしたわ。ですからわたくしもハクト様と戦ってみたいですわ!]

いや~シャルも才能に溢れているがエステルほどじゃないしな
興味本意といったやつか。可能なら女の子とは戦いたくないなぁ

「棄権したりしてくれない?俺はあんまり女の子とは戦いたくないんだよなぁ」
[しませんわ。女の子として見て頂けてるのは嬉しいですが]
ですよねー。どうしたもんか・・・

{お師匠様、できたのじゃ!}
え?もう?早くない?

神眼で確認したら確かに無詠唱がある
恐るべき魔法の才能だ。魔才が影響してるのか?

「さすがエステルだな、偉いぞ!じゃあ次は魔法の複合と圧縮だ・・・」
しっかりエステルへのご褒美頭なでなでは忘れない。褒めて伸ばす!

エステルに次の課題を実演付きで教えて、シャルの説得に取り掛かる
できればシャルとは戦いたくない
結果はわかっているし、興味本意で戦うってのもあまり誉められたものじゃない

「シャル?勝てると思ってる?エステル戦も、こう言っちゃエステルに悪いが全く力出してないよ?」
[勝てるとは全く思ってませんわ。自分の力がどこまで通用するのか試してみたいんですわ]

やっぱり興味本意か
若者にありがちなやつだよなぁ。いや、俺も若いが
う~ん。シャルはやる気なんだよなぁ。困った

{お師匠様、できたのじゃ!}
はぁ?早すぎだろ!?サーシャでさえ苦労したんだぞ!?

神眼で確認するとやはり複合魔法と魔法圧縮があった
いや、これは素直にすごい。さすがエリート中のエリート

「エステル、すごいな!驚いた。じゃあ次は・・・」
{くふふ~。気持ちいいのじゃ~}

エステルの頭をなでながら次の課題を伝えた
エステルを眺めながらシャルを諦めさせる手段を考える
シャル達はシャル達でお茶しながら楽しく会話をしていた

「なぁ、エステル。エステルならどういう時に戦いを諦める?」
{そんなの決まっておるのじゃ。お師匠様のように圧倒的な力で捩じ伏せられたら戦意喪失するのじゃ}
それはわかってるんだよなぁ。それをしたくないわけで

「それをしたくないんだよ。それ以外でないか?」
{シャルのことじゃな?それ以外・・・となると、仮に魔法が使えなかったら魔術士は戦意喪失するのじゃ。さすがの妾も魔法が使えなかったら逃げ出すかもしれないのじゃ。・・・っと、お師匠様できたのじゃ!}
はぁ!?エステル、本当すごいな。やばい教えるのが楽しいぞ!

「エステル、お前本当にすごいな!見直した、いや、少し惚れそうだぞ!よし、今回はこれぐらいにしておこう。ちょっと考えたいことあるからな。頑張ったエステルにはご褒美として俺から二つのスキルをやろう。ステータスを偽造する『魔偽造』と『剣聖眼』だ。剣聖眼と魔導眼を合わせて強化してやる。『魔聖眼』ってところか?魔聖眼は複製して俺ももらうな。魔偽造でステータスの偽造と魔聖眼の使い勝手を確認するのが今日最後の課題だ」

早速エステルに魔偽造と魔聖眼を渡した
エステルは新しいスキルにはしゃいでるようだ
こういうところは年相応なんだよな、可愛らしい
キョロキョロしていたエステルの動きが止まる
ん?どうした?・・・ってアオイを見たのか

{ア、アオイ。そなたのステータスすごいのじゃ!お師匠様!妾よりも強い奴隷とはアオイなのじゃな?そうなのじゃな!?}

「そうだな。アオイは俺が直々に魔法教えてるからな。奴隷であっても一般人よりも遥かに強い」

まぁ、魔聖眼なら魔偽造では偽れないか
アオイのステータスを見て興奮しているエステルを眺めている

(・・・あれ?これってまずい流れじゃないか?あまりにもエステルが魔法を面白いように覚えていくもんだから、楽しくなってつい調子に乗ってしまった。このままだと・・・)
ふと、エステルと目が合い、微笑まれてしまう。可愛いな!

いやいや、今は違う!エステルの微笑みの意味を瞬時に理解した
エステルが硬直している、いや少しふるえているな・・・
やっぱりそうなっちゃいますよねー。
そしてこの後の展開も読める。きっと叫ぶに違いない!
だからテンプレは潰す!絶対だ!無駄なテンプレは排除だ!

{お、お、お師匠・・・ふぇ!?} 
今にも叫びそうなエステルを無理矢理抱き寄せ、すっぽりと俺の胸の中に納まっている彼女の耳元で囁いた

「気持ちはわかるが落ち着いてくれ。みんなにバレちゃうからな?頼む」
はい、テンプレ潰し成功!みんなに力がバレちゃうルートは回避しました!テンプレ先輩、おつかれっした!

エステルを確認すると赤くなっていた
やはりこういうことに慣れてはいないのだろうか?
シャル達も特段気にしていないようだ。普段からこんなことばかりしていた賜物だな!ま~たやってるよ、って感じだ
計算済みだ、計算済み。う、嘘じゃないよ?

{わ、わかったのじゃ。・・・お、お師匠様。恥ずかしいけどもう少しこのままでいてほしいのじゃ。話すときもさっきみたいにして欲しいのじゃ。妾もそうするのじゃ}
さっきみたい?あぁ、耳元で囁く感じか。なんでまた?

こうしてエステルと抱き合ったままのひそひそ話が始まった
ここにサーシャやサリーがいなくて本当に助かった

{お師匠様のステータスを見て納得がいったのじゃ。確かにそのステータスは規格外じゃ。水鉄砲ウォーター・シュートで妾の終極爆発ファイナル・バーストを防げるはずじゃ。妾は益々お師匠様が気に入ったのじゃ!}
エステルは俺の耳元まで顔を近付け耳元で囁いた

おぉぅ!耳元にエステルの吐息がかかる
気持ちいいようなくすぐったいようななんか恥ずかしいぞ?
こんなんされたら誰だって恥ずかしさで赤くもなるわな!
それにエステルからは女性特有の甘い香りと、抱きしめているからだろうエステルの山脈の感触がダイレクトに伝わる
上も下も気持ちいいとか色々やばいだろ!
考えろ!問題は山積みだ!雑念を取り払え!

(落ち着け、落ち着くんだ。・・・まずはあれだな!魔偽造の問題だ。さすがに魔偽造ではそろそろ限界になってきたな。しかしこれ以上となると神力か龍力が必要だ。今はどちらも持ってないし、今まで手に入らなかったことを考えれば入手も困難だろう。神力は複製できないことを考えると絶望的だ。龍力となるとサーシャの聖龍力眼が今の所一番だよな?複製はできても偽造には使えないし。う~ん。なんかこう、力の抽出みたいなことはできないのだろうか?今までの世界にはなかったしなぁ。エステルなら知ってるかな?)

「なぁ、エステル。知ってたら教えてほしいんだが、力の抽出みたいなことができるスキルとかあったりする?」
エステルの耳元に囁いた

錬成なんて新スキルがあったんだ。もしかしたらイリアスにはあるかもしれない
この世界の知り合いで魔法に一番詳しいのはエステルだからな

{くふふ・・・気持ちいいのじゃ。・・・抽出?お師匠様にも使えるはずなのじゃ}
ん?どういうことだ?俺も使える???

訳がわからないといった顔をエステルに向ける
そんな顔を見たエステルは少し考えた後微笑み返してきた

{お師匠様ほどの魔力があれば確かに気にかけるほどのものじゃないはずなのじゃ。知らなくても当然なはずじゃ。・・・お師匠様は錬金術というのを知っておるか?}
錬金術?確か物を生み出す術だよな?創造と違うのか?

「聞いたことはあるけど創造とは違うのか?俺には世界創造がある。魔力で物や魔法も創り出せるぞ?」
エステルの顔を覗きこんで尋ねる

{物を作り出すという結果は同じじゃ。じゃが過程は違うのじゃ。お師匠様の創造はその莫大な魔力をふんだんに使うことによって創りだしておるのじゃろ?素材がなくても、あるいは類似の素材さえあればほとんどの物が創れているはずじゃ。例えば、温水を魔法で創り出すときお師匠様なら魔法がなくても創りだせるはずじゃし、仮に必要なら水または火のどちらかの魔法だけで創れるはずじゃ。素材を必要としない、または必要不可欠な素材の内全てを揃える必要なく創れてしまう。これが創造じゃ。莫大な魔力を有する者だけに許された贅沢な魔法じゃ。羨ましいのじゃ。故に無駄な魔力も余分に使ってしまっておるかもしれんの}

な、なるほど。これはすごい
正直魔法については詳しく知らないまま使っていたからな
俺の魔法の師匠マリーは魔法に関しては凄まじい天才、いや神才だったがなんとなく創って、なんとなく使ってたからなぁ
改めて説明されると納得いく
一息ついてエステルが続ける

{一方錬金術は創造と違って必ず作り出す為の素材が必要じゃ。温水の例ならば火と水の両方の魔法が必要じゃ。火だけでは作れんし、水だけでも作れないのじゃ。結局は魔力で創りあげるから同じように思うかもしれんが少し違うのじゃ。お師匠様の創造の場合はお師匠様の魔力という一つの素材で創りあげる、そこに火とか水とかの概念はないはずじゃ。あくまでお師匠様の魔力という概念が存在して物を創りあげるはずじゃ。対して錬金術の場合は、お師匠様の魔力の中にある火と水の概念を抽出してそこから作りあげるのじゃ。創造に無駄な魔力が使われているかもしれないとはこういうことで、結果は同じでも過程が違うとはこういうことじゃ。そしてその錬金術を魔法のスキルにまで昇華させたのが魔法錬成なのじゃ}

・・・。今わかった
俺が魔法学校に通おうと思った理由はきっとエステルに出会う為だったんだな
力の意味付け、これは重要なことだ
知らないことは恐怖だ。それは魔法についても同じだ
なんとなく使ってきたがエステルさえいれば・・・

{お師匠様がなにをしたいのかはわからないのじゃが、錬成の力を更に昇華させることはできるはずじゃ。見たこともないスキルがたくさんあるのじゃ。今までもスキルを昇華させてきたのじゃろ?}
ぐっ、鋭いな。エステルにはお見通しか

図星を突かれて困惑していた俺の顔を見て嬉しそうに微笑むエステルは可愛らしいのだが、憎たらしくもあった
だからエステルの頬を左右からぐりぐりと引っ張ることにした
な、なぜじゃ~と呻くエステルは無視してスベスベの肌を堪能させてもらいました

(魔法錬成から新たなスキルを創りだす。・・・イメージ、イメージ。抽出の力を昇華させ、スキルにまで適用させる。可能な範囲全てだ。・・・世界創造!)

【スキル『スキル抽出』を取得 ランク:不明】

(完成だ。スキルをまとめるか。魔力終操に魔法錬成・スキル抽出・空間振動・脳内反響を合成だ・・・スキル管制!)

【スキル『魔力極操』を取得  ランク:不明】

スキルを創り終えた俺は早速サーシャの元に出向き、聖龍の力をもらった
新しく創ったスキルをサーシャとセリーヌに渡し、またエステル達の元にとんぼ返りだ

「ただいま。エステル、俺を魔聖眼でみてみろ」
{?・・・おぉ!?さっきと違うのじゃ!お師匠様の本当のステータスが見えないのじゃ!お師匠様、妾も、妾も欲しいのじゃ!}
ふっふ~ん。見えないでしょう、見えないでしょう

「ダメだな。俺の大切な人にしかあげないことにしているんだ」
{なら妾はお師匠様の大切な人になるのじゃ!それならいいはずじゃ!}
いやいやいや、意味わかってないですよね?

「ダメだ、ダメだ。どうせ意味わかってないだろ?それに魔偽造でも十分だって、日常生活なら」
{ぐぬぬ、妾のアドバイスがなかったらきっとそのスキルは創れなかったはずじゃ。錬成を使ったんじゃろ?}
おふ。まぁ、抽出について教えてもらってたからなぁ

「ほら、また抱きしめてやるからこれで勘弁な?スキルはあげてもいいかなって思ったらあげるから」
{くふふ、これはこれでいいものじゃ。安らぐのじゃ。仕方ないのう、これで許してあげるのじゃ}
勝ち気な所は変わってないが、まぁ可愛らしい範囲か

(これで偽造の問題は解決だ。聖龍偽造以上となるともはや神力以外ないからな。残るはシャルの問題だけか・・・。シャルの様子からすると戦いは避けられないか。戦うのはこの際仕方ないとしても、俺の圧倒的な力はエステル戦で見て知ってるんだよな。となると圧倒的な力を見せても戦意喪失してくれない可能性も・・・。やはり魔法を使えなくするしかないがそんなスキルあるか?イリアスにはあるかな?エステルに聞いてみるか)

「エステル。魔法を使えなくするようなスキルとかあるか?」
{ん?さっきの話じゃな?そんなものあるわけないのじゃ。あったら魔術士なんていらないはずじゃ}
だよなー。そうそう上手くいかないか

{シャルのことじゃろ?普通に勝てばよかろう。お師匠様ならできるはずじゃ}
「う~ん。シャルにはでかい恩があるからなぁ。ある程度の戦いぐらいは付き合うつもりだが、あとは諦めて降参して欲しいんだよ。魔法や体術で打ちのめしたくな」
そもそも女の子とはあまり戦いたくない!

{なるほどなのじゃ。だから魔法を無効化するスキルなんじゃな。・・・お師匠様で創れたりは?}
「いや~。ちょっと無理だな」
今までの世界にはなかったからなぁ

俺はエステルに記憶創造のことは伏せて創りだせる条件を話した
内容としては既に取得しているスキルや世界に存在しているスキルからなら創り出せるということだ
またスキル同士を合成できることも教えた

「わかったのじゃ、お師匠様。すまぬが、お師匠様の本当のステータスをもう一度見せて欲しいのじゃ。既にあるスキルから創り出せるか考えてみたいのじゃ」

それからエステルに質問される度にスキルの説明をした
手の内を明かすようで最初はためらったが、次第に気にならなくなった
明かしたところで、対策されたところで、俺の戦い方は変わらないからだ。圧倒的な力で踏み潰す
だからエステルが求める内はなんでも答えてあげた
それに真剣な表情で考えているエステルはとても美しかった
この表情が見れるなら答えたかった。完全に見惚れていた

{・・・というふうに創り出してみてはどうじゃ?}
「・・・できる、これならできるぞ!さすがエステルだ!お前本当すごいな!」
やばいな、本当エステルは逸材だぞ!?イリアスに納まるレベルじゃない!

エステルは戦いよりも学者とかに向いてそうだ
魔法錬成を生み出したあたりからもそれは顕著だろう
エステルの本当の戦いはきっとこれ研究なはずだ
サーシャが笑顔で、アオイが音楽で俺を魅了したように、
今エステルは研究で俺を魅了している

「エステル、本当にありがとう!感謝の気持ちだ。頭のリボンを少しの間借りるぞ?」

そう言って俺はエステルの頭にある大きな赤いリボンを拝借した
大きな赤いリボンに俺の気持ちの全てをのせて、

【マジックリボン『貪愛のリボン』を作成しました】

「エステル、お前にこれを受けとって欲しい。親しい者にしか贈らない、俺お手製のマジックアイテムだ」

マジックアイテム作成の為、一旦離したエステルを再び抱き寄せる
今はただ目の前のエステルを抱きしめたい気分だからだ

{お師匠様!どうじゃ?妾に似合うか?}
「見た目は同じリボンだろうが。でもエステルは可愛いぞ!お前は最高にいい女だ!」

抱きしめていた腕に少し力を入れた
俺とエステルの体をより密着させるために
エステルの柔らかさ(主に山脈)や温かさを感じる

{オーホッホッホ!妾の魅力に今頃気付くとはお師匠様も人を見る目がないのじゃ!}
あ、笑い方はそれなんですね。せっかくの雰囲気が台なしだよ

エステルの変わらない勝ち気な性格に苦笑するも、
それもエステルらしいのかな、と妙に納得してしまった

きっとそれは可愛らしい学者エステルに惚れた者負けなのだろう

(リボンに込めた想いは『貪愛』だ。貪るような愛。エステルは今はまだ魔法を、力を貪るようにしているが、いつか必ず俺を貪るように求めさせてみせる!俺もまたエステルを貪りたいぐらいに欲しい!俺ら二人にピッタリな想いだよな、エステル!)

「エステル、可能な限り俺の側にいろ?お前が望む魔法を、力を俺が教えてやる。その代わりお前の知識を俺に貸せ!」

{もちろんなのじゃ!お師匠様!}
可愛らしい笑顔だ。ずっと見ていたい


この笑顔エステルは俺のモノだ!
いつか必ず俺の女にしてみせる!


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マジックリボン 貪愛のリボン
込められた想いは、『永遠の愛と貪愛』
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