過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~アヤメとガーベラとアマリリス~情愛再び③

サーシャの世界ダンドリオン

魔物娘達の支払いを済ませ、奴隷契約も無事済ませた俺と魔物娘達は人目の少ない場所からサーシャの世界に飛んだ
申し訳ないがこの後のデートには連れていけない
また俺の家にも今はまだ連れていけない
家族がどんな反応をするかわからないからだ

その点スイやレンは俺の知識を持っている為理解が早い
魔物娘達には当面ここで暮らしてもらおう
そのためサーシャの世界は一時的に転移できないようにした
今は時間的に夕飯間近だから家族はいなかった
まぁご都合主義ってやつですよ!

「スイ、レン、ただいま。新しい家族だ、よろしくな!」
【なんか久しぶりの登場ッスが、おにぃおかえりッス!】
【お兄ちゃん、おかえりナノ~。ふぁ~、大きいナノ~】
え?なにが大きいって?そこkwskお願いします!

「見ての通り、魔物娘だ。当面はここで暮らしてもらう。彼女らの住家や必要な施設をスイが、食料面や世話などをレンが担当してくれ。特に施設面に関しては彼女ら専用で考えたほうがいいだろう。彼女らの意見を参考にするように!では自己紹介始めるか!話せるよな?」

魔物娘達に確認を取ると全員首を縦に振った
今まで一言もしゃべってなかったから少し不安だった
最初は俺で、次にスイ、そしてレンへと続く
いよいよ魔物娘達だ。おら、ワクワクしてきたぞ!

<スライム>
《ラミア》
[アラクネ]

・・・。へ?それだけ?
いやいやいや!見れば分かりますから!紹介してないから!
しかも種族だし!名前は!?なんかアピールは!?

「えっと?名前とかなんかない?」
《ナマエナイ、ツケル》

代表して答えてくれたのはラミアちゃんだ
ラミアちゃんは俺に対して特に怖がってる印象はない

(それにしても名前か・・・。苦手なんだよなぁ。安直だがスイやレンが花の名前だし彼女らも花にしとくか!花の名前はレンに聞けばいいしな!)

こうして名前を考える為みんなでフラワーガーデンに移動することにした

□□□□

サーシャの世界ダンドリオン・フラワーガーデン

すごいな・・・。以前見たときよりも更に花が咲き誇っている
まさに花の楽園にふさわしい場所だ
レンが愛情を込めてガーデニングしてるのがよくわかる
思わずレンをなでてしまった。
ついでにスイもな!チラチラ見ていたのがバレバレだ!

魔物娘達もどうやらお気に召しているようだ
魔物娘というだけあって自然フラワーガーデンと溶け合っているようだ
しばらくはここが彼女達の拠点になりそうだ

(さて名前決めないとな。まずはスライムちゃんだ。スライムちゃんは青いし、青っぽい花を探すか)

しばらくフラワーガーデンを散策していたら青っぽい花を見つけた。なんか見たことがあるぞ?

「レン、これは?」
【それは【アヤメ】ナノ~。花言葉は『希望』ナノ~】
ふむ。いいんじゃないか?これにしよう!

「スライムちゃんは今日から「アヤメ」だ。よろしくな、アヤメ!」
<ワタシ、アヤメ?>
「あぁ、そうだ!アヤメがいつも元気で明るくいればきっとアヤメ達の未来はいいものになる。アヤメが他の二人ラミアとアラクネの『希望』となるんだ!よろしく頼む!」

そう言って摘んだアヤメをマジックアイテム化してアヤメの髪?に添えた

マジック花飾り 『希望の花飾り』

うん、似合ってるな!
アヤメも嬉しそうだし、ラミアちゃんやアラクネちゃんも羨ましそうだ
魔物娘でもオシャレに興味があると分かれば、家族達も親しみが沸くだろう

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アヤメ』 不明 ♀ スライム種 魔物娘
帝都オークションにてユウジが購入した魔物娘の奴隷
H:158/W:43/B:82/W:46/H:80 Dカップ(人型時)
青目青髪斜め分けサイドテールヘアー(人型時)
性格は明るく天然。身長・体重・体型は自由に変化可能
主人公より希望の花飾りを贈られる。込められた想いは『明るい希望』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(次はラミアちゃんだな。やはり情熱的な赤がいいと思うんだよな。なんか色っぽいし)

これなんだ?赤やら白やらピンクやらきれいな色の花がたくさんあるぞ?

「レン、これは?なんかたくさんの色があってきれいだな」
【それは【ガーベラ】ナノ~。花言葉は『限りない挑戦』ナノ~】
花もきれいだし、名前もなんか情熱っぽいし、これだな!

「ラミアちゃんは今日から「ガーベラ」だ。よろしく、ガーベラ!」
《ワタシ、ガーベラ?》
「あぁ、そうだ!ガーベラはとても情熱的だ。美しいとさえ思う。その情熱を、その美しさをもっと高める挑戦をしてほしい。限りなく挑戦してみてほしい。ガーベラがほかの二人スライムとアラクネに『挑戦』する姿の美しさを見せ続けていくんだ!」

そう言って、アヤメ同様マジックアイテムを作成しガーベラの髪に添えた

マジック花飾り 『挑戦の花飾り』

ガーベラも喜んでくれてるようだ
アヤメとお互いの花飾りを見せ合っている
アラクネちゃんから羨望の眼差しを感じるぞ・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ガーベラ』 不明 ♀ ラミア種 魔物娘
帝都オークションにてユウジが購入した魔物娘の奴隷
H:789/W:秘密/B:92/W:50/H:90 Fカップ
金目赤髪ナチュラルロングストレートヘアー
性格は情熱的で嫉妬深い。きれいな鱗が自慢
主人公より挑戦の花飾りを贈られる。込められた想いは『限りない挑戦』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(最後はアラクネちゃんだな。彼女はきっとアヤメやガーベラよりも嫌悪されやすい。せめて名前だけでもきれいな可愛い名前にしてあげたいな)

蜘蛛だからって暗い色にする必要はない
むしろ真逆の白のほうが蜘蛛というイメージを払拭するためにもいいだろう

「レン、この大きな白い花は?」
【それは【アマリリス】ナノ~。花言葉は『輝くばかりの美しさ』ナノ~】
KO・RE・DA!これしかない!まさにピッタリだ!

「アラクネちゃんは今日から「アマリリス」だ!よろしく、アマリリス!」
[ワタシ、アマリリス?]
「あぁ、そうだ!アマリリスはどうしてもほかの二人スライムとラミアよりも周りからは嫌悪されやすい。嫌な事や辛い目に会うことも多いだろう。でも忘れないで欲しい。アマリリスはとても美しい。輝く銀髪に燃える赤い瞳はまさに輝くばかりの美しさだ。なにかあった時にその美しさを自信にして頑張って欲しい。アマリリスがその『美貌』で二人の自信となるんだ!」

仲間外れはよくないからな。アマリリスにもマジックアイテムを作ってあげて髪に添えてあげる

マジック花飾り 『美貌の花飾り』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アマリリス』 不明 ♀ アラクネ種 魔物娘
帝都オークションにてユウジが購入した魔物娘の奴隷
H:206/W:80/B:88/W:48/H:87 Eカップ
赤目銀髪片目隠しボブカットヘアー
性格は控え目で臆病。自身の糸での編み物が大好き
主人公より美貌の花飾りを贈られる。込められた想いは『輝くばかりの美しさ』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これで三人に名前がついた
ある程度は打ち解け合えただろうか?
まずは三人の気持ちをちゃんと聞く必要があるだろう
無理矢理連れて来られたんだ。俺には気持ちを聞く義務がある
花と戯れているアヤメとガーベラ、アマリリスを呼んで三人と話をする

「アヤメ達はなにをしたい?」
<ワタシ、ジユウニイキタイ>
《ワタシ、カエリタイ》
[ワタシ、ガーベラ、オナジ]

つまりアヤメ以外は帰りたくて、アヤメは自由に生きたいと
アヤメに関してはどうするかは自分で決めてもらおう
ガーベラとアマリリスは最終的には帰してあげるか

「分かった。アヤメ以外のガーベラとアマリリスに関しては帰してあげる事を約束しよう。アヤメも帰りたくなったら帰してあげるから遠慮なく言うように!」

《カエレル、ホントウ?》

まぁ疑っちゃうのはわかる
俺も、ガーベラから見たら捕まえたやつらと同じ人間だからな

「本当に帰してあげるよ。ただ今すぐはダメだ。意地悪じゃない。今すぐ帰してあげてもまた捕まっちゃうかもしれないだろ?今回は俺がガーベラ達を購入できたからよかったが、また購入できる保障はないからな。だからしばらくはここにいて襲われても大丈夫なぐらい強くなるんだ。強くなれたら帰してあげると約束しよう」

《ヤクソク、ツヨクナル》
[タタカウ、コワイ]

ふむ。アマリリスは少し臆病な子なのかな?
ガーベラはその辺は問題なさそうだ

「確かに戦うのは怖いよな?怪我したり、もしかしたら死んじゃうかもしれない。戦いたくない気持ちはよくわかる。でも戦える力は持っていたほうがいいぞ?今回のような時に戦える力があったならアマリリスはここにいなかったかもしれない。アヤメやガーベラも守れたかもしれない。今後アマリリスに大切な人ができたときにその人を守ることができるかもしれない。誰かを傷つける為の力じゃない。自分を、誰かを守る為の力を手に入れるんだ」

[ワカッタ、マモル]

これでガーベラとアマリリスは大丈夫だな
最後はアヤメか。アヤメは自由に生きたいらしいから強さだけじゃダメだよな

「アヤメは自由に生きたいみたいだから強くなるだけじゃダメだぞ?強さと最低でも言葉は覚えないとな。そんなカタコトじゃ怪しまれる。俺やレンが言葉を教えてあげるからしっかり覚えるようにな?」

<アヤメ、コワクナイ>
ん?どういう事だ?大丈夫ってことか?

「その意気だ!それぐらいの・・・」
<チガウ。ゴシュジン、アヤメ、コワクナイ?>

あぁ、そういう事か。こういう時のテンプレを忘れてた
俺の気持ちをちゃんと話さないといけないよな

「全く怖くない。アヤメだけじゃない。ガーベラもアマリリスも全然怖くないぞ。むしろアヤメは可愛らしいし、ガーベラはエロいし、アマリリスは美人だと思う。俺はお前達を一人の女の子として見てるからな。女の子を怖がる男はいない。だから、他のやつらがお前達を怖がっても俺はお前達を怖がらない。他のやつらがお前達に酷いことをしても俺はお前達に酷いことはしない。他のやつらがお前達の存在を否定しても俺はお前達の存在を否定しない。いつまでも俺はお前達の味方だ。頼りにしてくれ!」

<アリガトウ、アヤメ、ガンバル>

(それぞれの想いを抱く魔物娘達はもう大丈夫だろう。他にも注意したいことはあるがリア達を待たせてるしな。ここはスイ達に任せて明日にでもするか)

アヤメ達とスイやレンは仲良くしてるみたいだ。大丈夫だな
こうして後の事をスイとレンに任せて、俺はオークション会場に戻ることにした

□□□□

『中央区』市場・17時30分

辺りはほんのり夕焼け色になったぐらいだろうか
10月ではあるが季節上夏なので日は長いのかもしれない
市場に到着した俺はリア達を探そうとしたが探すまでもなかった

視線の先には人だかりがある。これは野次馬だな
そしてその周辺には転がってる男が多数見受けられる
はぁ。エステルに任せて正解だった
よし、俺は見守るかな。主にエステルを、だが。
エステルは華麗な体術でガタイのいい男達を倒している

(見事だ!見事すぎる!動く度にぶるんぶるんと!・・・きっと野次馬どももこれを見ているに違いない!許せん!これは俺のものだぞ!触ることはおろか見ることすら不敬だ!不敬罪を適用すべきだな。全員気絶辺りでいいだろ。エステルを見るのが悪い。エステルとリアを対象から外してっと・・・神圧!)

神圧を発動させると辺り一帯に凄まじいプレッシャーがのしかかる
木々はざわめき鳥達は飛び立つ。品物はガタガタと震えている
建物や露店などには一瞬突風でも起きたかのようだ
やがてプレッシャーが消えてなくなるとリアとエステル以外にその場で立っている人はいなかった

「待たせた。何事もなくてよかったよ」
{いや、明らかに襲われてたんですが・・・}
『これお師匠様の仕業じゃな?やり過ぎではないか?』
はぁ~?やり過ぎ???そんなことないだろう

「俺に対する不敬罪だな。俺の女に手を出すのは許さないし、それをただ傍観するのも許さない。野次馬するぐらいなんだから巻き添えの覚悟ぐらいはあるだろう、問題ない」
よし、勢いでエステル達を俺の女扱いにしたぞ!

{ユウジさんの女!?えへっ・・・はっ!いやいやいや待つのよ、私。これはいつものユウジさんの・・・}
『わ、妾も!妾も女の中に入っておるのか!?』

(あるぇ~?なんか微妙な反応だな?リアには少しキザな言葉を言い過ぎたか?信用されてないぞ?それにエステルの反応はどうなんだ??含めたつもりなのになんで?もしかしてリアを守ってくれって頼んだからか?)

とりあえず俺達はこの場を後にする事にした
気絶してる連中はそのままだ。盗難にあっても、いい勉強代になったと感謝してくれるだろう
リアやエステルがそのことについて特に何も言わないのは俺に毒された影響だろう。いつもの事だし気にしないみたいだ
逞しく成長してくれて嬉しいぞ!益々俺好みだ!

□□□□

『中央区』レストラン・18時00分

市場を後にした俺達は夕食を取ることにした
家族には予め帰りが遅くなることは伝えてある
なんで遅くなるかは突っ込まれなかった。大丈夫、バレてない。バレてないよな?不安だ・・・

各自が好きな物を注文をする。待つ間は楽しく会話だ
そして注文した料理が届くとお決まりのあれがくる

{ユウジさん。はい、あ~ん}
「ありがとう、リア。あ~ん」

幸せだ。幸せすぎる!いちゃいちゃだよ!
こういうデートを俺は期待してたんだ!
聞き果実水したり、種明かしたり、オークションしたりとかじゃなくいちゃいちゃしたかったんだよ、俺は!

しかもリアは積極的だ
ヘイネは甘やかしてはくれるが基本食べている
サーシャは恥ずかしいのか外では自重しがちだ
セリーヌはどちらかと言うと俺が甘やかしたい
リアの積極さはやはりいいものだ。新鮮なんだよな!
しかも食べている最中にこにこと眺めているのも大人の余裕を感じる。大人のお姉さんの魅力を改めて垣間見た気がした

・・・。

視線を感じる
いやずっと気付いてはいた。昼もそうだったから
視線の先にはエステル嬢だ。明らかに不機嫌である
昼食時にも同じやり取りがあったので頼んでみたが断られた
素直になれないエステルにどうしてもあ~んをさせたい!
だから今回は・・・

「エステル、これうまいぞ。食べてみろ。ほれ、あ~ん」
『お、お師匠様がそういうなら仕方ないのじゃ。あ~ん』

(可愛らしい口だよな~。吸い付きたくなる。あのぷりぷりとしてて柔らかそうな唇を貪るように吸い付きたい。たまに見える舌を俺の舌と絡み合わせたくなる・・・って違う!色魔、色魔。エステルにあ~んをしてもらう作戦の最中だ!)

やはりこちらからのあ~んなら食べるらしい
要は恥ずかしいだけなんだよな?
ならあ~んより恥ずかしい行為をしていれば或いは・・・

「な?美味いだろ?あ、エステルと間接キスしちゃったな」
『!』

さりげな~く言ってみた
エステルぐらいの少女ならキスに特別な想いがあるのではないだろうか?
サーシャにはあったし、セリーヌにもあった
エステルにだって憧れはある・・・と思いたい
まぁ間接キスとか中学生かよ!みたいなことは思うが、
素直になれない子ならもしかして・・・

「これもなかなかの味だ!エステルも食え、あ~ん」
『し、しかしの・・・』
「腕痺れるから早くしてくれ~。あ~ん」
『うぅ・・・あ~ん』
よしよし、いい感じだぞ!

リアが俺にあ~んをして、俺がエステルにあ~んをする構図ができ上がった
そろそろエステルの答えに変化がでるはずだ

「う~ん、Delicious!エステル。はい、あ~ん」
『お師匠様!妾は一人で食べれるから平気なのじゃ!』
「おいおい。せっかくエステルの「為」にしてるのに、まさか食べてくれないのか?」
『お、お師匠様はずるいのじゃ・・・』
「いいから、いいから。はい、あ~ん」
『・・・あ~ん』

全く素直じゃないな、エステルは。・・・萌えるじゃないか!
その後も同様のやり取りを続けた
頃合いだろう、早くしないと料理がなくなる!

「エステルのそれ美味そうだよな?食べさせてくれ」
『え?しかしのぅ・・・』
「今更だな。俺達は既に「キス」までした仲じゃないか。恥ずかしがるほどでもないだろ?「キス」までしたんだし」
間接キスだけどな!いや、直接も大歓迎です!

『~~~!』
「エステルに食べさせて貰いたいんだよ。いいだろ?「キス」よりも恥ずかしい訳じゃないんだからさ。あっ、それともエステルのフォークに間接「キス」しちゃうのを・・・」
『キス、キス、連呼しないでいいのじゃ!分かったのじゃ!お師匠様!あ~ん!』
「おぅ!ありがとな!あ~ん。エステルのあ~んは最高だな!」

少し無理矢理過ぎていちゃいちゃではないが、あ~んをしてもらったという事実が重要だよな!
実際俺も凄く嬉しかったしエステルもいずれは慣れてくれるだろう

{ふふっ、狙いが成功したみたいで良かったですね?}
「・・・」

露骨すぎたかな?リアにはバレバレだったみたいだ
それとも女の勘ってやつか?こ、怖い・・・
まぁリアは不機嫌ではないみたいだ。よかった。

その後も料理に舌鼓を打ちながら、リアとエステルのあ~んを堪能した。至福の時間でした

□□□□

『貴族区』帝都神殿噴水前・19時30分

レストランを出たらさすがに日が落ちはじめて来ていた
本来なら星が瞬き始めるのだろうがイリアスには星がない
ただ静かに夜の闇が迫ってくるだけだ

俺達はリアの希望もあり帝都の神殿に赴くことになった
やはり王国同様ライトアップされるようだ
ただ王国と違うのは様々な種族がいるということだろうか
人間族以外もやはりこういうロマンチックな雰囲気が好きなんだろう
しばらく幻想的な光景を眺めていたリアがポツリと爆弾を投下する

{以前王国で、ユウジさんがこんな幻想的なシーンで誓いを立ててくれた時を思い出します}
『騎士の誓いとはなんなのじゃ?お師匠様』
「・・・ソ、ソウデスネ」

(今かよ!確かに分かるよ!?それなりに月日が経ったからさ!でも今はエステルいるから!それ爆弾だから!)

{ユウジさんに騎士の誓いを立ててもらったんです。ユウジさんのお国ではこういう幻想的なシーンで騎士がお姫様に誓いを立てるお話があるみたいなんです。初めはびっくりしましたが凄く嬉しかったです。本物のお姫様になったような気分でした・・・その後フラれちゃいましたが}

(ちょっとリアさん!?詳しく説明しないでくれます!?絶対エステルが臍曲げるから!しかもさりげなくフラれたこといいましたよね?根に持つタイプ!?)

『ふ~んなのじゃ。お師匠様はリアが大好きなのじゃな!』

(ごふっ。。。いやいやいや!最後までちゃんと聞いてたか!?フラれたって言ってたじゃねぇか!臍曲がり姫になっちゃったよ!どうすんのこの状況・・・)
俺は対応に困惑していた。どう言い繕えばいいのか思案に明け暮れた

リアを伺うと妖艶な笑みを浮かべている
これは・・・明らかに狙っていたようだ
俺とエステルが恋仲でないのは早々にバレていたのかもしれない

更にリアの攻撃は続く

{ユウジさん。お願いを聞いてくれる約束でしたよね。今お願いしてもいいですか?}
「で、できる範囲で、だからな?」
この状況でお願いだと!?な、なにをお願いするつもりだ!?

{ユウジさんからキスをしてほしいです。以前してくれたのは手でした。でもあれは誓いでしたからキスとは違うと思うんです。なので私はまだユウジさんからキスをしてもらったことがありません。私からではなく、好きな人ユウジさんからキスをしてもらいたいんです}

「なっ!?」

(き、キスか・・・。リアのことは好きだし一向に構わないのだが、エステルが見てるしなぁ・・・う~ん。でも約束してるし、できない範囲でもないし・・・。う~ん)

しばらく無言で考えていたので、リアが痺れを切らしたのだろう

{・・・わかりました。私もユウジさんを困らせたくはありません。キスは唇以外でも構いません。それならいいですよね?}
ん?今チラッとエステルを見た?確認は俺じゃない???

「ま、まぁそれぐらいならいいかな?」
俺もチラッとエステルを見る

な、なんだろう?能面?無表情だ・・・
エステルの表情からは考えを伺い知ることはできなかった

{ありがとうごさいます!ユウジさん!それともう少し我が儘を言わせてもらえるなら手以外でお願いします。以前と同じというのも悲しいので}

(それは確かにそうだよな。手以外だと・・・太股はさすがにこの状況ではないだろうし、首はマニアックすぎる。頬かおでこあたりが無難だろう)

「じ、じゃあ頬にキスするな?それならいいか?」
キスする場所を宣言するのも斬新すぎるな・・・

{はい!嬉しいです!}
嬉しさ爆発っといった感じで微笑むリアは美しい

リアの腰に手を回してリアを引き寄せた
しばしリアとお互いを見つめ合う。エステルの視線も感じる
視線を意識してのキスというのも案外やりづらいなぁ、
と思いつつリアの柔らかそうな頬へ俺の顔を寄せた
キスできるぐらい顔を寄せていざキスをしようとしたその時、

「んむぅ!?」
『あっ・・・』

俺が今まさにリアの頬にキスしようとしたその時にリアから不意にキスをされた
かつて王国でキスされたときのような不意のうちのキスだ

(!!!・・・ちょっと!ちょっと!リアさん!?キス!キスしてますから!!・・・またこのパターンかよ!俺も学習しないな!)

{ふふっ。ごちそうさまでした。これで私はユウジさんと{二回目}のキスですよ?おやすみなさい、ユウジさん!}

そう言ってリアは走り去っていってしまった
走り去る前にチラッとエステルを見たような気がする

(どういうことだ?リアはエステルをちらちら見ていたようだがなにかあるのか?)

俺は訳がわからないまま、ただ呆然と走り去るリアを眺めていた
リアの唇は相変わらず柔らかかったな・・・

(あっ・・・暗いから送っていかないと!でもエステルを残していけないし・・・。まぁ大丈夫かな?次からは気をつけよう)

□□□□

side  -リア- ~開始~ 20時30分

ユウジさんとエステルさんと別れての帰り道、私の心はとても弾んでいた
私から不意にだったけど、またユウジさんとキスをすることができたから
そしてユウジさんから次のデートを誘ってもらえたから

{{キスとデートのお誘い、私にとっては夢のような結果だ。一度はフラれたけど、それでも諦めないでエクスペインまで来て本当によかった。ユウジさんも嫌々付き合ってる訳でもないって言ってたしね。少しは私の頑張りを認めてもらえたのだろうか?・・・そうだったら嬉しいな。でもユウジさんの周りにはまた新しい女の子がいた。サーシャさんに、ヘイネさん、そしてエステルさん。みんなユウジさんに愛されている。とても羨ましい・・・。でもエステルさんはまだ気付いていないみたい、ユウジさんから愛されていることに・・・}}

~~回想開始~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ユウジさんが魔物娘に会いにいっている間、私はエステルさんと一緒に市場を見回っていた
ユウジさんがいない今なら確認できる

{エステルさん。エステルさんとユウジさんってお付き合いしてないですよね?}
『な、なんの事じゃ?』
え?隠せてると本気で思ってたんですか!?あれで!?

{いや、誰が見てもわかると思いますよ?お二人が恋人じゃないってのは}
『ぐぬぬ。そ、そうなのじゃな。妾とお師匠様は恋人同士には見えぬのか・・・』
{それでエステルさんはユウジさんの事、好きなんですよね?}
『わ、妾は別にお師匠様の事は・・・』

{{う~ん。素直じゃないというか何と言うか・・・。ユウジさんも薄々感づいてるんだろうなぁ。いいなぁ。相思相愛で・・・。}}

{はぁ。私はエステルさんが凄く羨ましいですよ?}
『どうしてなのじゃ?リアとお師匠様はとても仲良く見えるのじゃ。恋人同士というなら二人の方がそう見えるのじゃ』
{・・・え?もしかして気付いていないんですか?}
『?なにをじゃ?』

{{嘘・・・でしょ?あんなに猛アピールされてるのに!?私やそれこそアカリさんだったらどんなに喜ぶことか・・・。やっぱり公爵令嬢ともなるとそういうことに慣れてるの?それともエステルさんがただ鈍いだけ?どっちにしてもこれは本人が気付かないといけない問題だ}}

{エステルさん。私、ユウジさんにお願いを一つ聞いてもらえる約束なんです}
『ほぅ、それはよかったのぅ。妾なら頭をなでて貰いたいのじゃ』
頭をなでてもらうか・・・。それもいいかも、でも・・・

{私はキスをお願いしようと思います。いいですよね?エステルさんはユウジさんの事好きじゃないんですよね?}
『なっ!?』
{私はユウジさんが好きです。ハッキリ言います、愛してもいます。だから好きな人ユウジさんとキスをしたいです}
『・・・』

~~回想終了~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

本当はもう少しエステルさんの背中を押すつもりだった
邪魔さえ入らなければ・・・

ユウジさんは間違いなくエステルさんの事を好きだ
そしてエステルさんもまたユウジさんの事を好きだ

エステルさんの気持ちは、恐らくユウジさんなら気付いているはずなのにどうして気持ちを伝えないのだろう?
エステルさんは気付いていないんだよ?
ユウジさんがエステルさんを好きでいることに

{{本当に、不器用な人と素直じゃない人、だ。相思相愛なのに。だからユウジさん!今は少しだけエステルさんの背中を押してあげましたよ。私とユウジさんのキスを見たエステルさんは間違いなくユウジさんを強く意識するはずです!あとはユウジさんが頑張って早くエステルさんとくっついちゃってください!・・・そうじゃないとユウジさんは私に目を向けてくれませんよね?}}

まだ少し蒸し暑さが残る夜の中、帰宅中に物思いに耽るリア
好きな人の為に少しでも役に立ちたいと思った行動だった

{私はこんな形でしかユウジさんのお役に立てないから。私は戦えないし、今はまだ側にもいけない。だからできる範囲でユウジさんのサポートをしていこう。それが私なりのアピールの仕方だから。ユウジさん気付いてくれるかな?それにしても次こそはユウジさんからキスして欲しいなぁ・・・}


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品